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きょうは芥川賞の発表日

2024年07月17日 13時13分38秒 | 一言
 きょうは芥川賞の発表日。本欄恒例の候補作一気読みです。他者排除が顕著な時代の反映か、各作品に「私とは何か」「自他の境界線は明確なのか」という問いが通底していると感じました。
 朝比奈秋「サンショウウオの四十九日」は結合双生児の姉妹が主人公。頭も胸も腹も接続し一体にしか見えないという奇妙な設定によって、人間には自分だけの体や思考、記憶、感情などは存在せず、雑多なものを共有し合って生きていると示唆します。
 向坂(さきさか)くじら「いなくなくならなくならないで」も、個の輪郭をほどく作品。互いの悲しみに感応していた親友の朝日が自殺したと知らされ、喪失の空洞を抱え続けてきた時子。しかし突然、朝日が現れ、時子の生活は侵食されてゆき…。
 松永K三蔵「バリ山行」は、業績不振の外装工事会社で首切りにおびえながら働く男たちが、不安を打ち消すようにやぶ山に分け入り危険な山行を繰り返すさまを活写。〈自分も山も関係なくなって、境目もなくて、みんな溶けるような感覚〉の至福を提示します。
 尾崎世界観「転(てん)の声」は、チケットの転売でプレミアがつくことがバンドの価値となる業界の狂騒の中、音楽の喜びや感動が損なわれる葛藤を描き、消費をあおる「推し」文化も照射します。
 坂崎かおる「海岸通り」は、老人ホームの派遣清掃員の孤独な女性が、ウガンダから来た女性と一緒に働くうちに、その違いゆえに心が開かれ、救われていく物語。多様な他者を包摂することで生まれる豊かさの形です。


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