売り手と買い手,双方が満足できる商い,つまりWin-Winの成立が商売の常道の様に言われるが,それだけでは足りない。
最近,拳銃や薬物が絡む事件が目立っているが,入手過程で売り手と買い手双方に納得があったとしても,取引そのものが許される所業ではない。 また,未だ頻発する政治献金問題や官製談合事件などでも,当事者同士はお互いに利益を享受している。その意味では,Win-Winが成立している。
だが,ある視点が欠如しているのは明らかである。 それは,その行為が,同時に,社会に恩恵を与えるものなのかの尺度である。 少なくともそれらの事例は,公序良俗に反しないことが担保されていない。
自分たちの行動に,世間という判断視点を追加することが如何に重要かが知れる。 そうすると自ずと,Win-Winでは足らず,Win-Win-Winとなってくる。
そしてその実行は難しいことではない。
古来よりの良いお手本がある。 近江商人は,代々家訓として,「売り手よし,買い手よし,世間よし」を実践してきた。 儲けは確かでも,世間のためにならないことはしてはならないとの商売の掟,自らへの戒めである。
欧米型社会,過当競争型社会の今日,他人の迷惑や痛みをなおざりに,自分本位な行動に走りがちだが,今この時だからこそ,近江商人の心意気が求められているように思う。 否,商売上だけの指針ではあるまい。 これはまさしく生き様の問題で,人との係わり合いの規範でもある。
とすれば,この「三方よし」の精神は,近江発のグローバル規範と言って過言ではなかろう。
虹のバク