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世界一面白いミュージカルの作り方

早稲田発小劇場系ミュージカルプロデュースユニットTipTapのブログです。
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オープンラッシュの次は

2013-04-19 15:57:39 | tiptap
オープンラッシュが落ち着いてきました。
もうオンの新作もめぼしい物は全て開いた感じです。
とはいえプレビュー中の物もあるので
気になる作品はまた観に行ってみたいものですが
そこまでお金があるのかなあ。
とりあえずチケットが取れずに5月半ばに観る事にした
Motown以外はストレートも含めて観れた気がします。

ということで今後はオペラや、オフ作品にシフトチェンジですね。
新作のキャスティングも始めていてなんだか色々と考えることが多く
観劇中も集中できないときがあります。
英語なもんでかなり集中しないと意味がわからないのに
なんか自分の脚本のこと考えたりしてしまっていいんだか悪いんだか。
よく仕事中は袖にいながら稽古のことやセットのことを考えながら
時間を過ごしていたことを思い出します。
おかげできっかけ直前にはっとしたりよくするので
褒められたもんじゃありません。

オープンラッシュが終わったという事でこれからは演劇賞ラッシュですね。
まずは小劇場メインのルーシル・ロータル賞とドラマ・ディスク賞。
ノミネート作品を眺めるとうなずけるものが多くてほっとしました。
ピューリッツアー賞の受賞作は見逃してて残念。
これからトニー賞に向けて逐一情報が楽しみです。



Bunty Berman Presents...

インドのボリウッドと呼ばれる映画産業を描いたおばかなオフミュージカル。
プレヴュー初日で本当にばたばたで開演も15分押してましたが
なかなか面白かった。本当にくだらない作品なんですが
AvenueQを作ったプロダクションなだけはありますね。
インドの映画産業を上手く茶化して面白可笑しく描けてる。
正直言って歌唱はいまいちでコーラスもしょぼいしソリストが上手くないんだけど
それでも充分楽しく観れました。
こういうどたばた喜劇は本当に面白いなあ。
落ち目の映画スター、落ち目のスタジオ。
立て直そうと奮闘する社長達。付け入るマフィアとそのぱ馬鹿な息子。
それぞれのくだらないプライドやら必死感が滑稽で面白い。
自分が昔書いてたスタイルに激似な感じがまたぐっときましたね。
歌が下手でも面白けりゃいいだろ?って感じが開き直っててよかった。
まあこの下手さを逆手に取ってるって言うのも上手いんだろうなあ。


The Big Knife

クリフォード・オデッツの映画化もされた戯曲のリバイヴァル上演。
ラウンドアバウトという大きなプロダクションが作っている作品。
映画は日本では未公開らしいです。
昔の契約に縛られ馬車馬の様に働かされるハリウッドスターが
妻の為に引退を決意するが昔起こしたひき逃げ事件を脅しに使われ
止むなく契約を結んでしまうあげく耐えられずに自殺してしまうという
まあなんとも救われないはなし。
豪邸を舞台にした室内劇で淡々と進んで行きます。
ちょっと飽きちゃいますね。そもそもハリウッドスターの贅沢な生活を
これでもかと目の当たりにすると同情できない貧民の私。
ハリウッドの暗部をえぐった作品としての意義はあるものの
あまり共感出来る部分が少なかった。
夢を叶えるのに必死な我々には贅沢な話だろ!って思っちゃうから。
まだまだ気持ちだけは若いんですかね。
成功者の苦しみや孤独を描いてるんだけどまだちょっとそこまで
大人になれません。


Richard III

知人の美術家さんのゲネに招待して頂きました。
美術はなかなか素敵でした。
シグネチャー・シアターにある劇場の美術を担当するなんて
さすがだなあと思ったりして。
こないだはデイヴィッド・ヘンリー・ウォンの芝居がかかってた所。
シェイクスピアのリチャード三世をなんとなく現代風にアレンジして
わかりやすく上演してました。
それにしても複雑な話ですね。もう誰が誰だかわかりません。
もう少し勉強して望むべきでしたね。
ちょっと予習足らず。バラ戦争とか昔勉強したのになあ。
世界史大好き人なのに不覚にもすっかり忘れているとは。
高校生以来勉強していないことが後悔されます。



Jekyll & Hyde

日本でもおなじみな作品ですね。
もう本当に期待をしてちょっと高めのチケットを買っちゃった訳です。
何せ「Rock of Ages」でオリジナルの主演を務めたあのコンスタンティン氏が
タイトルロールを演じる訳ですから。
「Rock of Ages」では本当に歌唱力の高さに度肝を抜かされました。
こんなにロックを歌いこなすミュージカル俳優がいるのかと。
まあ調べてみたら別にミュージカル俳優ではなかったんですけどね。
俳優というかタレントさんです。American Idol出身ですもの。
それでも彼の歌声をCDで聞きまくってたし久しぶりに観れるなとかなり期待。
ところがですよ、
まあ本当にびくりするほど駄目な仕上がり。
そもそも音楽を全体的にロック調にしてるんだけど
アンサンブル達の歌唱がひどい。
なんかロックテイストを意識してるんだかどうかわからないけど
あの「ファサード」なんて歌唱が下手糞だし演出がひどい。
鏡の吊りものを縦にしたり横にしたりと動かして貴族達が着替える?
あの音楽のダイナミズムをまったく消してます。
そもそもジキルのキャラクターがまったく魅力的じゃない。
なんかいわゆるオタク的な雰囲気で声も小さいし
歌唱に至ってはキャラクターのせいなのか
声を張らないから常にやや♭。
まったく好青年には見えないくせに彼女は美人ときたもんだ。
どうやったら彼の事を好きになるんでしょうか?
そもそもそんなオタクキャラが娼館にいこうと誘うとこなんて意味不明です。
実験の許可が下りずに落ち込んでたけど婚約はできてそんで
バチュラパーティーだ!ってなるキャラには見えないんですよ。
唯一「時が来た」は持ち前の歌唱力を活かして歌で押し切ってましたが
ここの演出もなんだか陳腐なんですね。
薬品を飲むんじゃなくて複雑なしかけにしたもんだから
なんか段取りが多くて変身が大変・・・
オタッキーな愚直な科学者を描きたかったんでしょうけど
それならもっと設定を変えなくては成立しないでしょう。
まあハイドに変身してからはロック歌唱で歌唱自体はそこまで
気にならないんですがちょっと演出は全体的にひどくて
もう映像バン!明かりバン!って感じで何も想像できない。
案外お客さんは正直で変身した別人という設定に入り込めないもんだから
変身する度にせせら笑う始末。
いやいや本人は真剣にやってるんでしょうけど
笑われる作品つくっちゃ駄目でしょう演出家は。
同一人物に別人格が宿っていることに説得力を持たせることが
演出家の仕事だと思いますがそこにまったく力点が置かれてない。
ただ外連味と勢いだけで作ってあるから別人に見えないんですよね。
観客の嘲笑が・・・
そして最期の対決シーン。
もうなんかのアトラクションかと思うぐらいの映像ショー。
そもそも一人の俳優が二つの人格を演じ分けるという演劇的な
アプローチが巧妙だったのに
事前に作られた映像と声に合わせて俳優が演じても
なんの意味もありません。
そもそも同一人物じゃなくなってるわけですから意味不明です。
スクリーンに映し出された映像と対峙する時点で
何か違うなと思わなかったんでしょうか?
もはや原作の持つ風合いはどこかに消えてしまいました。
せめてもの救いは女優陣がなかなかよかったことですかね。
二人の歌唱は素晴らしかったです。
ただそれも趣味の悪い演出のおかげで不格好に見えてしまうのが残念。
Newsiesの演出家なんですが確かにあの作品は振り付けは良かった。
演出的には杜撰な部分が垣間見えた記憶があります。
Newsiesは別に振り付け家を立てていましたが今回は自らやったようです。
それもよくなかったのかな。
ボニー&クライド、ビッグリバーなんかをやってる人なんですね。
う~んほんとに残念。もったいないなあ。


The Memory Show

痴呆を患ってしまった母親を介護するために嫁に行き遅れた娘が帰って来る話。
なかなか音楽のセンスのいいミュージカルでした。
ジェーソン・ロバート・ブラウンが女性だったら?みたいな曲調。
オフミュージカルにしては豪華な編成でした。
物語自体は母親の記憶が消えて行くさまを
娘が側で見守りながら自分の人生についても考える的なはなし。
母親役の女優の芝居はとても体当たりながらコミカルで緩急があり好感が持てました。
ヒステリーを起こして錯乱するところもあれば恍惚と妄想にふけり上機嫌になったり
矍鑠と娘に説教したり。
親の背中を見て子供は育ちます。いつまでも親は親であり子は子です。
でももし自分のことを母親がわからなくなったら。
自分の娘のことを覚えていられなくなったら。
色んな葛藤、悲しみ、苦しみが見えて来ます。
それをコミカルに笑い飛ばしながらも現実に向き合うしかない。
人生と同じですね。終わりという現実がある。
その間は夢みたいな時間なんだと思います。
でもどんな夢がみたいのか?
もしくはどう死ぬのが幸せか?
いつ幸せを味わいたいのか?
死ぬ時か?今か?
そこに答えはありません。それに自分では選べません。
人生の終わりを迎えた時に誰が側にいるのか?
そんな事を考えながら作品に集中できず・・・
まあいいか。音楽よかったし。


Four Message

この作品は長かったんだけなかなか面白かった。
今ではミュージシャン、俳優として活躍する作者の自伝的な作品。
ギターを片手に自らの人生を面白可笑しく語ります。
1幕はとにかく生い立ち、神様の啓示でミュージシャンを志したこと
ジョン・ハモンドとの出会いなどなど。
成功を掴む寸前でプロデューサーであるハモンド氏が他界してしまったそうです。
けっこう波瀾万丈な人生をおくってます。
というかとにかく歌とギターがうまい。
ギター2本とバイオリン一本でこんなに素敵に聴こえるんだなあと感心。
まあ箱も小さかったからよかったのかも。
なぜ2幕からは後ろでギターを弾いてたお兄ちゃんが主人公を演じます。
バイオリンのお姉ちゃんが彼女役。
いわゆるミュージシャンカップルの幸せ、結婚、流産などなど。
そして二人は別れてしまう。悲しいですね。
当事者がそこで歌ってるわけです。本人が。
どこまで本当なのかはわかりませんが
歌う彼の目には何かが浮かんでいたように思えました。
自分の人生を投影することはとても勇気がいります。
色んなことをさらけ出さなくてはいけないし
自分なりに自分の人生に結論を出さなくてはいけません。
しかもその結論は間違っているかもしれない。
でもそうしなくてはいけない何かがあるし
乗り越えたい何かがあるんだと思います。
そんな何かを感じる事ができました。
残念だったのは2幕で主人公を演じてたおにいちゃん。
芝居はまあ及第点なんだけどギターと歌が・・・
本人に比べると付け焼刃感満載でした。
もったいない。



Totem

シルク・ド・ソレイユです。
とりあえずテーマがいまいちわからなかったのですが
どうやら「水から空へ」的な感じでした。
両生類から進化して地上に、そして空を求めるみたいな。
年始にみたNY名物のアットホームサーカスを思い出しました。
あれはあれで個人的にはあったかい気持ちになって好きでした。
まあこちらは世界のアートサーカスですから
それとは違って壮大で美しいことが目白押し。
とにかく衣裳が凄いですね。
もうキラキラピカピカで。
前から2列目だったおかげでかなり細かく見えました。
本当によくできてます。
こういう美しさへのこだわりは素晴らしいですね。
曲芸の数々は確かに素晴らしいし驚く事ばかり。
人間ってこんなこともできるんだと感心しました。
本当に生ものだなと思ったのはやっぱり失敗もするわけです。
観ていて本当にドキドキします。
彼らは本当に大変だろうな。正に身を削ってる訳です。
家族や友人達とわいわいいいながら観たい物ですね。
ただわかったのはどうやらこういう見せ物という感じのものに
そこまで魅力を感じないようです。
本当に素晴らしい作品なんだなとはわかるんですが
個人的にはもっと自分で考えたり深めたりできる物の方が好きなんだなと。
登場人物の心情やドラマを感じたり考えたりしたくなっちゃう。
本当に凄かったんですけどね。好みですね。
だから昔からスポーツよりも読書や音楽が好きだったりしたのかな。
まあ病弱だったこともありますけどね。
でもまた違う作品が観てみたいですね。



今日までで185本ですかね。
今夜はこれからオフのミュージカル。
なかなか劇評がいいから期待です。
誘惑に負けてマックを食べてしまったし。
眠くならないようにしなくては。
ではまた書きます!







上野ははじめて

2013-04-11 18:04:51 | tiptap
次回公演の劇場が「上野ストアハウス」に決まりました。
上野での公演は初めてなんでなんだかわくわくしますね。
とは言え上野とはいいながら最寄り駅は入谷だそうです。
歩きたくないかたはぜひぜひ入谷からお越し下さいね。

さてまだまだ半年以上も先ですがこんな時期に上演を発表できるのは
6年振りぐらいだと思います。
社会人になってからはとりあえず仕事のスケジュールの合間を縫っての公演だったので
仕事のスケジュールが出ないと何も決められず結局いつも
ぎりぎりに色んなことを決める感じになっておりました。
CDMLの初演に至っては2ヶ月前に一念発起したぐらいです。

まあ今回も条件は全く変わらないしまだ仕事のスケジュールも見えませんが
とにかく何はともあれ上演を決めてあとはどうにかしてやるぞという意気込みです。
NYで吸収したものを何かにぶつけないともったいない気がしますからね。

さて今週はなんだかんだでたっぷり観てます。


Faust

言わずと知れたゲーテのファウストのオペラ版です。
メットでラッシュに並んでチケットをゲットしたのですがズルが板に付いて来たのか
空いてる席にひょいと座って前から10列目のセンターセクションで観ちゃいました。
やっぱり近いと迫力が違います。
オケの音も、歌手の声も全然違うもんですね。
300ドル以上払ってこの席を買う人の気持ちがわかりました。
まあ理解できても不可能なことですけどね。
作品的には主人公を物理学者に置き換えての上演。
原爆を作る科学者が悪魔にそそのかされて罪を犯し堕ちて行くわけですが
オペラ化されているのはファウストの第一部と呼ばれる部分なので
ちょっと話がまとまりきれないですね。
とは言えこれまた長い作品です。パーシファルよりは短くシーンも多いので
そこまで飽きずに観ることができました。
演出は「ジャージー・ボーイズ」なんかを演出している人で全体的に
スタイリッシュにはまとめてるんだけどもっとエッジが効いてても良かったな。
あえて原爆の科学者を主人公にしたのにその設定だけが全面に出されるだけで
その後ろに潜む恐怖や悲哀がそこまで引き立っていなかった。
特に日本人としては広島の原爆ドームが写されていることに違和感を感じた。
象徴として毒々しさを狙ったのかもしれないが薄っぺらく感じてしまった。
全体的にはまとまっているのだが別に素晴らしい出来ではなかった。
そのせいか空席も目立っていた。人気のない作品だったんだと納得。


Kafka's Monkey

カフカの短編「ある学会での報告」を元にしたキャサリン・ハンターの一人芝居。
キャサリン・ハンターは日本でも知ってる人がいるぐらい有名なイギリス人女優。
オリヴィエ賞も獲得している実力派。
とにかくフィジカルが凄い。
身体の使い方一つ一つがエネルギッシュで意味を持っている。
内容は小さい頃に引き取られて人間に育てられたチンパンジーが
人間として生活していてそれまでの人(猿)生を観客に話す仕立て。
先日観た「トレバー」というチンパンジーの芝居に通じる物があった。
なんといっても本当にチンパンジーに見えて来るから不思議である。
声の出し方、表情、しぐさ、どれをとってもリアルにそこにある。
想像力や型で表現するんではなく実際にそこにチンパンジーがいるのだ。
はっきり言って彼女だからできることだろう。
ずば抜けた身体性がなせる技である。
この上演が行われた場所がまたびっくりで
バリシニコフシアターという場所で
あのバリシニコフが芸術監督の劇場なのである。
NYにはこんな劇場もあるんだなあと感心。


I Know What Boys Want

インターネット世代のティーンエイジャー達を主人公にしたストレート。
内容はよくある話で恋人との情事を隠し撮りされて
それがfacebookやら動画投稿サイトに投稿されて心に傷を負う的な話。
実際最近そんな事件の裁判が行われて実刑判決がでたばかりなので
タイムリーな話題ではある。
まあ5ドルの芝居ですからそれなりの仕上がりです。
脚本も俳優も演出もいまいち。
同じ5ドルでもキャサリン・ハンターが観れるのに不思議なもんです。


For Love

アイルランドの結婚に行き遅れた30代女性達の物語。
現代のアイルランドのアラサーを切り取ったような内容で
なかなか面白かったんだけどアイルランド訛がかなりきつくて聞き取りづらかった。
当然劇場自体がアイリッシュ・レパートリーシアターなもんで
生粋のアイルランド人俳優達。
言葉の壁をしっかり感じました。
内容自体はラフな恋愛にまつわる悲喜こもごも。
3人の女性達がお互いに先の見えない恋愛に奮闘する姿は面白可笑しくもあり
どこか寂しさが漂うあたりがアイルランド的。
そろそろ30にさしかかるわけで
あと1年半で大台にのることを考えると人ごとではありませんね。
セットはいっさいなくて椅子だけ。
簡素だけど機能的でよくまとまってました。


Here Lise Love

莫大な靴で有名なフィリピンの元ファーストレディー
イメルダ・マルコスの生涯を描いたミュージカル。
本人はまだご存命ですからなかなか面白い試みですね。
それでまた音楽がファット・ボーイスリム。
無茶苦茶な取り合わせ。
この不思議な取り合わせを企画するのが
パブリック・シアターというのがまた素晴らしい。
日本で言えば
文学座でデヴィ夫人のミュージカルをリップスライムが作るようなもんです。
こういうわけわかんない作品が次々生まれるからNYは面白い。
演出は最近パブリックでよく活躍してる
「ブラッディー・ブラッディー・アンドリュージャクソン」で
トニー賞にノミネートされた人。
まあストーリーはそこまで深くありません。
彼女の人生をなんとなくなぞって行くだけですが
上演形式がなんというかクラブのパーティーに参加する感じ。
広いフロアに可動式のステージがいくつかありその上を
縦横無尽に俳優が動き回り、ステージも動き回るもんだから
観客は係員の指示に従って右往左往させられます。
延々とヒップホップやテクノな音楽が鳴り響きもう意味不明。
とにかくインタラクティブを売りにしたショーなので
お酒をあおって盛り上がりたい人にはもってこい。
一人でノリの悪い日本人が行くとかなり恥ずかしい思いをしますが
まあパフォーマンス自体はかなり面白いので耐え忍んで観て来ました。
音楽もメロディーなんかはなかなかキャッチーで耳に残る。
なかなか新しく面白い作品でした。
ただ一人で行った事に後悔しましたね。


ひこばえ

東日本大震災で被災した福島の相馬市を舞台にした作品。
日本で過去に上演されたものを今回はNYで上演ということで
色々と手を加えたとの事。
とにかく休憩もなく2時間半なのでかなり長かったのがもったいないのですが
中身はきちんとしてました。
個人的にはこういうテーマを扱うことに若干抵抗があるので
自分の目指す物ではありませんが彼らの熱意や思いはしっかり
観客に届いていたようです。
実際に亡くなった人がいる。彼らの気持ちや残された人々の気持ちを
代弁できる程の物を書く自信が持てない自分がいるわけで
それができることは素晴らしいと思います。
自分が書く物に責任を持てるかどうか。
いつまでも立ちふさがる大きな壁です。
芝居なんて絵空事でいいんだよって言われるけど
実際に起きた事、実際に存在した人を扱うってのは
本当に勇気がいります。
いつかはそんなものが書けるようになりたいものです。


The Norwegians

ノルウェイ人のヒットマン2人に別れた彼氏を殺して欲しいと
お願いする女性とその友人を描くオフオフのストレート。
NYにいると人種というテーマは本当にどこにいってもぶつかる。
それを面白おかしく扱ってちゃかすものもあれば
逆に物凄くシリアスに社会的に扱う作品もある。
テレビを観ていても人種ネタは普通である。
人種問題に敏感でありながらネタには寛容というお国柄なのだろうか。
笑いのつぼがかなりブラックなんですね。
こんなこと日本では絶対に許されないということもジョークという
言葉を借りると許される。
このラフな感覚が日本人とは少し違うのかもしれません。
差別ではなくて区別をしっかりしているのがニューヨーカーなんでしょうね。
人の好き嫌いは誰にだってある訳ですから
いちいち言葉尻で目くじら立てるよりお互いに笑い飛ばした方が楽しいってなもんです。
未だに根強く残る差別という問題も確かにある。
でもそれらをこうやってちゃかすことができる人もいる。
アイロニーでありブラックな笑いなわけです。
そんなことを考えさせられる作品でした。
ノルウェイ人の朴訥な感じがとても好感が持てて面白かった。
同じオフやオフオフ作品でも俳優の質が違うのは不思議である。
小さい所だとやはり専属俳優のいる団体の方が質の高い俳優が多い気がする。
これも面白いもんだ。


Nicolai and the Others

ニューヨーク・シティーバレエの設立者であるジョージ・バランシンと
彼に沢山の楽曲を提供した世界的な音楽家イゴール・ストラヴィンスキーが
オルフェウスというバレエ作品を作り上げる過程を当時CIAの援助を元に
ロシア人の芸術家を支援するプロジェクトを取り仕切っていた
ニコライという作曲家を通して描いたオフのストレート作品。
なかなか面白かった。
とにかくこの歴史的事実が面白い。
当時は冷戦下でソヴィエトに文化的にも対抗するべきだと
アメリカ国内のロシア人芸術家に素晴らしい成果をあげさせようと
CIAが彼らを支援していたらしい。
アメリカって凄いなあと感心。
戦争に勝つ為に芸術家をプロパガンダとして利用するわけです。
決して褒められた動機ではありませんが
結果としてアメリカを代表するバレエ団が生まれたのです。
一人の芸術家として、エージェントして自分のやるべきことに葛藤する
ニコライの姿はとても共感できるところがありました。
人を支援することよりも自分の作品を作りたい。
だけど自分にはストラヴィンスキー程の才能を感じられない。
結局彼はエージェントとしての道を歩み続けるわけです。
バレエシーンもありなかなか見応えのある作品でした。


I'll Eat You Last a Chat With Sue Mengers

ベッド・ミドラーがブロードウェイに帰って来ました。
定かではありませんが30年前にフィドラーのアンサンブルでの出演が最後だったとか・・・
いやいやそんな歴史があるんですね。
そんな彼女も今では押しも押されぬ大女優であり歌手。
今回は数多くのハリウッドスターを顧客に抱えた伝説的エージェント
スー・メンガーを一人で演じきるわけです。
バーバラ・ストライサンド、マーロン・ブランド、スティーブ・マックイーンなどなど
もう数えたらきりがないほど。
しかもブライアン・デ・パルマや、ボブ・フォッシーも顧客だったとか。
本当に力のあるエージェントだったようです。
日本人の僕にはどんどん出て来る固有名詞がそこまで馴染みがないのでピンときませんが
観客は名前が出る度に大爆笑。
お約束のゴシップネタ、スキャンダルネタを暴露し揶揄しながら
一人でひたすらおしゃべり。
相手の居ない徹子の部屋みたいなもんですね。
とにかくオーラが凄い。
一人で喋ってるだけなんですが観客の掴み方、間合い、声の扱い方
どれをとっても無駄がなくそして効果的。
晩年の黄昏時を感じさせながらも面白可笑しく喋るさまが
ひたひたと心を打ちます。
まだプレビュー中で台詞に詰まって「Line!」
とか言っちゃうんですが
まったくもって動じない。溢れる自信と存在感。
彼女の魅力がとても引き出された作品でした。
演出はジョー・マンテロ。
特に彼らしいトリッキーなことはないのですが
きっちり丁寧に作ってあります。さすがです。
早口なもんでかなり理解できない部分が多かったのが残念。
でも観れてよかった。かなり売れ行きがいいようです。


Macbeth

この作品もスターが出演しています。
キャバレーの再演でMCを演じたアラン・カミング主演のこれまた一人芝居。
まあ厳密に言えば他にも2人出て来るんですが台詞もほとんどないし
彼の一人芝居と言っていいと思います。
舞台を現代のサナトリウムに移して
統合失調症の患者が閉じ込められている病室の中で
気が狂ったようにマクベスを演じ始める。
もう設定自体が反則的な切り口。
最初から最後まで全てのキャラクターを演じ分けるわけです。
セットは冷たいサナトリウムが再現され
入浴シーンやらカラスのはらわたをむしり取ったりと
刺激的なシーンが沢山。
感心したのは三人の魔女を3つの監視カメラに見立て
それぞれのカメラに写る映像が3つのモニターに映る。
それぞれにアランの顔が映るんですね。
よくできてる。
とにかく主演の演技力、集中力には脱帽です。
一人でマクベスを演じきるわけですからまあ恐ろしい。
演出的にはとてもエッジの効いた仕上がり。
個人的には音楽がやや全体的に優しすぎる気がしましたが
それも敢えてなのかもしれないと思わせる何かがありました。
演出がONCEの共同演出家の一人。
こういう作品も演出できるなんて幅広いですね。
アラン・カミングだからできること。
そんな作品でした。
僕の隣の隣にライザ・ミネリが座ってました。
誰よりもエネルギッシュに声援を送っていたのが印象的です。
キャバレーつながりですかね。


Silen's Heart

マリリン・モンローの生涯を描いた一人ミュージカル。
別にこれといって何が悪いというわけでもないのですが
なんとなく魅力的に感じない作品でした。
作品の形式がいわゆるキャバレーショウスタイルだったこともあるかもしれません。
つまりストーリー自体には何もひねりがなく
ただマリリンの私生活や思い出を語るだけなので
マリリンファンには楽しめるかもしれませんが
そこまでマリリンフリークではないので
なんとも乗り切れないという感じでした。
音楽もキャバレーソングという感じで
よく言えば耳馴染みのいい曲ばかり。
同じ題材でももっとアーティスティックに
もしくはドラマティックに描くことができるだろうに
ちょっともったいないですね。
それでも5ドルで観れてお土産のCDまで貰えたからまあよしとします。
おじいちゃんおばあちゃんがほとんどなんで
これはこれでいいのかもしれません。


Julius Caesar

こちらもシェイクスピアの名作。
プロダクションはRSC。
舞台の設定を現代のアフリカに移しての上演。
この設定が不思議とよくはまってて感心。
アフリカの軍事政権の将軍シーザー。
まさにカダフィー大佐みたいなもんです。
そんなシーザーを暗殺しようと画策する軍人達。
不安定な現代のアフリカが浮き彫りにされていて
さすが世界一のシェイクスピアカンパニーです。
演出はグレゴリー・ドーラン。
日本でもいくつか演出してる方。
本当によくできていた。
アフリカ訛の英語なのでこれまた聞き取りにくいのですが
そもそもシェイクスピアの台詞は難しい。
マクベスもそうでしたが詩的な言い回しや台詞は
本当に理解が追いつきません。
もっと語学力が欲しいと切に思います。
それにしてもほとんど転換のない構成舞台で
かなりダイナミックな仕上がりでした。
オール黒人キャストというのもかなり見応えがあります。
アフリカの今を400年以上も昔の作品が表現できる。
シェイクスピアの深さを感じます。
国を本当に思う清廉潔白な政治家が報われない最後を迎える。
結局目先の利益やアジテートに騙される愚かな民衆はいつの世も変わりません。
アフリカであれアメリカであれ日本であれ。
本当に正しいことはなんなのか?
真理はなんなのかを追求できる思慮深さを持つべきですが
それができないのが人間です。
人間が乗り越える事ができない壁を400年前から突きつけられているわけです。
北朝鮮しかり右傾化する日本しかり。
国家というくくりが存在しうる限りこの壁は乗り越えられないのでしょう。
いつの日か国という共同体が消えてなくなる日が来るのなら希望はあるのかもしれません。
自分が生きてるうちにはなり得ないので
微力ではありますが自分なりに思慮深く生きて行こうと思います。


The Dance of Death

ストリンドベリの「死の舞踏」です。
翻訳戯曲だからなのかかなり言葉が聞き取りやすかった。
人生の終わりが差し迫りお互いに憎しみののしり合いながら
不毛な人生を後悔し、相手のせいにする老夫婦の話。
死に直面した夫とやっと解放されると喜ぶ妻。
そこに訪れる従兄弟。
とにかく辛辣な二人の相手に対する物言いが
どこまで本気なのかどこまで冗談なのか。
本当に二人は憎しみあっているのか?
「ヴァージニアウルフなんか怖くない」を彷彿とさせるのですが
こっちの方が全然古い作品ですから逆に凄いなと思います。
客席では口々に「ヴァージニア・・・」というつぶやきが聞こえてました。
お互いに相手を出し抜く為に嘘を付き合い騙し合う中
見え隠れする情がどことなくしんみりさせます。
でも最後には人間の狂気が冷たくひと刺し。
人生に何を求め誰が必要なのか。
銀婚式を迎える老夫婦を通して人間の嫌らしい醜さと弱さ
愛らしさが見て取れます。
人生の結果を誰かのせいにする。
これは一番簡単な納得のさせ方だと思います。
また誰かの犠牲の上に誰かの幸せがある。
これも大きな視点でみれば残念ながら事実です。
望んだ人生を叶えられなかった時
人間はどう死んで行くのか?
どう死ぬべきなのか?
自分の人生と照らし合わせて見入るおじいちゃん、おばあちゃん達が
またなんだか良い顔してました。
結果的には誰かのせいでもあるでしょう。
誰かを犠牲にして何かを掴んだでしょう。
ただその結果を共有できる誰かがいるのかいないのか?
その相手が一番の救いになるのかもしれません。
人間は一人では生きて行けないというのはそういうこともあるのでしょう。
誰かのせいにし、誰かを踏み台にして、誰かと慰め合う。
そんな人間の生き様を感じました。



という感じで今回は13本。
結構みましたね。
今回は文学作品が多かったかな。
ゲーテ、カフカ、シェイクスピアにストリンドベリ。
偉大な劇作家は人生を色んな形に定義しています。
やはり演劇というのは人生を描く物なんだなと再確認。
どう生きたか? どう死んだか?
どっちの方向から描くかの違いですが
人生を描くには違いない。

もっと人生を描けるようになりたいですね。

次回作品は人生を描けているでしょうか?
ある意味タイトルが「Second of Life」ですからね
描けてなきゃ駄目ですね。

ではまた書きます。





























新作上演決定!!

2013-04-09 17:46:20 | tiptap
HPやらtwitter、などで発表しちゃいましたが、
12月に新作の上演が決まりました。

まだまだ先の話ですがぜひぜひ頭のどこかに置いといて頂ければ幸いです。
Count Down My Life とは違ったラブストーリーと言える作品でしょうかね。

一応タイトルは

「Second of Life」

どんな意味が込めれられているのかは作品を見終わらないと
わからないかもしれませんね。

音楽は我らの小澤時史氏が書き上げます。
まだまだキャスティングもこれから、作曲もこれからですが
一応初稿はあがっております。
さあどうなることやら。

劇場は「上野ストアハウス」名前は上野ですが最寄りは入谷駅です。

今なら出演者もスタッフも大募集中です!

今回は男性二人、女性二人になるのかな。
まだまだ未定ですが我こそはという俳優の皆様どしどしお問い合わせ下さい。
更にぜひこの人をというお声も大歓迎です。
キャストの詳細、内容に関しては気軽にお問い合わせ下さい。
また詳細が決まり次第ご報告します。

NYからではありますが公演の準備をどんどん進めて行きますので
どうぞご期待下さい!!


お芝居が面白い

2013-04-01 00:39:41 | tiptap
ミュージカルのオープンラッシュが一段落したところで
今度はどっとお芝居が開きました。
この調子で4月いっぱいは5月のトニー賞のノミネート締め切りまで
オープンが続きます。
毎日オン作品を観てるとちょっとお金がやばいですね。
ラッシュに並んでも30ドルはしちゃいますから
普段5ドルで芝居を観てる身としてはなかなか辛い。
まあでもお値段払った分だけはきちんと堪能してる気もするからいいのかな。


Macbeth

これは野村萬斎さんのNY公演。
ジャパンソサイエティーという小さな劇場での上演だったので
きっと色々とダウンサイズしたのかなあという感じ。
昔オイディプスを観たときのイメージが凄く強くて
なんか壮大で美しい世界を勝手に期待してたんだけど
ちょっと違いましたね。
最近どうしても言葉がわからない環境で芝居を観る事が多いせいか
視覚的な印象や言葉が伝わらなくても伝わることに集中していたみたいで
逆に日本語での上演だと言葉が気になって仕方ないんだなあとびっくり。
なんとなく入り込めなかった気がしたんですが
ここ最近観ていた作品の多くが型を通さずに
ただそこにあるそのままの気持ちや感覚が伝わって来る物ばかりだったからかも。
様式的な演出が昔から苦手だったことを思い出しました。
「面白い」けど心が動かない感じですね。
好みに偏りがあるようでいいんだか悪いんだか。


The Assembled Parties

フレンズのロスの最初の奥さんキャロルの彼女スーザン役をやっていた女優さんが主役のストレート。
しかも相手はアグリー・ベティの編集長のお母さん役の女優。
どちらも実力派女優ということでなかなか面白かった。
セントラル・パーク沿いのアパートメントを舞台に
1幕は20年前のクリスマス、2幕は20年後のクリスマスを描いた作品。
20年という歳月が流れた結果ばらばらになってしまった家族。
老いに直面し伴侶や最愛の息子を失った女性。
特に目新しくもなく斬新な作品ではない。
ただ淡々と一つのアパートメントを舞台に彼女達のクリスマスが描かれるだけ。
ドラマとしての盛り上がりもそこまでないのだが
どことなくあったかさと切なさが募る作品。
上品なホームドラマと言った感じです。
一幕はやや睡魔に襲われましたが二幕はしっかり観れました。
新作でレビューもないからなかなか難しいところですが
まあなんとかストーリーはおえたかな。


Faithbook

演劇学校の友人が帰国前に上演していたレヴューショウ。
自分で構成を書いて演出をしたとのこと。
なかなか大変だったと思います。
彼は沖縄出身で帰国後はカフェシアターを始めるそうです。
とっても楽しみですね。
いつか沖縄で公演させてもらいたいなあ。


The Call

白人の子供のできないカップルがアフリカの孤児を養子にもらうというオフのストレート。
題材がとても面白かった。
生まれたばかりの赤ちゃんがいいのに割り当てられたのは
どうみても4歳以上の娘。
彼女をもらうべきなのかどうか。
黒人の娘を持つ白人の母親として
肌の色の違い、髪の毛の違いなど何一つ自分とは違う娘を
育てられるかと不安に苛まれる。
貰われないと死んでしまうことになる一人の少女を巡って
それぞれが自分の理想と命の重さを考える作品。
ファッションのようにアフリカの孤児を養子にするセレブ達。
お金も名声もある彼らには簡単な事かもしれないが
子供を持つ事が一番の夢だったら。
理想の子供が欲しい、せめて自分以外の親の記憶を持ってない子供がいい。
そう思うのは当然の事のような気がします。
この作品の終わりは結局その4歳の娘を貰い受けるのですが
そこには夫が過去にアフリカで出会った別の少女の思い出や
その時に亡くした親友のことなど色々な要因があっての結論です。
自分だったらどうするのだろう・・・
自分の気持ち一つで一つの命が救えるだけどそれは理想とはほど遠い。
エゴであり善意であり答えは誰にもわからないけど
現実的に今も死んで行く子供達がいる。
なかなか社会派な作品で考えさせられます。
リアリティーのある芝居で入り込みやすかった。


Nance

まだゲイが弾圧されていた時代にフェミニンな芸風で活躍していた
バーレスクの座長をネイサン・レインが演じるオンのストレート。
前から2列目のセンターだったのでなんだか得した気分。
セットがなかなか好みでよかった。
盆の上に劇場のステージと袖、バックヤードをしっかり作り込んであり
転換中に盆が回ると色んな角度から覗けて臨場感たっぷり。
反対側には主人公のアパートが飾られている。
まあストーリーには特にひねりがなく
最初から想像通りでゲイの主人公が若い男の子を引っ掛けて
幸せに暮らすんだけど取り締まりが厳しくなって公演が続けられなくなり
しまいには逮捕されてしまう。そんでもって男の子ともこれ以上深入りできないと
自ら別れを切り出したりして結局劇場を追われることになり
一人寂しく劇場に佇む主人公に哀愁漂う感じ。
笑いあり歌あり踊りありでストレートなんだけど
どちらかと言えば音楽劇って感じです。
さすが名優ネイサン・レイン。
表情ひとつひとつに味がありますね。
作品自体は秀作というわけではありませんが
駄作でもなくそれなりの質を保った良作といところです。
ちょっと下品な描写が多いので苦手な方はいるかもですが
気楽にお酒でも煽って観るのにいいかも。
当時の厳しい現実を突きつけられる最後はなかなか演出がいい。
華やかさは終わりがあるから美しい。
そんなことを感じさせる作品。


Pippin

初演はフォッシーの演出でトニー賞まで獲得してる伝説的な作品。
今でもこの作品のファンは結構いるようです。
音楽はウィキッドのスティブン・シュワルツだし作品としての
ポテンシャル自体はかなり高い作品。
今回はリヴァイバル職人ダイアン・ポーラーが演出。
ヘアーとかポギー&ベスのリヴァイバルをやってた人です。
とにかくコンセプトはサーカスということで
これでもかというほど曲芸のオンパレードです。
エンターテイメントとしてはばっちりですね。
初演では男性が演じていたサーカスの座長の役を
今回は女性が演じるというというのも面白い。
この女優さんシスター・アクトの主演の人。
びっくりするぐらい踊るんだけどまあキレがあって素晴らしい。
歌も当然超絶に上手くてこんなに踊れる人がいるんだなあ。
日本じゃ絶対に出会えない。
全体的な振りはフォッシー風でとてもいい。
ただこのコンセプトとしてのサーカスが効果的な部分もあれば
ちょっと物語を逸脱させ過ぎていて無駄に感じるところもあった。
更に言えばもっと綿密に美しさや絵を整えることもできそう。
好みかもしれないがサーカス部分よりもフォッシースタイルで
踊ってくれる方がぞくぞくできた。
まだプレビュー中だから改善中かもしれない。
ストーリーはとてもいい作品だから
個人的にはもう少し物語りとしての成立に力を割いて欲しかった。
人生とは何かを問いかける作品なだけに
サーカスという夢が詰まった華やかさによって際立つ
人生の影、人生の不条理、人生の葛藤などなどがもっとみたかった。
エンターテイメントとしてはお腹いっぱいになるけど
作品の旨味がちょっと浅くなってしまったかな。
この世界がサーカスという夢物語のなかで繰り広げられるコンセプトは
とても共感できるからこそもっと上を目指せる作品だと思ってしまう。
とは言え俳優陣は本当に素晴らしかった。


Orphans

アレック・ボールドウィンが出てるオンのストレートのリヴァイバル。
孤児の兄弟とひょんなことから一緒に暮らすことになる
元孤児のマフィアのボス。
親子のように暮らしていくうちに芽生える愛情や幸せ。
そして弟を大切にするあまり手放せないでいる兄。
結果的にはマフィアが死んでしまって兄弟が悲しみに暮れるという悲劇ですが
作品は全体的に笑いが絶えず面白い。
孤児の兄弟の兄役の人は稽古の途中で降板した俳優の代わりに出演する事が決まったとかで
きっと大変だっただろうなと察しながら観てしまった。
それでもなかなかの好演でほとんど舞台経験んがない割りにはよくやっていた。
弟役の俳優は大好きな映画「パイレーツ・ロック」の主人公を演じていた俳優だった。
まったくイメージの違う芝居で感心させられた。
アレック・ボールドウィンはまあアレック・ボールドウィンなわけなんだけど
なんかこうあの揺るがない感じは凄い。
色々と素行に問題があるらしく共演者と揉めることで有名らしいが
あれだけ舞台の上で自由にキャラクターを自分に近づけて演じられるのに
不思議である。
作品的には演出家が秋にアル・パチーノのグレンギャリー・グレン・ロスを演出してた人なんだけど
その時ははっきり言って演出家としての才能を感じなかったんだが今回はなかなか
ポップに作ってあって面白く観れた。
別に驚くようなことはなくわかりやすく丁寧にというお利口さんな感じではあるが
はずさずに上手くまとまっていた。
最後のシーンはとてもよくてぐっと心をつかまれる。
荒削りなんだけど兄役の俳優の最後の芝居はなかなかだった。
これも1幕はちょっとうとうと。2幕はばっちりという感じ。
1幕ではメザニンの一番後ろだったから更にね。
2幕になってこっそり空席に移動したのでかなり集中力があがりました。
言葉がわからない身としては近さは死活もんだいですからね。


The Testament of Mary

これはとにかく凄かった。脚本も演出も女優も。オンのストレート作品。
舞台はエフェソスというその昔ローマ帝国に治められていた街にある
マリアの家と呼ばれる場所。
劇場に入ると舞台上にあがれてその遺跡的なところの見学ができる。
といってもセットは古代の感じではなく
普通のパイプ椅子が数個置いてあったり折りたたみの長机があったり。
遺跡的な壷とか有刺鉄線とかなんとなくキリストを匂わせるようなものもある。
本物の禿鷹が切り株にくくられていてなんだか不思議な空間。
そこに透明なアクリルでできた箱の中に微動だにしない女性が入っている。
どうやらマリア様らしい。
この作品は同名の小説を元にしていて内容は
キリストの母親としてのマリアを描いたもの。
キリストの死に直面したとき一人の母親として息子の死をどう捉えたのか?
着眼点が面白い。そして深い。
熱心なクリスチャンが上演反対デモを行ったりするぐらいの内容。
神格化されている聖母マリアの母親としての側面を掘り起こす試みは
カトリック教会にとってはタブーのようなもの。
そこにあえて光を当て生々しい一人の人間として描き出した事は
とても勇気のあることであり賞讃すべきことだろう。
更にこのマリアが自ら息子が磔刑にかけられる近辺の話を語る。
設定としては現在で、その崇められているマリアが観客にあの頃はね・・・
っていいながら語る訳でコントみたいなもんである。
ある意味シュール。
この設定のおかげでこんな重たい内容のわりに笑いが結構おきる。
こういう信仰の根幹を揺るがすような作品を上演するというのは
宗教という文化が社会を支えているアメリカではとても大変なことである。
日本人にはわかりかねる感覚だが
本当にキリストを神の子だと信じている人達にとっては
あってはならないことである。
そこにあえて切り込んで行くところが凄い。
ある意味ユダヤ教徒の多いNYだから可能なのかもしれない。
それにしてもこの重たい内容を一人で女優が演じきる。
まさに体当たりというか何かが憑依したような彼女の台詞、振る舞い。
Fiona Shawという女優さんなのだがトニー賞ではノミネートしかないらしいが
本国イギリスではオリビエ賞を何度も獲得した大女優。
さすがであった。まさに圧巻。最前列だったので食い入るように観ていたのだが
まったくもってその人そのものにしか見えない。
恐ろしい程の説得力である。
息子を救えなかった苦しみに苛まれる母親。
自分の息子ではなく神の子だと宣言する息子に何も言えない母親。
奇跡を目の当たりにするが素直に喜べない母親。
磔刑に向かう息子を眺めるだけしか出来ない母親。
一瞬一瞬を思い出し気が触れたように叫び苦しむ姿は痛々しく
彼女の苦しみがひしひしと伝わって来た。
一人の母親としての愛情と世界を救うという大義に翻弄され
今なお人々から一方的に崇められている彼女の終わらない苦しみ。
人間の存在。世界の存在まで考えさせられる。
主演の彼女と演出家はかなり長い間コラボレーションをしているようで
大仰ではないがシンプルで効果的な演出が利いた作品だった。
休憩なしでまったく息つく暇もなくあっという間に終わった印象だった。
次回作の参考になるシーンもあったりしてかなりの収穫。


The Trip of Bountiful

同名映画ではアカデミーの初演女優賞を獲得してい作品。
オンのストレートなのだがなかなか俳優陣が豪華。
オスカー俳優、エミー俳優、トニー俳優ばかり。
息子の嫁とうまくいかない姑が死ぬ前に一度は帰りたいと
こっそり年金の小切手を持ち出し一人で故郷まで度をする話。
この意地悪な嫁を演じてるのがヴァネッサ・ウィリアムズ。
トニーにもノミネートされる女優だが歌手でもあり
テレビではアグリー・ベティーで意地悪編集長をやってた人。
さすがはまり役でした。
それから主演のおばあちゃんがかなりいい。
この女優さんなんと昔マイルス・デイヴィスの奥さんだったそうです。
キャリアも素晴らしくオスカーにはノミネートされてるは
黒人女性で初めてエミー賞はもらってるはで名優の域の人らしい。
渡る世間は鬼ばかりを姑の視点から見てロードムービー仕立てにしたような作品。
愛していない夫と結婚してしまったから夫には悪い事をしたと後悔するおばあちゃん。
その罰が自分に返って来てるから今辛いのは仕方ないんだと納得してみたり。
愛すべき故郷が荒れ果て初恋の相手も死んでしまい
幼馴染も死んでしまい全てが消えて行く中昔暮らした家の前で
感慨深く家を眺める姿は印象深かった。
幕切れはその家から立ち去るのに名残惜しく手を振る切なさ。
家族のあり方、人生の終わり方を考えさせられた。
誰にだって人生はあってそれぞれの物がある。
その物語は一つとして同じじゃないわけで
そんなじんせいの物語をこうやって垣間見ることができるから
芝居ってのは面白いんだと思う。
しかも伝える為に何かをやるんじゃなくて
そこにあるから勝手に伝わるってぐらいそこに生きてる。
そんなことを感じられる芝居に触れてる時はなんか不思議である。
言ってしまえばただの錯覚なんだけど
心が動くんだからそれでいいんだ。

想像させて考えさせることができるといいな。
押し付けるんじゃなくて勝手にこっちがそうなるような。
この感覚はミュージカルだと作りにくいからなあ。
上手く作って行きたいですね。

脚本もとりあえず書き上げたもんだからちょっとだけ一段落。
色々と次の準備にとりかからなくては。
計画してるときは本当にわくわくしますからね。
想像だけは自由ですから。
新年度の始まりということで。

ではまた書きます。










質素倹約

2013-03-23 02:07:33 | tiptap
オープンラッシュのせいかオンの作品の観劇が多く経済的に余裕がない日々を送っています。
せっかくオンで開くミュージカルを観るなら良い席で観たいと思ってしまうわけで
rushだと基本的にパーシャルビューが多いため色んな技を駆使して
なんとか全体が観えてかつお値段抑えめのチケットを確保します。
抑えめといっても半額ぐらいにしかなりません。
それでフロントメザニンの4列目あたりって感じですかね。
実際に座ると高い金額も納得の席だからまあよしとします。
約80ドルぐらい。
まあ仕方ない。

そんなわけで最近は財布の紐をかなりきつく締めています。
観劇前のコーヒーと願掛けのロト以外はほぼ無出費。
食費は同居人が帰国前に残してくれた材料を使い切るまではかなり節約。
当然観劇費は別です。
まあ苦しいと言えば苦しいですが慣れたもんです。

元々お金を貯める癖が無くあれば使ってしまいます。
むしろ無くても使ってしまいます。

別に社会人になってから贅沢な生活をしているという訳ではありません。
1回の公演の度に軽く30万ぐらいは持出している訳で
過去最大の持出し時はお恥ずかしい話ですが150万ぐらいの赤字を
ほそぼそと返済していたこともあります。
芝居を打つだけでまあ年収の半分ぐらいのお金を使う年もあったように思います。
おかげで確定申告は常に赤字になり還付金が帰って来る訳です。
どうもお金にあまり執着がない性格のようです。

とはいえ今は稼ぎがないわけですからあるお金でやりくりしなくては。
あと5ヶ月余りは質素倹約に務めたいですね。

さてこの一週間はそんなこんなでちょっと少し抑えめの観劇でした。


Hit the Wall

60年代に起こったゲイ解放運動の発端になったゲイバーを題材にしたオフのストレート。
今でこそゲイは市民権を持っていますが
当時は差別の対象であり更に法律的にも同性間の性交渉はソドミー法という法律で禁止されていました。
この「ストーンウォール」というゲイバーで起こった警官との衝突が発端になり
ゲイ解放生運動が広がり法改正を実現するというわけです。
当時のゲイに対する偏見、差別を絡めながら耐え忍んで生活していた彼らの実状が
垣間見える作品でした。
同性同士に結婚が認められるようになった今、NYではもはやゲイに対する差別は
あまり感じられませんが苦しみや葛藤を抱えた人々の心を打つ作品なんだと思います。
内容は事実を元にしているだけあり重みのある作品ですが
仕上がりはまあそれなりにという感じです。
可もなく不可もなく。


The Mound Builder

ネイティブアメリカンの遺跡発見を夢見る考古学者を題材にしたオフのストレート作品。
ランフォード・ウィルソンというピューリッツアー賞受賞作家が
最も愛した自作でありながら当時の評価がいまいちだった作品。
遺跡の発見が生み出す公罪、人間関係の崩壊を描く内容で
なかなかストーリーとしては面白みもあるように思われたがいかんせん長過ぎた。
セットと演出に工夫は感じられたが冗長さを打破するまでとはいかなかった。
小さい頃に考古学者に憧れシュリーマンを読み吉村作治氏のもとでいつかは働きたいなんて
夢を持っていたことを思い出して懐かしくなった。今でも史跡や遺跡には心が躍る。
題材としては確かに面白いと思う。いつか手を出してみたい。


Saga

アイスランドで実際に起きた金融危機による銀行の国有化と
古くから伝わる民話を絡めた人形劇。
ストーリーは単純で主人公がペンションを始めようとしていたやさき
銀行の国有化で融資が頓挫し、裁判に負け家族も家も全てを失い
復讐のために人を殺してしまうという話。
救いの無い話なのだが面白可笑しくファンタジックにパペットを使って
表現していく様は観ていてとても楽しい。
アイディアがとても面白く人形劇というより密度の高い芝居である。
演劇的に想像させてくれる演出、感傷的なパペットの表情
コミカルなパペットの動きなどとても感心させられた。
欧米の演劇作品には結構パペットが登場する。
有名どころでもWar Horse, Avenue Q, などなど。
上記の2作品はまったく種類が違うがどちらもパペットが主役と言ってもいい。
この二つ以外にもこちらに来て5、6本はパペットが出て来る作品を観た気がする。
あまり日本では出会う機会があまりなかったのだが
なかなか演劇的で面白い手法だと思う。
想像させるということがとても演劇的だ。


Trevor

一昔前にテレビの人気者だったアニマルタレントのチンパンジーのトレバー。
そんな彼の余生を描いた作品。
実際に起きたチンパンジーと飼い主の女性の暴行事件を題材に
愛し合う物同士でありながら意思の疎通ができない儚さを
コミカルに描いていた。
とにかく着眼点が面白い。
チンパンジーを演じるのは俳優なのだが
彼がショウビズ界での成功と挫折を感じ未だにあの頃に戻りたいと
必死にもがく姿は滑稽でありながらどこか心を打たれる。
そんな彼の気持ちには気づかない飼い主。
隣に越して来た女性は我が子を心配するあまり放し飼いのチンパンジーに敵意を持ってしまう。
それぞれの感情のすれ違いが結果的に悲劇をもたらしてしまうのがなんともやるせない。
一見して動物と人間のディスコミュニケーションを描いているのだが
同じ人間同士でもこうやってすれ違い悲劇を生むのが現実である。
その要因は宗教、言葉、価値観、などなどあげればきりがない。
お互いに攻撃的ではなくても衝突してしまう。
終止笑いっぱなしの作品であるがなかなか考えさせられた。
演出的には特に特徴のない仕上がりだが本の秀逸さの光る作品。


The Drawer Boy

第二次世界大戦で傷を負い短期記憶ができなくなってしまった男と彼を支えながら暮らす友人。
酪農を生業にする二人のもとに農家を舞台にした脚本を書く取材の為に訪れる俳優。
3人のおかしな共同生活を描いたオフオフのストレート。
カナダで初演され評価が高く各地で上演されている作品。
脚本がかなりいい。
物語の終盤で実は傷を負った友人の気持ちを傷つけない為に
幸せな過去の作り話を聞かせ信じ込ませてきたことがわかる。
何が事実で何が正しいのか。
誰かの幸せのために誰かが犠牲になるのか。
人生の歩み方には色々あって何が正解かなんてないのだろう。
友人が選んだ人生に後悔がなかったとは言い切れない。
だけどなぜか清々しいあったかさが作品を包んでいた。
今書いている作品のテーマにとても関連する作品だっただけに
観れてよかった。
優しさとはなんだろうか。
幸せとはなんだろうか。
とても考えさせられる。


Vanya and Sonia and Masha and Spike

チェーホフの4つの代表作「かもめ」「桜の園」「ワーニャ伯父さん」「三人姉妹」
をごちゃまぜにして舞台をアメリカに移したオンのコメディー。
とにかく面白い。
チェーホフを知らない人でも充分楽しめる作品。
躁鬱病のソーニャのめんどうをみている作家志望のワーニャ。
50過ぎて仕事をしない二人の生活を支えている大女優マーシャ。
三人の兄妹が久しぶりに一同に会し家を売るかどうかで一悶着が起きる。
脚本はもちろん俳優達が素晴らしい。
最初から最後まで笑い通しの作品だった。
恥ずかしながらシガニー・ウィーバーが出ていることを下調べで気づかず
更に観ているときもシガニー・ウィーバーに似てる上手な女優だなあと感心していた。
まさかシガニー・ウィーバーが出てるなんて思ってなかったので。
我ながら不覚すぎた。
ばたばたしててPlayBillを斜め読みしたことも悔やまれる。
家に変えてテレビを観てて気づくという始末。
あのシガニー・ウィーバーだったのか!と納得させられた。
いつかエイリアンのパロディーミュージカルが作りたいものとしては
もっとがっついて観ておきたかった。
とにかく作品は本当に面白い。
演出も技巧的で丁寧につけられていて無駄が無い。
それぞれの見せ場はもう実力がないと成立しない本なだけに俳優力は圧巻である。
やっぱりコメディーはいいなあ。
コメディー欲がでてきてしまった。


Detroit'67

67年当時のデトロイトを舞台にモータウン音楽を通じて惹かれ合う黒人男性と白人女性を描いた作品。
当時のひどい差別や理不尽な現実が見え隠れする。
作品の仕上がりとしてはややいまいち。
俳優も演出もそこまで悪くないのだが
なんとなく脚本に旨味を感じない。
当然悲劇で救われないはなしなのだが
なんというか味わいをあまり感じられなかった。
ある意味使い古されたモチーフであり展開も予想されるストーリーである。
これといって目新しさも感じない。
当事者や差別されてきた人々の心を打つのは当然だが
それ以上の作品には仕上がっていないのが残念である。
このようなテーマを扱った作品は山ほどある。
もっと優れた作品が沢山ある訳でちょっと及ばなかった気がする。
もはやテーマだけでは押し切れないほど
一般化したテーマになったのだと思う。
それはそれで良い事なのかもしれない。


Honky!

絶大な人気を誇るバスケットシューズを奪う為に起きてしまった黒人の子供同士の殺人事件。
白人のシューズメーカーの社長と刺激的なCMを作ってしまったコピーライター、
黒人のシューズデザイナー。
それぞれの目を通して人種差別とは何かをシニカルに描き出すオフのストレート作品。
差別と区別は何が違うのか?
区別することは正しくないのか?
ある意味このようなことが問題提起されるぐらいには
差別問題が改善されたということなのかもしれない。
肌の色で人を差別してはいけない。
それは当然のことだが肌の色を元に何かを判断することは果たして問題だろうか?
個人的には肌の色の理由だけで何らかの権利を奪う事は間違っていると思う。
だが肌の色で何かを区別することはあってもいいんじゃないだろうか。
それは個人の好みや考え方でありそれを変えることだって可能だ。
ひとくくりに差別だといって声を荒げるほうが差別的な気もする。
どう思ってもいいし好き嫌いがあってもいい。
ただ同じ人間だと認めることができればいいのにと思う。
作品自体はなかなか意欲的で面白い部分もあった。
ただ演出的にはもう一歩という感じ。
人種差別を治す薬というアイディアは面白かった。


It's a Bird... It's a Plane... It's Superman

言わずと知れたアメリカンヒーロー、スーパーマンのミュージカル。
かなり昔にブロードウェイで上演されたもののリヴァイバル。
このプロダクションはアンコール!という団体で
この団体はブロードウェイ作品のリバイバル上演を続けている団体。
現在オンでかかっているシカゴはこの団体の作品。
今回は敬愛するジョン・ランドー演出ということで楽しみにしていた。
馬鹿馬鹿しくてくだらない持ち味がしっかりでていて楽しめた。
決して豪華はなくお金のかからないチープな仕上がりだが
きちんと観客が楽しめる作品になっている。
ストーリーははっきりいってつっこみどころ満載だが
どこかあったかさを感じてほっこりする。
俳優陣は結構豪華だった。
特に驚くような仕掛けも無くオンのロングラン作品とは比べものにならない作品だが
逆に言えばこれだけの最低限の条件で
きちんと観客が満足できるものはできてしまうということが言える。
演出的にチープさを逆手にとってしまうという彼らしい手法だと感心。
お金がないからといって面白いものが作れない訳ではない。
とかいって自分で作るときはお金が欲しいって思っちゃうんだなあ。


Buyer and Sellar

ちょっと前にやってた「アグリー・ベティー」というドラマで
ゲイのアシスタントを演じていたマイケル・ユーリの一人芝居。
ゲイのアイコンアイドルであるバーバラ・ストライサンドと若いゲイの俳優の交流を描く作品。
脚本がなかなか面白い。
バーバラの豪邸にある地下の巨大なショッピングモールを模した倉庫で
モールの店員を演じることになる俳優。
お客と店員という寸劇を続けながら二人の距離が近づいていく様は
とてもコミカルでチャーミングであった。
元々舞台出身の俳優らしくとても好演していた。
自らも実際ゲイであることもありかなりキャラクターがあっていたのだろう。
一つ一つの仕草、声色、表情を上手く使い分け
様々なキャラクターを演じわけていた。
こういう作品を観ると一度は俳優を志した身として
俳優の凄さに感服しつつも楽しそうだなあと思ってしまう。
約100分一人で演じ続けるのはなかなか大変だろう。
自然体でいながら観客をうまく湧かせ、ちょっぴりしんみりもさせる。
気軽に楽しめる一芝居としてはおすすめかもしれない。


そんなこんなで今回は10本。
計155本になりました。
さてあと5ヶ月程で何本まで行くでしょうか?
200本はいけるかな。

トニー賞の日程も決まったようですし色々とわくわくする事がありますね。
執筆中の脚本もそろそろ終盤にさしかかってきました。
次の上演がいつになるかはわかりませんが
なるべく早くやりたいですね。

では、また書きます。