登場人物にみずからを重ね合わせた人も多かったのではないか。話題を呼んだ朝ドラ「虎に翼」が最終回を迎えました。平等とは人権とは何かを正面から問うたドラマは“私の物語”として共感をひろげました。
すべての国民は法の下に平等であって差別されないと定めた憲法14条を太い柱に、生きづらさを抱え声を奪われてきたさまざまな境遇の人たちを描きました。切り捨てられたり、ふるいにかけられたりしない社会になることを願って。
最終回の日は、自民党総裁選の投票と重なりました。新総裁となった石破茂氏は、この日本をもう一度、皆が笑顔で暮らせる、安全で安心な国にするために尽くすと。そう口にせざるを得ないところまでおとしめた責任はどこに。
格差を拡大し生活を脅かし、平和をつくる努力もせず軍拡にふみだす。人権を損ない差別を助長させる。社会的な弱者や少数者に寄り添わず、人びとから権利や自由を奪う。だれがリーダーになろうが、そういう政治を大本から変えないかぎり、息苦しさだけが増していきます。
朝ドラの主人公は口ぐせの「はて?」を使って社会にある違和感を問いただしていました。その「はて?」が至るところにあるのが自民党の政治です。
「自分に関係ないと思わないことが、世の中を変えると信じている」。脚本を手がけた吉田恵里香さんはドラマを通して一人ひとりが主語になる世にしたいと訴えます。そのためには声をあげること。だれもが社会を変えられる一員だというように。