日本でもニュースになっていましたが、2012年1月23日頃に発生した太陽活動によって磁気嵐が発生し、オスロでもオーロラが観測できる可能性がにわかに高まりました。オーロラは英語で"northern lights"と言う方が一般的ですが、このノーザンライトがオスロで観測できるのは稀なので、スーパーバイザーや友人が立て続けに「今日明日はノーザンライトが見えるかもよ!」と教えてくれました。この機を逃す手はないので、仕事は18時に切り上げ、スノーシューズ+ウールソックス+ヒートテックももひき+セーター+スキーウェア上下+スキー用手袋+フェイスマスク+ウールの帽子という、ドラクエ天空シリーズばりの最強装備(不審者レベルはエリミネーターばり)で郊外の湖Sognsvannに乗り込みました。
凍った湖を歩いて渡り、街の灯りから最も遠く、北の空を一眸できる湖畔に陣取りました。真冬の夜の森にも関わらず大勢のノルウェー人がジョギング(!)などを楽しんでいましたが、オーロラ目当てと思われる人も数名いました。また、余談ですが、湖の中央付近で氷が解けており、いきなり底が抜けて水中にずっぽりと足を踏み入れて死の戦慄を覚えました。以前の記事で「人々は何となく雰囲気で湖面に足を踏み入れているだけだと思われるので、全面が十分に凍っている保証はなさそう」と書きましたが、果たしてその通りでした。湖の真ん中で湖面が十分に凍っていないことに気付いても手の打ちようがなく、サメがいる海域を手漕ぎボートで取り残されたような心境でした。
さて、オーロラを見るためには辛抱強く待つことが肝要ですが、氷点下10度以下という極寒の中でじっと待つのは、想像以上に厳しいものです。天空シリーズばりの重装備でも、1時間もすると寒さをはっきりと自覚します。2時間もすると、冷え切った身体から発せられる冷気がスキーウェアの保温性によってウェア内に充満します。防寒具が温かいのは偏に自分の体温のおかげだということが明快に理解できます。寒さ故に携帯やiPodの電池はあっという間に消耗し、シリコン製イヤフォンも不愉快なほど冷たく硬くなります。観測を始めた時は「風邪で死ぬ確率は、人生でオーロラに出会える確率よりも低い」と風邪をも辞さない覚悟でしたが、度を超えた寒さと暇さによって時の流れが遅く感じられる「逆ウラシマ現象」(大泉, 1998)が生じ、3時間を超えると本能として中断せざるを得なくなります。チンピラの「今日はこれくらいで勘弁してやる」の心境で、北の空の白い雲(上の写真で、ちょうど僕の頭の上あたり)を恨めしげに30秒解放シャッターで撮影し、無念の退却。
ところが、この白っぽい雲が曲者でした。周囲に白い光源がないにも関わらず、雲の一部だけが何となく白っぽく見えるので変だとは思っていたのですが、帰宅して写真を大画面で見てみると、なんとうっすら紫色と緑色に輝いていました。
高精細ディスプレイじゃないと分かりにくいかもしれませんが、確かに紫色と緑色に輝いています。人間の目にはうっすら白く見えただけですが、30秒間シャッターを開きっぱなしにしたカメラはオーロラらしき光を記録していました。こんなことなら、もっと撮っておけば良かった。ただ、あまりの低温環境にフル充電の電池が5分で残量30%にまで低下し、バシバシ撮れるような状況ではありませんでした。全体的にオーロラ観測をナメていた中で撮れた1枚なので、まぁ上出来でしょう。
ちなみに念のため翌日も、場所を海岸に移してオーロラ観測を決行しました。風下の森の中よりも風上の海岸の方が雲が少ないと考えたのですが、海風の冷たさが尋常じゃなく、知らない間にベンチに座ったまま寝てしまいました。寒くて眠れなかった経験はありますが、寒すぎて眠ってしまったのは生まれて初めてです。寒いと本当に寝ちゃうんですね。幸い、たまたま通りがかった放し飼いの犬に物凄い剣幕で吠えたてられて目が覚めましたが、危ないところでした。そして、今度は夜空の白っぽいところを片っ端から撮影しましたが、残念ながら全て単に白っぽいだけで紫色や緑色の光は写っていませんした。
これはこれで綺麗ですが、湖畔で撮ったあの1枚とは全く異なるものです。やはりあの1枚はオーロラである可能性が高いと考えられます。ノルウェーに滞在する間に空いっぱいに輝くオーロラを見てみたいものです。
凍った湖を歩いて渡り、街の灯りから最も遠く、北の空を一眸できる湖畔に陣取りました。真冬の夜の森にも関わらず大勢のノルウェー人がジョギング(!)などを楽しんでいましたが、オーロラ目当てと思われる人も数名いました。また、余談ですが、湖の中央付近で氷が解けており、いきなり底が抜けて水中にずっぽりと足を踏み入れて死の戦慄を覚えました。以前の記事で「人々は何となく雰囲気で湖面に足を踏み入れているだけだと思われるので、全面が十分に凍っている保証はなさそう」と書きましたが、果たしてその通りでした。湖の真ん中で湖面が十分に凍っていないことに気付いても手の打ちようがなく、サメがいる海域を手漕ぎボートで取り残されたような心境でした。
さて、オーロラを見るためには辛抱強く待つことが肝要ですが、氷点下10度以下という極寒の中でじっと待つのは、想像以上に厳しいものです。天空シリーズばりの重装備でも、1時間もすると寒さをはっきりと自覚します。2時間もすると、冷え切った身体から発せられる冷気がスキーウェアの保温性によってウェア内に充満します。防寒具が温かいのは偏に自分の体温のおかげだということが明快に理解できます。寒さ故に携帯やiPodの電池はあっという間に消耗し、シリコン製イヤフォンも不愉快なほど冷たく硬くなります。観測を始めた時は「風邪で死ぬ確率は、人生でオーロラに出会える確率よりも低い」と風邪をも辞さない覚悟でしたが、度を超えた寒さと暇さによって時の流れが遅く感じられる「逆ウラシマ現象」(大泉, 1998)が生じ、3時間を超えると本能として中断せざるを得なくなります。チンピラの「今日はこれくらいで勘弁してやる」の心境で、北の空の白い雲(上の写真で、ちょうど僕の頭の上あたり)を恨めしげに30秒解放シャッターで撮影し、無念の退却。
ところが、この白っぽい雲が曲者でした。周囲に白い光源がないにも関わらず、雲の一部だけが何となく白っぽく見えるので変だとは思っていたのですが、帰宅して写真を大画面で見てみると、なんとうっすら紫色と緑色に輝いていました。
高精細ディスプレイじゃないと分かりにくいかもしれませんが、確かに紫色と緑色に輝いています。人間の目にはうっすら白く見えただけですが、30秒間シャッターを開きっぱなしにしたカメラはオーロラらしき光を記録していました。こんなことなら、もっと撮っておけば良かった。ただ、あまりの低温環境にフル充電の電池が5分で残量30%にまで低下し、バシバシ撮れるような状況ではありませんでした。全体的にオーロラ観測をナメていた中で撮れた1枚なので、まぁ上出来でしょう。
ちなみに念のため翌日も、場所を海岸に移してオーロラ観測を決行しました。風下の森の中よりも風上の海岸の方が雲が少ないと考えたのですが、海風の冷たさが尋常じゃなく、知らない間にベンチに座ったまま寝てしまいました。寒くて眠れなかった経験はありますが、寒すぎて眠ってしまったのは生まれて初めてです。寒いと本当に寝ちゃうんですね。幸い、たまたま通りがかった放し飼いの犬に物凄い剣幕で吠えたてられて目が覚めましたが、危ないところでした。そして、今度は夜空の白っぽいところを片っ端から撮影しましたが、残念ながら全て単に白っぽいだけで紫色や緑色の光は写っていませんした。
これはこれで綺麗ですが、湖畔で撮ったあの1枚とは全く異なるものです。やはりあの1枚はオーロラである可能性が高いと考えられます。ノルウェーに滞在する間に空いっぱいに輝くオーロラを見てみたいものです。