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北海道のジジイの話

2020-06-08 09:25:18 | 昔の話
 今から4~5年位前だったかな、その年の1年前の夏に仕事の仲間と二人で北海道ツーリングに行ってね、それからは毎年バイクで夏に北海道に行くのがちょっとマイブームみたいになってたんだけど、そん時に屈斜路湖のキャンプ場に泊まった時の話。

 北見から美幌峠ってのを抜けて屈斜路湖の和琴半島キャンプ場ってトコに着いたのが確か午後4時くらいで、そん時はなんも知らないからこのキャンプ場に無料の温泉があるってのを気付かずとりあえず風呂に入りたいと思ってこのキャンプ場の近くにある三香温泉ってとこに行ったんだ。

 何か多分内湯もあるんだろうけどそん時は露天しかやってなかったみたいで言われるままに露天に言ったんだけど、まあその頃はあんまり温泉に興味がなかったから正直「なんか藻生えてるしきったねー・・・・・・」って思って入ったんだけど、熱いし夏だから虫いっぱいいるしで嫌になってきて上がろうとした時に入れ違いみたいに入ってきた80歳ぐらいのジジイに話しかけられたから上がるに上がれなくて仕方なく湯船の横で座りながらずっと話をしてたんだよ。(俺自身、結構リアルだと大人しい人だから人から声掛けられるとなんかこう、喋りたいんだろうから喋らせてあげないとなーみたいな感じになっちゃうんだよね)

 まあ話の内容は「どっからきたの」「なにしてんの」みたいなどうでも良い話だったんだけどさ、一個だけハッキリ覚えてんのが、そのジジイが言った「俺はもう生まれでがらね、毎日毎日、日中働いで、夜はこの温泉さ入って、そんで明日も頑張っかって思うのよ。他の温泉なんかいったごとねーのよ」っていう言葉。

 別の年の話なんだけど、えりも岬の手前にある様似って町の温泉で話したジジイは「襟裳岬はこの町の次だけど、俺はいったことねえがらよくわかんねえね。俺はこの町、様似の街から出たことねえがら」って言ってた。また別の年、屈斜路湖近くの川湯温泉ってとこの共同湯で話したデブのジジイは「お風呂はここ以外行かないの私は。なんてったって川湯で生まれて川湯で育ってきたんだからね」って言ってた。

 まあ何が言いたいのかっていうとさ、俺自身は「色んなトコに行きたい、見れるものを見たい」っていうタイプだから正直に言うと「地元以外行った事が無い」っていう言葉になんというか衝撃を受けるのよね。俺自身もド田舎生まれだけど、生まれた町は好きだし、町の山道なんかも色々行くから自分の町にはかなり詳しいつもりでいるけど、それでも「他の町に行った事が無い」ってのはなんかこうスゲーなと思う。レベルが違うな、と。

 色んなトコに行って、色んなモノを見て、色んな体験をする、そうじゃなくちゃ生まれてきた意味がないじゃないかと思う反面、生まれた町にあるものだけで満足する気持ちというかその町で働いてその町で死のうっていう心ってのは、なんつーか順列を付ける訳には行かないけど、結局「そういう人達がいるから俺も旅が出来るんだろうな」っても思えるのよね。だって町が維持出来なけりゃその町に旅する事も出来ない訳だしさ。そして、自分の生まれた町になんかの貢献をしてる訳でも無い俺と違って、俺の町に貢献してる年寄りも俺の町にいるわけだろうしさ。

 本人たちはそういう大仰なつもりで何かしてる訳じゃないし、俺も何かの使命を持って旅してる訳でも無いし、ホントのとこ、お互いただ漫然と生きてきただけでたまたま出会ったのかもしれないよ。その理由についてなんてどうでもいい。ただ「そうじゃなく生きてきた俺にとって、なんとなくその言葉は衝撃的だった」っていうだけの話。

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