T大学K学部3年 Fさん(男性)
「学生時代に打ち込んだこと」
★★★合唱団のマネージャーとして、団員のモチベーションアップと技術向上に挑んだこと。
私は初め、練習以外のイベントや飲み会で団員を楽しませるのが音楽コーチではない自分の使命だと思っていた。しかし、練習に出ない団員が段々増えた。指揮者の先生に「皆は一生懸命合唱をやるのが楽しいと思えないから、来ないんだ」と言われた。
そこから私は「一生懸命合唱やるのは楽しい」という「想い」を団員に理解してもらい、やる気を引き出そうとした。スローガンやポスターを作成した。自分で毎日1時間の発声練習を行い、コツや信念を私のHPに載せた。部室を大掃除して練習場所を拡張した。また息抜きのため敢えて飲み会を充実させた。いつでも言葉選びとユーモアは忘れなかった。
結果として団員は増え、年末のコンサートの音楽的評価も上がった。この経験からは、熱意をうまく伝えていけば人のやる気は引き出せることを学んだ。(395字)
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● 総合点 40点
● 総評
いくつか気になる点があります。
*Fさんは、マネージャー専属なのか、団員兼マネージャーなのか、それとも団長(部長)も兼ねているのか、このあたりのことが文章を読んだだけではよく分かりません。コーチ、部長(キャプテン)、マネージャーの役割分担が見えないと、読者は戸惑います。
*「合唱をやるのは楽しい」という「想い」を団員に理解してもらおうということで、Fさんはいろんなことをしたのですね。具体的には、次のようなことをしました。
スローガンやポスターを作成した。自分で毎日1時間の発声練習を行い、コツや信念を私のHPに載せた。部室を大掃除して練習場所を拡張した。また息抜きのため敢えて飲み会を充実させた。いつでも言葉選びとユーモアは忘れなかった。
この中で一番効果があったことは何ですか? 一番本質的なことは何ですか? それに焦点を絞って書いた方が説得力のある文章になります。現状では、やったことを何となく羅列してあるように見えます。
締めの言葉が「・・・この経験からは、熱意をうまく伝えていけば人のやる気は引き出せることを学んだ・・・」とあります。ということは、一番のポイントは熱意をうまく伝えることでしょうか。「うまく」っていうのは何なのかが分かりません。具体的にやったことを、抽象化あるいは一般化すると文章が深くなります。
● プチ添削
1)★★★合唱団のマネージャーとして、団員のモチベーションアップ・技術向上に挑んだこと。
モチベーションアップか、技術向上か、どちらかに絞った方が良い。
2)私は初め、練習以外のイベントや飲み会で団員を楽しませるのが音楽コーチではない自分の使命だと思っていた。
使命は言葉として重い。役割で十分。使命を使いたいなら、何か文章を補いたい。
音楽コーチ → コーチ
3)しかし、練習に出ない団員が段々増えた。
この「しかし」は使い方としておかしい。「・・・・・しかし、それは僕の使命ではなかった」と続くならば良いが・・・。
段々 → だんだん
4)指揮者の先生に「皆は一生懸命合唱をやるのが楽しいと思えないから、来ないんだ」と言われた。
この文章は意味があいまいです。「合唱をやる、やらない」ということと、「一生懸命やる、一生懸命やらない」ということが重なっています。
合唱の練習が楽しくないのでしょうか? つまり、部員は合唱が好きではないということです。
それとも、一生懸命練習することが楽しくないのでしょうか? ということは、もっと適当にやればみんなは楽しんでくれるのでしょうか?
5)そこから私は「一生懸命合唱やるのは楽しい」という「想い」を団員に理解してもらい、やる気を引き出そうとした。スローガンやポスターを作成した。
スローガンやポスターの内容が気になります。こういうディテールにこだわると、リアリティが増し、文章が生き生きしてきます。
6)自分で毎日1時間の発声練習を行い、コツや信念を私のHPに載せた。
「自分で毎日1時間の発声練習を行い」という文と、「コツや信念を私のHPに載せた」という文はつながっていません。・・・・たり・・・・たりというつながらいかたならわかる。
突如として「信念」が出てきたのはなぜ?
7)また息抜きのため敢えて飲み会を充実させた。
なぜ「敢えて」なのかが分からない。敢えてという言葉は、たとえば「敢えて練習時間を少なくした」というように使います。
8)いつでも言葉選びとユーモアは忘れなかった。
突如として出てきたような感じを持つ。読者は戸惑う。
9)結果として団員は増え、年末のコンサートの音楽的評価も上がった。
「音楽的評価も上がった」。誰が評価したのかが不明。もっと素直な表現方法を探そう。
以上