「ワッパ一揆 東北農民の維新史」、「自由民権の先駆者 森 藤右衛門」、「野に生きる 若き日の真壁 仁」と、佐藤治助氏の著作を読み進んできたが、この選集も是非読んでおかなくてはと気になっていた本です。忘れた頃の鶴岡書店…ということで、店主から「だんだん読みだぐなった頃だろさげ、持ていぐぞ!」と電話が入って届けられたこの「野に生きて」、思った通り面白い。
カミさんが中学で社会科を習い、優しい先生だったと記憶していた。なので勝手に華奢で細身の文学先生的なイメージをいだいていた。でも違いました、スポーツマンだったんですなぁ。素晴らしい。
反面、治助氏の心の奥深く刺さり続けている棘、「我們死了(オーメンスウラ)!!」と立ちはだかった老婆の絶叫、そして念仏のように「日本鬼子(リーペングイズ)!!、日本鬼子!」と唱ながら大地を掌で叩き続けていた。零下20℃の厳寒な小さなから越冬用に蓄えておいた食料を、部隊が糧秣として強制徴収を行った戦時の記憶。
そんな、持ち続けなければならない心の棘の痛みが、全篇に強い氏の信念(生き方)として感じられた。
【野に生きて 佐藤治助著作選集】 ◯発行:2008年4月19日 ◯著者:佐藤治助 ◯編集:「佐藤治助著作選集」編集委員会 ◯印刷:富士印刷株式会社 ◯発行:「佐藤治助著作選集」刊行会 ◯発行所:鶴岡書店