竹島研究室

竹島問題を研究する。

日本側の竹島報道(8/26):きしむ「境界」:日中韓の底流/1 竹島/上 世論に耐える両首脳

2008-08-26 21:15:09 | 日本側の動向
●きしむ「境界」:日中韓の底流/1 竹島/上 世論に耐える両首脳

 アジア外交と日米同盟の「共鳴」を掲げる福田政権。アジアでは中国、韓国との連携が基軸だ。9月21日に神戸市で初の独立開催が予定される日中韓首脳会談は、小泉純一郎元首相の靖国神社参拝で荒れた日中、日韓関係を安定させようとしてきた福田外交の中間総括でもある。だが、ナショナリズムを刺激しやすい領土・領海問題が絡むと、わずかなきしみで歯車は逆戻りする。3国の知恵と意思が試される国の境をめぐる問題を整理する。

 「韓国自身が強い国になれば、日本が私たちの領土を不当に欲しがることもなくなる」

 8月15日、ソウル。韓国の李明博(イミョンバク)大統領は、日本の植民地支配からの解放を祝して毎年行われる光復63年記念式典で演説した。

 竹島(韓国名・独島)問題を理由に、駐日韓国大使を事実上召還してから1カ月しかたっていなかったが、言及は間接的な表現にとどめた。盧武鉉(ノムヒョン)前大統領が、在任中の同式典で「独島問題、歴史教科書、靖国神社参拝、日本軍慰安婦問題」と、日韓が対立する課題を殊更に列挙した挑発的な態度とは明らかに様変わりした。

 隣国の反発を承知で靖国神社参拝を続けた小泉元首相。それに対抗するように竹島問題や歴史問題を外交の焦点とした盧前大統領。2人の元首脳は、自国内の強硬論が時に突風となっても政権浮揚に活用する外交手法だった。李大統領と福田康夫首相は共に、そうしたやり方からの転換を意識している点で共通している。

 今年4月の福田・李両首脳の日韓会談では、双方とも竹島問題を取り上げなかった。会談後の会見で、韓国の記者から竹島問題を含めた歴史問題について尋ねられた李大統領は「質問が出なければよいと思っていた」と苦笑しながら、「過去に縛られて未来に向かうことに支障があってはいけない」と言い切ったほどだ。

 だが、7月に日本が新学習指導要領の解説書に竹島問題を明記すると、韓国は強く反発。日韓関係はたちまち「後戻り」の危機にさらされた。李大統領は米韓牛肉摩擦で支持率が20%前後に急落したばかり。世論に弱みは見せられず、駐日大使の帰国に続き韓昇洙(ハンスンス)首相の竹島訪問など、3カ月前とは一転し、強硬姿勢を打ちだした。

 解説書が火種になったが、日本政府はむしろ韓国への配慮に努めた。決定前に官房長官、外相、文部科学相の3閣僚が集まって文言を調整し「我が国の固有の領土」との明記をやめた。文教族の閣僚経験者は「首相自ら、文科相と直前まで何回もやりとりしていた」と福田首相が陰で主導したと明かす。

 だが、李大統領と同じく内閣支持率が低迷する福田首相も、自民党内強硬派の反発を警戒し、過度の配慮には踏み込めない。解説書が韓国世論を沸騰させてしまって以降は、ひたすら沈静化するのを待つしかなかった。

 15日の演説で、李大統領が対日批判を抑えたことを、日本側は李大統領の日韓関係改善へのメッセージと受け止めている。外務省幹部は「日中韓首脳会談では、日本側から竹島問題は持ち出さない。言い合えば冷却期間が無駄になる」と語り、慎重に対応する考えを強調する。=つづく

毎日新聞 2008年8月26日 東京朝刊

http://mainichi.jp/select/world/news/20080826ddm005010033000c.html


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