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すべてはこの本から始まった…「和文英訳の修業」

2020年11月06日 | 英語生活ノおト
英語生活ノおト 第4巻> 英語ご異見板> すべてはこの本から始まった…「和文英訳の修業」


最近予測変換とか、意味のかたまりとして瞬時に読み取る(流暢に英語を読むより)ということ、力説しておりますが、意味のかたまり~は学習法であり、予測変換はその結果としてもたらされるものです。以下、自分なりの学習方法、過程を振り返り、共有できるものは共有したいと考えます。

流暢に英語を読むでも触れていますが、私の場合、いままで漠然とした英語の勉強を一つの方向に向かせてくれたのが、この佐々木高政先生の名著「和文英訳の修業」です。本箱を探しても見つかりませんでしたので、古本を購入。カバーこそ経年変化でよごれが目立ちますが、中身はほとんど新品。



そこで私はあちらの辞書,新聞雑誌,小説戯曲のたぐいから,それだけを切り離して読んでもどんな状況のもとに言われているかの察しがつくようなもので、口にのせて調子よく、一口に言えて覚えやすく,しばしば用いられて応用もきく、といった種類の文例を長い月日をかけて集めてみた。そしてそれをふるいにかけ文法的な項目に分類し配列してみると英作文の基礎力をつけるのに格好と思われるものができあがった。それが本書の予備編の暗唱用文例である。根気よくこれをくり返しくり返し読んでいただきたい。日本文をチラッと見て英文が一息にスラスラと言えるまでに自らを訓練するのである。そうしてしばらくするとその文例は次第に消化されて自分のものとなり、時に応じて英語が口を突き、指先にうずくようになる、すなわち応用ができる段階に到達する。(昭和27年の初版のはしがき)

この「英語が口を突き、指先にうずくようになる」にやられましたね。何度も何度も読んで、おそらく例文500、一度は全部暗記したと思います。暗記で力尽き、研究問題や、演習問題まで手を付けたかどうか、記憶は定かでありません。

すでにのべたことと重複しますが、覚えるためには読んで、読んで、繰り返し読むしかない。また、ちゃんと読むためには意味を理解し、意味を理解するには単語の意味や熟語の意味を調べなければならない、音の切れ目を把握しないととてもすらすら読めない。このような努力を重ねて蓄積した文例は英作文のみならず、英語の読解にも当然役立ち、結果として語を意味のかたまりとして瞬時に読み取ることに繋がります。また多くの文例を暗記することにより前に触れました予測変換もある程度できるようになったと思います。中学校の時も英語はそれなりに得意でしたが、高校でこの本に出合った、そのことがなければとても現在このようなブログを書いてはいないと思います。

タイトルの「修業」、これは何かを成し遂げる意味、終わりのない修練の「修行」とは違います。この本一冊で完璧という佐々木高政先生の自信のほどが現れたタイトルです。

すべてはこの本から始まった…和文英訳の枠を超えた、英語の基礎を作る骨太の書。

本書の一ページ、基本文例256から264。


復刻版が金子書房から出るみたいですね。もともと「和文英訳の修業」は文建書房から出ていましたが、佐々木高政氏の他の名著、「新訂 英文解釈考」、「英文構成法」の出版元である金子書房から出るみたいですね。これらの書も絶版にはなっておらず、入手できます。

私は予備編の文例暗唱で息切れしましたが、基礎編、応用編と名解説が並びます。

一例を取ると、(一部省略)

英文をつづる際まず第一に考えねばならぬことは,一つ一つの文の構成のしかた,すなわちいかなる語を主語としそれについて叙述を進めて行くか、である。主語のとり方一つで文全体の姿がきまるからである。たとえば
「この歌をきくたびに、あの楽しかったころを思い出します」 といった簡単な内容の文でも
「私」を主語とすれば
I cannot hear this song without being reminded of those tout happy days.
などとなるし、「この歌」を主語とすれば
This song never fails to bring back to me memories of those happy days.
といったところが浮ぶし, 「あの楽しかったころ」を主語とすれば、
Those happy days live again in my memory whenever I hear this song.
あたりに収まるといったぐあいである。 どの行き方をとるかは、諸君の考え方の癖とその時々の英語の学力次第でそれぞれの場合に決定されていく、しかしへたな主語のとり方をすると動詞に困リ、目的語でゆきなやみ、修飾語句で手を上げて、結局……


といった調子。最後のほうなんか身につまされます。ぜひ入手されることをお勧めします。