アーカイブ『市民派アート活動の軌跡』

「アートNPO推進ネットワーク通信」
小冊子「アート市民たち」

6『絵はぼくを思索に誘う』(AS会誌掲載)

2016年04月06日 | 冊子『アート市民たち』
6、大倉さんなど新たな友人たちとの一期一会  

 “やってよかった ”・・展覧会を終えての感想である。大倉さんからも、「とてもいい展覧会でした」と言っていただいた。しかし、展覧会の成功以上に嬉しかったのは、いくつかの出会いと感動があったことである。特に、この展覧会を進めるなかで、改めて大倉さんの人間としての見識、ひたむきさ、誠実さを知ったことである。 “水と土の芸術祭 ”の作品巡回バスツアーにお誘いいただき、ご一緒した時に感じた美術への熱き思い、今話題の北川フラム氏への訳知り顔の批判についても安易に迎合しない見識、或いは砂丘館を訪れる人々などへの謙虚な対応など、頭の下がることが多かった。特に、水と土の芸術祭の前夜祭の折、雨に濡れながら盆踊りを踊り続ける大倉さんの姿が今も脳裏に焼きついている。東京に戻り、大倉さんの著書『東京ノイズ』を拾い読みしたのだが、エッセイ『雪』の中に、降りしきる雪のなかで、敬愛する郷里の作家佐藤哲三の傑作「みぞれ」に思いを馳せながら、「・・人間にとっては過酷な季節や天候も、世界のもうひとつの側から見れば祝祭ではないか・・」と思索するシーンがある。私は、全身びしょ濡れになりながらも踊り続ける大倉さんの姿に、降りしきる雨も祝祭と受容する懐の深さとその生きざまを感じたのであるが、勿論これは私の勝手な想像である。いずれにせよ、こうして私と大倉さんは、この夏、間違いなく一期一会のよきひとときを持ったと思うのである。これはコレクション展成功のこと以上に意味のある出来事であった。



 その他、私にわざわざ会いにきていただいた方々、東京都歴史文化(財)のK・仲山さん、信楽園病院のT・野田さん、新潟のT・佐藤さん、二次会でルオーを語り合ったS・吉川さんなどとの出会いもよき思い出である。美術を通して触れ合った一期一会のひとときであったと思う。その他、東京から展覧会に駆けつけていただいた方々、感想を残していただいた方々にも感謝に堪えない。

 さて、先日、大倉さんがアスクエア神田ギャラリーの伊藤厚美さんに宛てた手紙を拝見させていただいた。その中に嬉しい一節があったので、最後に(大倉さんのご了解も得て)書き記したい。・・・ 「山下さんのコレクション展は自分で企画してこう書くのも変ですが、不思議に深い感動を与えられる展覧会でした。それは個々の作品が与える感動だけでなく、一つ一つの作品と山下さんがとても丁寧な出会い方をされている、その出会いの純度、静かさ、深さから受ける感動だったのではないかと今改めて考えてみているところです。」・・・大倉さん、感謝!



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