価格はどうやって決定されているのか…この基本的な疑問が解けないと資本主義経済そのものが理解不能になります。もちろん理解できないのであればコントロールなどできるはずがありません。それが世界の現状である可能性は高いのではないでしょうか。
需要と供給から価格が形成されるのはセオリーでした。価格形成の場である市場では、経済合理性と完全情報が前提になり、需要と供給から価格は形成されます。
逆にいえば、<経済合理性>と<完全情報>がない場所では、価格の形成過程は不明であり、価格そのものを推量することも不可能です。その不確実性、不確定性は大きな不安定要因となって、経済主体である個人から国家までを揺さぶります。不安定な事態に対する不安ゆえのせき立てられた行動は不安定さを指数関数的に沸騰させます。これがバブル崩壊や恐慌にみられる典型例でしょう。このような場合、ボラタリティを示す数値はVIX指数のように(経済のリアルな現場であるからこそ)「恐怖指数」と呼ばれ、重要視されています。
問題は、金融経済化が必然である先進国の経済的属性のなかでは<経済合理性>と<完全情報>はあり得ないという事実です。
経済学の価格形成理論における需要と供給は、完全情報が存在するという前提の上に成り立っています。
現実的には、経済学の価格形成理論は、
現代においてさらに致命的な欠陥を露呈しています。それは何かといえば、為替です。
現代の金融経済において、
需要と供給が価格を決めるという命題は明らかに間違っていると断じないわけにはいきません。
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経済大国なのになぜ貧しいのか? 著:苫米地 英人
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本書『経済大国なのになぜ貧しいのか?』では<経済合理性>と<完全情報>がないことを示しながら、では何が経済的な決定要因なのかを金融経済の位相から解き明かしています。BIS規制やデフレ・インフレなどに触れながら不可視な、しかし根本的な経済要因が明かされていきます。そこから思索するとマネーの自己言及性、入れ子構造としての安定性(バブルとバブルの間の期間)など基本的でラジカルな問題があきらかになってきます。
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そもそも経済主体の行動が経済合理性に即しているわけではないことを行動経済学はあきらかにしました。また消費経済を考えれば選択消費が過半を超えている 先進国では、個人という経済主体の意識ひとつだけで経済全体が左右されます。そこでは大企業や国家の安定(性)は数ヶ月で失われる可能性があるのです。それから現在では当然のことですが為替レートも価格を大きく左右する要因であり、自国内の努力だけで解決できる問題ではありません…。
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経済は感情で動く―― はじめての行動経済学 翻訳:泉 典子
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金融経済の経済主体は一般市民ではなく、投資家。金融資本であり、大株主であり、大企業がその主な投資主体でしょう(国家部門もありますが)。この金融経済の場での取引は市場ではありません。民主主義とその経済位相での表象としての市場はここにはありません。メインとなっているのは投資家(資本家)の相対取引であり、公開市場ではないのです。ヘッジファンドや差金決済をはじめ金融デリバティブに代表される取引も事実上相対取引であり、無制限公開の市場とは属性がまったく違います。そこでは良くも悪くも作為としての取引とその成立があり、それが市場の動向を決定していきます。神の見えざる手とも異なり、公開市場からは不可視なところ(投資家の相対取引)で価格の大きな決定要因が生まれているワケです。一般の人間にも、公開されている市場にも<完全情報>はありません。莫大な金額の相対取引の取引後に情報が公開されたとしてもリアルタイムではないために意味はありません。ただのバックデータです。このデータを積み重ねて膨大なデータベースを作っても一般的な意味はありません。ただの研究データにすぎないからです(もちろん研究データから導かれる経済物理学のようなすぐれた成果はあります)。
たとえば、62人が世界の過半数の資本を所有しているという事実こそ、市場が経済を動かしているワケではないこと、需要と供給が価格を決定しているワケでもないこと…を象徴するデキゴトでしょう。
ただ先進国において選択消費が過半である事実は、この62人の作為をも左右できる基本的な構造だとみなせるのもたしかです。一般人が選択消費を数ヶ月やめれば62人も、大企業も、国家でさえも揺らぐからです。選択消費をしないミニマムなライフスタイルは、それそのものが62人に象徴される構造へのアンチテーゼだともいえます。ただ社会や国家の選択権を既に握っているという自覚は一般の人にはなく、それだけが一般的な可能性を奪っている最大の要因なのだともいえるでしょう。アメリカの憲法の抵抗権やほぼ無制限のような消費者保護法などは、この一般人の社会や国家の選択権を保障するものであり、その具現になります。
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