居酒屋黙示録 新章 暖簾を繋ぐ刻

旧き善き銭湯を訪れ、立ち飲みを巡り、居酒屋で思う。

部屋飲み 独り湯豆腐

2015-11-27 14:02:44 | 家飲み
岡山での寮生活では食事は三食職場での支給によって食べることも可能ではあるが、時間制限が結構厳しいのと夜は結局酒を飲むので昼食だけ食べる事にしている。
朝はご飯を冷凍しておいて卵と納豆、インスタントの味噌汁で十分。
夜は飲みを兼ねるので、自分の趣味を押し通す絶好の機会なので見逃す訳にも行くまいよ。

そんなこんなで、広島から寮に戻る日の事。
朝から歯医者を予約して、終ってから岡山に戻るルートを楽しむだけ楽しむつもりで代休まで使った移動の始まりである。
先ずは国道185号線を東へと走り出す。
国道185号線は広島市と呉市を繋ぐ瀬戸内海沿いを走る国道31号線に続き、呉市から三原市までをひた走る道だ。
海岸線から田んぼの間から、山あいの道からとレパートリーに富んだ国道で初めて通る人ならば中々楽しめる道なのではと思うが、既に通り飽きた私などに取っては冗長な田舎道としか思ってはいない。
それでも在るところには良いものが在るもので寄り道するポイントに事欠かない。

先ずは安登駅を過ぎた先にあるミュラーオオタニ。
ソーセージやベーコン、生ハムなどを扱う店だ。
お薦めは、言ってしまえば良くわからない。
知らなければ何を商っているのかさえ、さっぱり判らない店の前にバイクを止め店へ。
店の前で舗装された道は終わって先に続くのは、人しか通る事が出来ない畦道なので後ろから車が来ることを気にする必要は無い。
ドア開け店に入り、スリッパに履き替え奥に進む。
初めて来たときは、ここに入るのでさえ躊躇したものだ。

店内に誰も居なかったが、気にせずにショーケースの中を見て今日何を買うかを物色する。
店内はショーケースがなかったら、骨董品店か店主の趣味が行き過ぎてしまった喫茶店のような有り様で、とてもハムなど売ってるようには見えない。
店内に御主人は居なかったが、店に入る前に裏の燻製器の方に煙が見えたのでそのうち来るだろうと勝手にショーケースを見ていると、直ぐにドアから御主人が入って来られた。
前回来たときも買った色々セットをお願いすると、既にスライスしてパックしたものから4種類ほど選んでこれでどうですかと聞いてくれる。
今日はヤークブルスト、シンケンブルスト、パプリカブルストと後一つは名前が判らないがオーソドックスなソーセージ。
何を食べても旨いから是非も無い。
更にお薦めを聞くと、ベーコンがあるが脂が多いから2つで1000円にしてくれると言うので、買うことにした。
いつもなら一個800円位だからお買い得だ。
キャベツと一緒に鍋にぶちこんで鍋にするのも良いかもしれん。
御主人に礼を言って更に旅を続ける。

竹原からは海沿いの国道185号線を離れ、山を抜ける県道75号線を走る。
竹原ー三原間をほぼ直線的に抜ける山道で数年前までは、車の離合が難しい狭い所もあったが今では綺麗に整備されており、交通量も少ない非常に走りやすい道となった。
いつもならば真っ直ぐ三原を目指し市街地を避けて三原バイパスに向かうが、今日は寄ってみたい所があって山を越えてすぐに県道59号線を左折。
2号線を越えて県道33号線に変わり河内の方に向かって2キロほど、今度は大和町に続く県道343号線へ右折して、暫く進むと田圃の中に一本の幟が見える。
人の家の庭先では無いのかと考えてしまうような道を入って行くと広島では結構有名な豆腐店、渓水庵に到着だ。
広島でも町中のスーパーではなく、やたら高い物が並ぶアバンセが扱ってる位。
まあ高いと云っても普通の絹ごし、木綿は1個150円。
厚揚も一つ買って全部で500円。
しかも袋一杯に雪花菜を詰め込んだものをおまけにくれ、ポテトサラダみたいにマヨネーズで合えて具材入れると美味しいですと教えてくれた。
是非やってみるとしよう。

県道を下って2号線に戻り、東進を再開。
三原バイパス全線を走り尾道に入る。
流石にまだ、銭湯が開く時間では無いので今日は尾道はスルーだ。
福山で酒屋に寄り道したが、先日買ったのも開けてないので買いはせず、東進を続行。鋼管道路から笠岡バイパス、海沿いの県道をひた走り4時前に玉島のセブンイレブンで休憩する。
そういえば昼飯も食って無かったが、そんなに腹は減ってないな。
ピザまんとコーヒーで暖をとり、この先のルートを模索。
明るい内に玉島の港湯跡まで行けそうなので、写真を撮りに行くことにした。
日が陰り寒くなってきたのでオーバーパンツとネックウォーマーを着け、グローブを冬用の物に変える。
いつも通っている水玉ハイウェイの下をくぐり玉島の市街地。
港湯はその川の畔、羽黒神社とお茶屋さんの間にまだその姿を遺していた。
在りし日の港湯に思いを馳せ、写真を何枚か撮影し旅を続ける。
水玉ハイウェイに復帰し、水島でも酒屋を覗き木村式奇跡のお酒の値段を見て今度にしようと決める。
水島インターの手前を右折、児島の方に向かう。
真っ直ぐ行けば昭和湯の前の道に繋がっているが、荷物多いし流石に風呂はパス。
瀬戸大橋線上の町駅の先から由伽山の方へ曲がればもう少しで長旅も終わる。
寮に戻ってしまうと、もう外に買い出しに出るのも億劫なのでスーパーに寄って卵、薬味野菜、雪花菜サラダに入れる魚肉ソーセージと胡瓜、それとビール一本を購入。
あと少しで寮って所に若観門豆と言う豆腐屋があり、玉野市では大抵のスーパーで売っている豆腐がある。
ここの豆腐も高級な方で税抜き150円だったと思う。
普段は安い豆腐で十分なのだが、折角三原で渓水庵の豆腐を買って来たのだ。
食べ比べて見たくなると言うものだ。
絹ごしと木綿を一丁づつ。
もー寄り道しねえ。

流石にこの日は疲れたので厚揚焼いて、雪花菜サラダ作ってビール飲んだら寝てしまったので湯豆腐は翌日に。
寮に戻ってビールが無かったので買い出ししようと思ったが、雨降ってきた。
ウェザーニュースの雨雲レーダーでは小1時間もすれば、抜けそうだったので着替えたまま寝っ転がってスマホのクイズゲーで時間潰ししていたが止みそうにない。
テレビのdデータで雨雲を見ると止みそうにないので買い出し中止。
湯豆腐の材料はあるから良いや。
ご飯が無かったから、2合炊いて湯豆腐の準備。
薬味野菜は昨日刻んであるので鍋に水を張り昆布をぶち込んでカセットコンロに火を着けるだけの簡単なお仕事です。
今日は絹ごしの気分なので、良い大きさに切る。
若観門豆の豆腐は正方形厚目なので4つに、渓水庵の豆腐は長方形なので6つに包丁を入れる。
薬味は昨日用意した白葱と青葱。
そして白葱、青葱、茗荷、貝割大根、大葉、生姜を全て微塵に刻んで混ぜたもの。
冷奴には使った過去があるが湯豆腐には初使用だ。
あとは辛子と鰹節削り、醤油と昆布醤油を脇に控えて準備よし。
マグカップに氷を放り込み、富乃宝山全量綾紫を注ぎ一口。
マグカップは誕生日にビレッジヴァンガードで買ってもらった富士山のモザイクタイルプリントのマグである。
酒を飲む時すら銭湯気分を味わえる俺の為に作られたかのような代物だよな。

湯が沸き立ってきたところで2種類の豆腐を一個づつ鍋に入れる。
焼酎を啜りながら、じっくり待って煮えたところで皿に取り上げ、さて開始。
初めは何も付けずにそのまま食ってみる。
柔らかさでは渓水庵の方が柔らかいが、大豆の味が若観門豆の方が少し濃い。
しかしどちらの豆腐も旨い事に変わりはなく、食べ比べは満足行ったので後は好きなように食うことにしよう。
醤油を垂らして続きを、更に第二弾を鍋に投入。
第二弾は横須賀の老舗居酒屋銀次風に、辛子、白葱、鰹節に醤油で。
んー、これは燗酒欲しくなるが今度同僚と飲む約束してんだよな。
今日は焼酎で押すことにするか。
第三弾は一個は青葱てんこ盛りに昆布醤油、もう1つから合わせ薬味野菜で食らう。
これがまた旨かった。
合わせ薬味は色々な所に使えるが、やはり豆腐は最強かも。
湯豆腐の締めは大概、雪消飯。
豆腐百珍に出ていたレシピのぱくりみたいな物だが、茶碗半分程のご飯に豆腐を乗せて箸でざっくり崩す。
そこに湯豆腐の皿に残っている薬味と醤油を掛け回し、最後に鍋に残ってる昆布出汁が出た湯を掛けた茶漬けみたいなものだ。
いやあ堪能しました。
さて後木綿が二丁あるから明日も湯豆腐決定ですな。

尾道 寿湯

2015-11-24 06:02:17 | 銭湯
尾道の寿湯をgoogleで検索してみると出るわ出るわ。
詳しくレポートされてる方が沢山いらっしゃるので、これは別に俺がレポートしなくても良いんじゃね?という気もしてくるが行きたく無い訳では決してない。
同じ旧市街の金比羅湯も廃業され、日の出湯は休業中。
後は寿湯、大栄湯、大宮湯、栗原温泉となるがいつもの様に先ず栗原温泉が外れる。
残る三軒の中から選ぶとすれば、寿湯を選ぶことに何ら迷うことはない。
問題はいつ行くかではなく、いつ行けるかの話になる。

岡山での仕事もまだ先はあるが、たまには広島に戻ってやらなければならない事も出てくる。
土日を利用して帰るわけだが、当然の様に尾道を通過することになる。
この機会を利用しなくてどーすんだという訳で、金曜から半休を使いバイクで岡山を明るい内に出発。
高速は使えないから一般道をえっちらおっちらと走るのだが、この行程ももう何回通ったことか。
最近は如何にストレス無く走れるかと云う事に主眼を置いて、交通量の多い国道2号線はあまり通らない。
主に混むのは岡山県の金光町辺りから広島県福山市の市街地辺りまでなので、岡山県内は海岸線の浅口市から寄島、笠岡バイパスを抜け福山市の鋼管道路へ出る。
2号線の南側を走る幹線道路から福山の駅近くまで走り、2号線に乗り後は赤坂バイパスへと乗って行く。
バイパス自体は松永道路、尾道バイパスと繋がって尾道の西側まで行くが松永から先は自動車専用道路となり二種原付は走れないので松永から旧2号線を通る。
寿湯のある尾道市栗原の方に向かうには旧2号線から国道184号線を曲がって北上するのだが、岡山方面から来た場合直接右折出来ない様になっている。
一端そのまま通り過ぎ、ローソンで休憩を兼ねてトイレを借り、街カフェのコーヒーを飲んで身体を暖める。
流石にここまで休憩無しで走って来たので腰と言うか尻が痛い。
ついでに地図をもう一度確認して大まかな位置を掴む。
北上した後、イオンの北側の道を東進し大栄湯前を通り過ぎた後、また北上。
と頭には入れていたが曲がる所を一つ間違えイオン駐車場に突入。
幸い二輪だったので大栄湯の目の前に出る事が出来たが、4輪だったらもうここに車置いて歩いて行くか状態になったと思う。
大栄湯の写真を一枚撮り 寿湯の方に向かい、色々なレポートのヒントを頼りに漸くたどり着いた時には、辺りは暗くなり始めていた。

まっちゃんさん曰く最早わざと隠しているとしか思えないと言うのも納得。
細い路地を覗き込むだけでは見えず、その前まで行って初めて銭湯らしいと判るレベル。
もう攻略本なしにトライフォースが集まらない感じである。

入口に鎮座ましまししていたにゃんこに避けて貰って写真を一枚、さてさて早速入りますか。
引戸を開けてお邪魔します。
見上げる程に高い番台は今日もお留守です。
しかも男湯に誰もいないので、仕方なく仕切り壁越しに女湯のお客さんにお金は後でも大丈夫ですかと確認して風呂に入る事に。
ロッカーは最近見慣れてきた木製ロッカー、数は4段8列漢数字入り。
昔は戸板に穴が空いていて昔は中に鍵があったようだが今は外されているようだ。
外鍵を着けた所も有るようだが全部ではなく、付いている外鍵もかなり年季が入っている。
他に誰もいないのに鍵は別に良かろうと、真ん中辺りのロッカーを開けると、戸板の裏に広告が貼ってある。
これは渋い、思わず何ヵ所か開けては見入ってしまった。
ロッカーに服を放り込み、いざ浴室へ。
浴室の入口は木枠のガラス引戸だが、立て付け良くすんなり開いた。
メンテナンスがしっかりされているようだ。

浴室は幅二間奥行四間はあろうか。
浴槽は仕切り壁中央に二間、カランは外壁側奥に5個、温度調整もできるシャワー付のカランはこの浴室内で新しい部分のようだ。
湯桶台は奥2個分と手前3個分で造りが違っている。
奥はブルーのタイルで少し高く、手前は白地に僅かに青い模様入りのタイル貼り。
手前側の湯桶台下は排水溝になっているが、奥側はそのまま床に続く。
浴槽のブルーのタイルと同じ感じのする奥部分がオリジナルの湯桶台だろうか。
真ん中のカランで身体を流すが、使い勝手が今一つ分かり辛い
左側のダイヤルが湯温調整、右側が湯の出し止め、正面に有るのがカランとシャワーの切り替えなのだが何度も間違える。
終わりの方で漸く慣れたが、最近の物に慣れるとこうなってしまうのだな。
髭もしっかり剃って風呂道具を袋に仕舞い、さあ浴槽に浸かろう。
浴槽は幅一間の奥行二間、角は落としてあり入口側三分の一が浅くなっているのは先日行った有楽温泉と似ているが、深湯との仕切りはなくステンレスのパイプ一本で仕切られているだけである。
深湯の方は広島名物三段式で、仕切り壁側は腰掛け段が一段あるだけだ。
浴槽底と内壁は1センチ角の水色タイル。
これは大変な仕事だ。
浴槽縁は水色の長方形タイルでこれも有楽温泉の浴槽仕切りに使われていたな。
しかし寿湯の浴槽縁は見事なアールを描いて外壁に繋がっていき、この造りが非常に凝った物だと見てとれる。
浴槽外壁はこれまた有楽温泉の浅湯底にあったのと同じ、玉石風のタイルで浴槽周りの床10センチほどまで続いている。
床のメインタイルは、4枚で八角形を構成する色の薄いタイルとその隙間をやはり4枚で埋める色の濃いブルータイルの組み合わせ。
古い建物だがかなりハイカラな感じだっのではないだろうか。
仕切り壁と入口引戸の両脇の壁は石造りのように見えるが、軽く叩いて見るとタイルなのかこれ。
だとしたらこの組み方は凄え!
殆ど目字無くぴったりと組合さっていて、見える範囲内に凸凹もなく本当に戦前の建築なのかと疑いたくなるレベルだ。
表面は今でもつるつるとしており、メンテナンスの良さがあちこちから見てとれる。
男湯女湯合わせて四間四方となる天井は入母屋風に中央が高くなって、中央一間に湯気抜きが切られている。
天井の材質は判らないが、細い線が入った感じからブリキかトタンを貼ってあるようだ。
奥の壁には小さなドアが切ってあり、昔は海藻を敷き詰めた蒸し風呂があったと誰かのレポートにあったな。

他にお客さんも居ないのを良いことにがっつり堪能させていただきました。
浴室にお客さんが来たので、上がり湯を浴び身体を拭く。
脱衣場に戻ると御主人が戻られて番台に座っていた。
服を着てから、「先ほどおられなかったので、先にお風呂頂きました」と料金を渡すと、女湯の人から聞いていたらしく「あぁ、あんたね」と言われた。
テレビで見ていた相撲中継が終わると、御主人が番台から降りてこられ「どちらから来たん?」と聞かれたので、岡山から広島に帰る途中ですと答えると「そーね、遠いところ」と関心された。

町田忍先生は地方の銭湯に行くときは料金をしっかりお釣りなく支払い、一見だけどこの付近の銭湯には来てますよ感を出して、常連客の邪魔にならない様に下手のカランを使うと銭湯の謎に書いていたと思うが、昨今それは無理っぽい。
なにせ顔を覚えられる程の常連客しか来ない銭湯が多い中、どんなに常連っぽく振る舞おうが見知らぬ客は見知らぬ客でしかなり得ない。
ならば下手に常連ぶるよりは、この銭湯に入るためにどこそこから来ましたって素直に言っちまった方がわざわざ来てくれたと取ってくれる様に思える。
そんなこんなで俺は判らないことは素直に誰かに聞く。
それで邪険にされたことは今までないし、却って優しい常連客に教わる事も多いと考えている。
横須賀の銀泉浴場もそうだったな。
閑話休題。

他に客も居ないのか御主人は一度女湯の方に行くと、「旅のお客さんに」と言って一本の野菜ジュースを俺に差し出してくれた。
もうこの時点で感涙物だ。
430円の銭湯料金から野菜ジュースの分引いたら赤字なのは間違いない。
児島の昭和湯が井戸水使用でデッドラインが20人と聞いた。
5時半少し前から6時を過ぎた今までに、俺が見聞きした客の数は4人。
とても割りに合うもてなし方ではない。
御主人は脱衣場の造りを逐一説明してくれる。
先ずはこの銭湯、昭和6年の建築。
御主人が産まれた年でもあるとのこと。
左官だった御主人の父親が建てられたそうで、至るところに奢った材料が使われている。
仕切りの鏡はアメリカから仕入れた物、縁の木材は栗の木で現在も狂いもない。
縁材には名酒誉の露、三軒家吉源酒造場と左流しで彫られており今では廃業してしまった蔵であるとの事だったが後で調べるとまだ現存しているらしい。
仕切りの羽目板はナラガシと言われていたが、ナラガシワなのか奈良産の樫なのかは俺にはわからなかった。
しかし未だに狂いも反りも見受けられず、良い材料なのは間違いないようだ。
天井は米松、幅こそ普通に四寸程だが真っ直ぐ一枚で三間、節も無くこんな松材手に入らねえよ今時分。
ロッカーは欅、蝶番が緩んでも戸板が変型したりはしておらず音も立てずに戸板が収まるのは感動モノ。
床板は桜材、幅広なので流石に反りが出ているがひび割れなどは見当たらずガタガタと音を立てる所もない。
他にも下足棚は欅と松、上がり框はこれまた太い米松だ。
浴室のタイルは多治見のタイル、屋根瓦は菊間瓦で普通は寺社に使われる物だ。
これらを聞いているだけで如何にこの銭湯が贅を凝らした造りだったか、それを御主人が誇りに思い営業を続けてきたのかが良く判る。
感想を伝えるのに、上手い言葉が出て来ない。
薄っぺらな言葉を重ねるよりはと、素直に素晴らしいお風呂ですと言うよりは他はなかった。
そこで返ってきた言葉こそ最大の衝撃、あと一年程で閉めようと思っているとの事。
気の利いた事など言えようもない、唯一言「残念です」と言うのが精一杯だった。
それからまた少し話したが、最後に「また来ます」と言って暇した。
社交辞令ではなく、必ず来るつもりで。
その時はもっともっとこの銭湯を細かく知って自分の記憶として残すために。
そして渡邉酒店や惜しまれつつも姿を消して行く全ての銭湯や立飲みのように、誰かの記憶に残すためもう一度俺はここに来る。
その時は堂々と「また来ました」と挨拶しよう。
番台に誰も居なくても、堂々と風呂を使いゆっくり御主人を待つことにしよう。
それが多分、自分に出来る精一杯の事なのだから。


岡山市 有楽温泉

2015-11-23 18:08:27 | 銭湯
岡山での生活も大分経ったが、横浜でのご乱行が響いての緊縮財政から漸く脱却できたのでちょっとお出掛け。
仕事終わって着替えてそのまま岡山市街へ向かう。
目当ては先ず酒屋、そして銭湯。
市街に近付くまでは順調に流れてた道も帰宅ラッシュで流石に渋滞し、原付二種とは云えそうそう速くは走れない。
時間的に先に銭湯を考えていたが、酒屋に寄ってから風呂としよう。
要は風呂上がりから帰る迄の時間を短くしようという魂胆である。

岡山市青江にあるワインショップ武田は岡山に来たときは大体寄っている。
ワインショップとあるが、日本酒、焼酎も多く岡山の地酒に強いのも特筆すべき点の一つだ。
また個性ある蔵の日本酒も多く、ソガペールエフィスヌフや新政亜麻猫、紀土、山和などはこの店で初めて買いその旨さを知った。
さあて今日はなに買うかと日本酒の棚をじっくりと検分する。
小遣い貰ったとは言え、調子に乗って高いの買ったらまた大変な事になるのは目に見えてるので、リーズナブルな所で4合瓶2本位かな。
岡山酒は大体飲んだことのある物なので、今日は他の所にするか。
新政あるけど3000オーバーは厳しいな。
30分近くも店内をうろうろして、紀土の純米吟醸と来福の純米吟醸を選んだ。
あとは嫁と娘への土産としてマシュマロを買う。
中にチョコレートとコーヒークリームの入った2種類、6個入りで300円はマシュマロとしては高級だろうな。
他に珍味系のつまみも欲しかったが、今日は抑えておこう。

さて、銭湯だが岡山の南側は情報として四軒。
その内岡山の浴場組合のHPに出てるのは桜湯、有楽温泉、福島温泉の三軒だ。
そしてネットにほぼ情報なしの清輝湯。
西大寺に柳湯が残っていれば問答無用の突撃コースだが、無い袖は振れん。
福島温泉は青江から少し離れるので今回は外し、桜湯は改装してスーパー銭湯系になっているらしいので今日は表を見るだけに止める。
清輝湯があったという場所は前にこの近くにラーメンを食いに来た覚えがあるが、銭湯があったとは全く気付かなかった。
ネットで見る限り、暖簾もなく煙突も目立たないし、桶持った人がドアを開けて中に入る所を目撃しなければ銭湯と判らないらしいので仕方ない事ではあるが。
地図を頼りに来てみたがそれらしい建物も無い。
どうやらこの新しそうなマンションがそれっぽいな。
ここまで綺麗に無くなっていると、感慨もそれほど湧いてこない。
玉野市玉にあった松の湯もその跡形すら無くなっていたが、ナカムラさんの風呂屋の煙突にその在りし日の事が記されているので、当時の事を知ることが出来る分惜しむ気持ちが湧くのだが、情報も少なく痕跡すら無いと気分の揚げ様が無い。
そんな訳で今日は有楽温泉に決定したので、清輝湯跡を後にして有楽温泉へと向かう。

然程迷うこともなく、幹線道路から裏に入った所で湯の文字の入った電光看板を発見、その下に有楽の文字
バイクを止めて早速中にはいる。
番台に誰もいません。
上がって着替えていた先客に「誰もいないんですか?」と聞くと、今奥入ってるだろうから風呂入ってから払えば大丈夫だよと言われたので、それに従うことにした。
脱衣場は幅二間で床は板張り、ロッカーは木製漢数字入りだが最近見慣れてきたな。
服を脱ぎロッカーに押し込んで、何時ものように浴室へ。
他に客は居らず女湯からも声は聞こえない。
うはっ、マジ貸切状態ですか。
とりあえず身体を流すか。
浴室奥にある小さな木戸から鉄パイプが2本、奥壁から外壁側に組まれており湯水のカランが取り付けられている。
中普請で直したんだろうな。
床のタイルも古びてはいるが、湯桶台のタイルより新しく見える。
カランは奥壁に3、外壁に5個。
低い椅子にあうように低い湯桶台と鏡、浴室内は少し暗いが髭を剃るところまでやりきった。

さて浴槽、岡山浴場協同組合のHPで小さな写真を見たときから、気になってたんですよ。
三間程の奥行の浴室の仕切り壁沿いの真ん中に鎮座する小判型の浴槽。
入口側三分の一は深さ30センチ程、底は玉砂利の用なタイル貼り、これは良いねえ。
奥側は深湯で周りに腰掛段がある。
こちらは水色のタイルで浴槽淵は濃い色のタイルが貼られている。
浅湯と深湯の境は長方形の小さな水色タイルだ。
浴槽は仕切壁にぴったりとは付いておらず自然石が飾られ岩風呂の趣。
そして仕切り壁の真ん中と奥壁にタイル絵が2枚、奥壁は水車小屋のある風景、仕切り壁は瀬戸内の風景だろうか。
タイル絵の下にサインと日付があり1959年とある。
昭和34年になるのか?
天井は入母屋のように中央に向かって僅かだが高くなり、女湯と合わせて湯気抜きが横長に切られている。
いや、良いわ、この風呂。

お客さんが一人入ってくるまで、貸切状態を堪能し上がり湯を使って身体を拭く。
脱衣場に戻ったがまだ番台に誰もいない。
とりあえず着替えて番台に近づくと女湯の方からマッサージ椅子の動く音が聞こえるが、大仰に覗き込むわけにもいかないので、脱衣場の椅子に座り簡単なメモを取った。
マッサージ椅子の音が止まるとはたして、番台におかあさんが戻ってこられた。
銭湯代を払いおかあさんと話をしていると、番台に置かれたガラスケースの向こうに見えた灰色の塊が動いたので思わず見ると大きな猫だった。
おかあさんが言うには、ぶーちゃんと言うらしい。
耳が両方潰れてるのはスコティッシュフォールドと言うわけではなく、単に喧嘩で噛まれたりしたからだと思う。
おかあさんが撫でて見ろと近付けてくれたが、ぶーちゃんはおっさんには撫でられたく無いらしくおかあさんにべったりだ。
他にも猫がいるとか色々話を聞かせて貰って、7時のニュースが始まった頃に暇した。
いやいや浴室の造詣は見事なものでした。
後は風邪引かないように帰るだけだな。

岡山県倉敷市児島味野上 昭和湯

2015-11-16 15:43:42 | 銭湯
倉敷市児島を通る一番大きい道路はと言えば当然瀬戸大橋に続く瀬戸中央道。
まあ高速は別格として、メインは連島から水島、児島を通り玉野市へ続く国道430号線であろう。
全線を通して走ってみると水島から児島までは大きな工業地帯と鷲羽山の間の産業道路。
児島市街地では両側に大きな店舗が立ち並び、生活道路としての色が濃い。
倉敷市から玉野市へと入ると眺望の良い海岸線の国道で瀬戸大橋から四国の方まで瀬戸内海の眺めを楽しめ、渋川海岸の細い道を通り玉野の市街地へと続く。

昭和湯は児島市街地の430号線から川沿いに2、3キロ北上したところにある。
川といっても大きなものではなく治水された用水路程度のものだが、東側を走る道は交通量も多く道沿いにコンビニやその他店舗も多い。
しかし昭和湯のある西側は静かな町並みが広がり、昭和湯周辺もその暖簾が掛かる頃には暗く静かな住宅街でしかない。
昭和湯の入口はその川の西側の道路に面しているが、少し引っ込んだ所に扉があり生垣によって道路と仕切られている。
今日も仕事終わったあと寮で速攻着替えてバイクでやって来た。

年代物のガラス引戸をあけ店内に入る。
このザラメの様なガラスは今もう作られてないと聞いた、
三和土に立っていても中が見える位低いけど、広さは結構ある番台に座るおかあさんに410円を払い脱衣場に上がる。
入口壁の外側に靴箱が備えられていてその数は4列4段で16。
扉に書かれた番号は右上が一で左上が十六。
番号から察するに元は5段あった様だが中普請で脱衣場床を拡げ、外壁側にある母屋への入口に続ける為に、下一段を潰してしまったようだ。
脱衣場全体の広さは幅二間奥行四間、床は化粧合板。
ロッカーは外壁奥側に4列5段、下津井の大黒湯に続けてここも漢数字入り内側落とし込みの鍵だ。
下足箱前から奥に向かって階段があり上の方でドアに続いている。
階段下にはぶら下がり健康器、体重計、年代物のマッサージ椅子は大黒湯と同じ高松の会社の銘板がついている。
仕切り壁前に小さなテーブルと丸椅子、ヤクルトの平形冷蔵庫があり牛乳やコーヒー牛乳が中に見える。
まだ他に客はいないようで、ロッカーに脱いだ服を入れ鍵は掛けず蓋を軽く閉め浴室へ。
浴室への入口は仕切り壁側が一間四方がタイル貼りになっていてその奥がガラスの引戸。
その一間四方の外壁側はこれまた木製曇りガラスの引戸と窓で覆われた空間になっている。
おそらくは昔母屋に続く入口か坪庭状になってると思うが、中は見えなかった。

ガラスの引戸を開けると、ここも自然石敷きの浴室だ、
幅二間奥行三間、床は自然石で敷かれ間隙はモルタル埋め。
大黒湯程ではないが傾斜がついていて、仕切り壁の入口から一間程の所に排水の一番低い所があり、そこに流れるようになっている。
浴槽は仕切り壁沿いに一間四方程、やはり奥壁から半間ほど離れていてここでも関西風に浴槽周囲で身体を流すのが主流のようだ。
浴槽の角を落とした形で外壁側からジェットが二本吹き出し、仕切り壁の奥側にライオンの湯口があるのがこの浴室唯一の装飾のようだ。
カランは外壁側に6個あるが入口側2個は水のカランのみ、一番奥も故障なのかビニールテープが巻いてあり大事をとって一つ下手のカランに陣どった。
洗面器台はかなり大きく、高さ奥行が共に30センチ以上ありそうな白タイルで覆われた洗面器台は椅子に座ってもカランが高く感じる。
床が高くなっている上手側でこうなのだから、下手の一番床が低い所は座ったら腕を上方向に伸ばさねば湯も汲めない感じだろう。
髭を剃るつもりだったのでカラン前に座ったが、浴室に2枚しかない鏡はカランから更に1メートル程も上にあり、立たねば顔も映らないので髭を剃るのは諦めた。
身体を流し終えて浴槽に浸かる。
少々温めだが良い風呂である。
天井は低く波板で覆われており、これも中普請で改装された感じだ。
湯気抜きも見当たらない。
仕切り壁上方もモルタル吹きの様な土壁だ。
色々観察していると、お客さんが入ってきた。
予想通り浴槽脇で身体を流し浴槽に浸かったお客さんに「ここは初めてですか?」声を掛けられた。
正直に返事をして銭湯巡りの徒であることを明かす。
お客さんも銭湯好きで家に内湯があるが、職場に近いここに良く来るそうだ。
他にも色々話し、お客さんが昔横浜に住んでいて結構近所だったり、この銭湯は井戸水を利用しているとか、おかみさんが20人客が来れば有難いと言っていたとか教えてくれた。
俺も色々質問され各県の銭湯料金の違いや、横浜の銭湯があとどれくらい残っているのかなどについて知っている事を話すこととなった。

三人目のお客さんがガラスの引戸を空けて入ってきた所で先に上がる。
身体を拭いてズボンを穿いた所でメモをとり、汗を引かす。
メモを取り終えて、おかあさんにお礼を言って暇した。
良い風呂だった。
先日の大黒湯と言い、岡山の銭湯良いぞ。
さて次は倉敷の戎湯か岡山市内か。

岡山県倉敷市児島下津井 大黒湯

2015-11-14 11:28:21 | 銭湯
特に詳しくは書かないが、しばらく岡山での仕事となる。
毎年恒例と云う程ではないが、かなり以前からあることなので慣れたものである。
が、岡山で銭湯を巡ってはいなかった。
まっちゃんさんの関西の激渋銭湯、ナカムラさんの風呂屋の煙突など見ると岡山の銭湯も良さげな所がかなり廃業してしまっている。
結構、痛恨だが仕方あるまい。
という訳でこの際行ける所は行っておくかなと。

普段から岡山に居る訳ではないし、今迄岡山の銭湯を本気でピックアップしたことはなかった。
そんなこんなで初めて試みて見た。
先ずはゼンリンの地図ソフトでタウンページ検索を掛けると21件ヒットする。
ポイント打って、個人のホームページ等で廃業情報などが有るとこはマークを変えておく。
これは近くに行ったら建物の写真だけでも撮れれば良いかなと思っての事である。
タウンページでヒットしなかった個人のページの情報をマークしてグーグルで検索し廃業情報等がないか確認。
そこで今迄、岡山浴場共同組合のページを見たことないなと気付き、開いてみると岡山、倉敷の周辺で10軒の銭湯がまだ登録されていた。
清心温泉は不定期の営業だからか共同組合に入っていないのか等と、一つ々々確認していくと瀬戸大橋周辺で下津井の大黒湯という銭湯が登録されている。
?下津井の銭湯って休業してるとか聞いたような気がしたんだけどなあ、とまっちゃんさんの関西の激渋銭湯を見ると八千代湯があり休業中とのこと。
えっ!?下津井に銭湯って2軒あったの!?
住所を見るとすぐそばだが確かに別の銭湯だ。
ぐぐってみたが浴場組合のホームページと倉敷の情報を多く発信している個人のブログ以外にこれと云った情報が出てこない。
これは行ってこの目で確かめねばなるまい。

岡山での生活は寮の様なところに住む事になるのだが、期間が長いため自分の通勤用の2種原付を持ってきている。
流石に広島からはるばる乗って来る時は結構大変だが、有ると無いとで行動範囲がまるで違ってくるので重宝している。
土日は部屋でのんびりしてるのが普通だが、何か新しい宝を発見したような気分で銭湯に行く気満々だったが土曜日は生憎の雨。
日曜日は晴れ間が出たが、大黒湯は日曜日休みなのであった。
まあ買い出しがてらに場所だけでも見に行くかとバイクに跨がり走り出した。
児島の下津井地区は瀬戸大橋の岡山側のたもとの部分、児島の方から行くと県道をずっと進めばたどり着く。
しかしその道は鷲羽山のある半島をぐるっと廻る道でかなりぐねぐねと曲がってる上、昨日までの雨で濡れた落ち葉が道に残る。
以前濡れ落ち葉のせいで肩の骨をぶち折った身からすれば、トラウマ物の様相。
慎重に走りぬけ、瀬戸大橋の下をくぐり抜けようやく下津井地区に足を踏み入れた。
先ずは大黒湯の位置を確認、ホームページの写真と煙突を頼りに程なく見つけた。
良いな、町の雰囲気からして良い。
とりあえず場所は押さえたので田之浦地区から吹上地区へ移動、といっても350メートル程だ。
休業中の八千代湯も見ておこうと町を散策すると、何か雰囲気の良い神社がある。
近くへ行ってみると四柱神社とあり、かなり急な階段が続いている。
いつも通りコンバット越前の台詞を吐いて、階段を登る。
数えながら登ると108段、社殿の前に着き御賽銭を出そうとポケットに手をやると小銭が一枚もない。
それどころかいつも後ろのポケットに入れている財布すら無い。
よく考えると部屋を出るときに財布を持った記憶がなかった。
しまった、帰りに買い出しするはずが只の銭湯見学ツアーになっちまった。
まあ仕方あるまい。
帰り道は瀬戸大橋の下のトンネルをくぐり児島の方へ抜ける道を見つけ、距離も大幅に短くなることが分かった。
児島の市街地から細い川沿いに北上、もう一軒の昭和湯の位置も確認。
ここも良い風情で銭湯部分の横にある母屋も立派な日本家屋だ。
銭湯と母屋が横に隣り合ってるのはあまり見ない作りだな。

とりあえず買い出しもできないので寮に戻り昼飯。
パスタ茹でてレトルトのソースで簡単に済ます。
雲は低いが天気は持ちそうなので、買い出しと風呂に行く事にする。
100均で日用品を買い足した後、宇野港近くのたまの湯に行く。
最近めっきり行く回数が減ったスーパー銭湯だが、たまには良い。
普通土日は1700円だが今日はある筋から入浴券を貰ってたので、ただで入れまーす。
フロントでタオルと館内着を受け取って浴場へ向かう。
かなり広い敷地に建ててあり、休憩室も多く食事ができる所もあるので浴場までかなり距離がある。
身体を流し露天風呂でしばらく湯に漬かった後、館内着を着て休憩室へ。
ここはちょっとした図書コーナーがあり、漫画も少しあるので時間潰しには良い。
大きく振りかぶっては21巻までしかないので、前回来たときから増えてない。
うーむ、続き物は随時更新していって欲しいなあ。
他に何か読んでないのをと探すと夏目友人帳があるな。
どんな話かも知らなかったがとりあえず1巻を手に取った。
うん、面白いわ、これ。
5冊程一気に読んだ所で外が大分暗くなったので、もう一度風呂を浴びて帰る事にした。

さて、大黒湯へは翌々日、仕事が終わり寮に戻り速攻着替える。
財布忘れないように確認、バイクで行くので湯冷めしないようにオーバーパンツやネックウォーマーも準備していざ出発。
車も多い時間帯だし、まあ3、40分て所かな。
幸い流れは良く、6時前には下津井地区に着くことが出来た。
おっ、やってるやってる。
先ずは暖簾の掛かった外観の写真を一枚。
うーん、不審だよな、俺。

ドア開けて中に入る。
番台のおかあさんに410円払い靴を脱ぐ。
番台横と入口側壁に下足棚が有るが、トレッキングシューズが入らなかったので、三和土の隅に寄せておいた。
三和土から脱衣場までの段差が高く40センチ位あるだろうか。
三和土からは見上げる番台も、脱衣場からだとかなり低い位置に見える。
板張りの脱衣場は綺麗に掃除されていて、埃など見当たらない。
幅二間奥行が長く四間位。
ロッカーキター!
外壁側に4段8列木製で漢数字番号入り、しかも鍵は内側の落とし込みタイプ。
尾道の日の出湯、因島の紅梅湯にあるらしいが実際見るのは初めてだ。
右端の2列は後から作り足されたようでニスの色も明るい。
ロッカー脇に三段のシンプルな棚が作られ常連さんの洗面器が何個か置かれている。
その下に火鉢が置かれているが、灰は入ってないから現役では無さそうだ。
服を脱ぎながら周囲を観察、年期物のマッサージ椅子が一脚。
銘板に高松の住所が記されていた。
先客もいるがロッカーの鍵は掛けないで、そのまま入るのがここの流儀のようだ。
他には仕切壁の浴室側に神棚があるくらいのシンプルな脱衣場だ。
浴室へのガラス戸脇に営業時間の貼り紙があり、水金日が休みで営業時間は17時30分から19時30分。
危ねぇー、ちょっと遅くなったら間に合わねえ可能性が大だった。
とりあえず間に合って良かったわ。
さて浴室へ。
自然石床キター!
岡山倉敷周辺の銭湯には多いと聞いていたが久しぶりの対面だ。
長方形の自然石を浴室縦方向に並べ、自然石同士の間隙は市松に配したタイルで埋められている。
それにしても目立つのは浴室内の傾斜。
浴槽のある仕切壁の奥を一番高くして、外壁入口側が低いのだが高低差は40センチ以上あるだろうか。
広さは幅二間奥行四間。
外壁側に6個、仕切壁に4個カランがあるが高低差が大きいせいか入口側半分だけに配置されている。
シャワーは無い。
外壁側のカランは上方に石鹸置きが10センチ程でピンクの細かいタイル、洗面器台部分は少し洗面器がはみ出す位短いが転げ落ちる程ではない。
仕切壁のカランは石鹸置きが15センチ程で青いタイルだ。
先客が5人程いたが誰一人としてカランを使っておらず、皆浴槽周囲で身体を洗っている。
外壁側カランの下手で身体を流し髭を剃るが、剃刀の切れが悪くなっていてかなり痛い。
そろそろ換え時なのだが、最近のT字は刃の数ばかり増えて滑らかに剃れるのは良いのだが、鼻の下など逆剃りしたい所が剃り難くてしょうがない。
今普段使いはシックのFXのデッドストックだが、これが無くなったらどうしようかな。
カランから出る湯は熱く、湯三分の一水三分の二で調度良くなる位。
浴槽は仕切り壁沿いに一間四方程、角は丸く切ってある。
奥の壁までくっついておらず80センチほど空いているのは、浴槽周囲で身体を流す人が多いためだろう。
中は段差ありの構造だがちょっと複雑。
仕切り壁側は水深10センチ程の段、しかも一番奥側は更に浅く謎の四角い段差。
腰掛けの段が他三方にあり、更に深い部分に少し浅く段を作ってある。
ここまで複雑な形は中々無いと思う。
腰掛けより一段低い段に座ると調度良い深さだ。
天井も結構複雑、外壁側一間は白ペンキで低く中央二間は水色ペンキで高く作ってあるが湯気抜きの窓が有るわけではない。
湯気抜きは浴槽の真上に一間四方更に高く切ってあり、暗くて良く見えないが波板で覆われてるようだ。
浴槽に浸かりながら改めて見ると、やはりこの高低差は凄い。
一番奥の浴槽に近い所は殆ど浴槽の水面と同じ高さに床があるレベル。
外壁の奥と入口側では、目測だが大判タイル4枚位高低差があるのが良くわかる。
湯温は調度良い。
じっくりと観察してから上がる。
身体を拭いてズボンまで穿いた所でメモをとり、汗が引いた所で暇する。
湯冷めしないように持って行ったオーバーパンツだが穿かなくても大丈夫のようだ。
風呂で余りにも満足してしまったので帰ってから何か作って食う気が起きそうになく、帰り際にスーパーに寄り道。
半額ハンターと化し、スパゲッティと鶏唐揚などを買って帰りました。
いやはや、堪能した。
これほどの銭湯がまだ残っているとは岡山侮りがたし。
こっちでの仕事の間に何軒いけるかな。