Life in Oslo.

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ノーザンライト

2012年01月27日 | 生活
日本でもニュースになっていましたが、2012年1月23日頃に発生した太陽活動によって磁気嵐が発生し、オスロでもオーロラが観測できる可能性がにわかに高まりました。オーロラは英語で"northern lights"と言う方が一般的ですが、このノーザンライトがオスロで観測できるのは稀なので、スーパーバイザーや友人が立て続けに「今日明日はノーザンライトが見えるかもよ!」と教えてくれました。この機を逃す手はないので、仕事は18時に切り上げ、スノーシューズ+ウールソックス+ヒートテックももひき+セーター+スキーウェア上下+スキー用手袋+フェイスマスク+ウールの帽子という、ドラクエ天空シリーズばりの最強装備(不審者レベルはエリミネーターばり)で郊外の湖Sognsvannに乗り込みました。



凍った湖を歩いて渡り、街の灯りから最も遠く、北の空を一眸できる湖畔に陣取りました。真冬の夜の森にも関わらず大勢のノルウェー人がジョギング(!)などを楽しんでいましたが、オーロラ目当てと思われる人も数名いました。また、余談ですが、湖の中央付近で氷が解けており、いきなり底が抜けて水中にずっぽりと足を踏み入れて死の戦慄を覚えました。以前の記事「人々は何となく雰囲気で湖面に足を踏み入れているだけだと思われるので、全面が十分に凍っている保証はなさそう」と書きましたが、果たしてその通りでした。湖の真ん中で湖面が十分に凍っていないことに気付いても手の打ちようがなく、サメがいる海域を手漕ぎボートで取り残されたような心境でした。
 さて、オーロラを見るためには辛抱強く待つことが肝要ですが、氷点下10度以下という極寒の中でじっと待つのは、想像以上に厳しいものです。天空シリーズばりの重装備でも、1時間もすると寒さをはっきりと自覚します。2時間もすると、冷え切った身体から発せられる冷気がスキーウェアの保温性によってウェア内に充満します。防寒具が温かいのは偏に自分の体温のおかげだということが明快に理解できます。寒さ故に携帯やiPodの電池はあっという間に消耗し、シリコン製イヤフォンも不愉快なほど冷たく硬くなります。観測を始めた時は「風邪で死ぬ確率は、人生でオーロラに出会える確率よりも低い」と風邪をも辞さない覚悟でしたが、度を超えた寒さと暇さによって時の流れが遅く感じられる「逆ウラシマ現象」(大泉, 1998)が生じ、3時間を超えると本能として中断せざるを得なくなります。チンピラの「今日はこれくらいで勘弁してやる」の心境で、北の空の白い雲(上の写真で、ちょうど僕の頭の上あたり)を恨めしげに30秒解放シャッターで撮影し、無念の退却。



 ところが、この白っぽい雲が曲者でした。周囲に白い光源がないにも関わらず、雲の一部だけが何となく白っぽく見えるので変だとは思っていたのですが、帰宅して写真を大画面で見てみると、なんとうっすら紫色と緑色に輝いていました。



高精細ディスプレイじゃないと分かりにくいかもしれませんが、確かに紫色と緑色に輝いています。人間の目にはうっすら白く見えただけですが、30秒間シャッターを開きっぱなしにしたカメラはオーロラらしき光を記録していました。こんなことなら、もっと撮っておけば良かった。ただ、あまりの低温環境にフル充電の電池が5分で残量30%にまで低下し、バシバシ撮れるような状況ではありませんでした。全体的にオーロラ観測をナメていた中で撮れた1枚なので、まぁ上出来でしょう。

 ちなみに念のため翌日も、場所を海岸に移してオーロラ観測を決行しました。風下の森の中よりも風上の海岸の方が雲が少ないと考えたのですが、海風の冷たさが尋常じゃなく、知らない間にベンチに座ったまま寝てしまいました。寒くて眠れなかった経験はありますが、寒すぎて眠ってしまったのは生まれて初めてです。寒いと本当に寝ちゃうんですね。幸い、たまたま通りがかった放し飼いの犬に物凄い剣幕で吠えたてられて目が覚めましたが、危ないところでした。そして、今度は夜空の白っぽいところを片っ端から撮影しましたが、残念ながら全て単に白っぽいだけで紫色や緑色の光は写っていませんした。





これはこれで綺麗ですが、湖畔で撮ったあの1枚とは全く異なるものです。やはりあの1枚はオーロラである可能性が高いと考えられます。ノルウェーに滞在する間に空いっぱいに輝くオーロラを見てみたいものです。

ホームパーティ

2012年01月22日 | 生活
ノルウェー滞在が長引きそうなので、前のアパートの住人から5000円で買った中古へぼベッドを処分して、IKEAの新春セールで5000円引きになっていた収納付シングルベッド(引き出しを利用することでダブルサイズに変形!)と高反発マットレスを購入しました。また、先日撮った雪のSognsvann湖の写真を引き伸ばしてアクリル加工し、部屋に飾りました。アパートのオーナーに気に入ってもらえたおかげで賃貸契約も好条件で更新でき、本格的な長期滞在に備えた快適空間作りが進行しつつあります。

古いベッドは、ネットで「タダであげるから引き取りに来て」と掲示したところ、15分以内に3件も連絡が来ました。結局若いカップルに譲ることにしたのですが、彼らは徒歩30分の距離を、セミダブルベッドを素手で持って帰りました。若さは偉大です。

 アパートを快適にしたこともあり、ノルウェーの友人達が初めて我が家に遊びに来ることになりました。ノルウェー人(欧米人全般?)はホームパーティを頻繁に開催します。物価が高いノルウェーでは日本ほど外食が一般的ではありません。それよりも気の合う友人同士で酒を持ち寄って家で飲み明かすことが圧倒的に多いです。自分のパートナーや友人同伴であることも多いので、必然的にパーティは大人数になり、友人もネズミ講式に増えていきます。
 ノルウェーのホームパーティで驚くことは、まずその圧倒的な酒量です。とにかく飲みます。ひたすら飲みます。10時間は平気で飲みます。何リットル飲んだか誰も分からないほど飲みます。僕は日本では割と酒が強い方でしたが、ノルウェーでは抜群に最弱です。ノルウェー人のペースについていけず、夜中2時頃に途中退場することがほとんどです。一部の電車とバスは終日運行(車内は酔っぱらった若者だらけ)ですが、街が小さく治安も良いので一人でふらふら歩いて帰ります(酔った女性が夜中一人で歩くのは危険です)
 また、日本とノルウェーでは、飲み会に大きな違いがあります。それは「酒は持参」というルールです。物価が高く、また一人当たりの飲酒量が尋常じゃないノルウェーでは、ホストが酒を用意すると甚大な負担になります。そこで出席者はビールなりワインなりを、自分が飲む分だけカバンに詰め込んで持参し、自分の酒だけを飲みます。パブで飲む時も各自1杯ずつ購入が主流で、よほど親しかったり飲んだ量が同程度であったりしない限りは、割り勘ではなく"飲んだ分だけ"のレシート精算です。フェア精神が基本なので、パブでビールを奢ってあげると、必ずお返しに1杯奢ってくれます。奢り合いが無限に続くところは日本的でもあります。

 さて、我が家でのパーティに話を戻しますが、発端はノルウェー人が旨い日本酒の味を知らないことでした。リアル/フェイクを問わずオスロには日本料理店がたくさんありますが、その多くは熱燗しか扱っていません。理由は、冷酒に適した銘酒が手に入らないからです。親日で日本料理好きが多いノルウェー人に美味しい酒を飲ませてやりたい!ということで、仕事で一時帰国した際に純米大吟醸や焼酎を買ってきました(ゲストにいちいち英語で説明するのが面倒なので、メニューを用意しました)


また、せっかくだから美味しい日本料理も作ってあげよう!ということで、大使公邸料理人である義弟や、料理上手の義母や叔母に教わった僕の好物も作ってあげました。



 6畳ほどのワンルームに7人の友人が詰め掛けましたが、長身痩躯揃いだったため意外に余裕でした。


箸置きを折り鶴にしたり、大根や人参を花型にくり抜いたりと、細かな日本らしさも演出してみました。また、ノルウェー産タラやノルウェー産ラムなど、ノルウェー特産の食材を使うことも心がけました。「食の基本はもてなしであり、自国の文化をひけらかすだけの自己満足に陥ってはいけない」という海原雄山先生の教えに従ったものです。下の写真1枚目は右から、ノルウェー産ラムステーキのおろしポン酢ソース、生姜ご飯のおにぎり、椎茸の甘煮、ノルウェー産タラの南蛮漬け、ザンギ(北海道風唐揚げ)、2枚目の写真はザンギと炙り唐墨です。




ノルウェー人に特に評判が良かったのは、鱈の南蛮漬けとザンギ、そしてラムステーキに添えたおろしポン酢でした。生姜ご飯、ノルウェー産スモークサーモンとクリームチーズの巻寿司もすぐに売り切れました。ただ、唐墨は評価が分かれました。旨い日本酒には最高の肴ですが、確かにちょっとクセがあるので敷居が高いかもしれません。そして不評だったのは椎茸の甘煮。キノコが甘いというのは気持ち悪いようです。ほぼ全員が残してました。本州の人が甘い赤飯(僕の故郷の北海道では甘納豆と赤色2号で赤飯(ピンク飯)を炊きます)を気持ち悪がるのと同じですね。美味しいのに。
 そして肝心の純米大吟醸ですが、いつもの熱燗とは別次元の芳醇で雑味のない味わいに、すっかり驚いた様子でした。アルコール臭がきつくて日本酒が嫌いだった人も、これなら飲めると喜んでいました。わざわざ日本から持ってきて良かった!焼酎は、クセの強い芋焼酎よりも軽めの黒糖焼酎が好評でした。ただ、最も好評だったのは、友人が買ってきてくれた麒麟一番搾り(通称"Ichi-ban")でした。やっぱりビールが一番のようです。

 今回は夜中1時過ぎで解散という"軽め"のパーティでしたが、それでもテーブルは酒瓶で埋め尽くされていました。ビール(500ml)だけで29本ありました。しかもソフトドリンクは一本もなし。恐るべし!

やっと雪景色

2012年01月10日 | 観光スポット
年が明け、ようやくオスロにも本格的に雪が積もり始めました。しかし都心部は油断すると地肌が露出しそうな程度にしか積もっておらず、記録的な暖冬であることを物語っています。現段階では僕の故郷である札幌(北緯43度)の方が雪は多いです。気温は寒い時で氷点下5度前後、温かい時だとプラスになることもあり、札幌と大差ありません。また、寒さ以上に懸念していた日照時間の短さですが、朝9時前から午後3時過ぎまでは明るいので、さほど気にはなりません。むしろ日照時間20時間の夏の方が、眠るタイミングを逸するので日常生活への影響が大きいように思います。北緯60度の未知の冬に戦々恐々としていましたが、口ほどにもなし!
 ただ、寒いことに変わりはないので、クリスマスバーゲンで真冬用装備を買い揃えました。防水性、保温性、グリップ力に優れた厳寒地仕様のブーツと、頬までカバーできる帽子は必需品です。



 さて、やっと訪れた雪景色ということで、オスロ郊外にあるソンスヴァン湖(Songsvann)に行ってみました。ソンスヴァン湖は以前の記事でも紹介しましたが、オスロ市内から地下鉄で20分ほどの距離にある湖で、3kmほどの周遊路や多くのトレッキングコースを有するオスロ市民の憩いの場です。湖や森といった自然が身近に存在するのがオスロの良いところです。




 日曜の昼前にソンスヴァン行の地下鉄(T-bane line 3)に乗ると、車内にはスキーを担いだノルウェー人が大勢おり、さながらスキー場のゴンドラのようでした。自然とスポーツを愛するノルウェー人にとって、湖でのクロスカントリースキーは冬の休日の定番なのでしょう。
 ソンスヴァン湖は人里から離れている上に標高も若干高いので、都心部よりも積雪量は多くなります。全周3kmの湖面は凍りつき、その上をキラキラと輝くパウダースノーが覆います。



北欧特有の蒼い空の下、真っ白な湖面に自分の足跡を点々と残していくのは気持ちの良いものです。




パウダースノーを軽くかき分けると、凍りついた湖面が顔を出します。力任せに踏みつけてみましたが、ビクともしませんでした。ズッポリいったら一大事ですが。(訪れた人々は何となく雰囲気で湖面に足を踏み入れているだけだと思われるので、全面が十分に凍っている保証はなさそうです)



さらに、運良く"雪面に架かる虹"も撮影できました。目をこらさないと気がつかない程度の虹でしたが、始めて見ました。


湖面では若いカップルはもちろん、子ども連れや老夫婦がスキーやソリを楽しんでいます。犬も楽しそうにはしゃいでいます。(余談ですが「走る」「ダイブする」「食べる」など、雪を目にした時の行動は犬と子どもでほとんど同じです。唯一の違いは、犬には「投げる」ことができない点です)




そして、自然を満喫した後の"シメ"は、もちろんアイスクリーム。湖畔にある唯一の売店はアイスクリームを求めるノルウェー人で大繁盛。



ノルウェー人は真冬でも平気でアイスクリームを食べます。イタリア出身の僕のスーパーバイザーは「意味が分からない」と首をかしげていましたが、雪国出身の僕には全く違和感がありません。国は違えど、北国の文化はどこか似ています。