今日は札幌に帰る日。
昨夜、ラインに珍しく夫からメッセージが届いていた。「千歳空港に迎えに行こうか」という内容の申し出。
元々千歳空港からはJRと地下鉄でのんびり帰ろうと考えていた。
夫にわざわざ千歳まで迎えに来てとは言えなかった。でも、夫から言ってくれたことはありがたかった。
私が家を空けたことで、少しは私のありがたみがわかったのかな?それとも寂しくなったのだろうか。それでサービス精神が沸き起こったとか?
娘に「こんなラインがお父さんから来たよ」と見せた。
夫のラインメッセージはいつもひと言、一行位の簡素なものが多い。それなのに今回は何行にもわたって、字数が多い上に誤字もなく文体もキチントしている。超珍しいことなのだ。娘が目を丸くして驚いていた。
「お願いしなよ」
「そうだね」
ありがとう。お願いします。とラインを返した。
午後2時過ぎに娘と一緒に家を出た。娘と最後の晩餐…じゃなくて最後のティータイムをしようと思って、早めに羽田に向かうことにした。
昨夜の最後の夕食から、やたらと“最後の”を使ってしまう私。娘に「もう会えないというわけじゃないのだから」と笑われてしまった。
娘は空港のカフェをネットで検索して、良さ気なお店をチョイスしてくれた。
丸福珈琲店。老舗の喫茶店の様で雰囲気が良かった。店内にはジャズが流れ、私の世代にジャストフィットするお店だった。
ミックスサンドとスイーツの盛り合わせを取って、二人で分け合った。
ミックスサンドが美味しかったのはもちろんだが、添えられていたサラダのドレッシングがコーン味で、とても美味しかった。コーンドレッシングは人気商品らしく、店頭で販売していた。トウキビ好きには、たまらない味だ。
スイーツの盛り合わせは、なかなか太っ腹な量で、バウムクーヘン、オレンジケーキ、マロンケーキ、プディングと4種類。何れもとても美味しかったが、特にバターケーキ系のオレンジケーキとマロンケーキは絶品だった。このきめ細かな生地としっとり感は素晴らしい。「バターの量じゃない?」と娘。なるほど…自分でバターケーキを作る時は、太りたく無いが為に、バターをつい2、3割減らしてしまうからなぁー。
喫茶店を出て、娘と一緒に土産物屋に入り、娘が目ざとく見つける家族の好きそうなものを買った。
その後、搭乗手続きへ向かう。
4日間、あっという間だったな。
荷物検査の行列に並び、検査を受けながら、ゲートの向こうの娘と何度も手を振り合う。またしばらく会えないのか。どんどん気持ちはブルーになっていく。娘の姿も、後続の人の列で見えなくなってしまった。
飛行機に乗り込み座席番号をたどって行くと、最後尾の席だった。
隣の人は離陸する前から眠っている。
私は一応ちゃんと飛び立つところを確認してからでないと、何もできないタイプ。
行きは窓側の席だったけれど、帰りは通路側。
離陸後は両サイドの窓から雲を眺めていたけど、知らないうちにほんの少しの間眠っていた様だ。
直ぐに耳の痛さで目が覚めた。気圧の関係か、帰りの飛行機の方が耳の痛さが激しい。何度も唾液を飲み込んだり、耳周辺をマッサージしたりしてみたが、いつまでも痛い。
前方の席の方から、ずっと子供の泣きじゃくる声が聞こえていた。赤ちゃんかしら?と思っていたのだが、何やら言葉も聞こえてくる。何と言っているのか耳をすませてみると、「ママ、耳痛い」と繰り返しているようだった。
大人の私でもこんなに痛いのだから、小さな子供だったらホントに痛みが辛いだろうなぁとかわいそうだった。30分は泣いていたのじゃないだろうか。
着陸体制に入って、やっと耳の痛みが軽減した。
到着して出口方向へ歩いていると、親に抱っこされた4歳位の女の子が、ぐったりしていた。頬に涙の跡があったので、耳を痛がっていた子に違いないと思った。大変だったね。
出口を出ると、笑顔の夫が待合室の椅子から立ち上がった。
♫車でお迎えうれしいな…ありがたい。
車に乗り込み非日常から日常へ。いやいや、息子から送られたラインのメッセージに「家に帰るまでが旅行だからね」とあった。日常は、家に帰ってから始まるのだと。
家に無事到着してホッとしたが、翌日は、丸一日何もする気が起こらず、抜け殻のような気分で過ごした。楽しい日々を送った後の虚無感と、“あの不安”があったから…。
数日は何をしていても、不安がつのった。見えないアレは、いるのかいないのかさえ分からない。じっと、姿(症状)を表すのを待つだけ。結果がはっきりするまでモヤモヤした日を送ったのだった。