アーカイブ『市民派アート活動の軌跡』

「アートNPO推進ネットワーク通信」
小冊子「アート市民たち」

『おわりに』…アートNPOの旗を降ろす時

2016年04月06日 | 冊子『アート市民たち』
 私は、2002年4月、“アートNPO活動の提唱”を掲げて、『アートNPO推進ネットワーク』を立ち上げた。当時は仕事も多忙を極めていた上、妻が重い病に倒れるなどのアクシデントが重なったので組織設立の中止も考えたが、支持者も多く、是非やりましょうとの声に押され旗揚げすることとなった。

 この団体は元々NPO法人化を前提にスタートしたのであるが、組織作りよりまず活動することに意味ありと考え、法人化手続きは先送りして、コレクション展や若手作家紹介展などの企画を先行実行した。その結果、我々の活動はささやかではあるが一定の評価を頂戴し、日経新聞や美術年鑑、月刊ギャラリー、アートコレクター創刊号などの美術雑誌にも紹介され、順調に発展してきた。

 しかし、時間が経過するなかで幾つか問題も見えてきた。一つはNPO法人化についての、代表である私と他の役員との温度差。中核役員はそれぞれ仕事を持つ働き盛りで組織運営の余力はなく、私は対外的なことから会報作成・WEB情報発信・会員管理その他事務運営に翻弄されてしまった。任意団体の儘ならこれでもよいのであるが、NPOといえども法人であり、法人化すれば企業・団体と同様にマネジメント業務は役員の必須任務となる。アート企画も重要な仕事ではあるが、こういう苦労を共にする覚悟がなければNPO法人化は無理と考えるようになったのである。

 元々、私のアートNPO立ち上げの目的は美術の世界に“新しい風”を起こすことにあり、代表を長くやる気はなかったので、早い時期から後継者へのバトンタッチを考えていたが、そんなわけで後継者選びも諦めた。こういう経過を経て、私はNPO法人化計画を断念、かつ既に定着していた組織名の変更をも決断したのであった。

 しかも、偶々、人間ドッグで癌の診断を受け入院手術、順調に回復したのであるが、その後も再入院や検査が続き、再発・転移の可能性を抱えたままでの組織拡大は、いずれ会員に迷惑をかけかねないと考えるに至った。こうして熟慮を重ねた結果、組織は任意団体のままとし、場合によったら、これを機会に活動の段階的縮小せざるを得ないだろうと覚悟したのである。
結局のところ、NPO法人化という当初計画を断念することになったのは私の責任である。ならば、この何年かご支援いただいた会員の皆様に報いる意味を籠めて、とりあえず年会費を徴収しないかたちでの組織運営に移行しようと腹を固めたのである。そして昨年11月、活動の縮小と残った予算による小冊子作りを提案した次第である。
 
 私のNPO型アート市民運動の夢はいまだ道半ばであるが、美術の世界に“新しい風”を起こすことだけはできたのではなかろうか。この5年間一緒に活動していただいた役員や、趣旨にご賛同かつご支援いただいた方々に感謝しながら、ここに『アートNPO推進ネットワーク』の旗を降ろすこととしたい。
感謝!!
(2006年12月 代表山下透)


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