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Life in Oslo.

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特定国派遣研究者(ノルウェー・ポスドク)

2012年03月01日 | 日記
タイトルは2012年3月1日現在の僕の肩書きです。ブログでは仕事関連の話はしないつもりでしたが、このブログしか情報を発信する術がないので、今回は例外です。おそらく大半の人には面白くない内容です。

 日本学術振興会の特定国派遣研究者としてノルウェーに赴任して、任期最後の月を迎えました。この制度は学術交流を深めるために日本とノルウェーが相互に研究者を派遣/受入し合う制度です。このブログでもご紹介してきたように、ノルウェー(オスロ)は治安が良い、人々が親切、街が清潔、食べ物が美味しいなど、日本人が海外生活を始めるには最適な国の一つだと思います。また、研究面でも予想以上に充実した生活を送ることができ、特定国派遣研究者制度には非常に感謝しています。

 ただ、その中でいくつかトラブルも経験しました。その多くは、適切に情報が共有されていれば防げたものばかりでした。事務機関が二国間にまたがるために情報の共有が難しく、派遣研究者の経験がうまくフィードバックされないようです。また、ノルウェー総合研究審議会(RCN)は、直接関係する事務手続き以外はアドバイスもしてくれません。そろそろ次年度の派遣研究者が内定する頃ですので、同じトラブルが生じないように僕が経験した例を紹介したいと思います。なお、このブログの内容は2011年度のものですので、その後改善や変更等があるかもしれません。その点は各自ご確認下さい。

1:ビザ申請
僕は在日本ノルウェー大使館(麻布)で申請しましたが、現地到着後に移民局のwebサイトから直接申請することを強くお勧めします。移民局は常に大混雑で気が遠くなるほど待たされます。受付時間も短いので、数時間待った挙げ句、結局受け付けてもらえないこともありました。混雑緩和のため大半のビザはネットで申請でき、ネット申請者は事前にアポを取れるので待たされずに受け付けてもらえます。しかし、在日本大使館で申請すると、ネット申請ではないので事前アポが取れません。大使館で申請しても実際の発給がノルウェー赴任後だったり、後述のようなトラブルがあると、現地の移民局に出頭しなければなりません。その際に事前にアポが取れるかどうかは非常に重要です。

2:ビザの種類
これは致命的なトラブルです。驚くべきことに、特定国派遣研究者(ポスドク)は、就労ビザをもらうことができません。僕は在日本大使館で就労ビザ(Skilled worker)を申請しましたが、「博士号取得者にしては給料が少なすぎる」という驚くべき理由でリジェクトされました。ビザ発給を拒否された場合は、事情を説明して再審査を願い出ることができます(appeal)。在日本大使館のアドバイスに従い、資格を「修学」ビザに変更して再審査を願い出た結果、「修学ビザ(研究者)」という変なビザを発給してもらえました。再審査には時間がかかるので、結果が出る前に滞在限度の90日を超えてしまいます。アピールの結果が出るまでは滞在期限が延長されるのですが、アピール中に海外出張などで出国すると再入国拒否もあり得ます。また、ビザがないと後述の健康保険の手続きができず、ビザ発給後に取得できる納税者番号がないと携帯電話も契約できず(プリペイドはOK)、銀行口座も開設できません。
 ちなみに、ビザの種類について過去の事例をRCNに問い合わせましたが、ビザ申請は対応外なので分からないとだけ言われました。

3:健康保険
これも致命的なトラブルです。特定国派遣研究者の手引きには「健康保険に無料で加入可」と明記してありますが、健康保険に加入できるまで相当な日数を要します。まず、前述のビザが発給されないと手続きできません。ビザ発給後、必要書類を持って最寄りの労働福祉局(nav)に行きます。ただし、外国人の健康保険は特殊なので、書類は本局へ郵送され、改めて手紙で場所を指定されて呼び出されます。手続きには1ヶ月ほどかかり、手続きが完了すると保険料の請求書が来ます。請求書は驚きの60万円以上。RCNが健康保険料の算出方法を間違っているため、健康保険加入料は無料になりません(これも毎年のことでしょうから、非常に不思議です)。請求書が来たらすぐにRCNに連絡して「健康保険に無料で加入可という話のはず」と言えば、RCNが健康保険料を負担してくれます。2012年度の手引きにも「無料で加入可」の文言があるので、この問題も再び生じるはずです。
 僕は4月1日に赴任しましたが、ビザがリジェクトされたこともあり、健康保険に加入できたのは8月末でした。その間の4ヶ月は無保険状態で、非常に不安な生活を送っていました。物価が極めて高いノルウェーで100%自己負担で病院にかかると、とんでもない額を請求される可能性があります。日本の薬を持参することを強くお勧めします。

4:郵便登録
最寄りの郵便局(Posten)もしくはPostenのwebサイトで住人登録(転居届)をしないと、郵便物(宅急便やEMSなど)が届かないばかりか、送り主に送り返されて追加送料まで請求されるという最悪の仕打ちが待っています。引越後、速やかに手続きすることをお勧めします。

5:病院と薬局
これはトラブルではありませんが、病院のシステムが日本とはかなり異なります。まず、日本のような開業医・町医者という制度はありません。地域ごとに診療所があり、自分の担当医が決まっています。健康保険に加入すると、担当医の氏名と連絡先が送られてきます。裏を返すと、健康保険に加入するまでは、担当医や診療所の情報は手に入りません。
 また、街のいたるところに薬局(apotek)があります。apotekでは日本と同様、保険証なしで基本的な薬が買えます。

6:家探し
これもトラブルではありませんが、参考までに。受入研究機関の宿舎に空きがある場合は良いですが、少なくともオスロ大学の研究者用宿舎は常に満室で非現実的です。学生用宿舎を割り増しで借りることもできますが、空きがあるのはボロい/遠い/バス・トイレ・キッチン共用など条件の良くない物件がメインです。僕はオスロ大学の学生生活サービスと何度か交渉しましたが全然ダメだったので、Finnというサイトで賃貸アパートを探しました。物件を選ぶ時には、家賃に暖房費、電気代、インターネットなどが含まれているものをお勧めします。ノルウェーの電気料金は需要に合わせて変動するシステムで、複数の電力会社の中から自分で契約先を見つけなければなりません。また、暖房費は暖房設備の種類によって大きく異なり、厳冬下では非常に高額になる可能性があります。さらに、Dナンバーを取得するまではインターネットや携帯電話は契約できないので、インターネットやケーブルテレビ込みだと便利です。家賃とは直接関係ないですが、ノルウェーでは家賃や公共料金の支払いを小切手で行います。小切手1枚につき75クローネ(1100円!)もかかるので、支払件数が多いと余計な出費にもなります。


 上記のうち、ビザと健康保険の問題は情報が共有されてさえいれば防げる類のトラブルです。こんな重要な情報をなぜ共有してくれないのか不思議に思いますが、事務系統が複雑なためやむを得ないのでしょう。また、ノルウェーの役所は問い合わせに対する反応が非常に遅いです。メールで問い合わせても、1週間後に「メール受け取りました」という確認通知が来たりします。RCNは対応が早いですが、担当者が長期休暇(ノルウェーでは数週間規模で休暇を取ることは当たり前)などで不在の場合はサポートが得られません。なるべく早めに手続きや確認を行うことをお勧めします。年に数人しかいない特定国派遣研究者ですが、逆に言えば年に数人は必ずいるので、この情報が少しでもお役に立てば幸いです。

ノルウェーの食べ物

2011年08月08日 | 日記
先日、メンターが共同研究者や院生などを自宅に招待してくれ、緑あふれる広々とした庭でBBQパーティーを開いてくれました。ノルウェーの多くの家庭には、かわいいBBQグリルがあり、平日でも夕食時にはベランダで肉を焼いている姿を見かけます。


火を使う通常のBBQグリルに加えて、電気式のものもあるようです。メンターのお宅のグリルは電気グリルで、割と大型でした。牛、豚、羊など肉各種のほか、ドイツ産の本物のチョリソーなど、たいそうグルメなBBQでした。

写真は、いかにも肉が大好きそうな、たっぷりしたノルウェー人研究者の男性のために、メンターが「彼専用肉」として悪ふざけで買ってきた巨大な豚肉です。

大きすぎてイカ焼きみたいになっています。もはや、ちょっと気持ち悪いですね。結局、誰も食べませんでした。少し悪ふざけが過ぎたようです。
(翌日の朝ご飯にすると言っていました。朝からあんなものを食べさせられると思うと、起きるのが憂鬱になります。)


オスロ生活も5ヶ月目に突入しましたが、如何せん単身赴任なので、美味しいノルウェー料理の店に行く機会がありません。そのため、ノルウェー料理がどんなものか、未だによく分かっていません。それでも、スーパーで手に入る既製品や、友人に聞いたレシピで自作したものを、いくつかご紹介します。


まずは、ベルゲン風フィッシュスープ。

写真の白いボウルに入っているものがベルゲン風フィッシュスープです。粉末をミルクで溶いて10分温めるだけのインスタントですが、かなり美味しいです。パッケージの写真から推察すると、ムール貝などを入れるようです。本物はさぞかし美味しいことでしょう。ちなみにベルゲンはノルウェー南西部にあるオスロに次ぐ第二の都市で、新鮮なシーフードで有名です。
(他には、フィヨルド観光の基地として、また、世界遺産にも指定された赤や黄色のかわいい木造建築群などでも有名です)
今月末に妻とベルゲンを旅する予定なので、本物のフィッシュスープもレポートできると思います。

パスタはシュガービーンズと3種のチーズのパスタです。シュガービーンズはエンドウ豆を一回り大きく膨らませたような豆で、こちらでは簡単なおやつ感覚で生でバリバリ食べます。ただし、名前ほど甘くはないので、個人的には生でバリバリ食べたるほどのものではありません。


次は、エビとアボカドとほうれん草のジェノベーゼ。

これ自体は有名なスパゲティのチェーン「五右衛門」の定番メニューの真似ですね。ノルウェー人はエビが大好きで、スーパーでは塩水に浸かった剥きエビが必ず売られています。パスタやパスタソースは相対的に安く手に入るので、いつもお世話になっております。また、ビールはオスロで最も有名なRingnesです。こちらも大変お世話になっております。

ところで、上の2枚の写真には、ノルウェーの家庭に欠かせない2つのものが写っています。

1つは花です。ノルウェーではどこのお宅にも、たいてい花が飾ってあります。スーパーでもバラやカーネーションなどの花や鉢植えが売っていますし、何ならIKEAでも売っています。

花と並んで欠かせないのは、キャンドルです。ノルウェー人はキャンドルが大好きです。あまりのキャンドル愛好ぶりに「何でそんなにキャンドルが好きなの?」と聞いたところ、「は??逆に何でキャンドル使わないの??」と、驚きをもって質問を返されました。そう言われると確かに、何でキャンドルを使わないのか、答えることができません。それ以来、不思議とキャンドルを使うことが、さも当たり前のように思えてきてしまい、今では僕も自宅で広末涼子の旦那ばりに夜な夜なキャンドルを灯すようになりました。確かに綺麗ですし、電球の光にはないやわらかさと穏やかな静かさがあります。キャンドル文化が発達しているおかげで、様々な色や形のキャンドルが、安く簡単に手に入りますしキャンドル専用のお洒落チャッカマンもあります(もちろん我が家にもあります)。

 続いて、rømmegrøtというノルウェー伝統料理と、ノルウェーで最も有名な缶詰です。

rømmegrøtは、日本語に訳すと「サワークリーム粥」です。ノルウェー人は意外と米を食べます。その一例がrømmegrøtですが、サワークリーム粥というのは日本の米文化からは考えられない代物です。友人がレシピを教えてくれたので、おっかなびっくり作ってみました。

<ノルウェー伝統料理rømmegrøtの作り方>
材料:米2合、サワークリーム500ml、小麦粉200ml、牛乳500ml、塩、シナモン
(1)米を固めに炊く
(2)サワークリームを5分ほど煮て液状にする
(3)ふるいにかけて細かくした小麦粉と牛乳を少しずつ加える
(4)アクを取りながら5分ほどぐるぐるかき混ぜ、塩で味を調える
(5)お好みでシナモンをかけて出来上がり


割と簡単にできますので、是非ともお試しください。味は、チーズの味がしないチーズリゾットといった感じです。思ったほど不味くはない上に、小麦粉を入れるのでお腹いっぱいになります。
ただし、シナモンを入れると事態は急変し、極めて深刻な味わいになります。また、本来は塩漬けにした羊肉も入れるそうです。サワークリーム+ご飯+シナモン+羊肉ほどのカオスになると、もはや手がつけられなくなります。
もし本当に作るのであれば、シナモンの代わりにブラックペッパーを入れることを強くお勧めします。

rømmegrøtの左に写っている赤いものは、ノルウェーで最も有名な缶詰Stabbur-Makrellです。これはサバのトマト煮で、ノルウェー海産の脂ののったサバをトマトで煮込んだだけのシンプルなものですが、日本人の口にも全く違和感のない極めて美味しい食べ物です。ノルウェー人はこの缶詰をとても頻繁に食べます。一緒にランチを食べた3人が全員この缶詰を食べていたこともあります。
「美味しい」「安い」「ヘルシー」「持ち運びに便利」とランチに必要な要素が全て揃っているので、僕もほぼ毎日食べています。研究室の本棚には、いつも大量の缶詰がストックしてあり、すっかりサバ好きな奴だと認知されました。


この非常にメジャーな缶詰は、よくスーパーで大量販売されています。最近、近所のスーパーが斬新な売り方を始めました。

カヌーに缶詰がびっしり詰め込まれています。「バケツ一杯」なんて表現を遙かに凌駕する、まさかの「船一杯」です。

ランチといえば、ノルウェー人が「クイックランチ」と呼ぶお菓子があります。キットカットを、チョコを濃くして美味しくしたようなKVIKK LUNSJというお菓子です。

皆が口を揃えて「クイックランチ」と呼ぶので、不健康だなぁと思っていたら、"KVIKK LUNSJ"という名称はノルウェー語で"quick lunch"という意味でした。

もう一つ、ノルウェーの有名なお菓子をご紹介します。LEFSAと呼ばれる薄く湿った生地に、シナモンとバターと黒砂糖を挟んだものです。

これも学食でランチ代わりに売られていたりします。生ものに準じた湿った柔らかい生地なので、保存がききません。真ん中の青いパッケージが既製品で、冷凍で売られています。右側の大きなパッケージは生地だけで、水で10分ほどふやかしてからマーガリン、ブラウンシュガー、シナモンを好きなだけ乗せてサンドします。体に良い要素が一つも見あたりませんが、シナモンとマーガリンの組み合わせに、じゃりじゃりとした砂糖の食感がクセになります。

 最後に、体に悪いもの繋がりとして、北欧でポピュラーな嗅ぎタバコをご紹介します。ノルウェーではPUBや個人宅も含め、屋内での喫煙が法律で禁止されています。
(その代わり屋外ではバス停だろうが公園だろうが吸い放題なので、必ずしも非喫煙者に優しいわけではありません)そこで、煙のでないSNUS(スヌース)と呼ばれる嗅ぎタバコの一種がポピュラーです。物は試し、ということで買ってみました。

左側がミントフレーバー、右側が通常のタバコフレーバーです。白い小袋(ポーション)を上唇と歯茎の間に詰めると、ニコチンが歯茎から吸収される仕組みです。煙が出ないため非喫煙者に優しく、肺を傷めることもありません(その代わり歯茎を傷めます)。何だか良く分からずに「ジャケ買い」しましたが、僕が買ったのは"Medium white"というものでした。ニコチン含有量が多くなく、ポーションが白いので"white"と呼ばれるようです。「お、初心者としてはベストなチョイスだね!」と、図らずも褒められました。そう言った友人は"Strong"と書かれたニコチンたっぷりの物を愛用していましたが、ニコチン含有量が多い物はポーションが真っ茶色で、口に入れるのを躊躇する色合いです。ちょっと腐りかけた草のような臭いで、しばらく口に入れていると、耐え難い苦味が染み出してきます。(ある日本人のブログでは「馬糞のような味」と評されていました)缶はかわいいので、良く洗って研究室用の耳栓入れにしました。
耳からニコチン摂取しませんように。

オスロの夜

2011年07月30日 | 日記
テロ事件から1週間が過ぎ、依然として街の至る所に花とキャンドルが手向けられているものの
多くの人々は平常通りの生活に戻っています。
オスロ市内は夏休みを楽しむ市民と観光客で賑わい、街は元の平和と活気を取り戻しつつあります。


今週のオスロは「夏だ!!」と思える程度に暑くなりました。
気温は20度台前半~中盤ほどですが、日差しが強いため体感温度は高くなります。
木陰に入ったり日が暮れたりすると涼しいのですが、直射日光は服が熱くなるほど強烈です。

夏至は過ぎたものの、日の入りはまだまだ遅く、21時頃にやっと"夕方"程度です。
写真は21時頃の、オペラハウスの屋根の上からの眺めです。

夕焼け空に、臨海地区の建設現場のシルエットが映えます。
ちなみに、この建設現場は新しいムンク美術館を建設中です。
白亜のオペラハウス、"オスロのお台場"であるアーケブリッゲに続いて
臨海地区再開発プロジェクトの象徴的な建築になる予定です。


天気が良い日には、22時から23時頃にかけて、大変美しい紫がかった夕暮れを見ることができます。
写真は、今日の22時過ぎに僕のオフィスから見えた夕暮れです。

オスロの夕暮れは、空のグラデーションのダイナミックさと、オレンジやピンクや紫に輝く雲の美しさが特徴です。
この夕暮れを見ることができると(ノルウェー感覚で)遅くまで仕事して良かったな、と思えます。


僕が働くオスロ大学心理学部の近くには、オスロ大学のIT研究施設(たぶん)があります。
この施設は、オスロの新しい建築にありがちな黒とガラスを基調としたモダンな建物で
人工の池や川に沿って遊歩道が整備されており、夜には美しくライトアップされます。
写真は今日の24時頃の様子です。


遊歩道に沿って地下鉄(T-bane。中心部以外は地上を走る)も走っています。
オスロの地下鉄は東京のJR並に遅くまで走っており、路線によっては25時過ぎまで走っています。

ちなみにオスロのバスは地下鉄以上に遅くまで営業しており、主要路線は28時(朝4時)頃まで走っています。


オスロ大学のキャンパスは24時間開放されており、夜中になっても人が歩いています。
すっかり酔ってご機嫌な学生に混じって、女の人が一人で犬の散歩に来ていたりもします。
キャンパス内には、創立200周年を記念するネオンや、ライトアップされた噴水などもあり
節電する気など、さらさらありません。
ノルウェーは地の利を活かした水力発電と地熱発電に加え、ゴミ焼却発電も盛んで、天然資源に加えて電力も豊富です。
同僚曰く、隣国スウェーデンからゴミを輸入し、それを燃やして得た電力をスウェーデンに売りつけているそうです。






また、ほぼ全ての地下鉄、バス、トラムが集まるJernbanetorget(ヤーンバネトールゲット、オスロ駅前)も
夜中まで人通りは絶えません。
写真にも写っている通り、女の人も普通に歩いています。

ただし、オスロ駅付近には柄の悪い若者や麻薬中毒者(明らかに顔色が悪く、目に生気がないので、一目で分かる)もいるので
夜は不必要にうろちょろしない方が無難です。
昼間でも麻薬中毒者が普通にたむろして、仲間同士でおしゃべりしています。
現地の友人によると「麻薬中毒者はウザいだけで危なくはない」そうですが
昼間っから変なバァさんが「どう?買わない?」と白い粉を見せてきたり
気持ち悪い老カップルが「婆さんと一緒に写真撮らせてやるから、俺にカメラ貸せよ」と言ってきたり
その程度のことは頻発するので、不快な思いをしたくない旅行者は長居しない方が無難です。


ところで、治安の良いオスロでは、24時間営業のコンビニがたくさんあります。
オスロで最もポピュラーなチェーンは"Deli de Luca"という店で、オスロ中にあります。

コンビニなので価格は高め(500mlコーラが25nok = 400円)ですが、いつでも買えるのはありがたいことです。
このチェーンはdeliと名乗るだけあり、エスプレッソマシンで淹れるカプチーノやラテ
イタリアンやアジアンっぽい総菜やスウィーツも充実しています。

総菜は各種サンド、ラザニア、チキン、焼きそば風の何か、カレー風の何か、五目野菜炒め風の何かに加え
"Nigiri"と"Maki"のSushiセットも何種類かあります。
スウィーツは各種ケーキ、シナボン(!)、ジェラート各種、キャラメルやキャンディなどのお菓子の量り売りなど
深夜帰宅者の弱った自制心につけいる喪黒福造のような奴らが、手ぐすね引いて待ち構えています。
味はコンビニとしてはそこそこ美味しいですが、日本円に換算すると一気に意気消沈します。
例えば、Sushi 12biter(サーモンとエビの握りが各3カン、サーモン野菜ロールが6個)が129nok = 1900円。
買っては後悔する日々が続きます。

平和の国

2011年07月25日 | 日記
日本でも連日報道されているように、先週金曜(2011年7月22日)にオスロ市内外で
2つの爆弾と銃乱射による大規模な連続テロ事件が発生しました。
幸い、僕自身や職場の関係者は無事でしたが、爆弾テロが発生した現場は
自宅から2キロ弱、職場からも4キロと近いばかりか、事件前日の夜9時頃に仕事帰りに散歩した場所でした。
いつも買い物や散歩に行く地区がボロボロに破壊され、武装した軍兵士に封鎖されている光景は
悪い夢のように全く現実感が伴わず、それでいて、ただただ打ち拉がれて途方に暮れるという
言葉では形容しがたい体験でした。


事件後、爆発現場に限らずオスロ市内の至る所で花やロウソクが捧げられており
街全体が深い悲しみに覆われ、犠牲になった多くの若者を悼んでいます。












7月25日現在、犠牲者は100名に迫る勢いで、ほとんどが十代から二十代前半の子ども達でした。
爆発現場のすぐ近くにあるオスロ大聖堂には、連日多くの人々が追悼の献花に訪れ
犠牲になった子ども達の写真と、彼らに宛てた手紙や寄せ書きが
無数の花とキャンドルに囲まれる光景は、直視できないほど悲しく痛ましいものでした。



事件発生から三日後の今日(7月25日)、ノルウェーの主要都市で、大規模な追悼集会が開かれました。
オスロでは、イスラム教徒であるパキスタン系移民の男性がfacebookで呼びかけ
BBC速報値によると賛同したオスロ住民15万人がオスロ市庁舎に集まりました。
オスロ市の人口が60万人弱ですので、首都の住民の25%以上が参加したことになります。
しかも、首相や王太子(日本の皇太子に相当)までもが参加し、スピーチを捧げました。
一個人、しかもイスラム教徒の移民が数日前にfacebookで呼びかけた追悼集会に
首都の四分の一の住民と国の要人が参加するなど、日本では到底考えられないことです。
「ノルウェーはこれからも、開かれた自由な"ノルウェーらしい"社会であり続ける。」という
ノルウェー首相の声明通り、まさにノルウェーらしい追悼集会だったと思います。

オスロ市内は、バラやカーネーションなどの花を手にした人で溢れかえりました。
僕は日本にいた時でさえ、これほど多くの人を一度に目にしたことはありません。
ましてや、15万人が一斉に花を掲げる光景など、恐らくもう二度と目にする機会はないでしょう。
(そして、もう二度と目にしないことを願います。)



ノルウェー首相は事件発生直後の会見で「今、最も必要なことは被害者のケアだ」とし
会見後すぐにオスロ市内の大学病院に搬送された爆弾テロの被害者を見舞いに行きました。
翌日は乱射事件があった島を訪問し、国王と共に乱射事件の被害者を精力的に見舞っています。
国家の最高責任者が国家的危機の発生当日から被害者慰問に重点を置いて行動するというのも
日本ではちょっと考えられません。(少なくとも僕は「もっと他にやることがあるのでは?」と思いました。)
しかし、首相のとった行動はノルウェー国民に強く支持されています。
実際、追悼集会で首相が登壇した際には、一際大きな拍手がいつまで経っても止まず
今回の事件に対する首相の言動がノルウェー国民に広く支持されていることを物語っていました。


ノルウェーは「平和の国」として知られています。
ノーベル平和賞の選考と授与を行うことに由来しますが、事実としてノルウェーは非常に平和で穏やかな国です。
例えば、ノルウェーの治安は日本に匹敵するほど良好ですが、注目すべきは移民の多さです。
移民の受け入れに消極的な日本に比べ、ノルウェーは難民や亡命者を含めて
多くの移民を積極的に受け入れています(不幸にも、この点が今回のテロ事件の原因の1つになったわけですが)
日本における移民受け入れの是非はさておき、これだけの他民族、他文化社会にもかかわらず
日本に匹敵するほどの治安が保たれていることは、驚くべきことです。
また、同じ多文化社会でもアメリカなどとは違い、他民族、他宗教を尊重し
人種や性別による差別がない公正な社会である点も、世界に誇るべき点です。
オスロで暮らして4ヶ月になりますが、一度たりとも人種差別的な扱いを受けたことがありません。
それどころか、そのへんのコンビニの店員でさえ、僕が日本人であることが分かると、沈痛な表情を浮かべて
"I'm really sorry for the earthquake..."と、英語で見舞いの言葉をかけてくれたりします

ノルウェーが「平和の国」たる所以は、ノルウェーが「平和の民の国」である点にあります。

昨日(7月24日)、オスロ大聖堂で行われた追悼ミサにおける首相スピーチの中で
乱射事件の生存者である少女のコメントが引用されました。
"If one man can create that much hate, you can only imagine how much love we as a togetherness can create."
(首相府の公式webサイトから引用。全文はこちら
「一人の人間がこれだけの憎悪と悲しみを生み出すことができるなら
私たちが一つになればどれほどの愛を生み出せるのか想像してみてください」
(僕が勝手に意訳したもの)

全ての被害者と関係者が、そして、全てのノルウェー人が同じように考えているとは思いません。
しかし、おそらくは多くのノルウェー人が、この言葉に深く感動し、涙し、共感したでしょう。
もしかすると、こんなものは単なる綺麗事で、ただの偽善に過ぎないのかもしれません。
でも、僕が実際に見て知っている限りでは、多くのノルウェー人は本当にこういう人たちです。

ノルウェー人が平和を愛する民族であることは、今回の事件の犠牲者の追悼歌にも現れています。
追悼ミサで国王や首相や遺族が歌い、追悼集会では15万人が斉唱した追悼歌です。
その歌は"til ungdommen"("to youth"、「若者達へ」の意)という歌で、1936年に書かれた詩に
1952年にメロディをつけたもので、ノルウェーでは戦争や悲惨な事件の犠牲者の追悼の際などに歌われるようです。
YouTubeに曲がアップされていますので、是非聴いてみてください。
(曲はこちら

ノルウェー語なので何を言っているのか全く分からないにもかかわらず
何故か胸を打つ不思議な曲でした。
帰宅して歌詞の英語訳を探し、それを日本語で要約してみました。
ノルウェー語の詩を英語訳したものを更に日本語訳している上に
詩の訳ができるほどの表現力と英語力もないので、おかしなところがあるとは思います。
でも、何となく大意は汲んでいただけると思います。


敵に囲まれ 恐怖に震えながら 君は武器を探す
皆の幸せを信じることこそが 何よりも強い盾となるだろう
子ども達のため 全てをなげうって守らなければならない 決して終わらせてはならない
争いは愛する人たちの亡骸を積み重ねるだけ
平和こそが命と創造の種となるもの
我々は一人一人が この世界に生を授かるに値する
この命にかけて 公正であることを誓おう
自然の恵みも富も心の豊かさも 皆で分かち合おう
兄弟が救いの手を差し伸べるように 母親が子どもを守るように
助けの求めに決して目を背けてはならない
そして この優しく美しく豊かな国を 邪悪な暴力から守り続けよう


この歌には、平和を願うノルウェー人の静かで固い信念が込められており
ノルウェー人がどんな想いで国を作ってきたのかを良く表現した詩だと思います。
そして、ノルウェー人がどんな想いでこの歌を追悼歌として捧げたのかを考えたとき
この事件に対する彼らの想いも見えてくるのではないでしょうか。

僕はノルウェー語が全く理解できないので、この追悼歌を唱うことができませんでした。
ですので、歌う代わりに、配られた歌詞カードで折り鶴を折って捧げてきました。



3月の東日本大震災の際には、オスロ大聖堂でたくさんのノルウェー人が
遙か遠い日本の被災者のために涙し、祈りをささげてくれたそうです。
そのせめてものお返しと、犠牲者への哀悼の意と、何よりノルウェー人が愛する平和への祈りを込めて。

ノルウェーのスーパーマーケット事情

2011年07月17日 | 日記
ここ1週間ほど自宅のネットが不通で、外界から孤立していました。外国で孤立する厳しさを味わうと共に、インターネットが世界を劇的に小さくしていることを改めて実感しました。そして、明治時代に単身留学した人は本当に偉大だと思います。


さて、オスロ市内にはいくつか大手スーパーチェーンがありますが、僕のメンターによると、おおまかに3ランクに分けられるそうです。

高級スーパー:CENTRA
中級スーパー:ICA、MENY
大衆スーパー:Joker、KIWI、REMA1000、Rimi

あくまで主観ですが、僕の経験でもだいたいそんな感じです(KIWIは中級かも)。これらのうち、ICA、MENY、REMA1000、Jokerの4店が我が家から徒歩5分圏内にあります。


ICA


MENY


REMA1000


Joker

ノルウェーに限らず海外では、日本と同じ感覚で食品を買うと、高い確率で痛い目に遭います(お腹が)。生活を始めた頃は、疑うことを知らない純粋な心で買い物をしていたため「ハーブ入りパンだと思って食べたら、ただのカビの生えたパンだった」なんてことがあったりして、何度かひどい目に遭いました。それに懲りて、生鮮食品や調理済み食品は中級以上のスーパーで買っています。どこで買っても同じ既製品(缶詰や洗剤など)は大衆店でも問題ないですし、大衆店は中級店よりも一般に数クローナ(15-45円)安くこの数クローナの差が、物価の高いオスロではじわじわ効いてきます。また、Jokerは珍しく日曜も営業するなど、大衆店にもメリットはあります。ちなみに既製品の価格がダントツで高いのはコンビニです。大衆店で15nok(220円)ほどの500mlペットボトルが、コンビニでは25nok(380円)ほどします。中級以上のスーパーは、売り場面積にも余裕がある店舗が多く、店内もこざっぱりとしているので、買い物がしやすいというメリットがあります。一方、大衆店はごゃごちゃしていて、買い物カゴもきれいとは言えません。


多くのスーパーは、野菜と果物から始まります。

ノルウェーのスーパーの価格表示は、"/stk"という表示が無い限りはキロ単価です。ジャガイモが1キロ12nok(180円)、タマネギが1キロ14nok(210円)など、根菜は日本よりも安いです。サウジアラビア産とかですが、味も問題ありません。


そして、以前もご紹介しましたが、ハーブが鉢植えで売っています。

中級店以上では、鮮魚や生肉を切り売りするコーナーもあります。肉は牛肉、豚肉、鶏肉がメインですが、何故か鶏肉が最も高価です。牛肉や豚肉は日本のような「薄切り」「小間切れ」は存在せず、ステーキ用の塊、塊の残骸の端切れ、挽肉のワイルドな3択しかありません。肉が塊でしか手に入らないというのは、自炊する上で意外に大きな障壁でした。

魚はノルウェー海産のサーモンやタラ、サバなどが中心です。ホタテやホッキ貝、カニ、白身魚のすり身などもあります。


刺身用として、ノルウェー産サーモンやタラが、密閉されたフレッシュパックで売られています。

上段の棚にあるカラフルな瓶詰めは、トビッコのような魚卵です。通常は黄色ですが、鮮やかな緑や赤に着色したバージョンもあります。味は同じで、気味が悪いだけです。

魚は漁場が近いために非常に新鮮で、刺身も十分に美味しいです。魚を生で食べるSushi文化は、ここ数十年で急激にノルウェーに普及したそうで、今ではオスロ市内の至る所にSushiレストランがあります。スーパーに売っているものだけでも、簡単な海鮮丼くらいは作れます。


スーパーにはジャポニカ米(Sushi-Rice)、海苔、ワサビ、ガリ、巻物を巻くためのすだれみたいなやつ(巻きす)、シャリを作るための型などSushi partyに必要な物は一頻り揃っています。Sushi-Kitなるセットも売っています。

アジアコーナーには上記のSushi関係に加え、醤油などの日本の調味料や、インド、中国、東南アジア風のソースなどが多数揃えられており「なんとなくアジア風」な料理を作るには十分な品揃えです。


肉や魚は冷凍物もあります。ラムやトナカイなどは、旬の時期以外は冷凍で出回っています。

ノルウェー人は冷凍ピザが好きなようで、様々な冷凍ピザがありますが、日本のようにレンジでチンするタイプではなく、オーブンで焼くタイプです。また、ノルウェー人はエビも大好きで、スーパーには冷凍エビの量り売りがあります。

この冷凍エビは既に茹でてあるので、殻をむいてそのまま食べられます。北海道名産の北海シマエビのようで、非常に美味です。価格も1キロ60-70クローネ(1000円くらい)とお手頃です。
(ただし、某大衆店で購入したエビでお腹を壊しました。個人的にはICAやMENYのエビがお勧めです。)


パンコーナーには、通常のパンに加えて、成形済みのパン生地も売られています。

「あとは自宅で焼くだけ」という状態ですね。どこのスーパーにもあるので、パンを自宅で焼くのは割と一般的なのでしょう。また、ノルウェー独自のパン(?)として、「ランパ」と呼ばれる、ぺらっぺらの薄い円形のパンがあります(写真右の棚の最下段)。クレープ生地とピザ生地の中間のような厚さで、BBQの時にはこのランパにウインナーやエビサラダをフライドオニオンと共に挟んで食べるのが一般的です。手軽な割に美味しいので、ランチとしても活躍します。


ノルウェーはフルーツジュースも豊富で、美味しいものが数多くあります。リンゴ、オレンジはもちろん、ザクロミックスやトロピカルミックスなど様々な種類の100%ジュースが、1Lで25nok前後(350円前後)です。


また、ビールもそこそこ豊富です。

Budweiser、Heineken、Guinnessなどの世界の有名ビールやCarlsbergやTuborgといった隣国デンマークの有名ビールに加え、RingnesやBorgなど、ノルウェー国内では有名なビールや
国内中小メーカーのビールが20-40種類ほどあります。ノルウェーの民間企業はアルコール度数5%未満の酒類しか扱ってはいけないので、スーパーの酒売り場はほとんどビールしかありません。オスロ市内のPUBで最も出回っているビールはRingnesで、スーパーだと330mlの瓶で20nok弱(250円強)です。Ringnes、Borgともに軽くあっさりとした味わいで、日本のビールが好きな方には、比較的馴染みやすい味わいだと思います。


 ほぼ全てのスーパーには、PANTマシーンと呼ばれる自動販売機のような物が置いてあります。

このPANTシステムは日本も見習うべき、優れたリサイクルシステムです。ノルウェーでは瓶や缶、ペットボトルの飲料を買うと、容器によって1nok(15円)または2.5nok(40円)の預かり金が、会計時に上乗せされます。飲み終わった容器をスーパーのPANTマシーンに入れると預かり金が、そのスーパーの値引き券となって返ってきます。似たような「容器保証金制度」は日本にもありますが、一般家庭にはあまり普及していません。「値引き券で返ってくる」点がノルウェーのPANTシステムのポイントです。
値引き券は、そのスーパーでの買い物の割引券として使える(現金還元も可能)ため、スーパーはPANTマシンを設置することで恩恵を受けられるのでPANTマシンの設置に協力的になります。客も、空き容器を都合の良いスーパーに持って行きさえすれば買い物が値引きされるので、容器をポイ捨てしなくなります。また、ポイ捨てされた容器は、浮浪者が回収してスーパーに持って行きます。野外でBBQをした際などは、浮浪者が容器を回収しに来るので、こちらはゴミ処理をしなくて済みます。彼らにとっても、割の良い収入源となります。このように、全ての当事者にメリットがあるPANTシステムは広く普及しており、善意や環境保護意識に頼らない、実利的な賢いシステムだと思います。ペットボトルを持って行く人にも、PANTマシンを設置するスーパーにも、環境保護意識は芽生えないかもしれません。でも「環境保護意識の向上」を訴えて空き容器がリサイクルできないよりも、理由はどうあれ、空き容器がリサイクルできた方が良いに決まっています。綺麗事や建前に囚われない、北欧的な実利主義がよく現れています。

海とビール

2011年07月10日 | 日記
バイキングや北海油田やガス田、造船など、ノルウェーを語る上で海は欠かせません。
今回は海にちなむ2つの観光名所をご紹介します。


まずはフラム号博物館(Fram museet)。
入場料は60nok(900円)ですが、オスロ大学の関連施設らしく
関係者IDを見せると25nok(400円弱)で入れます。

フラムは「前進」という意味で、ナンセンやアムンセンなどの
著名なノルウェー探検家が南北の極地探検に用いた船です。
フラム号博物館はフラム号がすっぽり収められた三角形の建物で
フラム号の軌跡(日本語解説アリ!)や関連資料が展示されると共に
実際に甲板や船内を歩くことができます。





日本語解説によると、フラム号は氷に閉じ込められた場合、圧壊せずに
氷上にひょっこり浮き上がるように設計されました。
そして、12人の乗組員の5年分の食料を積み、北極に向かったところ
案の定(?)氷に閉ざされたものの、計算通りひょっこり氷上に乗り上げ
3年間も氷の上に乗っかったままのんびり南に流され、ついに無事に帰還したという
ひょっこりひょうたん島みたいな船です。

船内には食堂や談話室、厨房、船員用の小さな個室などがあり、それなりに
快適そうではありますが、3年間も暮らすのは勘弁して欲しいところです。




ちなみにナンセンが北極付近に大きな島を発見し、帰国後に政府に報告しましたが
当時の政府は本気で取り合わず、領有権を主張しませんでした。
ところが翌年、カナダ隊が同島を「発見」し、カナダが領有を宣言しました。
何ともマヌケな話です。



次は、フラム号博物館の向かいにある、ノルウェー海洋博物館。
こちらも料金は60nok(大学関係者割引は無)で、主に造船技術の歴史を
実物や模型、デジタル資料などで展示しています。
船に興味がある方は、それなりに楽しめると思います。

まず目を引くのは、朽ち果てた大木。
2000年前の丸木船だそうです。


続いて、捕鯨用の銛(harpoon)です。
(余談ですが、有名な対艦ミサイル「ハープーン」は「銛」という意味ですね)
奥には北海油田の施設やタンカーの模型もあります。


そして、海洋博物館で最もびっくりした展示がこれです。

動物の死骸にパンパンに空気を入れ、空気が漏れないように縫ったものです。
なんと20世紀に至るまで「浮き」として使われていたそうです。

海洋博物館は、船マニアの方以外は「ふーん」程度しか感想がないと思います。
(オスロの各観光名所のお勧め度は、そのうちまとめて掲載する予定です)



さて、オスロはフィヨルド最深部に位置するので、湾内には多くの島があります。
小島には古い灯台もあり、結婚式などのイベント用に貸切もできるそうです。


そして、気温16度だというのに、海水浴真っ盛りです。

皆さんじゃぶじゃぶ泳いでましたが、足を入れただけで風邪をひきそうな冷たさでした。



ノルウェーを語る上で、海と同様に欠かせないのが酒です。
寒冷地だからかは分かりませんが、ノルウェー人はめっぽう酒に強いです。
僕も日本では割と強い方でしたが、ノルウェーではほぼ最弱です。

ノルウェーでも最もポピュラーな酒はビールですが
雑誌やblogでは「ノルウェーのビールは不味い」という記事を目にします。
確かにイギリスやドイツほどビール醸造が進んではいないと思いますが
だからと言って「不味い」わけではなく、十分に美味しく飲めます。
ただし、物価が高いので、コストパフォーマンスという意味では
イギリスやドイツなどのビール先進国に引けを取るかもしれません。

オスロには1件だけ(!)、醸造設備を備えたパブがあります。
オスロの渋谷、マヨストゥア(Majorstuen)地区にある
マイクロブリュアリー(Mikro Bryggeri:「小さな醸造所」の意。クリックすると公式サイトへ)というパブです。
(ちなみにgoogleマップではMajorstuenは「メジャーズトゥーアン」と書かれています。
googleマップの日本語地名は、基本的に英語っぽく適当にカタカナにしただけなので、現地では全く通じません。)



マイクロブリュアリーでは、5種類前後のビールが楽しめます。


僕が行った時には6種類あり、そのうちの2種類を実際に飲んでみました。


・Oslopils
 店の看板ビール。鮮やかな金色で、ほのかな酸味と甘みの後
 麦が軽く香り、後味はすっきり。


・Steamer
 赤茶色で、やわらかな酸味と甘みが、しっかりとした余韻を残す。

・Porter(未チェックのため、店員の説明のまま)
 赤いらしい。

・Stout(未チェックのため、店員の説明のまま)
 黒いらしい。ギネスのよう。

・IPA(Indian Pale Ale)(未チェックのため、店員の説明のまま)
 インド風のエールで、アルコール度数が強い。

・Weizen
 情報無し。


全種類、1パイント(570ml)で73nok(1100円)です。
僕は十分に美味しいと思いましたし、店の雰囲気も決して悪くありません。
円換算すると、お世辞にもコストパフォーマンスが良いとは言えませんが
現地感覚では73nokは730円くらいですので、地ビールが1パイント730円なら
東京とそんなに変わらないかな、とは思います。

ノルウェーの物価が高過ぎるという不評は、物価そのものの問題に加えて
ノルウェークローネが世界屈指の強い通貨であることも大きな要因です。
ざっくり言うと感覚的には100円 = 10nok = 1英ポンドくらいですが
現在のレートで円換算すると100円 / 149円 / 129円ですので
今やノルウェークローネは、あの英ポンドよりも高い貨幣と言えます。
どうりで物価が高いと感じるわけですね。

アーケシュフース城散策

2011年06月16日 | 日記
アーケシュフース城は(お世辞にも多いとは言えない)オスロ市の観光名所の1つです。
着工が1290年代という古城ですが、現在の姿の基礎を築いたのは
「女性と戦争と建築が大好き!」という
褒められてるのか貶されてるのか分からない王様・クリスチャン4世です。
このアーケシュフース城は難攻不落の城塞として有名で
第二次世界大戦でナチスに占領されるまでの約650年間、一度も陥落したことがなかったそうです。
また、現在もなお軍事施設であり、国防省および国防本部があります。
最重要軍事拠点であり、かつ、王族の墓がある王家ゆかりの城でもあるのですが
そこは平和の国ノルウェーらしく、夜9時までは一般開放されており
普通に散策したり昼寝したりできます。何しろ観光名所ですし。
それどころか、このblogのために調べるまで、軍事拠点であると気付かなかったほどの平和っぷりです。

敷地内には軍事博物館と対ナチスの抵抗運動博物館なども併設されていますが
芝生と花と樹木に満ちた広大な敷地と、見晴らしの良い城壁が人気のポイントです。

煉瓦や石造りの城壁の周囲には、石畳の道が整備されています。

「城」というよりは「砦」という雰囲気ですね。
屋根には日本の瓦のような物が使われていました。


石畳は季節の草花で彩られ、ちょうど良い木陰も多く、多くの人々が読書や昼寝をしています。
今月はライラックやシロツメクサが満開でした。

ノルウェーの草花は、気候のせいか、故郷である札幌と似たようなものが多い気がします。
派手さはないものの、どこかほっとする草花たちです。

石畳の道を上り、振り返ると、トンネル越しに海が見えます。

大砲の模型があるあたりに、かろうじて軍事施設らしさが感じられますね。

また、軍事施設であり、王族関連施設でもあるので、衛兵が巡回しています。

イギリスなどの衛兵に比べると割とちょろちょろ動き回る上に、表情も固くなく
良い意味でノルウェーらしい衛兵です。

城壁の上も自由に散策することができ、オスロフィヨルドが一眸できます。


ただしこの城壁、かなりの高さがあるにもかかわらず、柵は一切ありません。
高所恐怖症の方や、無鉄砲な坊ちゃんには全くお勧めできません。
無闇に落ちれば、一週間腰を抜かすどころか二度とは立ち上がれません。



ちなみに城壁の奥に見える煉瓦の建物は、ノーベル平和賞の授賞式で有名なオスロ市庁舎ですね。

もちろん城内も解放しており、大広間や牢獄、大ステンドグラスもあるそうで
それなりに「観光」っぽい楽しみ方もできるようです。
しかし、この城では是非とも「海と樹木に囲まれた、穏やかで平和な時間」という
ノルウェーらしい贅沢を味わっていただきたいものです。



さて、アーケシュフース城散策を終えて、城下にあるヨットハーバー地区に足を伸ばすと
運良くシーフードフェスティバルのようなイベントが開催されていました。
生バンド演奏を聴きながら海の幸と地ビールを味わう、ビアガーデンのようなイベントでした。

場内の屋台では「さすがバイキング!」と感心する、見たこともない巨大な鍋で
パエリア(手前)とムール貝のミルク蒸し(奥)を作っていました。


タラバガニの足も豪快に山積みです。


そして何より驚いたのは、クジラの刺身が普通にありました。
クジラの燻製、クジラステーキ、クジラバーガーなど、メニューも豊富でした。


ちなみにノルウェー人は、日本の調査捕鯨船が硫酸瓶や体当たりによる攻撃に曝されている事実をほとんど知らないようです。
「クジラを殺して、しかも食べるなんて、日本人は野蛮!」とか言う気が狂れたエセ環境保護主義者は
同じくクジラを生で食べる白人に対しても同じ事を言うのでしょうかね。


せっかくなので、パエリアとムール貝と大衆ビール(350ml缶)を買いました。

パエリアが130nok=1950円、ムール貝が120nok=1800円、缶ビールが60nok=900円。
3点で合計310nok=4650円。
高っ!!!
しかも、パエリアは僕が作った方が遙かに美味しかった。。。
ちなみに、ムール貝は15分ほど待たされたのですが、あまりに良いにおいだったので
出来上がった時に満面の笑みでニコニコしてたら、写真のおっさんが量を2倍にしてくれました。
笑う門には福来たる、ですね。

最近の生活とwok

2011年06月12日 | 日記
ここのところ忙しくて、更新が滞ってしまいました。
忙しかった理由は、ノルウェー滞在期間を延長するための研究資金の申請です。
研究するためにお金が必要なのか、お金が必要だから研究するのか、科学では解けない謎です。

それと、このblogをお読みいただいた方の中の、ごく少数の方へのお願いですが
このblogの文章の無断転載はご遠慮下さい。
先日のnational dayの記事が、2chの「国旗掲揚と国歌斉唱を考える」みたいなスレッドに
幼少期から国旗に敬意を払う教育の例として転載されていました。
日の丸や君が代に対する僕の主義信条の問題ではなく、匿名で誹謗中傷を繰り広げる
ネット右翼の巣窟に僕の文章が転載されることが、僕の主義信条に反します。


さて、オスロはますます陽が長くなり、「真っ暗」という時間はほとんどなくなってしまいました。
気分転換と運動を兼ねて、22時頃に湖畔の森を散策したりしても、全く問題ありません。


そして、こんなに日照時間が長いと、植物たちも休む暇がありません。

陽が長いせいか、通勤途中の小径の植物たちが、怖いほどみるみる育っていきます。
日照時間が長いと植物の寿命も長くなるのでしょうか、それとも短くなるのでしょうか。


陽が異様に長いので、いくらでも残業できます。
先週は夜中2時過ぎまでオフィスにいましたが、そんな時間でも自転車のライトは必要ありません。
自転車を買った時に「ライトも買わなきゃ」と言ったら
店員が不思議そうに「そんなもの要らないんじゃない?」と言った意味が分かりました。
自転車に乗れる季節=自転車に乗る時間は常に明るい、ということですね。
「夜は暗い」「昼は明るい」という常識は、ここでは必ずしも通用しません。
このような日常の些細なことで、今まで意識しなかった自分の根底にある常識や感覚が
自分が生まれ育った気候や風土に根付いたものだということを改めて実感します。
当たり前のことですが、「当たり前」の姿を目の当たりにする感覚は新鮮なものです。
(ちなみに、ノルウェーはスキーが盛んで、雪質も素晴らしいだろうと期待していたのですが
ノルウェーのスキーは基本的にナイターだということに気づき、がっかりです。)



先週は夜中までオフィスにいたので、職場ではすっかり「仕事しすぎ」キャラになってしまったようです。
同僚達とランチを食べている時に「なんで週末も働いてるの?」と聞かれ
「ノルウェーには友達も家族もいないから、仕事以外にすることない」と答えたら
同僚の一人が家に招待してくれ、ノルウェー料理をご馳走してくれました。
スモークサーモンの山羊チーズソースがけ、トナカイのシチュー、アップルケーキを作ってくれたのですが
ノルウェー料理は素材の味を活かしたシンプルな味わいで、日本人の口にも合います。
トナカイは初めて食べましたが、羊にも似た味わいで、北海道で生まれ育った僕には懐かしい味でした。
とても気に入ったので、後日自分で作ってみました。

材料は、トナカイ、マッシュルーム、タマネギ、サワークリーム、水、塩胡椒。
味の記憶を頼りに想像で作ったので、同僚が作ってくれたものには劣りますが、まぁまぁの味わいです。
もう少し改良すればそこそこ美味しくなるはずなので、ノルウェーに遊びに来た人にはお見舞いします。


料理と言えば、最近、wokという料理にはまっています。
(正確に言うと、食べ過ぎてちょっと飽きています。)
wokは、sushiと並んで人気のあるアジア料理です。
"wok"は元は「中華鍋」のことで、転じて中華鍋で作った料理全般を示すようです。
逆に言えば「中華鍋で作った」こと以外は、材料や調理法などが全く分からない謎の料理です。
(というか、もはや料理名としては不適切なほど漠然とした名前です。)
僕が調べた限りでは、炒めた麺か米を「アジア風」に味付けしたものが多いようです。
このwokですが、sushiよりも手軽で安価に作れるため、家庭で味わえるアジア料理として人気があり
オスロ市内のどのスーパーでも、wok用の麺、冷凍具材、ソースなどが多数並んでいます。


価格も手頃で、手軽に食べられる「アジアっぽい料理」として、僕も頻繁に食べています。
写真右上の船越英一郎似のおじさんは"King of Wok"ことMr. Leeさんです。


このKing of Wokが作ったとされる"Wok Star"ブランドのready to wok noodleは
普通のインスタントwok麺の10倍近い値段のくせに、全く美味しくありません。
このwok麺に限らず、ノルウェーでは「私が作りました」風の文章と共に、自慢げなおっさんの写真が印刷されたパッケージを目にします。
「誰だよお前?」って感じですが、作った人が写真入りで紹介されていると、何となく高級感は出ますね。

ちなみにこのMr. Leeのロゴですが、どこかで見たことあると思ったら
前に紹介した美味しいカップラーメンと同じロゴでした。
King of Wok、本業はイマイチなようです。
そして、どうでも良いですが、今まさにwokを中華鍋から直に食べようとしているKing of Wok。
この量はどう考えても食べ過ぎです。
たぶん"wok star noodle"10人前分くらいあります。
あるいは、これを全部食べるという意味で"King of Wok"なのかもしれません。

wokソースは、数社から計15種類くらい発売されています。

「テリヤキ」は甘い醤油味、「マイルドカレー」は日本のカレーのような味
「タイ風コリアンダー」「レモングラス&ジンジャー」は東南アジア風
「スウィート&サワー」はエビチリ風味、「オイスター&ごま油」はチンジャオロース風味など
何となく「アジアっぽい」味が楽しめます。

wok用の冷凍野菜も、ベビーコーンが入った「タイ風」
キクラゲが入った「中華風」、レンコンが入った「ベトナム風」など、バリエーション豊かです。

炒めた野菜と茹でた麺をソースで和えれば出来上がりです。

焼きそばというよりは、混ぜそばに近い感じですね。



また、最近は美味しいラーメンの麺を発見したので、めんつゆを作って
ざるラーメン(ざるそばのラーメン版)にして食べています。
発見したのは麺だけなので、今のところはざるラーメンしか食べる手段がありません。
ちなみに発見した麺は、その名も"mendake"。
その名の通り、麺だけです。

ムンクとヴィーゲラン

2011年05月27日 | 日記
先日却下された就労ビザについて、5月10日付で「こういう事情で、却下はおかしいから、再検討してください」というEメールを送ったら、5月23日付で「Eメールを受け取りました。再審査には6ヶ月かかります。」というEメールが来ました。Eメールを受け取るだけで2週間もかかっちゃう国です。なんのこっちゃ。ちなみに、ビザなしで日本人が滞在できる最大日数は90日です。しかも「ビザ申請が却下された者は4週間以内に帰国しなければ強制送還」という法律もあり、たった3ヶ月で早くも帰国か!?と慌てましたが、「滞在許可の再審査が終わるまでの滞在許可を申請する」という禅問答のような訳の分からない申請をしたので、とりあえずは大丈夫みたいです。

さて、それは良いとして、ノルウェーは著名な芸術家を多数(?)輩出していますが、中でも特に有名な人が2人います。

まず1人目は、画家のエドヴァルド・ムンク(Edvard Munch)。ご存知「叫び」でお馴染みの、あのムンクですね。ムンクは1000nok札(日本の壱万円札に相当)に肖像画が印刷されているほど
ノルウェーでは国民的な存在のようです。オスロ市内にはムンク美術館があり、必見の観光スポットとされています。


あまりに有名なムンクさんですが、彼の絵を最も適切に形容するのは「彼の人生のようだ」という言葉ではないでしょうか。

ムンクは、幼少期に母や姉を亡くし、自身も病弱であったことから、常に「死」や「不安」が身近に潜む中で生きていたようです。また、元カノとケンカして発砲事件を起こした末に左指を失ったり、精神を病んでアルコールに溺れ、精神科で療養生活を送ったり、「愛を炎に例えるのは正しい。愛は炎と同じように山ほどの灰を残すだけだ」と言ったり、とにかく、そんな人です。彼の絵を見たことがある方は「ああ、そんな感じ」と共感してくれると思いますが、基本的には不安な絵ばっかりです。一日中見ていると気が滅入りますが、ド素人がちょっと見る分には面白い絵です。


これは有名な絵の1つ「吸血鬼」(Vampire)です。僕は"Chopin"を「チョピン」と読んでしまうほど芸術全般に疎いので、解説というよりは単なる冷やかしです(以下、全て冷やかし)。このムンクさんは、ほとんど同じ絵を何枚も描くことで有名です。Vampireは、ムンク美術館だけでも5点以上飾ってありました。

次は「生命のダンス」(Dance of Life)。

彼のテーマである「愛」「死」「不安」が一堂に会した傑作だそうです。真ん中のゲッソリした人が「死」でしょうか。右から2番目の極度に顔色が悪い人は、明らかに「不安」ですね。顔色が悪すぎて、ドラゴンボールに出てきそうです。



そして、ご存知「叫び」。

この「叫び」も、ほとんど同じ絵が何枚もあります。数年前に盗難にあった際も、控えの「叫び」が代打で出ました。ちなみに「叫び」は、オスロ市内の山道を描いたものだと言われています。

この山道からはオスロ市内を一眸でき、空も綺麗な青で、不安要素は何一つありません。こんな綺麗な風景を、あんな不安一色に染め上げるなんて、たいしたものです。

最後に「マドンナ」(Madonna)。

僕はムンクさんの作品で、この絵が一番好きです。「マドンナ」は彼がまだ具合が悪過ぎない頃に描かれた代表作で、ムンクの作品にしては、負ではなく正の躍動感が感じられます。また、ムンクは晩年にも多少具合が良くなり、その頃の絵にも明るさが垣間見られます。そう言った意味でも、彼の作品は彼の人生そのものであり、まさにパソグラフィです。

以上の写真は、ムンク美術館の売店で売られているレプリカやハガキやマグネットを撮影したものです。売店も充実していますが、カフェも併設されており、そこのケーキはちょっとした名物になっています。


ケーキに、ベビースターラーメンみたいな奴が乗っていますね。お分かりかと思いますが、「叫び」の彼です。だいぶ血色が良くなりました。


さて、ノルウェーを代表するもう一人の芸術家は、彫刻家であるグスタフ・ヴィーゲラン(Gustav Vigeland)です。ムンクほどの知名度はありませんが、ノーベル賞メダルをデザインした人です。彼は「オスロ市が製作環境の全てを提供する代わりに、作品を全てオスロ市に寄付する」という、文化程度の高い北欧らしい公的パトロン契約を交わし、オスロ市内の一等地に彼の彫刻のみが展示される広大な「ヴィーゲラン公園」が誕生しました。

この公園は出入り自由で、芸術に加えて広大な緑地面積を誇り、しかも緑地内でバーベキューOKということで、住民の憩いの場として親しまれています。以前のblogで、春先からビキニで日光浴を楽しむオスロ女性の事を書きましたが、あの写真もヴィーゲラン公園で撮影したものです。

ヴィーゲラン公園には、人生の様々な局面を表現した212柱の彫刻が展示されています。公園内の彫刻は全て人間に関する彫刻であり、園内の212柱に計600人以上の人間が彫られています。ただ、この公園は、何とも珍妙な彫刻が多いことで人気です。ヴィーゲランは自身の彫刻の解説を残さなかったようで、これらの彫刻が一体全体どんな人生の一場面を描いたものなのか、誰にも分かりません。少なくとも僕は、今までの人生ではもちろん、これからの人生においても、これらのポーズの1つたりとも実行することはないと思います。これらのポーズの1つでも思い当たる節がある方は、何をやっているところか知りたいので、是非ともご一報ください。

まず、公園のエントランスをくぐると、橋がまっすぐ延びています。


橋の両脇には、妙な彫刻が等間隔で飾られています。







ちなみに、僕のメンターが僕と妻を最初に連れて行ってくれたのがこの公園です。彼はいくつかの彫刻に独自のタイトルを付けたのですが、僕は彼のセンスがツボです。


"crazy"


"posdoc and supervisor"


"too many"


"a few years after (their mariage)"

橋の先には小高い丘があり、その丘の頂上が公園のクライマックスです。丘の頂上には、これまた妙な彫刻が配置され、その中心に巨大な柱がそびえ立っています。









この柱は「モノリッテン」と呼ばれ、巨大な花崗岩の一枚岩を彫って作られたものです。残念な僕は「全裸の人間がうじゃっと固まっている変な柱」として面白がっていたのですが

柱の下段には、他人を糧にし争う人間達
中段には、自らを犠牲にして弱者を上に持ち上げようとする屈強な人間達
そして最上段には幸せそうな子ども達が配置されており
精神的に聖なる存在に近づこうとする人間を表現している

という解説を読んでから再度見に行くと、さすがの僕も何となく感慨深い気になりました。

ちなみに、4月上旬と5月上旬の写真が混ざっています。間隔は1ヶ月弱で、時間もほぼ同時刻です。空の色も、草木も雪も、人の服も、1ヶ月の変化量がとにかく異常です。

RUSS

2011年05月21日 | 日記
5月11日付のblogで、RUSSについて触れました。高校の卒業生達が、赤やら青やらの変なダサいツナギを着て大はしゃぎする、妙な風習ですね。

 このRUSSですが、僕がノルウェーに来て体験した異文化の中でも抜群に強烈、かつ、ぶっちぎりで意味不明でしたので、気になって調べてみました。ノルウェー語は分からないので、ソースは主に英語版wikiやノルウェーの英字新聞ですが、調べれば調べるほど、その意味不明さは底無しでした。

 まず"RUSS"の語源は、デンマーク語で「田舎者」を意味する"RUS"で、まだノルウェーに大学がなかった頃(オスロ大学創立200周年なので、200年前)、隣国のデンマークにあるコペンハーゲン大学に入学したノルウェー人が「田舎者」と揶揄されたことに端を発するそうです。つまり、事の始まりから既にダサかったわけです。(ちなみに、この起源が現在のRUSSになった経緯については、Wikiを読んでも意味が分かりませんでした。英語が分からなかったのではなく、経緯の意味が分からなかったのです。興味がある方は、是非とも英語版wikiをご覧下さい。)

 次にRUSSのトレードマークである例の変なツナギですが、普通科は赤、商業科は青、工業科は黒、農業科は緑と、卒業する科ごとに色が決められています(オスロでは大多数が赤、たまに青、極まれに黒、といった割合です)。このツナギは、全身ツナギタイプとオーバーオールタイプがあり、年によって流行が異なるそうです。確かに、どちらも甲乙付けがたいくらいダサいので、悩みどころです。RUSS期間の1ヶ月間は、この変なツナギを、寝るとき以外は必ず着用しなければならず、万が一洗濯などしようものなら、それはそれは恐ろしい厳罰が科されます(片足だけ短パンの刑)。

 と、ここまでは5月11日付けのblogでも紹介した通りです。RUSS衣装の写真も掲載しました。


ところが、この時にご紹介したRUSS衣装は、実は未完成だったことが判明しました。RUSSのクライマックスは、前回blogで紹介した5月17日のNational Dayです。なぜNational Dayがクライマックスかというと、この日の朝にRUSSの衣装が全て揃い、一ヶ月の時を経て遂に「完全装備」となるからです。



これがRUSSの完全装備です。

何が加わったのかというと、帽子ですね。彼らにはNational Dayの朝、ツナギと同じ色の帽子が授与されます。この帽子こそが、彼らが高校を卒業した証であり、RUSS月間のフィナーレを飾る重要なアイテムなのです。大学卒業時にかぶる(人もいる)、ハリーポッターみたいな帽子と同じようなものですかね。


ちなみに、この帽子、どこかで見たことがある気がします。



 さて、帽子を得た彼らは、ブーナッドなどの美しい礼装の人々が国王に敬意を表する横で、ウーファーの轟くような重低音と共に、ド派手に暴れ回ります。


この乱痴気騒ぎは、なんとロイヤルファミリーも参加する祝賀パレード真っ最中の王宮の敷地内で、同時進行で行われていました。日本だったら間違いなく摘み出されますが、ノルウェーではRUSS期間中は公的に無礼講ですのでパレード中の王宮の敷地内だろうが、全くお構いなしです。面白いことに、大多数のノルウェー人の大人達は、RUSSの馬鹿騒ぎに対して、まるでそこに何も存在しないかのような態度を取ります。


写真では、お母さんと子どもが、何事もないように普通にボーッと立っています。実にシュールな構図です。



そして、RUSSの衣装以上に気になるのが、RUSSバスです。RUSS期間中、彼らはバスに独自の変なペイントを施し、車内で飲酒しながら大騒ぎして街中を爆走します。



カメラを向けたら、おもちゃの銃を掲げてポーズを取ってくれました。窓部分をPhotoshopで加工すると、少し見やすくなります。



また、先ほどの王宮敷地内で騒いでいたグループのバス内部も、少し撮影に成功しましたのでYouTubeにアップします。ノリノリというか、もはやラリラリです。「壊れた人形のよう」という表現が、ここまでしっくりくる人も珍しいですね。

これらのRUSSバスは、ペイントや改造がド派手であるほどcoolだそうで、RUSS実行委員会(!)の公式webページにて、投票によるランキングも掲載されます。そのバスランキングにもランクインした"Shipping 2011"号(下図参照)のメイキング(?)と車内の映像がYouTubeにて公開されています。



真っ白だったバスが、真っ青になっちゃいました。そして、車内がスターウォーズみたいになっています。お台場に夜な夜な集結するヤン車など比較になりません。完全に度を超えています。

 さらに、2006年に話題になった(らしい)伝説のRUSSバスがこれです。


もはや、走れる気がしません。こんなの、横風にあおられたら一発ですね。バスというよりは、むしろ船に近い存在になりました。


 これらのRUSSバスは、どうやらRUSSの為だけにバスを購入して改造するようです。僕の高校で、スクールバスを盗んで牛丼を買いに行って退学になった伝説の勇者がいましたが、高校生がバスを買ったという話は、未だかつて聞いたことがありません。一体全体、どれだけの資金が必要なのでしょうか。

 この点に関して、2004年のAftenposten紙に「RUSS資金の調達のために高校生達がポルノに出演した」という興味深い記事がありました。彼女たちの話として、RUSSバスに必要な資金の概略が掲載されています。
その記事によると...

バス代 = 130,000 nok(195万円)
バス修理代 = 25,000 nok (38万円)
バスに積むオーディオ機材 = 50,000 nok(75万円)
運転手の賃金 = 20,000 nok(30万円)
バスの内装 = 10,000 nok(15万円)
燃料代 = 10,000 nok(15万円)

合計 = 245,000 nok(368万円)


もはや言葉を失います。ノルウェーは物価が高いから、というのも言い訳にはなりません。バスの修理代だけで、曲がりなりにも高度専門職の僕の月収と同額です(ちなみに、blogで何度か自分の収入を記述していますが、僕の身分と収入は日本、ノルウェー両国内で公表されているので、今更隠しても仕方ありません)。1チーム10人から20人程度とすると、バス関係だけで1人あたり約19万円から37万円を負担することになります。その他に、変なオーバーオール代、大量のおふざけ名刺代、公式バッグ代、一ヶ月の飲み代など多額の費用がかかります。

 このように莫大な費用がかかるRUSSですが、裏を返せば大きなビジネスチャンスであるとも言えます。RUSSの公式サイトには、スポンサー企業が広告を出し、RUSS"公式"グッズを売りつけています。天下のAppleコンピュータも「2012年のRUSSに向けて、今ならMacBookProと名刺100枚がセットで1500nok(=23万円)」と早くも高校2年生をカモにした広告を掲載しています。どこの国にも悪いオトナたちがいたものです。

 さて、RUSSには毎年、公式ルールというか、悪ふざけガイドラインみたいなものがあります。一部が英語になっていたので翻訳すると
・マクドナルドかバーガーキングで、母音を言わずに子音だけで注文する。
・学校の先生の質問には全て、ポルノ雑誌の朗読で答える。
・口の中に生理用タンポンを2つ入れた状態で、ビールを飲みきる。
など、多くが、認めたくないような若さ故の過ちです。僕の高校でも、授業中にパンツ一丁で3階の窓から飛び降りたり、授業中に先生にカンチョーしたり、授業中に寿司の出前を頼んだりした奴がいましたが、どこの国でもやはり高校生は馬鹿なのですね。

数日前、仕事を終えて24時頃にバスに乗ったところ、乗車していたバスの前に、RUSSの集団が旗を振りながら立ちはだかり、運転席の窓を慌ただしく叩いて運転手に何やら大声で指示を与えていました。運転手にひとしきり指示を出すと、別の学生がカウントダウンを始め「3、2,1,GO!!!!!」という声援と共にバスは再び動き出しました。どうやらF1のピットインごっこをしていたようです。こんなことを日本でやったら、間違いなく逮捕です。

僕は、悪ふざけのレベルは全国でもトップクラスの高校を卒業しましたが、さすがにノルウェーのRUSSには驚きと戸惑いを隠せません。