買い出しに外へ出かけた時、路面がツルツルだった。昨年購入した”滑らない冬靴“サップ◯ンドは相変わらず普通に滑る。
滑って思い出したのは、今年2月、まだ厨房に通っていた頃の話。
2月は、北海道では最も凍れる(シバレル 北海道方言 とても寒い)季節だ。
厨房で年下の先輩GさんとMさんが、楽しげに話していた。
50代のGさんが、
「昨日、ちっちゃいお爺ちゃんとお婆ちゃんが、手をつないで歩いてたの。あんなに年をとっていても、ラブラブなんだねえ」と言うと、Mさんがすかさず
「テントーボーシ、テントーボーシだよ」と言った。
私は昼食の準備作業をしながら聞いていた。心の中で「テントーボーシ?ああ、転倒防止か」と少し遅れて気付き、40代のMさんのレスポンスの速さに驚いた。
黙々と作業を続ける私に、突然Mさんが話を振ってきた。
「ご主人と手、つないでますぅ?」
作業の手を止めて顔を上げると、Mさんは、ニヤニヤしながら私を見ていた。
私は戸惑いながら、
「昔はね。大昔はね、つないでいたけど…」と答えた。
実際には、その冬も夫とは腕を組んで歩いていた。それこそまさにお互いの転倒防止のためだった。
いささかそれは話す必要も無いだろうと、心にしまっておいた。“お婆ちゃん”と思われたくない心理が働いたのかも知れない。
ここ数日、凍れがきびしい。路面はテカテカと光っている。
若い頃と違って、氷の地面に転んだらダメージが大きい。用心用心。
そろそろクリスマスが近い。
冬道で手をつないだり、腕を組んで歩く男女を多く見かける。
そんな寄り添う男女のうち、ある一定の年齢から上は、「ラブラブ」ではなく「転倒防止のため」が多い、という北国のお話。