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新刊案内:ヴィンス・ニール自伝


 お寒うございます、寒くて腰が痛い辻口です。数日前にVK石井原稿で更新しましたが、丸々2ヵ月放置しており、楽しみにしている皆さん申し訳ありませんです。ずーっと沈黙しておりましたせいで、以前ここでもご紹介しました高校時代の友人O君も昨日遂にしびれを切らして、「早く更新してくれよ」とメールを送ってきました。ごめんよO君。あれからいくつ発電所作った? そんなわけで新刊案内です。

『ヴィンス・ニール自伝
肩書:ビジネスマン、兼モトリー・クルーの
ヴォーカリスト』
マイク・セイジャー(著)、迫田はつみ(訳)


 これまでにも『The Dirt/モトリー・クルー自伝』『ニッキー・シックス/ヘロイン・ダイアリーズ』と制作を担当してきまして、そして今回この本ということで。なんかもう気持ち的には、モトリー・クルーの4人が友達のような気がしてきております。
 ファンの皆さんならご存じでしょうが、こいつら本んんんっ当ーーーにどうしようもないヤツらでして、どいつもこいつも死にそうなぐらい無茶してきているクセに、どういうわけだかしぶといし死なない(ニッキー・シックスに至っては一度死んで生き返ってます)。そんな厚かましくも図太いキャラがその音楽同様彼らの魅力でもあり、お陰で先の2冊同様、今回のヴィンス自伝もメチャクチャ面白いです。

 本書の主人公、ヴィンス・ニールの場合、一度モトリー・クルーをクビになっているわけで。バンドは代役を加入させるも、その間はさっぱり鳴かず飛ばず。その後不本意ながら再びヴィンスを呼び戻せば、契約を切られてもものともせず、再び爆発的セールスを上げてしまう──こんな状況、そりゃあヴィンスじゃなくても調子に乗りますよ。しかも「その上」ヴィンスな訳で。だから、普通なら公にしないような愛憎入り交じったどろっどろの裏事情も、実にあっけらかんと明かしてしまう。そんなところが、これまたいかにもヴィンス・ニール。20年来のつき合いとはいえ、他の3人のメンバーはかつて自分を容赦なく切り捨てたメンバーでもある。だから本当はもうやりたくないけど、お金の問題もあるし訴訟を起こされても困るので、声がかかれば活動には参加する、とか。
 一方で、幼くして病で命を落とした娘さん=スカイラーにまつわるエピソードには、グッとさせられます。スカイラー他界後も同じ病で苦しむ子供たちのために基金を設立、その活動を今も継続的に続けているところなど、「親としては」とても素晴らしい。けどなあ……「男としては」となると……。次から次へとまあ、人としてどうかと思うぞ。なのにすんげえモテやがる。ああームカつく!──しかし、セックス&ドラッグ&ロックンロール、そればかりの一冊ではございません。

 この本、現在発売中の『BURRN ! 』3月号誌面でも広瀬編集長にご紹介いただいておりまして。そこには「ヴィンス側の視点から見たバンドの裏側が語られているという点で待望の一冊」とのお言葉が。本当にどうもありがとうございます! 何しろ本書のポイントは、この一点につきると思います。
 そしてそれとはまた別の意味で、いかにもヴィンス・ニール~モトリー・クルーらしくて個人的に好きなのが、最終章、一番最後の一節。ヴィンス自身がバンドのことをこんな風に語ります。;

 俺が思うに、モトリー・クルーは未だに存在に相応しい尊敬を得られてはいないと思う。俺たちが未だにロックンロールの殿堂入りを果たしていないのはどうしてなんだ? 何か問題になることでもあるというのか? みんな、俺たちの成し遂げた業績に気がついていないんだよ。その代わりに、俺たちが悪名を馳せる原因となったくだらない話の方にばかり目を向けるんだ。結婚、逮捕、ドラッグ、破産……俺たちがいかにして自分たちの稼いだ金を酒とドラッグに使い果たしたか、ラズルを殺すことになった事故はいかにして起こったのか、ニッキーはいかにしてドラッグの過剰摂取で命を落とし、再びよみがえったのか、とかね。モトリー・クルーに起こった悪い出来事はみんな覚えているのに、大きな流れを生み出し、大量のアルバムを売り上げ、いくつものヒット曲を出した上に未だに活動を続けている、そんなバンドとしての俺たちの存在は認めようとはしない。バンドの4人のメンバーが作り出したゴミの方ばかりを見てるんだよ。ゴミばかりじゃ埋め立て地じゃないか。
 モトリー・クルー──俺たちは偉大な業績を生みだした。だが、それと同時にモンスターも作りだしたんだ。


 いかにもヴィンスらしい言い回しです。やらかしてきた悪行の数々、それはそれで結構ですが(結構じゃないのもあるけど)、ゴシップ的裏話や自分をハブにした3人を悪し様に言うばかりならただの下品な暴露本になってしまうところ、自分がフロントに立ってやってきたバンド対する自負と誇り──最後にそれをこうしてちゃんと語ってくれているので、面白裏話本としてだけでなく、ミュージシャンの自伝本として素直に読み終えることができるのです。こういうのってやっぱり嬉しいじゃないですか。

 とまあ、そんな具合で。「悪行三昧ロックンロール・バンドの極悪エピソード集」でもありますが、ファンの方なら楽しめること100%請け合い、しかも読み終えたらこれまで以上にモトリーが愛おしくなるような一冊です。ぜひお読みになってください。

[投稿原稿受付中:送り先]
dig@shinko-music.co.jp




『The Dirt/モトリー・クルー自伝』



『ニッキー・シックス/ヘロイン・ダイアリーズ』



『アイ・アム・オジー オジー・オズボーン自伝』
オジー・オズボーン/クリス・エアーズ著、迫田はつみ訳

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