ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

ローズマリーの赤ちゃん

2024年08月06日 | なつかシネマ篇

アイラ・レヴィンの原作スリラーを読んで、即OKをだして監督を引き受けたポランスキー。この原作小説、実は当時のアメリカで社会問題化していたサリドマイド児を、ローズマリー(ミア・ファーロウ)が身籠った悪魔の子に見立てているそうな。隣に住んでるお節介な婆さんが体調の優れないローズマリーにやたらと差し入れる怪しい飲み物とケーキや、医者が処方する独自漢方薬は、サリドマイド禍の原因とされる睡眠薬をモチーフにしていたのだろう。

TVにも出て顔も知られている名医がこれまたサタンの手下だったり、俳優の旦那(ジョン・カサヴェデス)が出世と引き換えにサタニストたちとグルになったり、親身になってローズマリーの身体を心配する友人たちを排除したりするくだりも、きっと製薬会社と医者の持ちつ持たれつなズルズルベッタリの関係をトレースしていたに違いない。そんなサタニストたちの手から大切な赤ちゃんを守るべく、なんとか悪の包囲網から抜け出そうとするローズマリーだったが.....

サタニスト軍団が具体的にどのような呪術を使ったのかは直接描かれていない。本作が子供向けのホラーに転じないよう、ポランスキーは悪魔関係の書籍やアナグラム解析を通じて、ローズマリーにミステリーの謎解きをさせているのだ。ゆえに観客は思わずこう想像してしまうのである。全てはローズマリーの妄想で、妊娠中毒か何かで鬱にでもかかったんじゃないか、と。しかしポランスキーはこう反論する。

何言ってんますねん、悪魔はちゃんとこの世に存在してますよ、ほらね。お金持ちそうなご老人たちに加え、(ステレオタイプにおもいっきりカリカチュアライズされた)カメラを持った黒縁眼鏡の日本人だっていたでしょう。あいつらみんな、あなたたちアメリカ人の豊かな生活を脅かす悪魔そのものですよ。でもね一番怖いのは...そう、悪魔の赤ちゃんをニッコリ顔で受け入れた◯◯なのかもしれませんね。

冗長だった原作小説のラストをほんのちょっと改変したというポランスキーは、後に妊娠中だった愛妻シャロン・テートをチャールズ・マンソンを崇めるカルト集団に惨殺されてしまう。またユダヤ人であるポランスキーは少年時代、ナチスによってやはり妊娠中の母親を収容所で処刑されているのである。産まれるはずだった赤ちゃんの怨念が本作をポランスキーに撮らせ、かつ愛妻と我が子を同時に失う悲劇にも立ち合わせたのではないだろうか。それは“巨匠”という称号を得るための、悪魔との取引だったのかもしれない。

ローズマリーの赤ちゃん
監督 ロマン・ポランスキー(1968年)
オススメ度[]


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