the other half 2

31歳になりました。鬱で負け組。後悔だらけの人生だけど・・。

傷跡。

2008-01-17 23:01:21 | 社会復帰編
1月17日



手首にあてた刃物の傷跡をみつけたのは、

同居している母でも、

毎日顔をあわせる会社の同僚でもなく、

27歳の青年だった。


僕の左手首には、一本の傷跡がある。


リストカットをする人たちの気持ちがわからないでいた。

死にたいのならもっと確実な方法があるし、

自分の体を傷つけて何が変わると言うのか。





ためらい傷なんて格好が悪いから、一気に切ろうと思った。

黒いカッターナイフの刃を左の手首にあてた。


力をいれる。


痛い。


でも、もっと。

眼はそらさない。


ぐっと力をこめたとき、刃先に血がにじんだ。

そのまま一息にカッターナイフを引く。


バイオリニストが、バイオリンの弦を引くように、

一息に、スマートに、大胆に。


うっすら浮かんだ一線の傷跡。


力が足りなかったか。


そう思ったとき、ぽたりと紅い雫が滲んで落ちた。



そしてとめどなく、あふれ出る紅い液体。




あぁ、そうか・・。


こういうことか。




紅い雫はとめどなく、じわじわと湧いてでる。

ぽたりと、雫がシーツに落ちた。



洗わなきゃ・・血の染みって落ちないんだよな・・。


僕は終始冷静だ。


いつだってそうだ。


自分で、自分を切ったのだから、驚く訳もなく。



にじみ出る紅い液体を、舐めた。


血の味がする。


鉄の味。




手首を切った。


血が流れて。


僕は、安堵する。




この感覚だ。



なるほど。そういうことか・・・。





少し深く切りすぎたせいか、すぐに消えるであろうと思っていた、その切り傷は、
今でも紅い一線となって僕の左手首に残っている。


母に知れたら大変だ。

彼女は狼狽し、自分を責めるだろう。




慎重に、シャツは長袖のものしか着ない。





そして今僕は彼の前にいる。





「あ・・傷・・。」



「ダメですよ、自分をいじめちゃ。」





彼は横たわった僕の手を握りながら、マッサージを続ける。

それが彼の仕事だから。



誰かに手を握ってもらうのは、悪くない。



紅い血の味は、癖になる。




手首をつたい、流れ落ちるそれは、ぬるっとしていて、あたたかい。




そして僕は、安堵する。






なるほど、こういうことなのか・・・。





彼は、僕の背中を触りながら、「肌がきれいですね」と言う。


ありがとう。





できれば、この傷跡を褒めてはくれないか。



紅い、鮮やかなそれは、美味だ。






そして僕は、安堵する。



次回、君に会ったときには・・・。




僕はまた、安堵する。