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世界一面白いミュージカルの作り方

早稲田発小劇場系ミュージカルプロデュースユニットTipTapのブログです。
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長い休暇もそろそろ終わり。

2013-02-06 13:30:53 | tiptap
ニューヨークに帰って来て数日はー10度ぐらいで極寒でしたが
最近はやや落ち着いて寒さにも慣れて来た感じです。
年末に通っていた学校を変えることを決めて
今は転校期間ですがそろそろ学校新しい学校も始まるわけで
長い冬休みもそろそろ終わりです。

さてNYに帰って来て約2週間ですが14本の観劇。
季節柄あまり魅力的な作品が少なく
更に寒いもんでなかなか難しいところです。


Mary Poppins

これは出張で訪れたジャクソンビルで観たナショナルツアー版。
なかなかツアー版とはいえセットは豪華でした。
そりゃあブロードウェイ版に比べればこじんまりとしてますが
日本の定住型公演に比べると充分豪華という感じ。
俳優達はまさにナショナルツアーという感じでしたが充分楽しめますね。
これだけのクオリティーで巡業公演を行えることは
本当に羨ましいです。
巡業公演となると本当に割愛に割愛を重ねかなり簡素化した物に
なってしまいがちなのでこれだけの規模で公演が行え
それに見合った集客が見込めるシステムが日本にもあればと
切に願います。


Bethany

アグリー・ベティーというコメディードラマでエミー賞を獲得した
アメリカ・フェレラ主演のブラックコメディー。
ラッシュで囲い客席の端の端で観たのでかなり
見えないところが多かったですが
なかなか楽しめました。
映像の人って感じのお芝居でしたがアメリカさんはロンドンでシカゴのロキシーを
やってたことがあるようです。凄いですね。
脚本はすっきりしててなかなかよかったですが
最後の盛り上がりの部分が観ていた座席のせいかやや興ざめ感があったのが残念。
人を撲殺するシーンなんですが近くて更に舞台の横から眺めてしまうと
ちょっと嘘くさくなってしまうんです。
席をかなり選ぶ作品でしたね。


The Heiress

今期アカデミー賞に主演女優賞でノミネートされているジェシカ・チャスティン主演の芝居。
作品自体はリヴァイバルで映画にもなった作品。
邦題は「女相続人」。
セットがかなり豪華で見応え有りました。
NYの豪邸が舞台で飾りは一つなんで
かなり作り込まれていて贅沢な気持ちになります。
あらすじからなんだか暗くてじめじめした作品というイメージだったんですが
なかなか演出の手腕でコミカルにライトに楽しめ
50年以上も前の作品を現代でもしっかり楽しめる作品に仕上げられていて好感を持てました。
ゼロ・ダーク・サーティーのイメージと全く違う
ジェシカにも感心させられました。
元は舞台女優としてキャリアをスタートさせただけあって
見応えのある芝居でこれからが期待の女優です。


My Name Is Asher Lev

同名ベストセラーの舞台化作品。
布教活動を行うユダヤ人一家の息子で
画家を目指す青年が主人公の物語。
セットがなかなかセンスがあって美しい。
ただ演出がいまいち。
主人公の息子以外の二人の役者が入れ替わり立ち替わり
色んな役を演じるのだが
それが逆効果でなんだか貧乏臭くなってしまう。
さらに最愛の兄を失って心を患う母親という表現で
いきなりカツラをはずし机の上に置くという恥ずかしい演出。
ちょっと意味がわからなかった。
物語自体は芸術と宗教の間に揺れる青年の葛藤が
なかなかドラマチックであったがひたすら訴えかける作風が
やや気疲れさせ押し付けがましくも思えたかもしれない。
演出でもう少し改善できる点があったように思える。


Totally Tubular Time Machine

Popミュージカルという触れ込みで行ってみたら
クラブでPopスターの扮装した人たちが歌って踊ってくれるだけだった。
かなり騙された気分である。
まあクラブ好きな人には楽しめるかもしれないが
そんな柄でもなく結局最後までは観ずに帰った。
こんなものに$70も払うわけだからよくわからない。
たまたま割引で$15だったからまだ許せるが
せめてクラブイベントとして記載して欲しい物だ。
どう見てもミュージカルではないな。


Cinderella

久しぶりのオンミュージカル。
言わずと知れたシンデレラのミュージカル化作品。
ディズニー印ではないのでアニメのシンデレラとは別物です。
一応音楽はロジャーズ&ハマースタイン。
でもそもそもテレビ映画用に書かれた作品とかで
そこまで音楽に魅力を感じなかった。
作品自体もなんだかちょっと物足りない。
全体的にちょっとお金がかかってない感じ。
ディズニープロダクションの夢の世界感に比べると
やはり劣ります。
脚本もなんだか無理矢理引き延ばして
民主主義のことなんか歌い出して選挙までやっちゃうのが
どうも胡散臭く感じてしまう。
こういう作品はブロードウェイらしく
信じられないくらい豪華に作って欲しい。
夢の世界があまり感じられないのが残念。
まあまとまってはいるんだけどね。


Wizard of Song

オフのレビューショウ。
オズの魔法使いの作曲家で数々の名曲を残した
ハロルド・アーレンの歌をひたすらきかせてくれる。
まあレビューショウなので何がどうというわけではないのだが
メインのトリオのハーモニーがあまり良くない。
歌もの作品なんだからもう少しクオリティーの高い物を期待していた。
ステージングもまあそれなりについてるんだけど
ちょっとお粗末な感じは否めない。
まあ観客はご高齢の方々ばかりで懐メロに浸って楽しんでいたから
それはそれでいいのかもしれない。


The Jammer

ローラーゲームを題材にしたオフのコメディー。
なかなかセットも面白くあえてチープに仕立てたセットが
ポップで観ていてたのしい。
話は至って簡単で特に心に残るようなものではないが
演出的にセットと有機的に処理されていることで
それぞれのシーンがとても面白く表現されている。
こういうアイディアで勝負する作品は趣味が合えば
かなり楽しめるからいい。
馬鹿馬鹿しい中身のないコメディーが結構好きである。
ローラーゲームには去年からちょっとゆかりがあるので
それもまた愛着が持てた要因かもしれない。
気軽に楽しめる作品。


Rigoletto

Metのオペラ。
お世話になっているマイケル・メイヤー氏の演出作品。
約5時間ラッシュに並んでチケットを手に入れた。
まあ暇な時期で良かった。
なかなか斬新というかミュージカル的な仕上がりであった。
舞台設定自体がオリジナルとは違うので
解釈もまったく変わってしまっているのだろう。
それはそれで面白い試みだと思う。
セットもマイケル氏らしい仕上がり。
彼の色がはっきり見て取れる。
ただここまで違うとオリジナル版も観てみたい。

それからオペラを観ると思うのだが
CDや映画館、映像などでオペラを鑑賞できるようになって
逆に劇場に行ってみるとなんだか物足りなくなってしまう。
電気で拡声された音圧に慣れているせいだろうか。
もしくは我々が買えるような後ろの席ではオペラの醍醐味を
味わえないということだろうか。
これはミュージカルにも言える事でCDを聴き込んで行くと
かなりがっかりすることがある。
ある種の弊害なのかもしれないが
リアルに体感できる物なのに再生可能なメディアのイメージに左右されるというには
なんだか本末転倒な気もして考えさせられる。


Avenue Q

この作品もCDはもっているけど観た事ないロングラン作品。
相変わらず後回しにしていたのだが観る物がなく観た。
自分の周りにもファンが多い作品なので
期待はしていたが
期待を裏切らない作品だった。
馬鹿馬鹿しくてくだらないけどあったかくて深い。
とてもよくできたコメディーミュージカルである。
現在はオフで上演されていてこの空気感がとてもいいと思ったのだが
オンで上演されていた時はどうだったのだろうかと勘ぐってしまう。 
あんまり大きい劇場には不向きな作品だと思う。
それにしても俳優の芸達者ぶりには感心する。
稽古をみたり俳優のアフタートークなどを聞いてみると
やはり稽古のノリが劇団チックなのである。
商業演劇的な時間と政治に縛られる稽古ではなく
クリエイティブでアイディアを出し合う環境を感じる。
こういう訓練を必要な作品が昨今は多くなって来た。
楽器の演奏、パペット操作などなど。
俳優がそれらを訓練して会得していくことを厭わない土壌が
日本にも欲しい物である。


The Service Road

ニューヨーク技術大学のアートプロジェクト公演。
パペットやら映像、ギミックメカなどなど
新しい技術と演劇のコラボ作品なのだが
なんだか俳優の技量が足らずにちょっと恥ずかしい感じ。
それぞれの技術はなかなか面白いが
ストーリー自体もなんだかじめじめとして暗く
俳優の技量もあいまってちょっとお粗末な仕上がり。
まあ大学の提携公演だからしかたないのかな。
でも色んな発見や驚きはあって楽しめる部分もあったかな。
こういう演劇とのコラボレーションは日本でもどんどん行って欲しいものである。


Fiorello!

この作品NYに来たばっかりの時に学生達の発表会を観に行って1幕で出て来た因縁の作品である。
今回はアンコール!というリヴァイバル団体の上演でコンサート的な上演。
出演している俳優達は一流なのでなかなか歌唱は素晴らしい。
オケも豪華なので聞き応えがあった。
まあ演出的にはどうこう言うようなプロダクションでもなかったが
それなりにきちんと成立はしていた。
今回は最後まで観たのだが
ピューリッツアー賞を獲得した作品にしてはいまいちストーリーとして締まりがないと感じる。
古いミュージカルだから仕方がないのかもしれないが
ご当地ヒーローのフィオレロ・ラガーディアが主人公であるということが評価に値したのだろう。
個人的にはもっとドラマを期待してしまうがコミカルな作品としては無難にまとまっている印象だ。
こっちにきてピューリッツアー受賞作やノミネート作を10本近く観たのだが
どれもが名作という感じでもない気がする。
単に英語力がなく言葉の美しさを評価できないからかもしれないが
立体化されたものを観る限り全てが全て評価に値するとは限らない気もして来た。
どんなに良い脚本でも演出いかんではやはり名作になり得ないのだろう。


All The Rage

スパマロットやキャバレーなどで活躍した俳優の一人芝居。
自分で脚本を書いて自分で演じている。
なかなか脚本が面白い。

怒りたくても怒れない。
怒りたくないのに怒ってしまう。
怒りを覚えるべきことなのに怒りが消えてしまう。

「怒り」にまつわる彼の実体験をうまく軽妙にまとめて解説してくれる。
児童虐待、人生の意味、義理の母親、チャドの虐待された難民
南アフリカの猿人、パンゲア、弟の死、などなど
色んな話が入り交じっていくなか彼の人間性が見て取れ
とても好感が持てた。
演出は別の人でこの演出がかなり洗練されていた。
無駄なく適度に飽きさせない。
普通はこれだけ一人で話まくるのだから聞いてるほうも途中で疲れてしまう。
こういう一人芝居はセンスが非常に大事である。
上品にいい塩梅でまとまっている作品だ。


All in The Timing

20年ぶりにリヴァイバルされたオムニバス作品集。
6本のショートプレイの連続上演作品。
演出が敬愛するジョン・ランドー。

とても面白かった。
久しぶりのヒット作である。
まず脚本が素晴らしい。
6本それぞれ本当に面白い。
馬鹿馬鹿しいコメディーなのだが
どこかペーソスを感じるいい加減なのだ。
目の付け所が本当にいい。

出会いからデートに至るまで
実験中のチンパンジー
偽原語教室
パン屋のラッパー
多次元世界
トロツキーの死

こんな脚本が書けたらなあと心から思う。
また演出も当然素晴らしい。
彼のコメディーは馬鹿馬鹿しくてくだらないのにどこか
暖かい。
この暖かさがとても愛らしくて心地よい。
本当に馬鹿みたいに客席は爆笑だが
どこかほっこりしたりほろりとさせられる。

今回は俳優も素晴らしかった。
「ピーターと星の守護団」に出ていたキャストが二人出演していて
彼らは抜群に上手い。
フック船長とテッドという友人役を演じていた二人なのだが
もう職人である。
こんなに技巧的に演じられる俳優が日本にいるのだろうか?
しかも彼らは「ピーター~」が終わって3日後にこの作品の初日を迎えている。
なかなか恐ろしスケジュールであるがしっかりこなしている。
いやあ感服である。
こっちに来て観たコメディーの中ではほぼNo.1の作品であった。
もっと品のない爆笑作品はたくさんあったが
このくらいの塩梅でここまで笑わせてくれる作品はなかなかなかった。
日本でも上演したいと心から思う作品だ。

さてそんなこんなで通算110本になりました。
記念すべき100本目の作品は ”My Name Is Asher Lev” でした。
5ヶ月ちょっとで110本なので年間200本ぐらいは行けるかなあ。

最近は脚本の翻訳にチャレンジしたい欲は出て来ました。
時間を見つけてトライしてみたいですね。

書類ももう少しで完成。
いい結果がでることを祈ります。
ではまたそのうち書きます。



































フロリダから

2013-01-19 21:11:39 | tiptap
訳あってなぜか今はフロリダのジャクソンビルという街にいます。
随分遅くなりましたがあけましておめでとうございます。

年末に更新したっきりすっかりほったらかしにしておりましたが
色々とばたばたしていて今日に至っております。

とりあえず年始は紆余曲折ありましたが
なんとかタイムズスクエアのカウントダウンに極寒の中参加し
肉眼で「ボールドロップ」を観る事が出来ました。
約10時間近く0度の中立ち尽くしていたのですが
度重なるセキュリティーチェックなる閉め出しをくらい
当初はかなりのベストポジションにいたはずが
結局は随分遠いところで0時を迎える事になってしまいました。

とても悔しい。

二度と挑戦することはないでしょうが
また挑戦できたらかなり上手に良い場所を陣取れる気がします。

さて諸々あって会社の出張でフロリダ半島の付け根に来ているのですが
久しぶりに時間ができたので観劇レポートを更新してみます。

早いものでこちらに来て約5ヶ月が過ぎようとしております。
1月はどちらかというとやや演劇シーンは控えめでオフシーズン。
ちょっと変わったコアなものばかりを観た感じです。


Mummenschanz

スイスのパントマイムカンパニー。
でもパントマイムというか言葉も音楽も一切無いアートスケッチ集という感じ。
特にストーリーがあるわけではなくただただ
欽ちゃんの仮装大賞的なアイディアありきのパフオーマンスがいくつも並ぶ。
基本的に意味不明でシュールすぎて面白い。
子供は大爆笑。
どうやらファミリーに人気の団体。
40年以上活動しているコンテンポラリーアート集団とのこと。
基本的に欲張りな性分なのでちょっと物足りなかったかな。
せっかく面白アイディアがいっぱいあるんだからもっと洗練させて
アーティスティックにできるはずなのに!
でもそうはしないこのシュールなダサさがいいのかも。
アナログな感じが好印象。


The Golden Land

ユダヤ民族団体主催のユダヤ人移民達のNYにまつわるストーリーを
コラージュ的にまとめてユダヤ民族音楽で綴るミュージカル。
作品の半分がユダヤ語で語られる。
さすがにユダヤ語はわからないが大半の観客がユダヤ人のためか
どことなく熱い感じは伝わって来る。
客席で当時を知るであろうおじいちゃんが隣の少年に
熱く語っていたのが印象深い。
内容はまあ可もなく不可もなく。
無難なかんじである。
ユダヤ人にとっては相当ぐっとくる内容なのだろうが
いかんせん日本人にはついて行きづらい。


Mikado

イギリスのオペレッタコンビギルバート・サリバンの作品を専門に上演するNYの劇団の公演。
タイトル通り日本を舞台にした作品なのだが
内容は荒唐無稽で当時の日本の間違ったイメージが見て取れて面白い。
この団体も40年以上続く団体らしくそれなりの劇場でそれなりに公演しているのだが
ちょっと演出が古臭く衣裳やセットもチープな香り満載。
コメディーオペレッタなだけにまあ許せるのだが
もうちょっとこだわってできたらいいのになあ。
ストーリは本当に脈絡なしの無茶苦茶な話なので
もう少し色んな意味で楽しめると良かったなあ。
間違った日本いじりはそれなりに滑稽で面白いけどね。



The Other Place

オンのストレート作品。
個人的には久しぶりにオンで満足できたストレート。
内容はNext to Normal のストレートプレイ版。
本もいいし演出も的確。
そして主演女優が素晴らしい。
演出はウィキッドのジョー・マンテロ。
2011年にオフで初演されて好評ののちオンに進出。
何が現実で何が虚構なのか。
意識と無意識、希望と現実。
現実と虚構が入り交じりながら核心へと迫って行く緊張感。
いかに人の心が複雑で且つ脆いものか。
自分が書きたいテーマにも通じる作品。
演出も洗練されていてとても明確でセンスを感じる。
このデリケートな題材を陰鬱にならずライトに
そして深淵に描けるのは感心させられる。
濃密な90分。


Big Apple Circus

題名の通り芝居ではなくサーカスです。
いわゆる古き良きアメリカのサーカス。
別に象とかライオンとかが出て来る訳じゃなく
曲芸や空中ブランコとかかなり控えめだけど
あったかい感じ。
家族連れが沢山きていてなんだか映画のワンシーンのよう。
ちょっと小さめのテントでステージにも近くてアットホーム。
今ではNYの冬の風物詩的なイベントらしい。
こちらも40年以上続くローカルサーカスらしく
ファンがしっかりいるみたい。
外連味はないけどほっこりする素敵な時間でした。


The Great God Pan

こちらはオフで好評のストレート作品。
この作品は記憶に焦点をあてていかに人間の記憶があいまいで
自分の信じている記憶もしくは事実が崩れさって行く恐ろしさを描いている。
幼い頃の思い出せない記憶、鮮明に覚えている記憶。
何が正しいのかなぜ思い出せないのか
家族や知人に触れ少しずつ明らかになっていく自分の過去と
どう向き合って行くのか。
隠された消し去った過去が今の自分に無意識的に影響を与えている現実。
小さい空間のなかで森の奥深くにしまい込んだ記憶のように
組合わさったパズル状の壁が次々と抽象的に解きほぐされシーンを紡ぎ出して行く。
なかなか深い作品。
児童虐待を題材にしながらその生々しさにはあえて触れず
追い込まれて行く主人公と周りのほころびが不安をかき立てて行く。
最後までパズルは解けないがパズルと向き合うことで
自分の人生に向き合う事になる。
なかなか面白いがもう少し鋭くえぐってくれてもらったほうが
個人的には好みだなあ。


The Fig Leaves Are Falling

かなり昔のミュージカルのリバイバル?作品。
初演時は開いてすぐにクローズしてしまったらしいが
コメディーミュージカルとしてはなかなか評価も高い作品らしい。
今回はそんな作品を無理矢理1幕ものにしてストーリーを大幅に変えての上演。
リバイヴァルとは呼べないかもしれない。
まあ話はいたって単純で不倫して結局奥さんの元に戻るってはなし。
キャストもプリンシパルはそれなりの実力。
でもキャスティングがねえ。
これだけ肌の色が物を言う社会でしかも60年代の夫婦という設定で
違う肌の色の夫婦は一般的ではないでしょう。
それからスイング系のダンスがひたすら歌の度に踊られるんだけど
アンサンブル的なダンサー四人のレベルが・・・
踊れないなら振りを考えてあげて欲しい。
特に新しさもなく古臭いだけの作品となってしまった。
この仕上がりなら上演する意味は感じられないなあ。


50Shade the Musical!

「50Shades of Gray」というハリーポッターよりも売れた世界的官能小説のパロディーミュージカル。
むちゃくちゃ面白かった。
いやあ別に原作を読んでいなくてとりあえずあらすじなんぞを調べて観ただけだが
実際に読んで行っていたら終止笑いもだえていたに違いない。
グラスゴーの演劇フェスティバルで賞をとった作品で
NYではたったの3回しか上演せず巡業中の作品だとか。
くだらなさ満載で官能小説が元のくせに下ねたのさじ加減もなかなかちょうどいい。
下品になりすぎずひかない程度のこの塩梅。
久しぶりに面白いミュージカルを観れた。
高いチケット代を払った甲斐があった。
とにかくキャスティングが秀逸。
そしてキャストも自分のキャラクターを存分に活かせている。
このくだらなさはとても好み。
機会があれば原作も読んでみたくなってしまう。
パロディーはやっぱり面白いなあ。


Kiki & Grandpa & Baby

この作品は日本でもテレビで取り上げられているらしいのだが
日本人の作・演出家の方がオフオフで上演しているミュージカル?作品。
詳しくは書きませんが1幕で出て来ました。
こういう作品が日本を代表している風にこちらで謳われることは
かなり残念な事だと思います。
自分の作品をNYで上演できることはとても素晴らしいことだし
同じ日本人として応援したいところですが
このクオリティーの作品はちょっと辛い。
人の作品のことをとやかく言える身分ではないかもしれませんが
日本をしょって上演するならきちんとやって欲しい。


Radiohole:Inflatable Frankenstein

前衛的なパフォーマンス劇団の
フランケンシュタインをモチーフにしたパフォーマンスショー。
基本的にあまりにも極端なアートには馴染めない性格のためか
ちょっとついて行けなかった。
一つ一つのシークエンスのアイディアや表現方法は
なかなか面白かったりセンスを感じたりもできるのだが
一つ一つの見せ場が延々長くて飽きてしまう。
言葉がわかればまだついて行けたのかもしれないが
マイクに向かって囁いたり叫んだりとちょっと耳も
物理的に受入れがたい感じ。
もっとシャープにタイトにまとめてくれたら
良かったのにと思いますがきっとこのアートな感覚に
馴染めない自分が駄目なのでしょう。


Chicago

言わずと知れたミュージカルのシカゴ。
お恥ずかしながらロングラン物は後回しにする癖のせいで
実は今回が初めて。
映画は見てたので映画のイメージが強すぎたせいか
ちょっと物足りなかった。
全体的にフォッシー風の振り付けは躍動感があって好みなのだが
フォッシー本人が踊ったらどうなるんだ?
という夢想ばかりが浮かんでしまった。
どうやらキャストもロングランのためか
なんだかまったりとしていてしまりがない。
もはや旬の作品ではないので仕方が無いが
きっともっと本来は研ぎすまされた時間だったのだろう。
全体的にちょっと長さを感じてしまった。
もう少しセットに工夫を施しても良い気がする。
スタイリッシュではあるがちょっと時代を感じる。
とは言えずっとジョン・ランドー作品で注目していた
女優がロキシーだったのでまあ満足。
wedding, toxic avenger, rock of ages などなど
好きな作品にばかり出てる人なんで頑張っててくれてよかった。


Water by the Spoonful

2012年度のピューリッツアー賞受賞作品。
NYではオフブロードウェイでの上演。
イラクの退役軍人を主人公にした三部作うちの最後の一作。
In the Heightsの脚本家の作品。
基本的にプエルトリコ訛のためかなり聞き取りづらかった。
本はまあまたこれから読むのだが
ピューリッツアー賞を受賞した作品にしてはちょっと薄いという印象。
退役軍人と薬物依存、家族の絆などがテーマなのだが
まあそこまで目新しいテーマでもなく
それにちょっとチャットシーンを取り入れて今風にした感じ。
演出は更にあまりセンスを感じない。
まあ普通というよりやや悪目立ち感すらある。
新しさと言えばイラクの退役軍人ということぐらいだろうか。
あとはしいていえばこの作品には日本人が登場する。
北海道生まれのアメリカ育ちの日本人で国籍はアメリカ人。
コミカルなタッチではあるがまあアメリカの今を切り取ったという
感じが評価されたのだろうか。いまいち高評価の意図がつかめなかった。
もっとエッジの利いた作品をイメージしていただけに物足りなかった。
とは言えこの出来上がりは演出の善し悪しもある気がする。


Picnic

こちらは50年以上昔にピューリッツアー賞をとった作品。
以前学校の課題でワンシーン演出した事があり
オンでのリバイヴァルとのことで楽しみにしていたのだが
劇評はすこぶる悪かった。
まあ可もなく不可もなくこの作品の持ち味は損なっていない気がした。
ただいかんせん50年以上も昔の作品なので
なぜ今再演なのかという上演意義を見いだせる仕上がりではない。
特に斬新でもなく教科書通りな感じは否めない。
本来本の持っている味わい深さはまだ活きていることが救いだ。
セットはしっかり立て込まれて南部の田舎町の古き良き休日が伺えて
とても雰囲気はいい。
名画座で旧作を観る気持ちで観れば充分満足できる。
ただオンの新作としては劇評通りの出来なのかもしれない。


Not By Bread Alone

イスラエルの盲や聾を患う人たちによる劇団の公演。
出演者は耳が聞こえなかったり目が見えなかったりどちらも不自由だったりと
それぞれの度合いは違えど一生懸命に舞台で表現している姿には感心する。
ただそれだけを見せ物ににするような仕上がりであることがなんとも歯がゆかった。
出演している彼らを責めているわけではなく
これだけ彼らが頑張って何かを成し遂げようとしているのだから
クリエイティブスタッフ達にはもっとそれをいかに表現として昇華させられるかに
神経を注いで欲しいものである。
このような活動の意義は十二分に有り認めないわけはない。
活動自体はとても素晴らしいと思う。
ただそれを見せ物にするか表現にするかそこには大きな差がある気がする。
なぜか彼らの一生懸命な姿を見れば見るほど悔しい気持ちになってしまった。
彼らにとってはきっと表現できる事が幸せであることは間違いない。
こんなことを思うのも自分のエゴなのかもしれないがもっと彼らには可能性を感じてしまう。



Freedom of the City

北アイルランドの公民権運動の最中に起きた
ブラッディーサンデー事件をモデルにした
架空の事件によって殺害されたデモに参加した3人の民間人の話。
個人的にはアイルランドにはとても思い入れがあるので
かなり涙を覚悟して観劇にのぞんだのだが
思ったよりもえぐられなかった。
罪のない3人の民間人が殺害されたいきさつ
それによる裁判、人権問題、宗教対立など様々な影響が
複合的にみえてくる作品。
結論としてこの本が書かれた1973年当時はまだ
イギリスによって不当な裁判が行われ犠牲になった多くの民間人達への
公式な謝罪は行われなかった。
その当時の状況をシニカルに表現したという点ではとても辛辣である。
ドラマとしての起伏ではなく淡々と理不尽な現実を突きつけていくことが
この作品のモチーフのようなきがした。
小さな劇場で工夫されたセット、まとまった演出はなかなか。
なぜかいつもアイルランドの作品には心が惹かれてしまう。


Midsummer[a play with songs]

エディンバラのフリンジで賞をとった音楽劇。
劇評では詰め込み過ぎとのご指摘でそこまで良い評価ではなかったのだが
詰め込み好きとしては気になって観に行った。
当然エディンバラの劇団なので訛はきつい。
ずーと喋りっぱなしでたまに歌う2人劇なのだが
とにかくテンポがとてもいい。
脚本もとても子気味よく次から次へと展開していき
物語としては単純なボーイミーツガール物のラブロマンスコメディなのだが
次の展開を予測する前に進んでしまうので飽きる事はない。
さらにこれでもかという程全てを台詞でわざと説明する手法が
なかなかはまっていた。
小道具をふんだんに使ってベッドと壁と木箱だけのセットを一連のシーンに
みせて行くのはなかなか面白い。
挿入される歌も俳優達自らギターを弾きなかなか味わい深い。
緩急がとてもよくついたよくできた作品という印象だ。
このノンストップな二人芝居、当然俳優の力量が物を言う。
こういう子気味よくかつ魅力的でコミカルで内面が
垣間見せられる俳優達に感心する。
この作品も日本人がでてくる。
名前は「Kazuo」どうやら亀甲縛りの専門家らしい。
劇中主人公の男が「Kazuo?」「Kazuo?」「Kazu~o?」「Kazu~o!」
と連呼するシーンがありかなり面白かった。
イギリスの作品らしい綿密に作り込まれた感じが心地よかった。



とりあえず今年は今の所こんな感じで16本。芝居じゃないのもはいってますが
まあこんな感じです。ということで現状96本。
あと4本で100本達成!

100本目はなんでしょう。

とは言えここ2週間あまりは書類を作る作業がかなり必要でしてなかなか忙しそう。
2月に入ると少しずつ大型ミュージカルも開き始めるので楽しみです。

最後になりましたが今年もどうぞ宜しくお願いします!

今年も終わり。

2012-12-30 22:52:12 | tiptap
今年は激動の一年でした。

踊る吸血鬼の大阪公演
CDML2月本公演
アメリカの巨大電力会社のお芝居
オーストリアの皇太子のミュージカル
CDML8月公演

それからNY。

仕事としてきちんと演出助手をしたのも初めて。
完璧な一人暮らしも初めて。
NYでの生活も初めて。

とにかく初めてづくしの一年。
これからの人生の転換期であることは確かです。
とりあえず自分の道を選んでがむしゃらにできることをやった一年。
色んな人に沢山支えられて今年も精一杯頑張れた気がします。
そんなこんなで明日は大晦日。

NY名物ボールドロップを肉眼で観るべく
12時間の極寒立ちっぱなしに参加予定。
耐えられるかな。

さてイベント尽くしで書きそこねてましたが
学校もなくなったのでかなり観れました。
Close寸前のものもあって再見ものもたくさんありますが
一応書き記しておきます。


A Civil War Christmas
本当に感動した。アメリカ人に親しまれているクリスマスソキャロル(歌)をモチーフに
南北戦争時のクリスマスイブを描く群像音楽劇。演出も音楽のアレンジも脚本も本当に好きな感じ。
OnceとPeter~を足したような感じ。
リンカーンと妻、黒人兵と少年兵、などなどとにかくその当時の人々のささやかな
エピソードの積み重ねでしかないんだけど
あったかい気持ちになる良い作品でした。
楽器を演奏する俳優、ムーブメントでシーンを形作る俳優。
本当に観ていて飽きない。
終演後にトークショーまでついててよかった。
さすがNYTWという感じの作品でした。


13 Things About ED Carpolotti
おばあちゃんの一人ミュージカル。
本当にこんな年(70近い)になって一人で80分歌えるなんて。
それでけで感動してしまいます。
ストーリーもあったかくて良い話。
夫に先立たれた老婆に舞い込む夫が残した借金と秘密。
それがあたたかい夫の愛の証としてわかるラストはとても
しんみりします。


Radio City Christmas Spectacular
この時期の風物詩的なレビューショウ。
ラジオシティー・ホールのロケッツのショウなんだけど
まあ想像通りです。
なぜか途中で3D映画もあって一応工夫は沢山されてるんだけど
一回でいいかなあ。
でも一応今年で85年目だそうな。
それはそれで凄いなあ。


Annie
日本でもおなじみの子供ミュージカル。
まあよくできてました。まとまってる感じ。
以外にアニーが大きいのでびっくり。
セットも楽しめる工夫がされてていいんだけど
ちょっと全体的に物足りないなあ。
なぜ今これを上演するのかとい不思議。
やっぱりちょっと古い。


ELF
日本でもウィル・フェレル主演の映画がビデオのみ観れますが
季節もののコメディーとしてはなかなか面白い作品。
これも子供向けというかファミリーミュージカルなんだけど
やや毒もあり大人も楽しめるのかな。
好みとしてはもうちょっときつめのテイストで仕上げて欲しかったかな。
エルフとサンタに育てれた人間が成長してNYで騒動を起こす話なんだけど
まあハートウォーミングな感じで心はあったまる。
作品としてはそれで成功なんだと思う。
「隣のサインフェルド」という「フレンズ」並にヒットしたコメディードラマに
出ていたはげデブおじさんがサンタさんでした。
それだけでも個人的には嬉しかったからいいかな。


Murder Ballad
これは2回目。一応千秋楽を観劇。
相変わらず密度の濃い時間でした。
今回は全体が見渡せる席だったので演出的な意図がしっかり観れてよかった。
なかなか上手に空間を使っていて明かりのあて方もこだわりを感じた。
何気ないシーンでも計算された位置に立っているのはやはり美しい。
基本的にモチベーションと美しい絵の整合性をつけていくのが演出家の仕事。
よく演出された作品だと改めて感心。
俳優の熱も相変わらず高くてよかった。


The Phantom of the Opera
たまたま時間ができたので立ち見。
しかも二幕の途中で劇場を出なければだったので中途半端な感じ。
セットや演出はもう定番ものなんであれですが
久しぶりに聴いたらやっぱり音楽は凄いなあ。
この頃は本当にロイドウェバーは天才だったんだな。
新作はもうなんだかなあって感じだけど残したものは凄い。


Flipside The Patti Page Story
パティー・ペイジという国民的歌手のジューク・ボックスミュージカル。
日本ではテネシー・ワルツが有名。
今も存命の方で現役の歌手だそうです。
そこまで彼女の人生が波瀾万丈じゃなかったもんで
ドラマが希薄でした。
一応プライベートの自分とパティーページの乖離を描くんだけど
そこまでそれに伴う悲劇もおきないもんだからドラマとしては
何もおきない。
まあ観客はみんな知ってる曲だし楽しめるみたい。
ジューク・ボックスミュージカルは難しい。


Chaplin
こっちに来たその日に観て爆睡した作品。
今回はきちんと観れました。
コンセプトはすばらしい。白と黒を基調にしてセットも衣裳もメイクも全てが
様式として整っている。振りも映画を切り取ったように面白い。
スリリングな曲芸に近い各シーンの見せ場はなかなか見応えが有る。
エンターテイメントとしてはばっちり。
でも批評がかなり悪かった。
多分原因はストーリーと構成。
2幕で国外追放をされるあたりから唐突にドラマチックになって
感動できるシーンになるんだけどそこに至までがただの
見せ物の羅列になってしまいあまりドラマが生まれない。
さらに幼いチャップリンと母の悲惨な別れによる情景を繰り返し
みせるのだが最終的になにも消化されないのももったいない。
全体的にチャップリンを美化しすぎて毒気が足りなかった。
本当にやってることは面白くて凄いことなのにおしいなあ。


The Mystery of Edwin Drood
観客参加型ミュージカル。
ディケンズの未完の遺作「エドウィン・ドルードの謎」を上演する劇団が
観客に結末を決めてもらう為に作品を紹介しながら見せていいく。
最終的にはエドウィンという青年を殺した犯人を候補者の中から観客が挙手で選ぶ。
実際に人を数えて統計をとっているらしく選ばれた犯人が誰かはストーリーが進むまでわからない。
なかなか面白い趣向である。犯人、探偵、カップルなど色々と選ぶ要素があり組み合わせは
200通り以上もある。よく考えられた作品。
基本はコメディーなので真剣にみないで楽しむことだけ考えれば充分面白い。
リバイバル作品ではあるが古さはあんまり感じない。
アイディアと構成力のおかげで成り立つ作品。
トニー賞を5部門獲得だけのことはある。


Once
これも二回目。
何度観てもいい。
毎回同じ所で涙してしまう。
今回も主演女優はアンダー。
それでも充分よかった。
この繊細な空気はなかなか味わえない。
今回は休憩中に舞台上のバーで水を買った。


Fuerza Bruta
クラブみたいなのりのアートショウ。
とりあえず何でもあり。
ベルトコンベアーの上をひたすら走る男。
鉄枠の上でひたすら紙をまき散らして踊る男女。
宙づりで垂直にカーテンの上を追いかけっこする女。
アクリル板の上に水を溜めてそこでひたすら
水に飛び込む女の子達をただ下から観るとか。
アイディアも実行力も実に素晴らしいんだけど
別に中身はないのでただただ楽しむことに徹することが大事。
ひたすら大音量でダンスナンバーがかかってるので
それにあわせて踊ってられるような人におすすめ。
因に客席はありません。つねに立ちです。


Newsies
これも2回目。
若者達の踊りに凄いなあと感心するだけ。
やっぱりセットが好きになれなかったなあ。
踊りはいいんだけどねえ。
あとトニーの作曲賞をとったというのもなんとも解せない。
耳には残るんだけど決して名曲揃いではないんだけどなあ。


Peter and The Starcatcher
2度目。
やっぱり二回みると言葉のキャッチもあがってるから更に楽しめる。
これは本当に面白い作品。
何度観ても楽しめる。
原作を一度読んでおけば話もだいたいわかるからおすすめなんですが
1月の半ばで終わってしまうのが残念。
また観たいなあ。


A Christmas Story
またまた2回目。
なんと今回は主役子供がアンダーだった。
でもカーテンコールが終わるや否や下りる緞帳の向こうでみんなが彼に集まって讃えている様子。
どうやらこの回がデビューだったのかな。
どうりでコール中に感極まって涙してたのか。
とてものびのびとやっててよかった。
プレビューしか観てなかったので細かいところがいくつか変わっていてよかった。
やはり彼の演出は好きだ。
心があったまってかつゲラゲラ笑える。
まだ若手の作曲家コンビもなかなかいい曲を書く。
映画も24時間クリスマス前日に放送されていたしなんだか
かなり気に入ってしまった。


Holiday Guys
ブロードウェイで活躍する俳優のライブ的オフミュージカル。
クリスマスとユダヤの祭事ハヌカーを巡るクリスマスソング合戦。
なかなか面白かった。なにより開演早々最初のナンバーで
ギターの弦が無惨にも切れてしまうハプニング。
仕切り直すことになってしまいぐだぐだな感じもアットホームすぎて応援したくなる。
歌も踊りもさすがに上手くなかなか上質なライブであった。


Forbidden Broadway
昔は毎年新作が作られていたその年に上演されている
ブロードウェイミュージカルのパロディーショー。
最近はちょっと間が空いていたようだが
今年のあたまにあいたバージョンを観劇。
半分ぐらいのネタはわかった。
後半分はたぶん見れてない作品なんだろう。
とても面白かった。
まわりの客が信じられないくらい笑うもんだから
きっとどの作品もみたんだなあと。
こういう作品日本でも作って欲しいなあ。
観た人にしかわからない感って本当に面白い。
Onceのネタは本当に面白かった。


Cat On A Hot Tin Roof
スカーレット・ヨハンソン主演の
「熱いトタン屋根の猫」
残念ながらスカーレットの声がかれていた。
ベストコンディションで観たかったなあ。
まだプレビュー中だからまあこんなもんかな。
セットは綺麗だし芝居の質も悪くないんだけど
ちょっと芝居の繊細さや密度にかける。
声がかれていたせいもあり細やかなコントロールができないせいかもしれない。
豪華なプロダクションには違いないのだが
ちょっとまだ仕上がっていない感じである。
またオープンしてから観に行くべきかな。


今回はこんな感じです。

通算80本。

一月に20本ぐらいは観れた事になりますかね。
この調子でいけば年間200本ぐらいはいけるかなあ。
今年はどちらかと言えば不作らしいので
ちょっと寂しいですが
それでも十分日本では味わえないものを味わっています。
自分の糧にすべく来年からは更に積極的に活動しなくては。

まずは明日のカウントダウン。

生きて帰って来れるかなあ。
今年お世話になった方々、協力して頂いた方々全ての
幸せと感謝の念を込めてタイムズスクエアに向かいます。
どうやら初詣は夏までお預けみたいですが
素敵な新年を祈っております。

どうぞ来年も宜しくお願いします!



書き始め

2012-12-09 23:51:24 | tiptap
どこを見回してもクリスマスになってきました。
普通の家もちらほらイルミネーションの飾り付けがされていて
ただ街中を歩くだけでもわくわくしてきます。

なんとかここ半年あまり書いていた脚本が一段落して
気分転換に新しいものを書き始めようかと思っています。
とは言え書き始めるとまたその作品のことが始終頭のとこかにいることになり
結構それはそれで色々と思考が制約されるものです。
なのでちょっと書き出すってのは勇気がいります。
もうしばらくお休みして情報収集の日々にするかなあ。
そんなこんなでちょっとパソコンに向かわないようにしてたもので
ブログもちょいと書き損なってました。


さて二週間あまり書いてなかったので

今回は12本。


Who's Afraid Of Virginia Woolf

「ヴァージニアウルフなんか怖くない」って邦題で日本でも上演されてるし
エリザベス・テーラーの代表作品として有名な作品です。
初演の主演女優が一応今通ってる学校の創立者である
ウタ・ハーゲンということもありなんとなく縁のある作品。
アメリカの演劇史を変えたと言われるこの作品。
確かに言葉の応酬とキャラクターの濃さは凄まじい。
ひたすら夫婦喧嘩が続くんだけどそこに見え隠れする
愛と哀愁、人生への絶望、妥協。
エドワード・オルビーは
実際にウタ・ハーゲンと旦那のハーバート・バーコフ夫婦を
モデルにして書いたらしくなかなか興味深い。
何不自由ない人生のはずなのに満たされない現実。
不自由だらけの今は染みてこないけどこれが
ある程度年齢を重ねて人生を俯瞰して見れるようになった時・・・
またそんな年齢になってみたい作品です。
とてもいい仕上がりでした。


The Old Man And The Old Moon

ずっと観ようと思ってて観れなかった作品。
簡単に言うと「Peter and the Starcatcher」の学生演劇のり版。
歌あり笑いあり涙ありの音楽劇。
カーネギー・メロンという名門大学の演劇科のクラスメイトで作った劇団。
とは言え既に受賞歴もありこれから注目の劇団。
まだまだ若い俳優達なんで芝居自体はちょっと荒いし押しが強いんだけど
細かいとこまでこだわりが見えてとても楽しかった。
この作品も俳優全員が楽器を演奏する。
最近この手の作品が多いんだけどアコースティックな曲調で
どこか懐かしい民族的な感じのする音楽なのでなんだかあったかい気持ちになります。
何と言っても影絵を多様した演出でそれがなんともコミカルで和む。
俳優達の仲間感が半端なくて自分の学生時代を思い出して胸が熱くなりました。
こういう環境で関係で作品を作り続けられることは羨ましい。
学生時代に思い描いた理想的な形です。
今となっては現実的に難しいことだと思いますが
彼らには頑張って欲しいなあ。


Alvin Ailey

アメリカのダンス界を引っ張って来たアルヴィン・エイリーのパフォーマンス。
黒人的感性とバレエの融合を目指したアルヴィン氏の代表的作品から
まさに今のコンテンポラリーな物までを網羅した内容。
何よりも驚いたのは観客の盛り上がり。
ダンスパフォーマンスでここまで盛り上がるんだなあ。
NewYorkにとても根付いてるんです。
毎年恒例のショーなんだけどこれを楽しみにしてる観客がやって来るわけで
こういう浸透の仕方って素敵だなあと思います。
確かにとってもよかったです。
学割で本当に後ろの方だったから観づらかったのですが
充分楽しめました。彼らの身体能力といったら恐ろしい。
日本人の方が芸術監督をしているというのもびっくり。
なんだか嬉しいです。


Old Jews Telling Jokes

インターネットのジョーク投稿サイトを元にしたコメディー音楽劇。
ユダヤ人のあるあるネタが満載。
始めっから終わりまで客席は笑いっぱなしでした。
言葉が聞き取れれば本当に面白いんだろうなあと。
とは言え良く演出されていて多少聞き取れなくても充分面白い。
ユダヤ人ってどこか被害者ですって訴えているイメージがあるし
実際イスラエルで起きてる事なんか考えるとなんだか印象が悪いんですが
こうやって自虐的に面白おかしく自分たちのことを語ってくれるといいです。
まあこうやってシニカルな目線を持ってる人たちはラディカルに
世界情勢のことも考えてるんだと思いますが
なぜか観てる間にそんなことを考えてしまいました。
ちょうどガザの入植が発表された日だったもんで。
こんなコミカルなユダヤ人ばかりだったら世界はもっと平和なんだろうなあ。
ユダヤ人に限らずみんなそうですけどね。



The Nutcracker Mouse King

バレエで有名な「くるみ割り人形」のミュージカル化作品。
いやいや本当に失敗しました。
もっと調べていけばよかった。
それなりの劇場でやってるもんだから内容だけ調べて行ったら
なんだか児童劇団の発表会みたいな作品でした。
でもしっかりお金をとって上演してるわけでこれは本当に残念。
ひどかったなあ。
一応3週間ぐらいの上演期間があるしこんなもんでも
上演できるんだなあとびっくりです。
作品だけじゃなくて団体も調べて行かないと駄目ですね。
オフ作品はClose寸前にしか劇評が出なかったりするもんだから
失敗んの確率も高い。2時間近くあったし。疲れました。


Inner Voice

あとから知ったんですがこの作品結構注目度のある作品で
リンカンセンターの映像資料コーナーにも過去作品が収録されとりました。
オムニバスの一人ミュージカル三作品。
一曲30分程で延々一人の人が物語を歌っていきます。
実力派の俳優と注目の作曲家、脚本家、演出家のコラボレーションが
それぞれ三つ観れるわけでなかなか面白かった。
本当にこの空気感にはびっくり。

遭難死した兄について

アメリカ兵の未亡人について

アフガンで男の子として育てられた女の子について

それぞれの話に引き込まれ涙がこぼれます。
とても密度の高い作品達でした。
俳優も上手いし音楽がいい。
こういう実験的な試みができるのもいいなあ。
いわゆるワークショップの発表的な感じなんだけど
しっかり完成してるから見応え充分。
こういうのいつかやりたいなあ。


Jersey Boys

なんだかロングランには足が遠のいてしまうのですが
観たい物が観れなかったりするとふらっと行けるのがNYの素晴らしさ。
トニー賞獲得作品ですからきちんとしてます。
学割だから本当にオーケストラの一番後ろの席で
ステージの上半分がメザニンで切れてしまい観にくかったのですが
まあ値段的にしかたないかなあ。
どうせ後ろならメザニンの後ろのほうが嬉しいんですけどね。
もっと彼らの曲を知ってたら楽しめたんだろうなあ。
かなりコメディー色が強いので言葉がもっとわかればと思いながら。
僕だけかもしれませんが席が遠いとかなり聞き落としてしまいます。
多分子音を聞き取れないんだと思うんですが近い方が楽なんですよね。
話自体は結構簡単です。とは言えなぜこの作品がトニー賞受賞作品なのか
いまいちぴんときませんでした。
まあそれなりにしっかりしてて無駄もなく演出もまとまってるんだけど
そこまで素晴らしい感もなかった。この年が不作だったのかと調べてみると
ウェディング・シンガーがノミネートされてた。個人的にはウェディングの方が好きです。
まあ楽しい良い作品ですけど年齢的なものかな。


The Piano Lesson
ピューリッツアー賞受賞作品のリヴァイバル。
まだ黒人差別が激しい時代を舞台にある南部の黒人家庭の
家宝のピアノにまつわる話。本も芝居もなかなかよくて何より
セットが素晴らしい。なんとも丁寧に写実的に家を再現していて
家の床下から天井裏まですべてが見て取れる。
ここまで具体的に作れると芝居を作るのが楽だろうなあ。
なんとこの作品ただで観れました。
人気作品で売り切れだったのでキャンセル待ちでロビーで時間をつぶしていると
アッシャーをやりませんか?と声をかけられ
ただで観れるならと軽く引き受けた次第。
「アッシャー」というのはいわゆる客席係です。
こっちではそれなりのプロダクションになるとplaybillという決まった形の
プログラム的なものを客席で配るのですがそのplaybillを配って客席に案内する人を
「アッシャー」といいます。オンの劇場だと大体制服を来た熟練さんがいるもんですが
確かにオフだとボランティア臭が漂っていることがあります。
こうやってただで見たい人が志願してやってることもあるとはきいてましたが
まさか自分がやるとはね。
まあこれも良い経験でした。
作品は家族の歴史と信仰心と人種差別がテーマ。
こっちの演劇にはかかせないテーマです。
こういう作品を通して少しずつ認識が深まる事もいいもんです。


Working

これもリヴァイバル作品。
ニューヨークで働く人々への仕事についてのインタビューをまとめた本のミュージカル化作品。
作曲と脚本にはウィキッドの作曲家ステファン・シュワルツがクレジットされてます。
これはなかなかよかった。キャストがやや物足りないが内容がとてもいい。
モノローグとナンバーのバランスもいいしそれぞれのエピソードが現在版として改変されていて
2012年版としてきちんと作りなおしてある。
6人のキャストで40人近くのキャラクターを演じ分けながら
それぞれの仕事に対する価値観や悩み、希望、夢、現実、妥協などを語る。
特に一貫したストーリーやキャラクターがあるわけではないけど
よく構成されて見応えのある作品です。
こういう現実を切り取った作品は説得力があっていい。
働く事に何を見るかそれは人それぞれだけど
そこに人生が見えて来るのはなんとも心に染みる。
一貫した物語がなくてもそこに実際にキャラクターの人生を感じられれば
それはそれで心を動かされる物である。



Golden Boy

これは二回目。
プレビュー初日に観てからオープンでどう変わったのか?
劇評はかなり好評で嬉しい限り。
うん。
結構変わってました。細かなミザン、追加のセット、転換の上達などなど。
なかなかよくまとまってます。
劇評がいいのも頷ける。
席が一番前だった事も有り
かなり俳優の心情が細やかに感じられてよかった。
まあなんといっても俳優がうまいなあ。
ほんとうにほどよいんです。押しすぎず抜きすぎずいい塩梅なんです。
この作品自体はもはや古典なわけですが
古臭く感じないのは俳優達の体感がとても明確にテンポよくまったりしない。
にも関わらず雑にもならない。
演出のさじ加減がちょうどいいんだと思います。
ピアノレッスンも似たような時代ものなんですがやや押し過ぎ感があったんです。
こういう細かいけどやや抑えて観客に科白を感じさせながらもだれさせない感じ。
良いと思います。前も書きましたがセットが綺麗です。
転換がもっと簡単になればなあなんて思いますが気になるのはそれくらい。
結果的には悲劇で悲しい報われない物語なんですが
登場人物達の人間臭さがいい。
こういう重厚な作品が日本でも上演されることを願います。



BumBug the Musical

インド版クリスマスキャロル(レント風)ミュージカル。
結構面白かった。
隣ではまだあの「くるみ割り人形」ミュージカルやってましたが
同じ劇場でもこんなにクオリティーが違うってのも不思議です。
音楽がかなり好みでした。
レントチックな軽いロック・ポップサウンドにたまにインド音楽が混ざって来る。
客席もインド系の方が多くてインドネタで大爆笑。
NYでデリを経営して暮らすインド移民を主人公にインド系だけどNY生まれのアメリカ人との恋を描く。
クリスマスキャロルと同じでサンタの代わりに黒人のエンジェルなるキャラクターが
主人公と二人をくっつけようと色々とみせるって感じで進む作品。
俳優達はそこまで上手じゃないんですがまあそれなりに歌えて笑いも取ってた。
中身自体はそこまで感動できるわけじゃないけどあったかくはなる作品でした。
移民ものの作品が多いのもNYの演劇の特徴です。
それぞれの国ごとにコミュニティーのある街ですから色んな文化がそのまま根付いてます。
彼らにしかわからないことが沢山あるだろうし
その苦労や葛藤がこうして作品になるってのも面白い。
こういう作品は彼らにしか書けないしNYで上演する意義がある。
それをNYで観るってのはやっぱりいいことだなあ。


Starting Here Starting Now

これもオフのリヴァイバルミュージカル。
35年以上も前の作品なんですが特別にオリジナルキャストでの上演。
一応グラミーをとった作品だそうです。
前に観た「Closer Than Ever」の作詞・作曲コンビのブックレスミュージカル。
恋愛にまつわる悲喜こもごもをひたすら歌に載せてコミカルに時に切なくみせて行く。
もうキャストの年齢が凄い事になってるんで
なんだかちょっと心配になっちゃうんだけど
本当に3人で歌って踊っちゃうんだから凄いなあ。
確実に50オーバーの方々が休憩入れて約2時間半歌いっぱなしですからね。
客席もかなりの年齢層。
特別公演なもんで2回しかなかったから客席は満席。
みんな懐かしく観てたんでしょうね。
音楽はとうぜんいいです。
まあちょっと歌唱はご愛嬌な感じもありますので
贅沢はいえません。全盛期の彼らできいてみたくなりました。
これもやや席が遠くてマイクなしだったのでちょっと歌詞が聞き取れずに辛かった。
もっと言葉を磨きたいですね。



最近思う事が意味は仮にわかっても例えばそれが歌だとしたら
素敵にはまっているのかどうかの判断はできない。
日本語だとメロディーにのっかた歌詞のはまりが
ダサいなあとか滑稽だなあとか思ったりするんだけど
英語だとそこらへんの判断まではできないので
作品の評価としてそのへんのことは欠けてしまう。
台詞も同様で内容はわかっても
言葉としての美しさや逆に陳腐さがわからない。
あえてのダサさは客席の反応も伴うのでわかるもんだが
実際の善し悪しの感覚が英語力のない私には全くわからないのが残念だ。
変な話日本語で「愛してる」と連呼する曲があると相当恥ずかしかったりするが
やはり英語でも同じ恥ずかしさを感じるのだろうか?
どうやらそうでも無い気がする。
例えば「金」「金」「金」と連呼したらコミックソングであるが
「money」「money」「money」だとなんだかありな気がする。
日本語の曲のサビにはあまり言葉の繰り返しがみられないのは
そういう何かしらの気恥ずかしさを感じてしまうからだと思う。
「愛」「愛」「愛」だと恥ずかしすぎて歌にはならないけど
「Love」「love」「Love」だと名曲になる。

そういった意味でも一つ仮説が立てられるのだが
そもそも英語はリズムにあっていればある程度はまってしまう言葉なのかもしれない。
英語自体文章にそもそも決まったリズムがある。
日本語はリズムよりも音程を大切にする言葉である。
よって英語を音に載せる場合不自然差が際立つのはリズムの差異が大きいのだろう。
そもそも単語自体に音程的な制約がないのでかなり自由に音にのせられる。
日本語の場合はもともと無いリズムを無理矢理作ることになる。
そしてアクセントという音程があるのでその制約にのっとり音を載せなければならない。
更に言えば一つの文章に英語よりも沢山の音節がある。

I Love you → 4つの音節。
愛してる→ 6つの音節。きちんとした文章にすると「私はあなたを愛してる」となり13音節になる。

英語の歌詞を日本語に訳して音に載せると情報量が確実に半分以下になると言われる。
だからといって日本語でミュージカルを書く時に希薄な内容にはしたくないので
僕の歌詞はかなり音に詰め込み気味になるのですがこれは意図してやっている。

とにかく英語を音に載せる作業の方がなんだか簡単な気がして来る。
英語も日本語も堪能で作曲が出来る人に一度きいてみたいなと思う。
日本語の歌詞でたまに感じる気恥ずかしさを英語でも感じるのか?
そこらへんのことまでわかるようになるのはネイティブでない私には無理だろう。
でもとても気になるところである。

美しい日本語という言葉がある。
きっと美しい英語もあるのだろう。
日本人でも英文学者などはその美しい英語の美しさがわかるのだろう。
その美しさがわかる人に翻訳家になってもらいたいものだ。

また長々書いてしまった。毎週書かなきゃ駄目ですね。


お休みが勝負

2012-11-26 02:15:19 | tiptap
今週はこちらはサンクスギビングウィークという
ちょっと長めの連休があり学校は一週間お休み。
基本的には家族で過ごす休日なのでレストランやらスーパー、劇場も
サンクスギビングデー当日には結構お休みになります。

学校が休みとなればもう観劇するしかないですね。
てなわけで今週は12本みました。いやいやちょっと観過ぎたけどまあこんなもんです。


Forever Dusty

ダスティン・スプリングフィールドというイギリス出身で
ブラックなモータウンサウンドに傾倒した歌唱で
一世を風靡した白人歌手の生涯を綴ったオフミュージカル。
こちらの人にはおなじみな曲が多いジュークボックスミュージカルのようですが
あんまりピンときませんでした。
実際の彼女の人生はレズビアンでありアルコール依存症や躁鬱病だったりと
波瀾万丈のようですがどうも薄っぺらくなぞっただけの印象。
演出がバックの壁面にひたすら情景の映像を写すだけでまったくつまらない。
歌唱はなかなかなんだけど物語として特に盛り上がらなかった。
実在の歌手をモデルにした作品は多いがなかなか難しい。
マンマミーアのようにジュークボックスミュージカルでも
当人の歌手らが主人公でないほうがしっくりいくのだろう。


The Island Of No Tomorrows

この作品は二幕を観ずに劇場をあとにした。
アーティスティックな映像を使ったエロティックでセクシーな作品と謳っていたのだが
まったくの駄作であった。オフオフミュージカルというくくりの作品なのだが
まったくもって芝居が下手だし内容も意味不明であった。
出産時に母親を失くし人工心臓を埋め込まれた娘を
なぜか離島で隔離して育てることにした父親は自らの姿をみせず
秘書と召使いだけが娘の世話をして行く。
意味不明だが娘には歌でしかコミュニケーションをとってはいけないとのこと。
秘書と召使い達の話題はひたすら誰の母乳が優れているかとかそんなこと。
まあ映像はいわゆるベタな全面に景色がうつる感じでもう見飽きた手法。
本当につまらなかった。結構遠い劇場だったので悔やまれる。


Cougar the Musical

40代~50代の独身女性がどうやって若い男を捕まえるかを描いた
レビュータッチのオフミュージカル。
これはなかなか面白かった。
3人の歌って踊れるコメディエンヌがしっかりと観客をつかんでいた。
決して上品な作品ではなく卑猥であからさまな言葉が飛び交うが
きちっと演出された良質な作品。
出会い系サイトで出会っていきなり一夜をともにしようとしたら
相手が息子だったというくだりはもう劇場が割れんばかりの爆笑で
なんとも楽しい作品。
哀愁と情熱が行ったり来たりする良いバランスでした。


Murder Ballad

この作品はかなり前から目を付けてたオフのロックミュージカル作品。
舞台はがらんとしたライブハウスのようなところに机と椅子が並べられており
ビリヤード台とカウンター、バンド用のステージがある。
観客はその椅子に座る。他にもしっかりと全体を見渡せる席もあるのだが
ぎりぎりでチケットを買ったためそのテーブル席だった。
アクティングエリアはこの劇場全体で観客の間を縫って
椅子や机、カウンター、ビリヤード台をうまく使って物語が進む。
物語りはそこまで複雑ではなく三角関係のすえに殺人を犯す恋人達の話だが
演出が素晴らしい。音楽もまあいい雰囲気である。
これだけ濃密に俳優達の空気の中にいれる経験はなかなかないだろう。
目の前で俳優が歌い目が合い全てが手の届くところで行われる。
感情の細やかな変化や繊細な表情の一つ一つがダイレクトに伝わる。
もう一度観たい作品だが期間限定の作品なので難しいだろうなあ。


AIDA

オペラのほうです。
メトロポリタンでドレスリハーサルをみせてもらったのですが
まあ豪華でスペクタクルなこと。
あの有名な凱旋のシーンではもう何人舞台上にいるのかわからない人人人。
しまいには馬まででてくるからもう壮大すぎて笑けてきます。
にしても久しぶりのオペラでしたがとても楽しめました。
メトロポリタンはそれぞれの客席に字幕がでる小さな画面がついてるので
歌詞の内容がわかりかなり楽に観劇できました。
早朝でドレスリハーサルなのできっと喉も万全ではなかったのでしょうが
オペラ歌手って凄いなあと今更感心しました。


BARE

これも注目していたオフのロックミュージカル作品。
今回は再演とのことでやや劇場が大きくなり色々と改変したみたい。
ゲイのスプリング・アウェイクニングって感じの作品なんだけど
ちょっと作りが軽くなりすぎたなあ。
客席はかなり笑ってるんだけど扱ってるテーマとしてなんか希薄になってしまった感。
クリスチャンの学校に通うゲイの高校生がゲイを隠すために女の子と付き合って
結局子供を妊娠させて薬で死んでしまう話。
若者達のエネルギッシュな感じはいいんだけど序盤の空気感が軽すぎて
後半の重たいパートに説得力がない。
むしろもっと繊細にゲイのカップルの心のやりとりやすれ違いを描いた方が
作品のテーマにはあっていたような気がする。初演版の評価が高かっただけに残念。
ただのエンターテイメントショウになってしまった感じ。


Scandalous

この作品は2回目。
別に良い作品だからじゃなくてプレビュー初日を観た物で
どう変わったかが観たくて、んでもって酷評作品で近々クローズする予感だし
チケットもほぼただで手に入ったので観て来ました。
いやいや相変わらずのできなんですが4曲程切ったようです。
にしても最初から最後まで主演女優の猛烈な押しの芝居と歌唱。
彼女の力強さと体力には頭がさがりますがそこまでしなくてもいいのにと思う。
そういう演出なんだろうけどちょっと可哀相になります。
どうやら随分声も無くなって来ているようでプレビュー時に歌っていた合唱中の
ソロパートとかはもはやなくなっていました。
この作品も実在する宗教家の人生をなぞる作品。
葛藤やドラマがあまりなくつらつらと終わってしまう。
別に音楽は悪くないんだけどなあ。


Emotional Creature

ヴァギナ・モノローグスという世界的にヒットした作品の作者のオフの新作音楽劇。
世界中の10代~20代の女性に行ったインタビューを元に
ガールズトークとモノローグ、歌、ダンスがコラージュ的に組み合わさった作品。
象徴的な円形のステージと湾曲した壁面にはひたすらポップな映像が投影される。
ただいわゆる昨今はやりの写実的な景色を写すものではないので効果的であった。
内容はエネルギッシュでコミカルでポップな作品ではあるのだが
単なる性の目覚めやら、妊娠だとかのありきたりな内容ではなく
世界中の女性の立場をそれぞれのモノローグが生々しく語る。
コンゴで性的奴隷にされた女性、ブルガリアで娼婦として生きるしかなかった女性
割礼と称してクリトリスを切除されるウガンダの女性、中国でバービー人形を作る女性などなど
実際のインタビューから紡ぎ出された言葉がダイレクトに響く。
ただこれだけ社会的で重たい内容をポップに
そしてコミカルに歌や踊り、映像を交えて立体化することにより
湿っぽい物にはならずなんとかすんでいる。
ただそれぞれのモノローグには引き込まれ考えさせられる。
まだ若い女優達の熱演はすばらしかった。


Mies Julie

ストリンドベリの戯曲「令嬢ジュリー」の舞台を
現代の南アフリカに移し書き直された作品。
この作品の為に久しぶりにブルックリンまでいく。
未だ人種差別や階級社会が色濃く残る南アフリカの農場で
使用人と令嬢の禁じられた恋の物語。
とにかく空気感が恐ろしく研ぎすまされていて
息を呑んだままの90分であった。
美しさと狂気、幻想と現実。
生々しい描写に目を覆いたくなるが繰り広げられる出来事が
単なる物語のなかの出来事ではなく
実際に今も南アフリカではありうることだということが心を揺する。
取り憑かれたようにジュリーを演じた女優の
カーテンコールでの放心状態の表情に圧倒された。
かなりどぎつい作品なので苦手な人は沢山いるだろうが
とても素晴らしい作品だと思う。


NEWSical

この作品は時事ネタを盛り込んだオフの風刺ミュージカル。
のっけからオバマやらロムニーなどのものまねコーナー、
ライザミネリとレディーガガの対談とか。
こっちの人にはドストライクのネタが満載。
コマーシャルあるあるだとか
ケイティーホームズとサイエントロジーとか
イタリアで座礁した豪華客船のくだりなんかまで
くだらなくて品のない作品だが何も考えずただただ笑っていられる作品。
期間限定でオリジナルのAnnieでトニー賞をとった女優が出演していた。
またそのAnnieネタもしっかり歌い上げてくれてなかなか豪華。
彼女は美女と野獣のベルとかレミゼのエポニーヌやらファンテーヌとかやってる有名人らしい。
そんな人がこんな作品にでるのがまたNYらしい。


Sorry

パブリックシアターで4作の政治劇を上演するプロジェクトの3作目。
大統領選挙の当日に初演を迎えた作品。
作品自体も大統領選挙の当日の設定で
NYの痴呆老人を抱えた家族の話。
延々姉妹と老人、イギリスから帰って来た兄との
リビングでの会話劇。
物語自体は淡々としたものなので言葉にハンデがあると
かなり辛い。きっと台詞ひとつひとつが理解できないと
作品の旨味が理解できないのだろう。
まだまだ自分の語学力が追いついていないと実感。
ただ雰囲気的には橋田壽賀子ドラマを観ているようだ。
痴呆老人の世話に明け暮れる姉が人生を失っているさまは
どこの国でも同じなのだと考えさせられる。
何よりも観客の大半がその痴呆老人と同年代の客席。
どういう思いで観ていたのか、そっちのほうががきになった。


The Twenty-Seventh Man

これまたパブリックシアターの作品。
スターリン時代の末期のソビエトでユダヤ人の文学である
イディッシュ文学の作家達が粛清の対象になり
投獄され、処刑された歴史事実を元に書かれた作品。
当時の著名な作家達が同じ牢屋に詰め込まれそれぞれの
思想や文学への思いをぶつけ合う様は心を打たれた。
スターリンはユダヤ人を重用していた時期もあり最後までスターリンを信じていた
詩人が無実の青年の命と引き換えに自分の作家生命を捨てれば助かるという書類に
最後までサインをせず現実を直視した時の叫びにはなぜか涙が滲んだ。
物を書く人にとっては彼らの情熱や思いがどこか親しいものに思えて共感してしまうのだろう。
演出もセットもなかなかスタイリッシュで
最後の銃殺のシーンはバックの壁が音をたてて倒れ
作家として死んで行く男たちの姿が美しく感動的だった。
かけ出しの作家の思いつきの物語に伝説的作家が良い話だったよと優しく告げ
銃声が鳴り響く。
個人的にはとても感動できる作品だった。


今回は観た物が多くて長くなっちゃいましたが
こんだけ観てるとちょっと頭が疲れて来ます。
学校もそろそろ終わるのでちょっとここらで一息つかなくちゃですね。
こっちに来て約3ヶ月。
延べ50本近く観て来たのでね。
でもきっとまた観ちゃうんでしょうが。

またちょこちょこ書きます。