蛙の掘立小屋~カエルノホッタテゴヤ~

蛙のレトロ探求と、本との虫と、落語と、日々の雑事。

『奥様は魔女<吹き替え版>』~夏の映画リレーその1

2005-09-08 21:52:47 | お話大好き・映画編
1000円デー&カードポイント、その他割引措置を活用できる限り活用して、この夏見た映画は5本。(『SWエピソード3』『姑獲鳥の夏』『皇帝ペンギン(吹き替え)』除く)
鑑賞順に、
『奥様は魔女(吹き替え版)』
『ロボッツ(吹き替え版)』
『ヒトラー ~最期の12日間~』
『妖怪大戦争』
『サマータイムマシン・ブルース』
以上、簡単身勝手な感想をば。

先ずは、『奥様は魔女』から。

★あらすじ★
ハリウッドの空き家に降り立った、キュートだけれど何処かテンポがずれている女性・イザベラ。実は彼女は、「普通の生活」を夢見る魔女だった。指を一つ鳴らせば全て手に入る、そんな生活はもう飽き飽き。料理を作って、ビデオのケーブルをセットして、ダーリンとペンキの色で喧嘩してみる。
しかし、いざ生活をするとなると、どう働けばいいのかわからない。そんな彼女に女優の話を持ちかけたのが、落ち目の俳優・ジャック。彼は『奥様は魔女』のリメイクドラマに再起を賭けていた……。

冒頭部分で看板が「EMPTY」ではなく「空き家」になっているのを見て、ようやく自分は吹き替えを見ているのだと思い出しました。つくづく、金髪ねーちゃんを見ると外国語を期待するように、脳味噌が条件付けされているなぁ。パブロフの蛙。
今回は元ネタが米TVドラマということと、実力派声優さん(イザベラを岡本麻弥さん、ジャックを山寺宏一さんetc.)を起用したことで、『皇帝ペンギン』のときのような違和感は感じませんでした。個人的に。

今回大変面白かったのが、ダーリン・ジャックのキャラクターです。自分が目立つようにズブの素人を登用しようとしたジャックですが、本当はオリジナル『奥様は魔女』の大ファン。プロデューサーたちとの打ち合わせで、最初は自分を引き立たせる為に無茶を要求していた筈が、いつの間にか無邪気なファントークになっている。魔女の奥様・サマンサ役は自分の引き立て役だと言いつつ、鼻ピクピクの動かし方には誰よりも拘る。ワルになりきれないのでドジは踏みまくるし、頼りない。しかし、イザベラはその頼りないところにマイってしまう。所謂、「母性本能をくすぐるタイプ」という奴です。
ジャックやいい奴ぶりを発揮し始めるのは、イザベラが魔法を使わずに怒りをぶつける後半以降ですが、如何にもアメリカTVドラマ風の大げさで陽気な演技で前半もバカだけど憎めない男を好演。ウィル・フェレルのくるくる変わる表情と山寺さんの声の演技がマッチしています。また、こんなどうしようもない男のいい部分を直感的に見つけてしまうイザベラが、とてもキュートな女として魅力が増してきます。
さて、このダーリン役。オリジナルでは「ダーリン役の俳優が途中から代わっても、誰も気づかなかった(byジャック)」そうですが。今回、ジャックという欠点だらけだけれど愛すべきダーリンを設定したことによって、奥様とイコールの関係になったように思います。多分、今回の映画版スタッフも、その辺りを狙ったんじゃないかな……と。よかったね、ジャック。少なくとも、途中で変わったら気がついてもらえるよ(爆)。

次に面白かったのが、話の構造です。まだダーリンと奥様になっていない二人が、リメイクドラマを作る過程で恋に落ちていく。この辺りはまだ二次創作の技法としては平凡なんですが、最後。ドラマのセットそっくりの二人が「一番ハッピーに暮らせる家」に入っていくシーンで、ドラマ版のご近所夫婦に当たる人が出てくる。奥さんの方はイザベラの魔法を目撃して腰を抜かすが、旦那さんは気づかない。物語の終わりが、物語の始まりになる。しかもよりオリジナルに近い形の。
確かにこれも斬新なオチではありませんが、映画とTV版の対比があるからこそ綺麗に決まりました。

イザベラの魔法は、女性ならずとも人間なら誰でも「な~んちゃって」と妄想してしまう種類のもの。自分を認めない相手をギャフンと言わせる為に、呪いをかけて自分の崇拝者にしてしまうとか。我が物顔で近づいてくる元カレ元カノの嫌味な態度にブチ切れて、撮影所ライトの下敷きにしてしまうとか。人間なら出来ないから笑い話で終わり、魔女なら取り返しがつくから「自制心無さすぎ(byイザベラ)」と落ち込む程度で済む。「こんな馬鹿な仕返ししてると、笑われるのはあんただよ」と思わせてくれる辺りが、落語と同じ?

面白い映画でした。個人的にはスクリーンで観てよかったと思っているのですが、TVで見ても良い意味で遜色ない。よってお勧め度はちょっとばかし減少するので、評価は控えめです。
蛙的映画ランク:C+