プレイのノミネートについて紹介する前に
一週間の観劇作品をご紹介。
とうとう200本の大台をこえてきました。
I'm a Stranger Here Myself
第一次世界大戦後のドイツ、ワイマール共和国出身者達が
当時の自由で危ない空気の中生み出した音楽の数々を紹介しながら
亡命した彼等の人生を語る一人ミュージカル。
あの「キャバレー」の時代の話です。
本当に色んな人があの頃ベルリンにいたわけですね。
結果的に祖国を追われてしまう芸術家達ですが
そんな彼等が後の世に名前を残して行く姿が垣間見えて
なんだか胸が熱くなりました。
結局のところまたユダヤ人の話になっちゃうわけですが
NYという土地柄もあるんですかね。
あの当時のナチスの台頭をゆるしてしまう雰囲気は
当時の日本にもかなり似ています。
関東大震災のあとの復興から昭和モダン。
見せかけだけの好景気と右傾化。
これってなんだか似ていますよね。今の日本にも。
色々とみながら考えてしまいました。
This Side of Neverland
ピーターパンの作者は劇作家なんですが
彼の短編作品を2作続けて上演するオフのストレート作品。
一本目は歳をごまかしてる大女優の
ずぼらな私生活と彼女に憧れるファンの男性を描いた作品。
その女優の母親だと思われてしまう程普段はふけてるのに
舞台にたつとまだまだ20代前半に見えるという設定。
わかりやすいコメディーでした。小気味よい感じ。
2本目は爵位の授与をされる夫が
お知らせの手紙を送るのにタイプライターを雇ったところ
別れた妻がやってくるというこれまた喜劇。
妻が家を出た理由がタイプライターとして
自立するためだったと最終的に分かる話。
2作品とも当時の女性の苦労が見て取れて面白かった。
Different Animals
ダブル不倫の夫婦を描いたオフのコメディー作品。
病的にぶっとんだ不倫相手の彼女に振り回される夫婦と
妻の不倫相手。
妻は元カレの不倫相手の子供を妊娠してしまうし
夫は妻の不倫を見つけて自分の不倫相手と3人で暮らすことにする。
もうなんだかわけがわからないモラルもへったくれもない
はちゃめちゃなコメディーでした。
とにかく不倫相手のぶっとんだ彼女が凄過ぎて
ずっと笑いっぱなしでした。
この女優さんが脚本も書いてるようで流石ですね。
The Girl I Left Behind Me
欧米にも沢山いたんですね男装の麗人。
日本人的には宝塚で慣れ親しんでますが
こちらにも古くからそんな文化があったそうです。
まあいわゆるキャバレーやバーレスク的なのりですね。
そんな昔の男装の麗人達をとりあげた1人ミュージカル。
とは言え今になってはこっちの人には珍しいらしく
なんだかそれが面白かった。
当時の偏見やレズビアンに対する差別などなど
ちょっと重ための内容を実在した女性達をとりあげながら
歌い上げて行きます。なかなか面白かった。
宝塚好きな人が見ると本当に面白いんだろうなあ。
The Firework Maker's Daughter
同名の児童小説を元にオペラ化した作品。
オペラと言っても子供向け。
花火職人を父親に持つ娘が花火職人になる修行のため
冒険をして最後は花火の審査会で認められて父親を救うというお話。
影絵やスライド投影などてアナログな技術を駆使して
子供達を楽しませていました。
ただ最近オペラをひたすら字幕で観てたせいか
言葉が入ってこなくて変な感じ。
でも作品全体はとても暖かくて満足できました。
子供向けの作品を専門に上演する劇場で観たんですが
この劇場42ndSTのまさにタイムズスクエアの横にあるんです。
こんな一等地にあって子供向けの作品を上演し続けられるって凄いなあ。
日本じゃ子供の城がなくなるってのに。
The Caucasian Chalk Circle
ブレヒトの「コーカサスの白墨の輪」です。
「Spring Awakening」のダンカン・シークの音楽で上演。
こないだまで「Passion」を上演していた劇場。
凄く不思議な取り合わせですがちょっともったいない感じ。
生オケじゃないからちょっとチープでしたね。
作品の仕上がりは面白いし、演出も細部が行き届いてるんだけど
音楽と作品の質感が生じゃないからたまにミスマッチ感があった。
ぴったりはまってるところもあるんだけど
はまりきれてないところもあったりでおしかった。
まあこれは贅沢なのかもしれないですけどね。
個人的にはブレヒトって日本であまり観てこなかったんだけど
ラ・ママで観た「セチュアンの善人」しかり結構好きなんだと思います。
大学の卒論でかなり調べてこともあったりで
ブレヒトという人間の芝居観にはかなり共感しているので
作品に触れられるとなんだか嬉しいですね。
説教臭い感じがなんだか安心するのかもしれません。
因に観た人しかわからないけど
Onceのバイオリンのお姉ちゃんが主演でした。
全然雰囲気が違ってびっくりした。当然バイオリン弾いてました。
上手ですねえ。歌も芝居も。バイオリンも。
Old Fashined Prostitutes
これははっきりいって意味がわかりませんでした。
いや多分言葉がわかれば何か感じ取れたんだろうけど
台詞の詩的な美しさまでは読み取れないので
まったくもってキャッチできなかった。
そもそもこの作品はPublic Theatre製作で
前衛演劇の巨匠の数年ぶりの復帰作とか。
前衛なんだけど70歳オーバーなんですよ。
不条理というかナンセンスというかシュールというか
とにかく詩的な何かが断片的に行われるんです。
面白いっちゃ面白いけどストーリーなんてあってないし
ただただ詩が立体化したというイメージ。
客席もぽかんとなんだけど劇評を読むとかなり好評価。
こういう物をみると自分もまだまだなんだと痛感します。
でもこの意味不明な感じが面白いんだろうな。
ただ不思議なものがそこにあるって感覚はたしかにしました。
だから逆に演じる俳優の凄さがわかる。
これは俳優のモチベーションだとか感情だとかの次元じゃなく
俳優の生理を無視しているものです。
それでも立体化している俳優を目の当たりにすると説得力はあるわけです。
人間やればできるんです。俳優もね。
これはできないって言わせないぐらいの巨匠になればね。
それがいいかどうかは置いといてそう言う意味で
個人的にはとても勉強になりました。
Walküre, Die
ワーグナーの4部作の2作目「ワルキューレ」です。
どうやら今シーズンのラストだったらしく
Rushが買えずに立ち見でした。
とにかく疲れた。実はこの作品昔NYに来た時に一度観てるのですが
その時は爆睡してしまって記憶にありませんでした。
なので今回はリベンジなんですがなかなか面白かった。
やっぱりワーグナー作品の中でも人気作品になるわけです。
ライトモチーフもわかりやすくてキャッチーだし
話もそこまで突拍子がないわけでもない。
まあ近親相姦的な部分はありますが神話ですからね。
1幕2幕は立ちっぱなしで
3幕にやっと空席を見つけて座った途端睡魔が・・・
立ち見の疲れですかね。
なんとか最後まで頑張りました。
今期はこれで4部作の上演は終わりとか。
1作品だけ見逃してしまいました。
いつの日か制覇したいものです。
Murder Ballad
珍しく同じ作品を3度も観てます。
でもこの作品好きなんですよ。
話はたいしたことないんだけど演出と音楽がかなり好み。
今回は去年の暮れの上演からすぐに決まった再演のプレビュー初日。
ちょと劇場が大きくなってました。
広くなったせいかちょっと熱量が散漫になってしまった気もしますが
全体的な美しさは増した感じですかね。
主演というかヒロインの女性が違う女優になっていて
これが結構しっくりはまってました。
ちょっと前回のキャスティングだと
この人がこの人と恋におちるかな?ってところもあったけど
今回のほうが説得力はあったかも。
CDがでていたので買ってしまいました。
日本で上演したいなあ。
どこも上演しないならうちでやりたいなあ。
Far From Heaven
「Gray Gardens」のクリエイターが集まっての新作ミュージカル。
演出はNext to Normalのマイケル・グライフ。
かなり期待しておりましたが
Rushが買えなかったのです。
アドヴァンスチケットもSoldOutとかで
とりあえずキャンセル待ちして待ってたら
なんとキャンセル待ちが出て6ドルで観れました!
一列目のど真ん中。主演はKelli O'Haraです。
こちらじゃかなりのスターですからチケット売れてるんですね。
チケットは彼女のファンが抽選で当たったんだけど友人が来れなくなったとかで
一枚余ってるから発券手数料の5ドルでいいと言って売ってくれたのです。
僕は20ドル札しか持ってなくて彼女が14ドルしかおつりがなかったので
1枚6ドル。交渉成立。かなりラッキー。
まだプレビュー初日ということもあってかなりばたばたしてました。
当然主演女優は素晴らしいのですがちょっと作品には期待はずれ。
本の内容自体がそこまで共感できないし新しくもない。
夫がゲイだとわかって庭師の黒人さんを好きになる主婦を描くんですが
時代が50年代だからまあ色々と大変なのはわかります。
だけどなんか主人公の境遇が贅沢すぎてそんなに寄り添えない。
逆にもっといけないことってな感じでセクシャルでエロティックに
描けば面白くなるのかなあ。物語にあまり魅力を感じませんでした。
妻が庭師に惹かれているいく部分にもっとスリリングな何かが欲しいなと。
でも全体的に上品に仕上げたいんだと思うしこれはこれでいいのかな。
演出も奥のスクリーンにいちいち具体的な映像を投影したりと
ちょっと好みじゃなかった。再演のRENTで感じたあの感じです。
まあまだまだプレビューも長いのでこれから変わっていくのでしょう。
マイケル・グリーフの演出は作品によって善し悪しが結構わかれる気がします。
想像力を駆使させる趣向の時はかなり個人的に好きなんですが
今回やRENTの再演などはちょっと説明的になりすぎていて
わかりやすいけど心に響かないなあと思う事があります。
「Giant」なんかは素晴らしかった。もちろん「Next to Normal」もね。
とは言え好みの問題かもしれません。
今日までで206本。
200本目はThe Girl I Left Behind Meでした。
あと3ヶ月半で何本まで行けるのでしょうか。
250本ぐらいはいけるかな。
次こそはプレイのノミネートについて書かなくては。
ではまた書きます。