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Life in Oslo.

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特定国派遣研究者(ノルウェー・ポスドク)

2012年03月01日 | 日記
タイトルは2012年3月1日現在の僕の肩書きです。ブログでは仕事関連の話はしないつもりでしたが、このブログしか情報を発信する術がないので、今回は例外です。おそらく大半の人には面白くない内容です。

 日本学術振興会の特定国派遣研究者としてノルウェーに赴任して、任期最後の月を迎えました。この制度は学術交流を深めるために日本とノルウェーが相互に研究者を派遣/受入し合う制度です。このブログでもご紹介してきたように、ノルウェー(オスロ)は治安が良い、人々が親切、街が清潔、食べ物が美味しいなど、日本人が海外生活を始めるには最適な国の一つだと思います。また、研究面でも予想以上に充実した生活を送ることができ、特定国派遣研究者制度には非常に感謝しています。

 ただ、その中でいくつかトラブルも経験しました。その多くは、適切に情報が共有されていれば防げたものばかりでした。事務機関が二国間にまたがるために情報の共有が難しく、派遣研究者の経験がうまくフィードバックされないようです。また、ノルウェー総合研究審議会(RCN)は、直接関係する事務手続き以外はアドバイスもしてくれません。そろそろ次年度の派遣研究者が内定する頃ですので、同じトラブルが生じないように僕が経験した例を紹介したいと思います。なお、このブログの内容は2011年度のものですので、その後改善や変更等があるかもしれません。その点は各自ご確認下さい。

1:ビザ申請
僕は在日本ノルウェー大使館(麻布)で申請しましたが、現地到着後に移民局のwebサイトから直接申請することを強くお勧めします。移民局は常に大混雑で気が遠くなるほど待たされます。受付時間も短いので、数時間待った挙げ句、結局受け付けてもらえないこともありました。混雑緩和のため大半のビザはネットで申請でき、ネット申請者は事前にアポを取れるので待たされずに受け付けてもらえます。しかし、在日本大使館で申請すると、ネット申請ではないので事前アポが取れません。大使館で申請しても実際の発給がノルウェー赴任後だったり、後述のようなトラブルがあると、現地の移民局に出頭しなければなりません。その際に事前にアポが取れるかどうかは非常に重要です。

2:ビザの種類
これは致命的なトラブルです。驚くべきことに、特定国派遣研究者(ポスドク)は、就労ビザをもらうことができません。僕は在日本大使館で就労ビザ(Skilled worker)を申請しましたが、「博士号取得者にしては給料が少なすぎる」という驚くべき理由でリジェクトされました。ビザ発給を拒否された場合は、事情を説明して再審査を願い出ることができます(appeal)。在日本大使館のアドバイスに従い、資格を「修学」ビザに変更して再審査を願い出た結果、「修学ビザ(研究者)」という変なビザを発給してもらえました。再審査には時間がかかるので、結果が出る前に滞在限度の90日を超えてしまいます。アピールの結果が出るまでは滞在期限が延長されるのですが、アピール中に海外出張などで出国すると再入国拒否もあり得ます。また、ビザがないと後述の健康保険の手続きができず、ビザ発給後に取得できる納税者番号がないと携帯電話も契約できず(プリペイドはOK)、銀行口座も開設できません。
 ちなみに、ビザの種類について過去の事例をRCNに問い合わせましたが、ビザ申請は対応外なので分からないとだけ言われました。

3:健康保険
これも致命的なトラブルです。特定国派遣研究者の手引きには「健康保険に無料で加入可」と明記してありますが、健康保険に加入できるまで相当な日数を要します。まず、前述のビザが発給されないと手続きできません。ビザ発給後、必要書類を持って最寄りの労働福祉局(nav)に行きます。ただし、外国人の健康保険は特殊なので、書類は本局へ郵送され、改めて手紙で場所を指定されて呼び出されます。手続きには1ヶ月ほどかかり、手続きが完了すると保険料の請求書が来ます。請求書は驚きの60万円以上。RCNが健康保険料の算出方法を間違っているため、健康保険加入料は無料になりません(これも毎年のことでしょうから、非常に不思議です)。請求書が来たらすぐにRCNに連絡して「健康保険に無料で加入可という話のはず」と言えば、RCNが健康保険料を負担してくれます。2012年度の手引きにも「無料で加入可」の文言があるので、この問題も再び生じるはずです。
 僕は4月1日に赴任しましたが、ビザがリジェクトされたこともあり、健康保険に加入できたのは8月末でした。その間の4ヶ月は無保険状態で、非常に不安な生活を送っていました。物価が極めて高いノルウェーで100%自己負担で病院にかかると、とんでもない額を請求される可能性があります。日本の薬を持参することを強くお勧めします。

4:郵便登録
最寄りの郵便局(Posten)もしくはPostenのwebサイトで住人登録(転居届)をしないと、郵便物(宅急便やEMSなど)が届かないばかりか、送り主に送り返されて追加送料まで請求されるという最悪の仕打ちが待っています。引越後、速やかに手続きすることをお勧めします。

5:病院と薬局
これはトラブルではありませんが、病院のシステムが日本とはかなり異なります。まず、日本のような開業医・町医者という制度はありません。地域ごとに診療所があり、自分の担当医が決まっています。健康保険に加入すると、担当医の氏名と連絡先が送られてきます。裏を返すと、健康保険に加入するまでは、担当医や診療所の情報は手に入りません。
 また、街のいたるところに薬局(apotek)があります。apotekでは日本と同様、保険証なしで基本的な薬が買えます。

6:家探し
これもトラブルではありませんが、参考までに。受入研究機関の宿舎に空きがある場合は良いですが、少なくともオスロ大学の研究者用宿舎は常に満室で非現実的です。学生用宿舎を割り増しで借りることもできますが、空きがあるのはボロい/遠い/バス・トイレ・キッチン共用など条件の良くない物件がメインです。僕はオスロ大学の学生生活サービスと何度か交渉しましたが全然ダメだったので、Finnというサイトで賃貸アパートを探しました。物件を選ぶ時には、家賃に暖房費、電気代、インターネットなどが含まれているものをお勧めします。ノルウェーの電気料金は需要に合わせて変動するシステムで、複数の電力会社の中から自分で契約先を見つけなければなりません。また、暖房費は暖房設備の種類によって大きく異なり、厳冬下では非常に高額になる可能性があります。さらに、Dナンバーを取得するまではインターネットや携帯電話は契約できないので、インターネットやケーブルテレビ込みだと便利です。家賃とは直接関係ないですが、ノルウェーでは家賃や公共料金の支払いを小切手で行います。小切手1枚につき75クローネ(1100円!)もかかるので、支払件数が多いと余計な出費にもなります。


 上記のうち、ビザと健康保険の問題は情報が共有されてさえいれば防げる類のトラブルです。こんな重要な情報をなぜ共有してくれないのか不思議に思いますが、事務系統が複雑なためやむを得ないのでしょう。また、ノルウェーの役所は問い合わせに対する反応が非常に遅いです。メールで問い合わせても、1週間後に「メール受け取りました」という確認通知が来たりします。RCNは対応が早いですが、担当者が長期休暇(ノルウェーでは数週間規模で休暇を取ることは当たり前)などで不在の場合はサポートが得られません。なるべく早めに手続きや確認を行うことをお勧めします。年に数人しかいない特定国派遣研究者ですが、逆に言えば年に数人は必ずいるので、この情報が少しでもお役に立てば幸いです。


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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
特定国派遣研究者(ポスドク・ニュージーランド) (Yu Ito)
2012-03-03 08:51:58
初めまして。
僕は,その‘年に数人しかいない’特定国派遣研究者(ポスドク・ニュージーランド)に今年度採用されたものです。
僕の場合も,滞在費や研究費,保険,到着一時金まで帯王国側からの支給になるので,少し不安があって調べていたら,このブログにたどり着きました。
貴重な情報提供,どうもありがとうございました。
滞在国は違えど,海外留学で戸惑う点や困る点には共通するものがありそうですので,それを経験者の実体験として知れたのはありがたい事です。
そちらはもう一年あるのですか?
お互い,実りある研究留学を送れるように頑張りましょう。
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Unknown (しょう)
2012-03-03 10:53:35
>Yu Itoさん
コメントありがとうございました!ポスドクでNZに赴任されるのですね。まずは内定おめでとうございます。
NZは分からないですが、一般的に海外の事務は、日本人からすると信じられないくらい適当だと驚くことが多々あると思います(日本の学振の事務仕事がいかに誠実で信頼性が高いかを痛感しました)。手続きなどの一切の過程で、自分以外は信用ぜずに、心配しすぎだと呆れられるほど確認・催促・抗議した方が無難かと思います。しかし、それでも防げなかったトラブルもありました。例えば、先方との予想外の行き違いにより今月末の派遣終了時の帰国費用が自己負担になりました。日本の感覚や価値観からは全く予想外の行き違いやトラブルが発生するかもしれませんが、それらに負けず実りある研究生活をお送り下さい!ご活躍をお祈りしています。
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もっと早くに (ai)
2012-03-11 12:51:51
はじめまして
オスロが大好きです。っていうかa-haが好きだから
ノルウェーが好きなんですけどねー
お土産のベルゲン風スープおいしいですよね
友達に薦められて購入にましたが少ししか購入してなくて
後悔しました。今度オスロに行くときは、ここのお土産を
購入したいと思います。
もうすぐオスロにも春がやってきますねー
お仕事がんばってください
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Unknown (しょう)
2012-03-12 13:27:04
>aiさん
コメントどうもありがとうございます。
ベルゲン風スープ、美味しいですよね。同じシリーズでロフォーテン風スープも是非おすすめです。どちらも簡単に作れますしね。またオスロにお越しの際には、僕の情報が少しでもお役に立てば嬉しいです!
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いきまーす (ai)
2012-03-13 21:44:04
9月に多分オスロに行くことになりそうです。
コンサートなんですけどー今回は観光もしてみたいんだけどー時間があればなんですけどねー
ロフォーテン風スープってどんなのか教えてほしいです。
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Unknown (しょう)
2012-04-08 02:09:37
>aiさん
お返事が遅くなってしまい、申し訳ありません。一時帰国していたもので。。。
9月にいらっしゃるのですね。9月は秋真っ盛りで紅葉も楽しめるのではないでしょうか。天気はあまり良くない日が多いかもしれませんが。
ロフォーテン風スープは、簡単に言うとクラムチャウダーですね。インスタントのものは具は入っていないので、お好みの具材を入れて作ることができます。インスタントではなくレストランで召し上がっても良いと思います。オスロは北欧では珍しく(?)料理が美味しいと思います。ただ「伝統的なノルウェー料理」というよりは「ノルウェーの素晴らしい食材を使い、イタリアンやフレンチの技法を使った創作料理」という感じです。僕はTrip Adviserという口コミサイトで評価が高い店を中心に食べに行っていますが、上位の店であれば今のところ失敗はありませんので、よろしければ参考にしてみてください。
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こんばんは (ai)
2012-04-16 20:58:38
9月に行くことが決定しました。 
飛行機、ホテルの手配を個人でしましたー
ロックフェラーっていうライブ会場知ってますか?
そこで2日間コンサートンに参加することになりました。
1日目は朝からずーっと並んでコンサートを楽しむ予定ですけど、2日目は観光をしたいと思っています。
そこで質問なんですが、レンタル自転車使ったことありますか?
今回はノルウェー料理も食べてみたいし・・・
鳥のカフェにも行ってみたいしとハードになりそうです。
また、質問してもいいですか?

よろしくお願いします
                  ai
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Unknown (しょう)
2012-04-16 23:10:57
>aiさん
自分の自転車を持っているのでレンタサイクルは利用したことはありませんが、オスロ市内のあちこちに自動貸出機がありますよ。ただ、オスロは坂道が多いので、市内観光の足としては公共交通機関+徒歩の方が良いと思います。地下鉄(T-Bane)+トラム+バス共通の24時間券や回数券など、チケットの種類も豊富です。
"鳥のカフェ"とはFuglenでしょうか。Rockefellerからも歩いて行ける距離ですね。秋のオスロを楽しんでください!
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