Ａｄｉｅｕ Ｃｉｔｒｏｅｎ ＺＸ

クルマを買い換えることになってからというもの、夫の盛り上がり様といったら子どものクリスマス前のはしゃぐ様にも似ているほどだった。
あれやこれやクルマ屋さんと打ち合わせをしては、あーでもない、こーでもないと言っていた。
新しい（といっても中古なんだけど）クルマに対する期待度はマックス。
その一方で、このＺＸに対する哀惜の情も同じくらい彼を覆っていた。
ぎりぎりまで宝くじを買い、もし、当たればこのＺＸは手放すことなく、クーラーを直し、傷んだところを新しくして、もうこれ以上は無理！というところまで乗り続けたかったようだ。
だが、そうそう宝くじなんてものは当たるものでもなく、泣く泣くこの日を迎えた。
ＺＸの思い出となるものは、フロント部分のへへマークに始まり、後ろのネームも、ハンドルのへへマークもすべて剥いでしまった。
いくら廃車が決まっているとはいえ、クルマ屋さんもびっくりしたことだろう。

今日の日を納車に選んだのは、今日が夫の誕生日だから。
自分へのプレゼントというわけではないが、今まで私たち家族を事故に遭わせることもなく、快適なドライブを提供してくれたＺＸとの最後の日は、メモリアルデイにしたかったのかもしれない。
左後ろをこすったり、サイドからクルマを当てられたり、タイヤで路石をこすったり、といたぶったのは私ばかり。
一度、私がガソリンを入れるのをけちって、ガス欠というめちゃくちゃ恥ずかしい思いをさせられる、という仕打ちは受けたものの、よく下手っぴな運転にもつきあってくれた。
そんなＺＸへの敬意をこめて、彼との別れ話は「私のミシュラン」に入れておこう。

それにしても「神戸」ナンバーともこれでお別れかと思うと、私はそれが一番寂しかったりする。