陸・海・空自衛隊による統合演習(10~20日)で、九州と中国地方の四つの民間空港を使って戦闘機の離着陸訓練が実施・計画されています。空自の基地が攻撃によって使用できなくなるという想定です。自衛隊の戦闘機が有事を念頭に置いて民間空港で離着陸訓練をするのは、軍民共用空港を除き初めてといいます。戦時に軍事利用される空港・港湾が相手国の攻撃の標的になる危険は明白です。
安保3文書に基づき
離着陸訓練が実施・計画されているのは、大分空港、岡山空港、奄美空港(鹿児島県)、徳之島空港(同)です。岸田文雄政権が昨年末に閣議決定した安保3文書で「有事において、部隊等の能力を最大限発揮する」ため「民間の空港、港湾施設等の利用拡大を図る」としたのを具体化したものです。
大分空港での訓練は、空自築城基地(福岡県)からF2戦闘機が出撃したものの、その後、同基地の滑走路が使えなくなるという想定で行われました。築城基地の代わりに大分空港に着陸し、給油や整備も実施されました。岡山空港でも同種の訓練が行われました。
徳之島空港での訓練は、空自那覇基地が使用できない事態が想定されたといいます。同基地のF15戦闘機が滑走路に接地後すぐに離陸するタッチ・アンド・ゴーを訓練しました。奄美空港も同様の想定です。那覇基地では、統合演習の一環として、攻撃などにより損傷した滑走路を復旧する訓練も行われました。
加えて重大なのは、安保3文書が民間空港・港湾などの利用拡大にとどまらず、自衛隊がより使いやすくするため整備や機能強化を進めるとしていることです。
岸田政権は8月、そのための関係閣僚会議を開いています。報道によると、会議では整備方針を確認し、沖縄や九州、四国を中心に約40の空港・港湾を候補地(未公表)としてリストアップし、既に地元自治体と調整を始めているとされます。民間空港では、沖縄県の与那国、新石垣、宮古の3空港で滑走路の延長が計画されているといいます(「東京」10日付)。
さらに安保3文書は「有事の際の対応も見据えた空港・港湾の平素からの利活用に関するルール作り」を行うとしています。
従来、自衛隊が民間空港・港湾を使用する場合は、その都度、管理者である自治体に申請をしていますが、そうした手続きを必要としない調整の枠組みを作ろうとするものです。自衛隊の優先使用につながりかねません。
今回の統合演習は、「中国が台湾に攻め込む『台湾有事』を念頭に置いたもの」と報じられています(「朝日」14日付)。しかし、「台湾有事」では、日本への武力攻撃は発生していません。
「台湾有事」を想定
想定されるのは、「台湾有事」に軍事介入した米軍を支援するため、集団的自衛権の行使を認めた安保法制に基づき、自衛隊が武力行使する事態です。安保3文書に基づき導入が加速する長射程ミサイルの使用も含め、敵基地攻撃に乗り出せば、自衛隊基地や軍事利用される空港・港湾などへの報復攻撃は避けられません。そうした演習を認めることはできません。
今必要なのは、戦争が起きないようにする憲法9条に基づく外交努力です。
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