チョコ場ー＾＾

とにかく社会での緩みきった生活で付いたアカを、
心身から完全に削ぎ落とすため毎日かかってくるプレッシャーは、
軍隊生活が終わるまで梅雨の雨雲のように重くのしかかります
そのプレッシャーと共に新兵を苦しめるのが、甘いものを与えられないことでした
僕はスイーツは元々あまり好きではなかったのですが、
さすがに体に糖分が少なくなると好き嫌い関係なくそれを求めるようになるものなんですね 。
部隊の近くには売店もあるのですが、
何せ上からの命令で禁止になってるため、指をくわえて見ているだけです。

そんなある日、ご両親が面会に来て外出から戻った同期が、
まるでスパイ映画のヒーローのような顔をしながら、
僕にこっそりチョコバーを渡してくれました
ありがたい♪だけど怖い
ドキドキしながら感謝の意を伝えるまでは良かったですが、
結局僕はそれから3日間もそのチョコバーをポケットの中に隠したままでした。
それを消費できるような場所が見つからなかったからです。
そこで僕は嫌々ながら、
最後に思い付いた完全に一人になれる場所に行くしかないと決心しました。
そこはトイレです
トイレにしゃがんで食べたチョコバーは、
そりゃどう形容すればいいか分からないほど旨くて、幸せな気持ちにさせてくれました。
しかし、その幸せな気分もあっという間に消えました。
先輩にばれたのかって？ 違います。
チョコバーの包み紙を捨てようとゴミ箱を開けてみると、
そこにはトイレットペーパよりもはるかに多いお菓子の包み紙が捨てられていました
あ～、皆僕と同じように、
苦しい生活を強いられながら同じ思いでここにしゃがんでいたんだろうなぁ～と思うと、
急に淋しくなりました
もちろんトイレに長くいられるような時間も与えられていないので、
さっそく口の中をきれいにして、何事も無かったように、
気合いの入った表情を作って外に出ていったのでした
僕がトイレで食べたチョコバー！