いつだったか,将来の時計はアナログ式かデジタル式かを議論したことがあった。
こと腕時計に関しては従来の針式の方が優勢のようだが,見回せば,一般にはアナログもデジタルもその持ち味を生かして共存している。
同様に,レコードかCDかの議論もあったが,こちらは,一部のレコードマニア向けを除いて,ほぼCDの圧勝となった。
しかしいずれも,趣味/嗜好品に於ける議論であれば,技術の優劣は二の次で良い。
デジタル技術は新しくてアナログ技術は古いとは,その技術が登場した時期で定義しただけのことであり,アナログ技術は現在も不可欠な重要な技術であることに変わりはない。 それ以上に,昨今のデジタル技術を支えているのは実はアナログ技術である,と言える。
スーパーコンピューターでも太刀打ちできない人間の脳の働き。 見,聞き,触れ,嗅ぎ,味わいのアナログ情報を元に,脳はデジタル情報処理を実行する。 工業製品もアナログである自然界の情報を正確に取り込んでこそ,狙った結果を出せる。
人の五感もそうだが,自然界のアナログ情報を処理に適したデジタル情報に変える変換技術,所謂,各種センサーやアナログ/デジタル変換機能はアナログ技術の最たるものである。
その重要なアナログ技術を持った技術者が減少している。
論理思考が中心のデジタル処理技術やソフトウエア開発とは異なって,電源変動,温度や湿度の変化,材質とその強度,電磁力や雑音なども考慮しなくてはならないアナログ開発は,実績と経験がものを言う一種巧みの世界に近い。 だから優秀な技術者を育てるのに時間がかかり,おまけにノウハウの明文化も簡単ではなく伝承も難しい。
日本から今や「ラジオ少年」は姿を消した。 そして,物づくりの面白さを実感,体験することが少なくなって,理工系に進む学生が減った。 事実,日本は先進国の中で,理工系に携わる女性の比率が最も低いとのデータがある。
最近,ある学校で,女生徒に理工系に進むよう指導していることが報じられたが,嬉しい試みである。
アナログ技術もデジタル技術も,物づくりがあってこその技術である。 元気な製造業が増えれば,より多くの技術者が必要になる。 その中で,特に意識して,アナログ技術者を現場で育てていくことが必要であろう。