両親が働いていた為、私は保育園に預けられていたのだが、お昼寝の時間が毎回つらい時間だった。
周りのみんなが、布団に寝かされて間もなく寝息を立てる頃、私は右へゴロリ、左へゴロリと寝返りを打ちながら、ひたすらこの時間が終わるのを苦痛のうちに待っていた。
小学校に上がると、世間では「子供の眠る時間は午後8時」と決まっていた。
当時数少なかったアニメや子供のテレビ番組も、その時間に合わせるように終了し、私は寝床へせき立てられた。
すぐに眠れるわけもなく、結局ゴロゴロと寝返りを打ちながら、親が眠る時間になってやっと、父の懐の中で眠りにつく事が多かった。
その後、いくつになっても寝付きの悪さは変わらなかった。
そんな私だが、簡単に眠れる方法はある。それは布団に入って、音楽を聞くことだ。音楽を聴きながら、その内に眠ってしまうという事が多かった。手っ取り早く寝たい時は、娘のお下がりの、ipodを使った。
しかし、イヤホンを耳の中に入れたまま寝てしまうのはどうも具合が悪い。コードが断線する心配もあるし、タイマー設定の仕方も分からず、毎回つけっぱなしというのもなあ。
そう思いながら使っている内、楽曲をダウンロードしていたアプリが、娘によると中国系の違法アプリだったらしく、お気に入りの曲が、ある日を境に全て消えてしまった。
再び、不眠に悩む夜がやって来たが、これまでの事を考えて見れば、結局、聞くという行為が眠りをいざなうのだという事に気づいた。音楽じゃなくても良いんじゃないかと思い、それで睡眠導入の為に、「静寂の中に音を聞く」という方法を試してみた。
寝る時間帯は大体静かなものだ。その中で、耳を澄まして音を聞こうと集中するのである。
かすかに外界の車が往来する音が聞こえる。隣の夫の寝息。
特に部屋の中の音を探すことが重要だ。
建物自体が時々予期せぬ音を立てる。ピキッとかピシッとか、寒暖の差か何かで膨張したり収縮したりしているのだろうか。聞いているこっちもビクッとなったりする。
台所の方からも、変な音が聞こえる。
我が家の冷蔵庫の音は、時として不気味なのである。冷蔵庫の中に、誰か居るのじゃないかと思うほど、ゴソゴソと音が聞こえる時があるのだ。
また自分の寝室から一番遠い子どもたちの部屋の辺りから、何かの気配が感じられる事もある。誰か、いやもしかしたら何かいるのか?等とちょっとスリルを感じながら、それを楽しんだり。
そんな風に音を聞くことに集中しているうちに、いつしか眠ってしまう。実験成功。最近は寝付きが悪い時は、こんな風に意識的に音を探して眠りについている。
これが、私の「不眠必殺技」。誰にでも効くとは思わないけれど、寝付きの悪い方、一度お試しを。