優男なミック・ジョーンズ



 いつもお世話様です。VKです。我が家のパソコンが調子悪くなってきました。なので、今回の原稿は100%、携帯からの打ち込みです。おかげで目がチカチカして、頭重がずっと続いています……。

優男なミック・ジョーンズ

VK石井

 中古CD店の安売りコーナーで、自分が若かったころに夢中になったアルバムを見つけると、その安さもあってついつい買ってしまうってこと、よくありませんか? 
 さらに、そのアルバムを何年かぶりに聴いてみて、どうにもその良さを実感できず、「あのときはあれだけワクワクして聴いてたのに、実はこんなんだったっけ?」とモヤモヤしちゃうこと、ありません?


ザ・クラッシュ『白い暴動』(1977年)と『動乱(獣を野に放て)』)1978年

 先日、ふらっと立ち寄った中古CD店の安売りコーナーで、中学・高校時代に聴き狂ったアルバムを見つけました。
 クラッシュの『白い暴動』『動乱(獣を野に放て)』
 これ、特に高校一年のときに毎日取っ替え引っ替え聴きまくってたアルバムで、バンドが発するメッセージはよくわからないながらも、その強烈なサウンドにただただぶちのめされた記憶はいまだ鮮明に残っています。
 あれから20余年、このアルバムはいまの自分にどう響くんだろ? まったくつまらなく聴こえるかもなぁ……などと思いながらも、でもとにもかくにも聴いてみようかと買ってみました。

 この二枚、あらためて聴いてみると、サウンドの強烈な印象はずっと昔に聴いたときのまま。「あれ、こんなんだったっけ?」とモヤモヤするどころか、新たな発見にビックリするばかりです。ガリガリと粗削りなパンク・サウンドなのにそこに見え隠れする苦悩に満ちた叙情性や、訴えかける激しいメッセージの中にある意外なほどの詩情、ジョー・ストラマーのオピニオン・リーダーとしての立ち位置や突出した彼のカリスマ性など、このバンドがもっていた多面的なすごさをいまさらながら痛感しているところです。なんの悩みもなく、日常をただ浮かれて過ごしてただけの高校時代の自分にはまったく響かなかった、曲に内包されている様々なものが、大人になってようやくわかってきたような気がします。

 そんなワケで最近はクラッシュ漬けな毎日です。オリジナル・アルバムを聴き直すのはもちろん、貧しかった高校時代にはなかなか手の届かなかった彼らの周囲の人脈もゴソゴソと探り始めたりしてるんですが、いろいろ調べていくと彼らとステディな関係にあった女性もミュージシャンとして音源を残してるんですよね。ジョー・ストラマーの彼女だったパロマ・ロマーノ(のちのパルモリヴ)はスリッツのメンバーとしてデビューしてるし(その後、レインコーツにも加入)、ミック・ジョーンズと恋仲だったエレン・フォーリー、ポール・シムノンとつき合ってたパール・ハーバーなんかは、それぞれが、クラッシュがバック・バンドを務めたソロ・アルバムを出したりしてます。

 ここでブロンド好きな貴兄が見逃せないのはエレン・フォーリーでしょう。エレン二作目のソロ・アルバム『悲しみシアター』は、収録曲のほとんどが、ストラマー&ジョーンズ書き下ろしの曲と、ジョーの旧友でのちにメスカレロスにも加入することになるタイモン・ドッグの曲とで構成され、プロデュースは当時の彼氏ミック・ジョーンズ。クラッシュの大作『サンディニスタ!』制作とほぼ同時期に、同じロンドンのウェセックス・スタジオで録音され、同じレコーディング・スタッフで制作されたというアルバムで、バック・バンドはもちろんクラッシュが担当。クラッシュ・ファミリーの全面バックアップのもと作られたアルバムは、「アナザー・サイド・オブ・『サンディニスタ!』」とも言われるように、ジョーの代わりにエレンが歌っている「ソフトな『サンディニスタ!』」な印象が濃厚な作品です。


ザ・クラッシュ『サンディニスタ!』(1980年)とエレン・フォーリー『悲しみのシアター』(1981年)

 当時のミックがどれほどエレンにデレデレだったかは、『サンディニスタ!』に収録されている「ヒッツヴィルU.K.」で、エレンとデュエットしているミックの声がまるっきり甘えん坊さんなことからも想像できるんですけど、エレンの方も『悲しみシアター』に「Produced by My Boyfriend」とクレジットしちゃったりで、もう誰にも止められない様子。
 また、『サンディニスタ!』のアウトテイクとなった、その名も「ブロンド・ロックンロール」(ボックスセット『クラッシュ・オン・ブロードウェイ』に収録)でのデュエットでは、奔放に歌うエレンに対して困惑してるようなミックの様子が聴いてとれます。硬派なロック野郎が一転、「わがままな彼女に振り回されてる優男」な風情で、なんだか見ちゃいけないものを見てしまった感も……。


ザ・クラッシュ『クラッシュ・オン・ブロードウェイ』(1991年)

 ジョーも、パロマと一緒に写ってる写真では爽やかな青年然としてたり、ポールもバンドのツアーにパールを帯同させ仲睦まじい姿を見せたりと、硬派なイメージのクラッシュも、それぞれの彼女と活動を共にするなかでなかなか温かい人間味を出してるのがまたおもしろかったりします。
 いま思うと、彼女たちはけして、前に前に出たがる目立ちたがり屋とか「自分が一番」という自惚れ屋でなく、ただただ恋人に尽くす存在だったのかなぁとか考えを巡らせてしまいますが、実際はどうだったんでしょうねぇ。

 ちなみに、エレン・フォーリーはいまも散発的にライヴをやっているみたいで、ミックが歌った「シュッド・アイ・ステイ・オア・シュッド・アイ・ゴー」をライヴのレパートリーに入れてるようです。ラフながら嬉々として歌う姿がネットの動画で見ることができますが、こんな歌詞をいまになって歌われるなんて、作曲者で元カレのミックはいったいどんな思いでいるんでしょかね……。

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 それはそうと、こんなモテモテメンバーに囲まれながらも恋の噂をまったく聞かなかったトッパー・ヒードン。「オレは女よりクスリだな」とか言いそうなオッチャンだし、やっぱり恋人なんていらないのかなぁ。
 ま、理由はどうあれ、物事に一途に突っ走る体質ってのがクラッシュにはあったと思うし、そんなところがまた愛すべきバンドでしたよね。

ところで、どうでもいい話なんですけど、クラッシュの彼女たちのことを考えてたらなぜか「クラッシュ・ギャルズ」って言葉が浮かびました。あのタッグ・チームはもう一回見てみたいですよねぇ。ついでに辻口さんのキャット・ファイトも見てみたいこのごろです。

 ではでは、またよろしくお願いします。石井

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 そんなVK石井の面白気なネタ振りはこの際無視して、近年のミック・ジョーンズといえばこれしかない! トニー・ジェイムズとのどうしたこうしたとかどうでもよくなってしまうこちらを↓推薦。必見中の必見、もしかしたらご存じの方も多いかも?


映画『CODE 46』

 この映画、ミック・ジョーンズがカメオ出演しておりまして。でもね、ネタばらしなんて野暮なことはしませんよ。みなさんも予習なんかせず、とりあえずレンタル屋さんでDVDを借りて僕と同じショックを受けて下さい。知らずに見ていて気が付いた時はもうね、リアルに口あんぐりでした。ついでにDVD特典ではそのシーンの別テイクまで収録、トドメを差してくれます。ステイ・フリーすぎで流石です。(辻口)

[投稿原稿受付中:送り先]
dig@shinko-music.co.jp






『リデンプション・ソング ジョー・ストラマーの生涯』
クリス・セールウィクズ著/大田黒奉之訳




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