ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

パリ、ジュテーム

2008年08月02日 | ネタバレ批評篇
1965年に作られたパリの6つの場所を舞台にした『パリところどころ』とほぼ同じコンセプトのオムニバス作品。パリ20区のうち18区をテーマにした作品は、それぞれ別の監督が担当しているせいか各々の独立性は強くテイストにもバラつきがあるため、この映画を見た観客の趣向性がはっきりと選別される作品だろう。

で、個人的には以下にあげる3地区をテーマにした作品に注目したい。
・バスティーユ(12区) 監督イザベル・コイシュ
離婚を切り出そうとしたところ、妻が不治の病にかかっていることが発覚。妻の面倒を見ているうちに愛情が甦り、終生夫が妻への愛の囚われの身になるというお話は、地区名(バスティーユ)に絡めた皮肉な脚本が秀逸だ。
・お祭り広場(19区) 監督オリヴァー・シュミッツ
パリの片隅で悲しい出会いと別れを経験する若いアフリカ系移民の男女。最後まで飲まれることの無かった冷めた2カップス・オブ・コーヒーが、この男女に重なる演出がなかなかであった。
・14区 監督アレクサンダー・ペイン
パリに一人旅にやって来たアメリカ人のおばさん。長年看病をし続けた母親が死に一緒に旅に出る友人もいない孤独な女が、パリの公園でふと哲学的な啓示を受ける。自らを「死んでいる」と語る女が、孤独の悲しみと同時に生きている実感を覚えるという深いテーマを短時間で描き出すことに成功している。

その他、ハーレクイーンもどきの恋物語やドラキュラ系ホラーなど、「無理して入れなくてもよかったんじゃないの」と思われる雑多な作品が紛れ込んでいるので、時間の無い人はチャプター機能を使って見たいものだけ見るというわがままも大いに許される1本だ。こういうオムニバス形式の場合、得てして大物監督による大物俳優を使った作品がこける傾向値にあるような気がする。たった5分という凝縮された時間の中では過去の威光も役に立たなくなるのだろうか。監督自身の実力が素で試されるという残酷性は、ある意味イロモネアの世界に共通しているのかもしれない。

パリ、ジュテーム(2006年)
〔オススメ度 

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« シャフト | トップ | 偽善エコロジー »
最新の画像もっと見る