2021年の新年を迎えても、人類の緊急かつ最重要課題はコロナ禍対策で、日本に限って言えば悪化の一途を辿っているという、何とも暗い幕開けとなりました。政府の緊急事態宣言により、今後どこかでピークを迎える(感染者一日最大で1万人?)と思われます。
しかし、どこで高止まりするか、又は、徐々に感染者が減少してゆくかは、この宣言がどの程度の実効的なものかで変わるので、2月ぐらいまでは高止まりと見ておいた方が良さそうです。世界に目を向けると、国によって感染者率には大きな開きがあるものの、多くの国で共通しているのは、感染者数が波打っていることです。
しかし、これらのすべてを足した全世界では、昨年12月末の1日当たりの感染者数、およそ60万人をピークに、徐々に減少していく傾向にあります。イギリス、南アフリカの変異種が大きく取り上げられていますが、感染者数が全体の約8割を占めているヨーロッパと南北アメリカ大陸が、減少傾向になってきているためです。
感染者のうち特に重症者対策には、依然として特効薬がありませんが、対処療法とはいえ膨大な症例の蓄積と共に、「腕は上がってきている状況」と思われます。
だが敵もさるもので、変異を繰り返して感染力も変わってきているので、昨年夏以降の死亡率に大きな変化はなく、この戦いは一見すると「膠着状態」の様相を呈しています。
さてここからが本題で、誰でも最も気になるのは、「コロナ禍が、今後どうなり、いつ収束するか」です。筆者の専門分野は医学ではありませんが、理工学分野で40年以上の研究を重ねてきた一科学者として、以下の私見を述べます。
まず、仮に特効薬(インフルエンザに対するタミフル)が見つかっても、感染そのものは収まらず、やはりワクチンが必要です。人の体は、ウイルスなどの外敵が来ると免疫細胞が、軍隊のようにウイルスに戦いを挑み撃退をする仕組みですが、この免疫細胞は、「学習効果」が絶大で、一度戦うと必ず相手の弱点を記憶し2度とやられない、「抗体」ができるという、非常に便利な仕組みを持っています。
従って、事前に人体にさほど影響しない疑似ウイルスを一旦体に入れて、抗体さえ作ってしまえば、実際にウイルスが来ても撃退します。これがワクチンの仕組みです。要するに、完璧なワクチンが出来て、国民全員が打つことで、コロナ禍が終わるということです。
現状では、2つのタイプのワクチンが開発済みです。まずイギリスのアストラゼネカに代表される、古典的なワクチンですが、これは18世紀のジェンナーの種痘以来の方法です。コロナウイルスの不活性化したもの、あるいは疑似ウイルスを使い、人体に抗体を作る方法です。もう一つは、あらかじめ解析したコロナウイルスの遺伝子情報をもとに、人工的に疑似ウイルスをつくるための遺伝子(mRNA)を、高度な遺伝子操作技術を使って大量に作り、これを体内にいれ、人の体の中で疑似ウイルスを作る方法です。
こちらのワクチンの方が、遺伝子の操作技術さえあれば、短期間に作れる利点があります。アメリカのファイザーとモデルナのワクチンがこれに相当します。報告によると、中国から、コロナウイルスの遺伝子データが世界に公開されて、一週間程度でワクチンの原型ができたそうです。時間がかかるのは、安全性のチェックと量産化技術などではないかと思います。
以下は、あくまでも個人的な見解ですが、古典的な方法だと時間はかかるし、ワクチン効果も不安定で、異物の混入等による副作用リスクも大きい。しかし、遺伝子操作で作られたmRNAを使うと、精度よく「対応したコロナウイルスにヒットする抗体」ができるものと思われます。
因みに「m」はメッセンジャーのmで情報伝達の意味を表わし、RNAは、体内で疑似ウイルスを作るためのコピー機のようなものだと思っていただければ良いでしょう。疑似と書いたのは、本物だと肺炎になるので、抗体を作るためだけのウイルスと考えてください。
ファイザーとモデルナの最終治験では、ほぼ100%近い効果が出ており、古典的な方法がかなり低い効果しかないのと対照的なのはこのためでしょう。理工系の研究者から見ると、エジソンの白熱電球と、赤崎勇先生のLED照明くらいの差がありそうです。
mRNAを実用で使うのは今回が初めてなのと、遺伝子操作という言葉に対する人びとの恐怖感があり、副作用などに対する警戒は、こちらの方が大きいけれども、もし10年後に新たなパンデミックが起きたら確実に、ワクチンはこのmRNAを使う方法でしょう。今のところ、10万人に1人程度に、免疫異常が出ているようです。
さて、日本は、2月下旬から7月くらまでの間に、全国民(希望者のみ)にワクチン接種が行われる計画のようです。このうち半分以上がmRNAによるワクチンですで、予定通りなら8月にはコロナ禍も収まるでしょう。
しかし、この予想は楽観的過ぎています。激しいワクチン争奪戦の末に予約したワクチンの数量がすべて予定通りに生産され、納入される保証はどこにもありません。
欧米では、昨年末から接種が始まっていますが、ほとんど計画通りには進んでいません。唯一、現時点で計画通り一番進んでいるイスラエルでは、既に900万人の全国民の15%くらいが、ワクチン接種を終えています。従って、このペースなら2月末頃には、接種も終わりそうです。ワクチンが、‘額面通りの効果’を発揮すれば、遅くとも4月には、患者数も激減しているでしょう。
イスラエルの今後に関しては、世界中が注目しており、ワクチンが働いて、コロナ禍を終えることが本当に出来るか、の「ベンチマーク(指標)」になっています。やはり、論より証拠で、国家レベルで集団免疫を獲得したという事実が、とても重要です。
因みに欧米では、ワクチンの数があってもいつどこで誰が誰に打つかなど、人的な問題で混乱をきたしており、多くの時間をロスしているようです。「日本の厚生労働省の方々、頑張って間違いなく事前に整理しておいてください」。
余談ですが、海外メディアがコロナ禍の日本における「保健所」の活躍を褒めていました。当たり前と思われる保健所のシステム・機能は、どうも海外には無いようです。
最後に、集団免疫が成り立つという仮定の下に、日本の場合、個人的な見解としては早ければ10月ころには、多少コロナ禍から解放されている状況かな、といったところでしょうか。
「十勝の活性化を考える会」会員F