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阪神間で暮らす 3

テレビを持たず、ラジオを聞きながら新聞を読んでます

国民は羊ではない “宣言延長”想像を超える大混乱の恐れ

2021-05-30 | いろいろ


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国民は羊ではない “宣言延長”想像を超える大混乱の恐れ


 3回目の緊急事態宣言もやはり再延長だ。

 菅政権は27日、9都道府県を対象に先行発令された宣言について6月20日までの延長を決定。23日に追加された沖縄県に合わせ、今月末までとした期限を延ばす。宣言に準じるまん延防止等重点措置を適用している8県については、埼玉、千葉、神奈川、岐阜、三重の5県を同様に延長。28日に開かれる専門家らによる基本的対処方針分科会に諮り、政府対策本部で決定を受け、衆参両院の議院運営委員会で新型コロナウイルス担当の西村経済再生相が政府方針を報告し、菅首相が会見を開く見通しだ。

 菅の新型コロナ対策は後手後手、泥縄の失策続き。年明けの2回目の宣言を前のめりで解除したため、アッという間にリバウンドを招き、たった3週間で重点措置を初適用。そこから2週間で3回目の宣言発令に追い込まれた。当初、菅は「短期決戦」とうそぶき、専門家らの意見を無視して期間を中途半端な17日間に設定。感染を抑えるどころか、むしろ拡大を招いた。ほぼ半年にわたって、緊急事態が続く異常。ポンコツに全国から怒りと怨嗟の声が上がり、宣言再延長は想像を超える大混乱を招く恐れがある。

 

要請破り続出で自制心プッツン

 再延長に伴う対策はほぼ同じ。酒類を提供する飲食店には休業を、ノンアルコールでも午後8時までの営業時間短縮を要請。この半年というもの、飲食店がマトモに営業できた時期はない。政府の無為無策にシビレを切らし、要請破りに走る飲食店がゾロゾロ。路面店の居酒屋がこうこうと明かりをつけて酒を出し、仲間内で集まった若者らがビールジョッキ片手に盛り上がり、のどを潤している光景は珍しくもなんともない。街ぐるみかと思うほど、飲食店が堂々営業している繁華街もある。

 通常営業している飲食店の最新情報をまとめたネットサイトは日々更新され、件数もうなぎ上りだ。コロナで死ぬか、経済苦で死ぬか。究極の二者択一が現実のものとなっているのだから、正義感を振りかざして責めることはできない。

 立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)は言う。

「日常生活に多大な制約を強いる宣言を発令しても、新型コロナの感染拡大を抑止できないのが日本の特徴です。自民党はそこを非難されると欧州のロックダウン(都市封鎖)を持ち出し、強制力に差があるためだと主張しますが、それは筋違い。欧州では規制と補償がセットで実施されるため、ほぼ補償ナシで協力を求める日本のやり方とは根本的に異なる。PCR検査の徹底、保健所を含む医療提供体制の拡充など、日常生活を補償する観点からの政策は実行されない。菅首相肝いりの『GoToキャンペーン』で移動や飲食を促し、危機的場面でも遊びまわっていいのだと国民にインプットしてしまった。ギリギリまで追い詰められた国民の自制心がプツッと切れ、政府に反発して要請破りが常態化し、欧州のように暴動が起きる事態にならないとは限りません」

 


診療ネグレクト招く実弾戦でワクチン接種加速

 都道府県知事は要請に応じない飲食店などに対し、新型コロナ特措法に基づいて30万円以下の過料を科せる。3回目の宣言下で都が出した休業命令は42件に増え、応じない飲食店に個別に文書で協力を要請したケースは計198店に膨らんでいる。

 国民の私権を制限し、飲食店に塗炭の苦しみを強いながら、なぜ東京五輪のお祭りは強行なのか。誰もが抱く本質的な疑問に対し、菅は一度たりとも合理的な理由を口にしたことがない。それ以前に、説明らしきものすらしていない。「安心安全な大会が開催できるよう、全力を尽くす」とナントカのひとつ覚えを繰り返すだけ。問いに真正面から答えたことはない。そこには理屈が全くないからだ。あるのは私利私欲のみ。五輪のお祭り騒ぎに乗じて政権浮揚を図り、秋までに必ず実施される衆院選で勝つ。そして9月末に任期切れとなる自民党総裁選を無投票再選で乗り切り、長期政権の足掛かりをつくる。そうした妄想を強め、国民を巻き込み、コロナ禍の出口を塞いでしまっている。ポンコツの政治的保身と失政の尻拭いのためになぜ、弱者がここまで犠牲になるのか。

 東京商工リサーチ(TSR)によると、新型コロナ関連破綻は1529件(27日午後4時現在)に増加。2回目の宣言下にあった2月122件、3月139件と2カ月連続で月間最多件数を更新し、3回目の宣言が発令された4月は154件が倒産。初めて月間150件を突破した。業種別では飲食店が263件で断トツ。建設業135件、ホテルや旅館79件が続く。TSRは「事態の長期化による過剰債務の問題や、息切れ、事業継続をあきらめて破綻に至るケースも多い。コロナ関連破綻は引き続き、増勢を強めるものとみられる」と分析している。

 国民の健康や命を守るためではなく、五輪を強行するために熱を上げるワクチン接種も遅々としたものだ。接種を完了したのは医療従事者が6割弱、65歳以上の高齢者は1%足らず。五輪開催から逆算して菅がブチ上げた「高齢者接種7月末完了」「1日100万回」を実現するため、自衛隊を動員して運用している東京の「大規模接種センター」では1日1万回の予約枠が埋まらず、対象拡大を前倒し。診療所に対する接種報酬も大幅増額し、実弾戦を展開している。▼週100回以上の接種を4週間以上実施で1回2000円▼週150回以上は1回3000円――などの上乗せを提示しているが、診療所は医師1人、看護師1人態勢が珍しくない。菅の思惑通りに動けば、通常診療のネグレクトにつながりかねないのに、そんなことはお構いなしだ。

 

集団行動、公権力発動で深まる分断

 政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう言う。

「菅首相が五輪をあきらめる気がサラサラないのは明白です。しかし、『安心安全な大会を開催する』根拠は薄弱なのに、日本代表によるメダルラッシュでも起きれば、反対していた国民も拍手喝采で大いに盛り上がると思い込んでいる。コロナ禍で苦しむ国民の思い、ひいては人の気持ちが分からないのではないか。IOC(国際オリンピック委員会)幹部の不用意発言も、日本がどうなっても痛くもかゆくもないという腹の内が透けて見える。コーツ調整委員長が宣言下の開催について『答えはもちろんイエスだ』と言い、バッハ会長も五輪実現のために『犠牲を払わなければならない』とスピーチし、最古参委員のパウンド氏は『前例のないアルマゲドンに見舞われない限り、東京五輪は計画通りに進むだろう』と言い放っている。責任を取るべき人物が定まっていないことがナントカを増幅させてしまっている」

 ワクチン接種は五輪開催のため、宣言延長は観客を入れるため。国民はそれをお見通しだ。政府が五輪五輪と言うたびに国民の怒りは募る一方だが、こんな状況で人流を抑え、感染を封じ込めるのか。

「五輪開催を前提とした菅政権の新型コロナ対策は破綻し、打ち出した国民との約束は全く守られない。無政府状態と言っていい。五輪取材で来日する海外メディア関係者が行動制限に違反した場合、入管難民法に基づく不正入国者の国外退去命令の解釈を広げた強制的退去が浮上していますが、実行性はゼロ。日本が呼び込んでおきながら、都合が悪くなれば追い出すようなことをすれば国際社会の批判にさらされ、窮地に追い込まれる。要するに、五輪を開催するタイミングではないということ。これ以上無理を重ねれば、国民が集団行動を起こさざるを得なくなり、そうなれば警察や自衛隊が駆り出される。社会の分断が深まるのは必至です」(金子勝氏=前出)

 デタラメ政治のせいで、日本の社会はもうメチャクチャだ。菅首相が責任を取って五輪中止と総辞職を表明することが、コロナ禍脱出の最短ルートなのは間違いない。
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与党も野党も「五輪開催の是非」を党利党略で議論するな!

2021-05-29 | いろいろ


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与党も野党も「五輪開催の是非」を党利党略で議論するな!  


『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、東京五輪開催の是非をめぐり紛糾する国会に言及する。

(この記事は、5月24日発売の『週刊プレイボーイ23号』に掲載されたものです)

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 「五輪中止」をめぐる議論が盛んだ。五輪実施の可否が今後の政局を左右するから、議論が白熱するのは理解できる。しかし、それが行きすぎると、おかしな考えが生まれてくるようだ。

 例えば先日、ある立憲民主党の有力な支持者と話した際、こんなセリフを耳にして驚いた。

 「東京の新規感染者数は意外と増えないね。これだと五輪は開催できるかもしれない。それだと菅政権の思うつぼだ」

 どうやら、コロナの感染拡大→五輪中止→菅政権の支持率のさらなる低下→政権交代というシナリオを思い描いているらしい。この人物はすでに定年退職した高齢者で、近いうちにワクチン接種を控えている。その安心感からか、すでにコロナ禍をわが身のことではない、対岸の火事として見ているようだった。


 一方で、ある自民支持の経営者はこう話した。

 「日本におけるコロナ感染による死者の数は欧米などと比べると格段に少ない。だから、五輪中止なんてもってのほかだ。五輪開催中に多少感染が拡大したとしても、ワクチン接種が進めば秋には落ち着き、菅政権の支持は上向くよ。その間に少しくらい死者が増えたって大したことじゃないさ」

 どちらの物言いにも強烈な違和感がある。前者は自民党政権が憎いあまりに思わず漏れてしまった本音だろうが、普通なら口にはできない言葉だし、後者も、政権維持のためなら人命なんかどうでもよいという本音が見える。

 もちろん、両者は極端な例かもしれないが、なりふり構わず五輪開催に突き進む菅政権と、敵失批判以外に政権交代の道筋を見いだせない野党という日本の政治の現状が、与野党いずれの支持者かを問わず、国民の倫理観を歪(ゆが)める事態にまで至ってしまったのではないかと、慄然(りつぜん)とする思いだった。

 今はコロナの感染拡大を抑え、人命を救うことが最優先の課題なのは言うまでもない。そして、自粛のなかで失業したり、生活が苦しくなっていたりする人々を社会全体で支えていかなければならない。その上で感染を収束できて五輪を開催できればラッキーだし、収束できなければ残念だが、国民の命と暮らしを優先してIOCに中止を申し出るしかない。それだけのことだ。

 しかし、五輪開催の是非に関する議論は、そうした国民の当たり前の考えから乖離(かいり)して、与野党の党利党略的な思惑ばかりが優先されている。

 こんな調子で今秋に実施される衆議院選挙はどうなるのだろうか? 本来ならば、この選挙はコロナ対策をはじめとするこれまでの菅政権の施策や、各政党が打ち出すポストコロナに向けた政策に、有権者が評価を下す場にするべきだ。

 コロナ禍で、日本の国民は、さまざまな分野でわが国が世界に後れを取っていることを思い知り、「日本はもはや先進国と呼べなくなってしまったのでは?」と心配し始めた。次の総選挙では今後の日本の成長を左右するグリーン成長戦略やDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略、さらに格差問題などをしっかりと論議しなくてはならない。


 しかし、与野党支持者が相互に憎み合う状況のままなら、選挙戦は不毛な非難合戦で終わるだろう。その先に待つのは日本のさらなる沈滞だ。今こそ国民の分断を乗り越え、未来に向けた前向きな議論を始めるときだ。

 

古賀茂明(こが・しげあき) 
  1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。『日本中枢の狂謀』(講談社)など著書多数。古賀茂明の最新刊『日本を壊した霞が関の弱い人たち 新・官僚の責任』(集英社)が発売中。
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IOC幹部の異様な発言の裏には日本がいるのではないか  (抄)

2021-05-29 | いろいろ


ジャーナリスト田中良紹氏のヤフーニュースのコラムより

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IOC幹部の異様な発言の裏には日本がいるのではないか


 近代五輪は終焉の時を迎えているのかもしれない。前回のブログで、五輪開催のために日本国民に犠牲的精神を求めるバッハIOC(国際五輪委員会)の発言と、緊急事態宣言下でも開催すると言い切ったコーツIOC調整委員長の発言を取り上げたが、その後もIOC委員からは常識を超える発言が相次いでいる。

 最古参のIOC委員であるカナダ人のディック・パウンド氏は25日、米国のCNNとのインタビューで「中止の選択肢は既にテーブルの上にない」と発言し、また英国の「イブニング・スタンダード」紙の取材に「アルマゲドンが起こらない限り東京五輪は開催される」と述べた。

 アルマゲドンとは聖書に出てくる「世界の終末」で、パウンド氏は人類滅亡の破滅が起こらない限り東京五輪は開催されると明言したのである。さらにパウンド氏は26日にロイターの電話取材で、開催に対する日本国民の反対や批判は「政治的なポーズであることが明らかになるだろう」と述べた。

 その際パウンド氏は「総選挙が10月か11月ということは、選挙での事後的な立場表明に向け、バックスイングしているのかもしれない」との見解を明らかにした。つまり日本国内の五輪開催批判は、この秋の総選挙と絡んだ政治的なものだとパウンド氏をはじめIOCは認識していることが分かる。

 しかし総選挙の時期を「10月か11月」というように、カナダ人のパウンド氏やIOCが日本の政治状況に精通しているとは思えない。おそらく日本の五輪関係者がIOCに対し、開催に反対の日本国民が多いのを政治的な理由からだと説明しているのだろう。IOCはそれを鵜呑みにし、政権に批判的な勢力が選挙を有利にするため東京五輪中止を煽っていると認識させられている。

 そしておそらく日本の五輪関係者は、日本国民はワクチン接種の遅れからその扇動に乗せられているが、接種が進めば不安は解消して状況は変わる。また開催してしまえば日本国民は連日の競技に盛り上がり、一挙に考えを変えて感動の涙を流すとIOCに説明しているようにフーテンは思う。

 そう考えると、日本人の粘り強さや逆境を乗り越えてきた歴史があるというバッハ会長の発言も、日本の五輪関係者から吹き込まれた話を、それを言えば日本人が喜ぶと言われて披露したのではないかという気になる。つまり常識を超えたIOCの対応は日本の五輪関係者との共同作業の疑いがある。

 一方でパウンド氏が問題発言をした25日には、米国の医学専門誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」が、IOCの「プレイブック」には新型コロナウイルス対策に欠陥があるという論文を掲載した。対策が競技ごとに細分化されていないことなどを挙げて、「中止が最も安全な選択肢かもしれない」と結論付けている。

 この論文を書いた執筆陣には、バイデン大統領のアドバイザーを務めるミネソタ大学感染症研究政策センターのオスターホルム所長も含まれ、権威ある専門誌だと言われる。開会まで2か月を切る中でIOCは「プレイブック」を変更せざるを得ないだろう。問題は変更してもそれを本当に実行できるかどうかだ。

 フーテンの見るところ医療関係者やメディアは、日本に限らず世界的に東京五輪開催を疑問視している。現在のコロナ感染状況を見れば、それが普通の感覚だと思う。しかしIOCと日本の五輪関係者に中止の選択肢はない。そこには普通の感覚では理解しえない政治的経済的思惑が隠されていると考えるしかない。

 その普通の感覚では理解しえない隠された事情を探るのがメディアの役割だが、パウンド氏は5月3日「週刊文春」の取材に対し「仮に菅総理が大会中止を申し入れてもそれはあくまで個人的な意見に過ぎない。大会は開催される」と極めて興味深い発言を行った。

 なぜ日本国の総理の申し入れが「個人的な意見」になるのか。昨年3月に安倍前総理が「1年延期」を申し入れ、それをIOCは了承したが、あれは「個人的な意見」ではなかったのか。あの時、国民が「1年延期」を望んだから、安倍前総理が「1年延期」を申し入れたわけではない。国民の中には様々な意見があった。

 コロナ禍を幸いに暑い夏ではなく秋に延期という意見もあった。コロナ禍は長引くとの見通しから東京五輪を4年後にしてパリ五輪をさらに4年遅らせるという意見もあった。中でも有力だったのは東京五輪組織委の中心人物である電通の高橋治之氏が米国のウォール・ストリート・ジャーナル紙のインタビューに答えた「2年延期」である。

 それが安倍前総理の意向で「1年延期」に変更された。後に森喜朗前東京五輪組織委会長は「自分も2年延期に賛成だった」と述べ、そのためには安倍前総理の総裁任期を延長する政治工作を行おうとしていたと明かした。

 ・・・・・。

 


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韓国男性「女も徴兵されろ」と主張。それに対しフェミニストたちは

2021-05-28 | いろいろ


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韓国男性「女も徴兵されろ」と主張。それに対しフェミニストたちは  

吉田サラバ


韓国で女性の徴兵制を求める請願が約30万票  


「Kフェミニズム」と称され、男女同権の実現に向けた女性たちの運動が盛んな韓国で、若い男性たちによる「反逆」が企図されている。徴兵制が実施されている韓国で、男女が同権ならば、女性も徴兵されるべきだというものだ。

 男性たちの反逆が表面化したのは、大統領府(青瓦台)への国民請願サイト。韓国では文在寅大統領就任後、大統領府のHP上に国民の誰もが請願出来るサイトを公開しており、1カ月で国民20万人以上の支持を得た請願に関しては、大統領府が公式に意見を表明するというシステムを採用している。

 その国民請願サイトに登録されたのが「女性も徴兵対象に含めてください」という請願。

 この請願は先月4月19日の登録後、3日で4万5千人の支持を集め、一気に世論の注目を集めることになった。

 請願サイトに登録された「請願内容」によれば、「韓国では年々出産率が下がり、国軍の兵力補充に困難をきたしている。そのような状況で男性の徴集率は9割に迫り、様々な理由で軍服務に適切ではない人までもが徴兵されている現状である」としながら、結論的に「女性も徴兵対象に含めるべき」であるとしている。

 そしてこの請願は、5月17日現在29万人の支持を得ており、大統領府も無視できない「国民の声」となっている一方、韓国内では老若男女間で賛否両論の議論が戦わされている。

 

  
「女も兵役に行け」と主張する男性たちの言い分とは  


 韓国での「女性徴兵制」について、男性側の意見は「賛成」と「反対」に両分される。

 まず反対意見としては、この問題は「差別」ではなく「差異」であるとし、男女の身体的な問題や、セクハラが起きやすい環境を醸成する、そもそも女性がいることを前提としていない軍設備が多い等の意見が聞かれた。

 賛成意見としては、身体的な特徴の問題であれば、周辺業務でも十分に対応出来るし、そもそも軍内でも旧時代文化は一掃されたと聞いている。これからの国防を考えるのであれば女性の募兵も必要だろうという意見が多い。

 特別な意見としては、韓国は「休戦国家」であり、男女区別なく国軍に動員している北朝鮮に対抗するためには、韓国でも、女性を軍に含め(北朝鮮との)兵力数の均衡を保たなければならないという過激な発言もある。

 

  
若い女性「行くのは構わない」  


 しかしこの議論が男性陣の中で活発化するのには、韓国のフェミニズム運動への反抗心も窺われる。要は普段、男女平等を叫ぶのなら、まずは軍に服務してみろ、出来ないだろうというのが男性陣の本音として垣間見える。フェミニストたちへの痛烈な皮肉というところか。

 では一方で、問題の「当事者」でもある若い女性たちの意見はどうか。

 この「女性徴兵(募兵)」問題については過去に何度も話題になった話ではあるが、大学通りの20代の女性は「行けと言われれば行くのは構わない」とあっけらかんと答えている。

 SNSやネット記事のコメント欄を見ても、女性たちは軍に行くことをそれほど嫌だとは捉えていないように見受けられる。日本人の感覚とは大きく異なるのかも知れない。軍の中で女性が生活するに足る環境が整うのであれば、軍での服務も厭わないという感覚が大勢を占めるように感じられる。

 

  
「女性が徴兵されても女性差別はなくならない」  


 実際、2019年に韓国女性政策研究院が男性1036人、女性976人を対象に行ったアンケートによれば、女性の53.7%が軍服務に対して肯定的な意見を述べており、対象となる20代~30代の女性も50%以上が賛成している。

 前段にもあったが、これが「休戦国家」のリアルなのだろうか。しかしこの問題を議論するSNS上には、そんな女性たちの声も散見される。

「女性徴兵制は構わないけど、女性が軍隊に言ったからって、今の社会の女性差別が無くなりはしない」、「男性は、差別問題というと、すぐに自分たちの徴兵の問題を持ち出してくるが、普段の女性差別問題にはまったく関心をもつことは無い」

 韓国社会における男女同権の問題は、伝統的な儒教国家である分、日本よりも根深く深刻であると言われている。韓国軍の話で男女が内戦状態では、仮に男女混成軍でも統率は取れないのだろうが…


<文/吉田サラバ>


吉田サラバ
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外国人を犯罪者予備軍とみなす日本の入管の許されざる実態

2021-05-28 | いろいろ


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外国人を犯罪者予備軍とみなす日本の入管の許されざる実態

にしゃんた(羽衣国際大学教授、タレント)

 

 

<性善説で成り立つ日本の社会で、なぜ白人以外の外国人は性悪説をもって扱われるのか>  

 しばらく前から「お悔やみ申し上げます」「ごめんなさい」「申し訳ない」や「日本を嫌いにならないでね」と、心優しい日本の人々からメッセージが届いている。

 今日本で「スリランカ」が最も話題の国の一つになった。私の出身地でもあるスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさん(享年33才)が、今年3月6日に名古屋出入国在留管理局(名古屋入管)の収容施設に収容中に亡くなった。入管収容所で命を落とした人間は2007年以降だけでも21人となる。この手の話は今まであまりニュースとして取り上げられることがなかった。ある意味珍しく収容施設内での死亡が全国ニュースとなった。

 今回は難民申請に関するルールの見直しを掲げた入管法改正が閣議決定され、国会で可決される予定となっていたタイミングで起きた事件で、改正入管法と彼女の死が重ねて扱われた。冷ややかな言い方をすれば、野党は存在感を示すために先月23日の衆院法務委員会で議題に挙げ、追及した。そして、支持率をこれ以上下げたくない与党は、今国会での法案可決を見送った。彼女の死が与野党に利用されたようにも見える。そして、廃案の見通しがたつと、彼女の死が、メディアで報道されることはほとんどなくなった。

 彼女と私は共通点がある。出身地が同じこと、来日にあたり親が家を抵当にして金を借り、送り出してもらっている点などだが、似ていないことも多い。男と女の違いもあるが、何よりも高校の途中で日本に来た私などと違って、彼女は超がつくほど優秀な人材だった。難関中の難関の国立大学を卒業してスリランカで英語の教員として務めていた。日本で英語の教員として働いている幼馴染のようになりたいという志をもって2017年の6月に来日。それから4年も経たぬうち変わり果てた姿で、恋い焦がれた日本で息を引き取った。

 遺族は、収容所の故人の姿が映された映像を強く求めているが、ビデオ映像の公開は保安上の理由から入管側に拒否された。とてもではないが見せられないような悲惨な状況で息を引き取ったに違いない。映像を見せられない理由はそれ以外にありえない。もしも彼女の初心が叶えられたなら自らの人生も輝き、日本にとっても貴重な人材になったに違いない。そしてもう一つ、思うところがある。一歩間違えれば、死んだのは私だったかも知れないということだ。

 


担当警察官の余りにひどい態度  

 話は変わるが、日本で入国管理局や警察関係で通訳という仕事がある。ギャランティーも良い。実は今から25年前、大学院生だった頃の私は2つの案件で通訳をしたことがある。一人目は超過滞在の罪で捕まえられていたAさん。彼はスリランカの少数民族のタミル人だった。スリランカ人が捕まったということでスリランカ人の私が呼ばれたが、私はスリランカの多数派のシンハラ人だ。日本の行政に母語の概念が欠落していることに気づいたのはおそらくその場にいた私と彼だけだったが、運よく彼がシンハラ語に合わせてくれたのでなんとか成立した。

 2件目はBさんで、容疑は不法就労助長罪だった。Bさんは在日歴が長い。そんな彼の元に新参者のスリランカ人Cさんが生活苦を訴えて仕事を求めてやって来たようだ。B氏は、頼ってやって来た若者にかつての自分の姿を重ね、御飯を食べさせ仕事をさせたようだ。そんな中Cさんが警察に捕まった。粗大ゴミとして道端に出ていた使えそうな椅子をもったい無いと思ってもって帰ろうとしていた時に怪しい外国人と110番があったようだ。やって来た警察に在留資格を確認され、超過滞在であることが発覚。本人もそして雇い主だったBさんも逮捕された。

 私は警察の事情聴取の部屋で腰紐を付けられたBさんと会ったのだが、彼とは初対面ではなかった。彼と私はかつて日本語学校の同級生だった。来日した当初、2人で机を並べて勉強していたが、しばらくして彼が姿を消した。その後、自動車解体の仕事に就いて成功しているとの噂は聞いていが、会うのは久しぶりだった。お互いの過去の接点についても触れることもなく私は淡々と通訳に徹した。

 通訳の途中から、私はひどい気持ち悪さを覚えた。他でもない、担当警察の言葉が私をそうさせた。彼は私を「先生」と呼び、B君を「アホ」「ボケ」「カス」と呼んでいた。私は通訳しながらなぜ2人の扱いがこんなにも違うのかを考えた。理由は考えるまでもなかった。私は日本で法律を守っていて、彼は法律を破っていた。それが理由だ。

 実はB君と私はスリランカの地元も一緒だった。そして地元では、彼と私は真逆の評価を受けていた。私などは日本での自分の生活のことで精一杯で、長年、親孝行一つ出来ていなかった。その点、B君は地元ではヒーローだった。親孝行はもちろん、地元では多くの人を幸せにし、社会貢献し、日本のイメージを上げていた。日本に行っておきながらスリランカに対して何一つ出来ていない僕が地元では「アホ」扱いされていた。それはおそらく今でも変わらない。

 私はここで法を犯すことをすすめている訳でも肯定しているわけでもない。法律は守るべきだ。だが、国家の物差しでは罪人でも、グローバルに見れば超がつくほど善人であることも大いにあり得る。人格評価をする際は、国家の枠組みはもちろんだが、我々は想像力をはたらかせ広い視野で人を見る目をもち、弱者に温かい言葉や手を差し伸べるべきではないか。

 ウィシュマさんは高い志をもって日本に来たが、なんらかの事情で道を踏み外したのかもしれない。そして、今回のコロナという想定外の事情も重なった。だがいかなる理由があろうとも人間の命を奪う権利は誰にもない。日本は文明国家なのだ。そのようなことが起きていいはずがない。

 私はこの国、日本が好きだ。だからこそ国籍も頂いてこの地で骨を埋める決意でいる。日本の一番好きなところはと聞かれたら、迷わず「性善説の上で成り立っている日本という国と日本人」と答えたい。日本人は人を疑わない。「無人販売」の文化が成立する国はおそらく世界どこを探してもない。人を善人と信じている分かりやすい例だ。

 だが、この国の入国管理局と警察は、外国人を基本的に犯罪者予備軍として見ている。外国人を性悪説で見ている。国民の中にも、特定の人種、ありていに言えば白人以外の外国人を、そのように見る傾向があることは否定できない。スリランカの彼女が亡くなったのもまさに日本の入管と警察が性悪説に立脚して彼女を扱った結果だ。出頭しDVを相談した彼女を守るべき対象として、警察はシェルターに保護を依頼すべきところを入国管理局につなげた背景も、入管収容施設で彼女が命乞いするも仮病と決めつけて放置し、死なせたのも性悪説に立脚した決めつけがもたらしたものだ。

 日本の警察と入国管理局において、外国人が犯罪者予備軍として管理の対象となっている以上、外国人を人間として、いわば人権を重視した対応は不可能だ。一般的な日本人の皆さんには想像しづらいと思うが、一度騙されたと思って外国人の友人とともに入管に行ってみれば分かる。そこには見慣れた日本人の笑顔も丁寧語もない。表情は険しく、言葉も基本的に乱暴だ。入管や警察にとっての任務である「管理」と「人道」は相容れない。「人道に基づいた管理」が望ましいが現状の体制では期待が出来ない。

 


管理と人道を両立させる欧州  

 先日アフリカの北端のスペイン領セウタに隣のモロッコから2日で8000人を超える大量の難民が流入したというニュースがあった。ニュースを見ているとスペイン側で戦車が導入され難民の入国を防ぐために警棒のようなものを使って不法入国者を誘導している映像が映っている。だがそれと同時に医療チームが国境を渡る際に弱りきっている者に対して医療処置を行なっている姿があった。そこでは管理と人道が同居していた。入国管理は大事だが、命を守る義務を最優先に考えている姿が垣間見えた瞬間だった。

 他所の国の例をあげてくるまでもない。そもそも日本は人道を重んじる国ではないか。第二次対戦中にナチスドイツに迫害によって発生した2000人を超える難民に対して命のビザを発行した東洋のシンドラーこと杉原千畝を忘れてはなるまい。国家よりも命を優先した彼が残した「大したことをしたわけではない。当然のことをしただけです」という千畝の言葉の意味を、この際、改めて噛み締めたい。人の道を生きた日本人らしさを探せばきりがない。その中でも印象に残るものと言えば、第一次世界大戦期、徳島県鳴門市の俘虜収容所にいた約1000名の捕虜と日本人の人間味あふれる交流の物語などが思い浮かぶ。

 このご時世に「なぜ難民を受け入れる必要があるのか」と私は素朴な質問を受けることがある。簡単にいえば、日本は難民条約に批准しているからだ。しかし先進国と比べた場合、日本の受け入れはあまりにも少なすぎる。申請者の約半分を受け入れているカナダやイギリス、3割近く受け入れているアメリカやドイツなどと比べ日本はわずか0.2%だ。受け入れ割合の低さもさることながら、世界的に認められる女性性器切除(FGM)やDV被害などは日本では難民認定の理由として見なされていない。

 難民認定申請が認められない理由も明らかにされていなければ、審査に際して費やす時間も長い日本で、いわば制度側の原因で生活や精神的に不安定な長期滞在を余儀なくされている者も多い。司法や第三者機関の関与もない日本の現状では、とてもではないが難民側に責任があるとは言えない。国連の人権条約機関からは再三にわたる勧告を受けている。

 「難民を受け入れたら日本で犯罪が増えるのではないか」との不安を覚えている日本人も少なくない。かつてこの国は1万1000人を超えるインドシナ難民を受け入れた歴史はあるが、それによって犯罪が増えたという事実はない。

 「国が守ってくれない人を、国際社会で助けよう」というのが、難民保護の基本的な考え方だ。基本的には、難民は情けで受け入れるものというイメージだと思うが、東京にある栄鋳造という会社は、下請けから脱却すべく難民を戦略的に雇用している。彼らの能力が活かされた結果、この会社は縮小の一途をたどる国内における下請けの現状を打破し、過去のデーターにはなるが、2011年0%だった海外売上が、その2年後には70%まで拡張した。「情けは人のためにあらず」ということが数字としても証明されている。

 最後に、今回の事件を受けて法務大臣が矢面に立たされたが、法務省の組織図を確認してもらいたい。法務省の中に、今回の出入国在留管理庁もだが人権擁護局もある。法務局は日本の人権全般を中心となって担っている組織だ。この際、入国在留管理庁内の人権教育はもちろん、自ら人権を語るに相応しい組織になるよう期待したい。

 ウィシュマさんのご冥福をお祈りいたします。


【筆者:にしゃんた
  セイロン(現スリランカ)生まれ。高校生の時に初めて日本を訪れ、その後に再来日して立命館大学を卒業。日本国籍を取得。現在は大学で教壇に立ち、テレビ・ラジオへの出演、執筆などのほか各地でダイバーシティ スピーカー(多様性の語り部)としても活躍している。
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「東京五輪は中止の方が日本経済に吉」 株式市場、開催のリスクを重視

2021-05-27 | いろいろ


より

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「東京五輪は中止の方が日本経済に吉」 株式市場、開催のリスクを重視  

 

 五輪開催といえば、金融市場では「景気浮揚効果から株価にはプラス」というのが定石だった。しかしコロナの感染が収まらない中、既に1年延期された東京五輪は、追加的な経済効果が乏しいだけでなく、政局への影響や感染拡大懸念から株式市場の重しとなりやすく、開催を延期・中止した方が日本株にプラスに働くとの見方が、ここにきてマーケットで急浮上している。

 

政治リスクに敏感な海外投資家  

 市場関係者が懸念するのが、反対の声が強い国内世論を押し切って開催した場合の政権への影響だ。各社世論調査でも既に菅政権の支持率が低下している中、開催を強行すれば総選挙を前に政治が不安定化するリスクが高まる、との見る向きが多い。

 こうした政治リスクにとりわけ敏感なのが海外投資家だ。日本取引所グループの統計によると、海外投資家は5月第2週に現物・先物合計で1兆円以上の日本株を売却し、昨年3月初め以来の大幅売り越しを記録した。

 クレディ・スイス証券副会長で経済調査本部長の白川浩道氏は、海外のリアルマネー投資家から日本の政治リスクに関する問い合わせが増えていると語る。「日本株は2月半ばから3カ月もアンダーパフォ―ムしており、欧米だけでなく、新興国のソブリン系投資家など、日本株に首をかしげる投資家が増えている。まだ本格的に売り始めているわけではないが、日本市場個別のリスクとして、コロナ対策に失敗して政治が大きく変動するリスクがどの程度あるのか評価している段階だ」という。

 

五輪なければ日経3万2000円  

 また、ワクチン接種率が他の先進国に比べ大幅に低い中で五輪が実施された場合、開催に伴って感染が再び拡大する懸念がつきまとう。西村証券の門司総一郎チーフストラテジストは、「五輪が再延期もしくは中止となれば、あく抜けして日本株は買われるのではないか。それが決まれば政府としても感染対策に注力できる。五輪がなくなれば、日経平均は3万2000円くらいまで上昇するのではないか」と予想する。

 東京五輪開催に伴う政治的・社会的リスクをそれほど重視しない投資家も存在するが、それでも、五輪が市場にもたらす追加的メリットがほとんどない、というのは市場関係者の一致した見方となっている。

 競技場の建設などは昨年までに終わっている上、既に海外からの観客受け入れ見送りが決定されたほか、国内の感染状況も緊急事態宣言の再延長が見込まれるなど不安定なことから、実施される場合でも無観客となる可能性も十分あるとの見方が市場では根強い。そうなると消費の盛り上がりは期待できず、追加的な経済浮揚効果は限定的と見られる。

 

五輪開催の有無、景気を左右せず  

 三菱UFJ国際投信の野崎始エグゼクティブ・ファンドマネジャーは「株式市場にとって、オリンピックを実施するかしないかは、もはや大きな問題ではない」として、開催の有無自体は基本的に市場にはニュートラルとの見方を示しつつ、「ただ、この世論の中、実施した場合の、菅政権への影響は気になる」とつけ加える。

 野村総研やソニーフィナンシャルホールディングス(SFH)などの試算でも、経済効果は最大で2兆円足らず、日本の名目国内総生産(GDP)の0.3%程度。コロナ禍に伴う国内消費の落ち込みはこれより大きいとみられる。

 観光庁の調査によると昨年7─9月期の国内旅行消費額は3兆円程度と、2019年の6.7兆円から3.7兆円も低下しており、外食や娯楽の自粛の影響などもあわせると損失はさらに大きいと見込まれる、とSFHの宮嶋貴之シニアエコノミストは指摘する。

 宮嶋氏は「日本の潜在成長率は0─0.5%程度でありGDP比で約0.3%の機会損失の発生は完全に看過できる規模とは言えないが、巷(ちまた)でけん伝される深刻な景気後退に陥るほどのインパクトはないだろう。大会開催の有無自体は景気を大きく左右するものではないが、感染の長期化は景気には明らかにマイナスだ」との見方を示した。


佐野日出之
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国民から悲鳴 菅政権は本気で“自爆の五輪”に突っ込むのか

2021-05-27 | いろいろ


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国民から悲鳴 菅政権は本気で“自爆の五輪”に突っ込むのか  


 東京五輪開催まで2カ月となった23日、沖縄県に緊急事態宣言が追加発令され、宣言の対象は10都道府県に拡大した。3回目の宣言発令から1カ月が過ぎようとしているが、新型コロナウイルス第4波の感染拡大に収束の兆しは全く見えない。菅政権は本気で五輪にこのまま突っ込むのか。耳を疑いたくなるし、信じたくもないが、今のところ答えは「イエス」だ。

 東京大会の準備状況を監督するIOC(国際オリンピック委員会)のコーツ副会長は、21日のIOC調整委員会の総括会見で「宣言下でもテスト大会が最悪の事態を想定した上で成功している」と強調し、宣言下での開催の可否について「答えはイエスだ」と明言。感染力が強い変異株が主流となった第4波に苦しむ国民がア然ボー然とする中、“ぼったくり男爵”ことバッハ会長がダメ押し。22日に開かれた国際ホッケー連盟のオンライン総会で、「五輪の夢を実現するために誰もがいくらかの犠牲を払わないといけない」と発言していたという。IOC収入の7割を占める巨額の放送権料を逃したくないとはいえ、「いくらかの犠牲」って――。

 1万5000人の選手をはじめ大会関係者9万人超を受け入れる日本に変異株が大量流入しようが、新たな感染拡大の大波が立ち上がろうが、医療崩壊が全国化しようが、自宅死が激増しようが、五輪のためにはやむを得ないとでも言いたいのか。

 4月に「緊急事態宣言と東京五輪は関係がない」と言っていたのは、言葉のアヤではなかったのだ。


IOCもぬくぬくバブル  

 高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)は言う。

「バッハ会長の発言は、根本原則で〈人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指す〉とうたうオリンピック憲章に明確に違反しています。日本で暮らす人々が健康を害するリスクに直面し、それに伴う犠牲が生じてもIOCは全く頓着しない。健康被害も含めて、五輪のためには全てのみ込めと言っているようなものです。平和の祭典という五輪の大義は完全に失われ、カネの亡者に支配された商業イベントであることがよくよく分かりました」

 菅政権と異口同音に「安全で安心な大会を開催できる」と繰り返すIOCの新型コロナ対策はこうだ。外部との接触から選手を遮断する「バブル方式」で大会を運営。米ファイザーとはワクチンの無償提供で合意し、選手村に滞在する各国・地域の選手団の8割超が大会時に接種済みとなる見通しだという。優先接種は国内選手も対象で、選手村や競技会場で選手と接触機会のあるスタッフらへの拡大も浮上。

“ぼったくり男爵”を筆頭とする五輪貴族もバブルでぬくぬく保護され、外界をシャットアウトするのだろう。ポンコツ政府の後手後手で、ロクにワクチン接種ができない惨めな日本国民にはノータッチで過ごせば「安心安全」とタカをくくっているんじゃないか。医療従事者の追加派遣を言い出したのも、感染リスクの高い国内関係者を避け、自分たちの健康と命を守り抜くためなんじゃないかと勘繰りたくなる。ちなみに、テスト大会の海外からの参加者は、選手と関係者を合わせて4大会で436人。五輪とはケタ違いだ。

 


国民と五輪が医療資源を奪い合うゼロサム  

 一方、菅首相はといえば世論の反発から逃げ回っている。沖縄への宣言追加発令を決定した21日、本来であれば会見が開かれるはずなのに、記者クラブのみのぶら下がり取材でゴマカシ。宣言の発令、追加、延長にあたって首相が会見しなかったのは初めてだ。渋々応じたぶら下がりも約5分半、計7回のやりとりのみ。

 会見見送りの理由を聞かれても「説明については適時適切に対応している」と真正面から答えず、五輪については「感染拡大防止に全力を尽くして、安心安全な大会にする」とナントカのひとつ覚えだ。五輪強行でさえトンデモないのに、ここへきて「観客あり開催」が急浮上。無観客を回避し、一定の観客を入れて開催すべきとの意見が政府や大会組織委員会で強まっているという。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。

「五輪を強行すればコロナ禍で不足している医療資源が引きはがされ、医療提供体制の崩壊が加速するでしょう。国民と五輪が限られた医療を奪い合うゼロサムに陥ってしまう。開催によって人の往来を増やせば、人流抑制によって感染を抑え込むという政府方針とも矛盾する。宣言下で酒類を提供する飲食店に休業を強いているのは、人の流れを抑え込むためではないのか。東京五輪の意義は復興五輪、人類が新型コロナに打ち勝った証し、世界の団結の象徴、絆を取り戻すなどとコロコロ変わってきた。要するに、今夏に開催する意義は何もないということの裏返し。形だけの開催にどれほどの意義があるのか。国民の反対も国際社会からの批判も受け止めず、政権浮揚に凝り固まって思考停止の菅首相は無為無策、無能無責任ですよ」

 23日に放送されたNHK「日曜討論」で加藤官房長官は、「開催そのものが感染を増やすのではないかという心配に対しては、訪れる人をかなり抑え込み、徹底した感染対策を行う」と自信満々だったが、誰がそんなたわごとを信じるのか。8カ月前まで厚労相を務め、第1波と第2波になす術がなかった張本人がよく言ったものだ。そうでなくても、安倍・菅政権は一貫して島国の特性を生かせず、ウイルスの流入を許し続け、感染爆発に手をこまねいている。これまで全くできなかったことが、五輪のスイッチが入れば途端にできるようになるのか。


支持率は危険水域目前  

 当然中止、首相は退陣表明に追い込まれると思いきや、全国への感染拡大を無視し、東京に医療従事者をかき集め、関係者にワクチンを優先接種し、あろうことか観客まで入れるという自爆覚悟の本土決戦である。錯乱政権の“狂行”に国民は悲鳴を上げている。毎日新聞などの世論調査(22日実施)で、内閣支持率は前月比9ポイント減の31%に下落。昨年9月の政権発足以降最低で、「危険水域」と呼ばれる30%割れ目前だ。不支持率は8ポイント増の59%に上昇した。五輪については「中止すべきだ」40%、「再び延期すべきだ」23%となり、STOP五輪の流れは変えようがない。

 全国の新規感染者数と死亡者数は高止まり。23日の重症者数は過去最多の1304人に上り、予断を許さない状況が続く。9都道府県対象の宣言も沖縄に合わせて来月20日まで再々延長される公算大だ。五輪に固執する菅が「感染対策の切り札」と息巻くワクチン接種完了率は2%足らずで、相変わらず底辺を這いずり回っている。高齢者の7月末接種完了を目標とし、“天領”の総務省を通じて自治体に圧力をかけた結果、全市区町村の9割超が「完了見込み」となったが、「医療従事者が確保された場合」の前提条件付きが少なくない。「1日100万回接種」を打ち出した菅の号令一下、自衛隊を投入して東京と大阪に新設された「大規模接種センター」の運用が24日始まったが、果たしてどうなるか。ネット予約開始初日には架空番号でも予約できたばかりか、正しい番号を入力しても予約できない欠陥まで露呈。この国のダメさ加減を象徴しているかのようだ。

 冷静さを欠き、五輪を止める決断、手続きすら分からない混乱無秩序政権と国民は心中の運命なのか。このまま行けば、その答えも「イエス」だろう。

「出口戦略が描かれない宣言下で、われわれの日常生活は多くの制約を受けています。にもかかわらず、五輪は何が何でも開催する。これほどのデタラメはありません。先の大戦中、〈ぜいたくは敵だ〉などの戦時標語が掲げられましたが、菅政権のスローガンは〈五輪のために医療を削れ〉。中止を求める声をさらに大きくし、たとえ強行されてもあきらめずにNOを訴え続けるべきです」(五野井郁夫氏=前出)

 野垂れ死には菅ひとりで十分だ。
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完全に予防はできない

2021-05-26 | いろいろ


賀茂川耕助氏の「耕助のブログ」より

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完全に予防はできない


 米ファイザーの製造する新型コロナウイルスワクチンの接種が日本でも始まった。すでに日本政府は英アストラゼネカと米モデルナとも契約済で、いずれも承認申請中であるという。

 ワクチン接種で先行するイギリスでは3月末までに約2千人がアストラゼネカのワクチンを接種し、79人に血栓症が出て19人が死亡した。死亡したうち3人は30

 歳未満だったことから、30歳未満については今後他社製のワクチンを勧めるという。しかしEUの医薬品庁(EMA)は血栓を「極めてまれな副反応」で安全性に問題はないとし、WHOの諮問委員会もアストラゼネカ製ワクチンに血栓との因果関係の確証はないとして大半の国が接種を再開したが、デンマークのようにアストラゼネカのワクチン接種を完全に中止した国もある。

 日本の主要メディアの報道はワクチン接種ありきで、安全性に関する情報はほとんどない。日本でも接種後に10人の死者が出ている(4月23日時点)が、いずれもワクチンとの因果関係は評価不能とされている。これでは接種後何年かたって問題が出ても因果関係を証明することはもっと難しいだろう。ちなみにアストラゼネカと同じ手法のジョンソン&ジョンソンの新型コロナ遺伝子ワクチンでも血栓症が発生し、全ての臨床試験での接種が中断となっている。

 米国では新型コロナワクチン接種を完了した約7700万人のうち約5800人が新型コロナに感染し、一部では重症者も出ていて74人が死亡したとCNNが4月15日に報じた。つまりワクチンは完全に感染や重症化を予防できないということである。これでも医師や専門家はワクチン接種を推奨し続けるのだろうか。特に日本の新型コロナ死者数は欧米とは桁違いに少なく、10代以下は1人も亡くなっていないし、50代でも200人もいない。ほとんどが基礎免疫の下がった高齢者で、他の疾患でも重症化して亡くなる確率が高い人々だ。昨年9月までのデータでは日本の超過死亡は増えていないし、新型コロナが国民全員にワクチンを推奨または強制するほどの感染症だとは思えない。

 素人の見解はさておき、米国アイダホの独立系医療診断研究所のディレクターであるライアン・コール博士は医師であり感染症の専門家で、10万を超える新型コロナのラボ検査を行ってきた。そのコール博士は、コロナウイルス感染は季節性のもので、風邪やインフルエンザ同様、炎症を抑制するビタミンDが少ない患者が重症化すると述べ、ワクチンは長期的な安全性データが証明されていないとして推奨していない。重要なのは食事や睡眠、運動など日常生活を健全にし、特にビタミンDを摂取することだという。

 イギリス政府は昨冬、ハイリスクの高齢者270万人に無料でビタミンDのサプリを提供した。米国立アレルギー感染症研究所所長のファウチ博士も毎日ビタミンDのサプリメントを摂取しているというから、私たちも権威ある専門家と同じ行動をとるに越したことはない。何よりも、これからの季節は外に出て日光の恩恵を浴びることが一番だろう。
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未完の最長政権 第三部 ① 書き換えられた対中親書

2021-05-26 | いろいろ


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未完の最長政権 第三部 ① 書き換えられた対中親書  

 一通の首相親書が、日中関係の軌道を大きく変えていった。2012年に首相の座に返り咲いた安倍晋三は当初「対中牽制」を強調したが、徐々に「競争」から「協力」へ軸足を移す。発効転機となったのが「習近平国家主席に宛てた安倍首相親書の書き換えだった」。複数の政府関係者はそう証言する。

 親書は17年5月、中国とのパイプを重視する自民党幹事長の二階俊博が中国が掲げるシルクロード経済圏構想「一帯一路」に関する北京での国際会議に参加した際、安倍が習主席宛てに託したものだった。

 訪中には経済産業省出身で、安倍側近の首相秘書官、今井尚哉が同行。習と対面した二階は「ここで読んでください」と笑顔で親書を手渡したという。親書には、中国の一帯一路を評価する内容が記されていた。

 中国に渡った親書の内容を知った国家安全保障局長の谷内正太郎は愕然とした。自らまとめた原案から大幅に書き換えられていたからだ。安倍に面会を求め、詰め寄った。

 「行政のシステムとして4大臣会合で了承された基本方針と全く異なる内容の親書が、私の知らないところで秘書官の一存で発出されたのはどういうことか。自分としては承服しがたい」

 谷内はそれまで、集団的自衛権の行使容認など、安倍の外交・安保戦略の指南役を務め、安倍が創設した、日本の外交・安全保障戦略の司令塔「国家安全保障会議(NSC)」を東ねる初代の国家安全保障局長に抜擢された人物だ。

 中国の一帯一路に対抗すべく、谷内らが「自由で開かれたインド太平洋戦略」を練り上げ、安倍は16年8月のアフリカ訪間で、この新戦略を日本外交の方針として世界に発信していた。

 二階訪中はその翌年。谷内らが手がけた親書原案は「日本は一帯一路に慎重に対応していく」方針で作成され、安倍、副総理の麻生太郎、官房長官の菅義偉らの了承も取り付けていた。だが、中国側に渡った親書はヽその方針と正反対の内容となっていた。

 政府関係者によれば、谷内に抗議された安倍は「僕もどうかなと思ったんだけどね」と語ったという。谷内は麻生や菅にも訴えたが、「(書き換えは)黙認された」(政府関係者)。

 親書の詳しい内容はいまも明かされていない。だが、今井は後に月刊誌「文芸春秋」のインタビューで「(原案には)一帯一路についてあまりにも後ろ向きな内容しか書かれていない。こんな恥ずかしい親書を二階幹事長に持たせるわけにはいかないと、相当修正を加えた」と認め、「『一帯一路についても可能であれば協力関係を築いていきたい』との文言を入れた」と告自している。

 安倍は「親書書き換え」の翌18年に訪中し、日中首脳会談で、両国は「競争」から「協力のパートナー」へ移行すると宣言した。

 安倍外交の継承を掲げながらも、首相になった菅は4月の日米首脳会談で「中国の行動について懸念を共有」し、「競争」へと軸足を戻しつつあるように見える。その動向を中国も注視している。

(敬称略。肩書は当時)


  親書

 政府首脳が署名入りで相手国の首脳に宛てた文書。外交ツールの一つとして、相手への謝意やお見舞いのほか、自国の政策意図などを説明することに使われるが、公開はされない。


競争と協力 狂わせた「さじ加減」

 「親書書き換え」の約半年前の2016年11月、東海道新幹線の車中「安倍は、来日したインド首相のモディと向き合っていた。

 「この地図を見てほしい」。モディを東京駅で出迎え、一緒に新幹線に乗り込むと、安倍は身を乗り出して熱心に語りかけた。

 国家安全保障局(NSS)などが作成した地図には、スリランカ南部のハンバントタ港やギリシャのピレウス港といった世界各地の港湾などで中国が経済協力をうたい文句に軍事拠点化を進める様子が描かれていた。

 中国と国境を接し、対中期制の「日米豪印」の枠組み構築に必ずしも積極的でないインドに、「足並みをそろえるよう強く促すこと」(政府関係者)が、当時の安倍の意図だった。


政権復帰時 軸足置いた対中牽制

 12年に政権に返り咲いた安倍は、「対中牽制」に軸足を置いていた。

 「日本が屈すれば、南シナ海における中国の要塞化が進む」。アベは首相就任翌日、自らの外交戦略を「安全保障ダイヤモンド構想」と名付け、国際NPO団体のホームページに英字論文を発表。南シナ海を「北京の湖になりつつある」とし、尖閣諸島周辺での中国の動向に強い懸念を示し、日本単独の「点」ではなく、日米豪印が連携する、ひし形の「面」で対中牽制網を構築する必要があると説いた。

 日米豪印の連携はその後、4カ国を意味する「クアッド(Quad)」と呼ばれ、16年に安倍がアフリカで打ち出した「自由で開かれたインド太平洋」戦略につながった。

 安倍は新戦略発表の演説で「アジアとアフリカの交わりを力や威圧と無縁で、自由と、法の支配、市場経済を重んじる場として育てたい」。名指しを避けつつ、念頭に置いたのは、南シナ海や東シナ海などで力で威圧する中国だった。

 この筋書きを主導したのは外務省だった。「中国とどう付き合うのかが、日本にとって今世紀最大の課題だ」。外務次官時代から谷内はそう考え、その考えは安倍とも共有していた。

 谷内は「中国封じ込め」を意図していたわけではない。健全な隣国関係を築くため、中国に力による威圧をやめさせ、法の支配など国際社会のルールを守らせることで、日中の対話の「土台」を作りたいと考えていた、と周辺は語る。

 尖閣諸島周辺での中国公船の活動や、安倍の靖国神社参拝などで日中関係は冷え込みながらもヽ14年11月に北京で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の際の安倍訪中で、日中首脳会談は2年半ぶりに再開。日中はその後も対話を重ね、双方が硬軟織り交ぜながらい関係改善の糸口を探っていた。

  ○ ○

 冷戦時代のロシアと違い、経済で密接に結びつく中国を完全に敵視するのは現実的ではない。 一方、尖閣諸島周辺や南シナ海での日本や他国への威圧的な行動は見過ごせない――。

 日中関係には「競争」と「協力}の微妙なさじ加減が求められる。安倍自身、退任後に雑誌「外交」のインタビューで、「一帯一路については、具体的なプロジェクトごとに判断すべきもので、頭から否定したり、反対に全面的に賛成するというものではない」と語っている。

 だが、そんな「さじ加減」を狂わせたのが「親書書き換え」だった。首相側近として発言力を増した秘書官の今井は外交にも強い関心を示すようになる。中国はトランプ米政権との関係悪化とは対照的に、対日姿勢を軟化。それは、中国との経済協力を重視する今井にとっても追い風となり、日中の「協力」機運を後押しした。

 「親書書き換え」を境に今井は、谷内ら「外交・安保」派と首相官邸で対立を深めていく。


発言力増した側近 官邸内で対立

 政府関係者によると、国家安全保障会議の場で、外務省出身の官房副長官補、兼原信克が中国の一帯一路の問題点を指摘。「一帯一路は純粋に空港や港湾などのインフラ整備で他国に協力しているのではなく、軍事戦略の一環と見るべきだ」と説明すると、今井は「こんな会議、やるんじゃないよ」と言って退室したこともあったという。

 「首相は徐々に今井氏寄りになった」。政府関係者はそう語る。「書き換え」翌年の18年10月、日本の首相として国際会議を除いて7年ぶりに北京を訪れた安倍は、中国首相の李克強との会談で「競争から協調へ、日中関係を新たな時代に押し上げていきたい」と述べた。

 安倍訪中には日本の財界トップらも同行。経済産業省が主導し、日中の第三国市場協力として、インフラや物流、ITなど、日中の政府・企業・経済団体の間で交わされた協力の覚書は50件を超え、「日中協力」を強く印象づけた。

 なぜ、今井は対中協力を進めたのか。政府内には二つの見方がある。 一つは「経産省出身の今井が、巨大な中国市場に期待を寄せる経済界の意をくみ、対中協力を優先させた」(政府関係者)との見方だ。

 今井は、周囲に「日米同盟が最重要だが、全て対米追従で、他の選択肢を考えない姿勢は間題だ。日本企業の中国進出を考えれば、一帯一路が持つ連結性は魅力的だ」と語っていた。

 もう一つは、今井が麻生、菅に加え、政権の柱である親中派の二階に配慮したとの見方だ。外務省関係者は「彼の使命は政権基盤を固め、長期安定政権を作ること。外交もそのツールと見ていた」と批判的に見る。

 官邸内の対立は、北方領土返還をめぐる対口交渉などでも露呈する。

 政府関係者は「谷内、今井双方の主張はそれぞれ理屈がある。それを東ねるのが首相の役目」と語る。外交・安保政策の指南役だった谷内を遠ざけ、内政で首相を支えた今井のラインに安倍はなぜ乗ったのか。

 元政府高官はこんな解説をする。

 「官邸の政策決定には、『表階段』のほか、側近用で首相に直結する『裏階段』がある。太陽系に例えれば、谷内がいくら大きな木星でも、地球に近い金星には勝てない。外交でも『宮中政治』が行われた」

(敬称略。肩書は当時)

 2012年に首相の座に返り咲いた安倍晋三前首相は「外交の安倍」と呼ばれ、訪問国は80カ国・地域を数える。「未完の最長政権」第3部では、安倍外交を検証する。
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トラブル続出のワクチン大規模接種センター予約システム

2021-05-25 | いろいろ


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トラブル続出のワクチン大規模接種センター予約システム
 運営会社の背後に自民党人脈  


 菅義偉首相の肝いりで東京と大阪で5月24日から開設される防衛省のワクチン大規模接種センターの予約サイトでトラブルが続出している。


 架空の番号を入れても予約できるという重大な欠陥があることをAERAdot.は17日夕方、『【独自】「誰でも何度でも予約可能」ワクチン大規模接種東京センターの予約システムに重大欠陥』と特報。


 岸信夫防衛相は18日朝の会見でAERAdot.が指摘した欠陥を認め、一部改修することを明らかにした。だが、報道に対し、「貴重なワクチンそのものが無駄になりかねない極めて悪質な行為」などとツイッターに投稿し、それを引用する形で、実兄の安倍晋三前首相も「極めて悪質な妨害愉快犯」などとツイートした。


 朝日新聞出版は19日、「(AERAdot.は)取材過程でシステム予約をおこなったが、情報の真偽を確かめるための必要不可欠な行為であり、記事にある通り、確認後にキャンセルしております。(略)記事は極めて公益性の高いものと考えております」との見解を公表した。

 こうした騒動後も予約システムを巡ってはトラブルが相次いでいる。

 板橋区で接種券番号など正しい番号を入力しても予約ができないトラブルが22日までに数十件、確認された。目黒区では予約サイトで情報を入力したあとに間違いがあることに気づき修正すると、予約が進めなくなるトラブルが数件、あった。渋谷、品川、新宿、北区などでも同様のトラブルが確認された。それぞれの区が防衛省に対応を問い合わせると、「わからない」と繰り返すばかりだったという。

 なぜ、これほどまでにトラブルが相次ぐのか。情報セキュリティやITシステムに詳しい明治大の齋藤孝道教授はこう見る。

「今回の予約システムは当初、それが招くリスクを積極的に対処しているとは言えなかった。いたずらレベルの対策や、入力ミスの対策に関する想定が十分でなかったように見えた。元々スケジュールに無理があったが、責任者が何を捨てるべきで、何を捨ててはいけないのかの判断が甘かった可能性がある」

 また、関係者の間でどういうシステムになっているのか、どう運用するつもりなのかを共有できていなかったようだとも指摘する。

「そのような状況では、接種会場で予約を取ったつもりの人が現れるなど様々な混乱を招くことになるかも知れません」


 今回、予約を含めて会場の運営を防衛省から受託したのは「日本旅行」(東京都)だ。入札は行われず、約19億5千万円の随意契約だった。しかし、予約サイトを見ると、運営は「マーソ」社(東京都)になっている。

 人間ドック・健診予約サイトを運営するマーソ社は、今年2月に日本旅行と接種業務について業務提携を結んでいた。自治体などにワクチン接種システムを売り込んでおり、鳥取市は国と同じように、3月からワクチン接種事業を委託している。日本旅行がコールセンター、会場の受付、接種券の発送などを担い、予約システムはマーソが担当するという役割分担だという。

 鳥取市によると、予約サイトと接種券番号と生年月日の情報は紐づけられており、予約サイトで認証を行っている。東京センターで起こったような架空の番号で予約ができたり、反対に正しい番号で予約できないなどのトラブルは、「特に起きていない」(同市担当者)という。

 なぜ、今回のシステムは鳥取市のように予約サイトと生年月日、接種券番号などの個人情報を紐づけることができなかったのか。

 岸防衛相は18日の会見で「虚偽予約を防止するシステムを短期間で実現するのは困難」「接種対象となる国民の個人情報を防衛省が把握することは適切ではない」とその理由を述べた。こうした発言に対し、防衛省の関係者はこう見る。

「岸防衛相は個人情報ともっともらしい言い訳を言っていますが、ようは菅官邸が各省や自治体との事前調整なく、トップダウンで『24日に大規模センターをつくる』とぶち上げたことが原因です。日付ありきで開設が決まり、押し付けられた防衛省は、システムに不具合が想定されても、間に合わせるために見切り発車をせざるを得なかった」


 トラブルは起こるべくして起こったというのだ。

「出鼻をくじかれる結果となりましたが、そもそも各自治体が大規模接種センターを設置し、そこへサポート役として自衛官を派遣する形を取っていれば、余計な混乱は起こらなかったはずです」(同前)

 ワクチン予約のシステムで注目を集めることになったマーソ社だが、取材を進めると、実は自民党人脈とつながりがある会社であることがわかった。

 マーソ社は15年に、「Sシステム」の子会社として設立された。Sシステムはゴルフ場向けのシステム開発を行っている会社で、マーソ社の現社長・西野恒五郎氏の父が1982年に茨城県で立ち上げた。Sシステム会長だったのは、恒五郎氏の祖父で、地元では大物自民党議員として知られた西野恒郎氏(故人)だ。

 恒郎氏は内閣官房長官や自民党幹事長を歴任した梶山静六氏(故人)の盟友でもあった。梶山氏も西野氏も自民党の茨城県議出身で、県議会議長を務めた。西野氏はその後、衆議院議員になった梶山氏の後援会長も務めた。梶山氏は菅首相が「政治の師」と崇める人物で、息子の弘志氏は菅首相に抜擢され、経済産業相を現在、務めている。

 それだけではない。マーソ社の西野社長のフェイスブックで「友達」のページを見ると、多くの大物自民党議員がフォローされていた(現在は解除されている)。

 さらにマーソ社の役員を見ると、人材派遣大手パソナグループ会長で、菅首相のブレーンとして有名な竹中平蔵氏が16年より経営顧問に就任。また、社外取締役として大物弁護士の熊谷信太郎氏が名を連ねていた。熊谷氏は熊谷綜合法律事務所(東京都)の所長で、吉村洋文大阪府知事の元上司だ。

 今回の予約サイトを受注した経緯やトラブルについて、マーソ社の見解を書面で質問したが、下記の回答があった。

「防衛省様にてご説明なさっている状況にあり、弊社からの回答は控えさせて頂きます。なお、ご質問事項には思い込み等に基づくものが散見されることを付言致します」

 回答にある「思い込み等」とは何か尋ねたが、回答はなかった。

 パソナグループを通して竹中氏にも、今回の予約システムの欠陥について、マーソ社や防衛省などに何らかアドバイスをしたかなどの質問を送ったが、「当社は回答する立場にございません」(広報部)との回答だった。

 防衛省は今回の予約システムの欠陥をどう改修するのか、竹中氏の存在を契約前に知っていたのかなど質問状を送ったが、「調整中」と言うばかりで具体的な回答はなかった。

 今回の予約システムの欠陥に関してAERAdot.では17日から問い合わせを何度もしているが、防衛省から具体的な回答が寄せられたことは一度もなかった。

 24日にスタートする高齢者へのワクチン大規模接種センターでトラブルが起こらないことを祈るばかりだ。

 

(AERAdot.編集部 吉崎洋夫)
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宮内庁から 小室さん7月帰国は「最悪のタイミング」

2021-05-25 | いろいろ


より

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宮内庁から 小室さん7月帰国は「最悪のタイミング」
  「できるなら阻止したい」の声  


“文書の内容が最悪だ”という声が圧倒的  

 眞子さま(29)と婚約が内定している小室圭さん(29)が、母・佳代さんと元婚約者との間の金銭トラブルを説明する28ページに及ぶ文書を公表したのは4月8日のこと。それ以降、小室さん側から解決金支払いの提案があったり、元婚約者の反論があったり、佳代さんの長期入院情報が出るなど、状況が二転三転するような日々が続いた。小室さんのフォーダム大卒業が決まった今、それらを当事者として宮内庁の人々はどう見ていたのか、レポートする。

 これまでの経緯を宮内庁担当記者に振り返ってもらうと、

「4月8日に文書が出たこと自体は、宮内庁内ではさもありなんという風に受け止められていました。秋篠宮さま、宮内庁長官、そして天皇陛下までもが“国民が納得する説明”を求められていましたから、それに何らかの対応をするのは当然だという意味合いですね」

 しかし、

「“文書の内容が最悪だ”という声が見事なくらい圧倒的でしたね。長官は一定の評価を公にしていましたが、自身が説明を求めてきた立場ですから何らかの反応をしなければならないですし、かといって具体的に踏み込んであれこれ言うのは長官の矩を超えていますから、あれが限界だったと思います」

 文書のどこに宮内庁の人たちは違和感などを抱いたのだろうか。

「やはり、相手を説き伏せるスタイルになっている点ですよね。世間が小室さん側に対して感じている“胡散臭さ”を払拭するというのが文書を出す最大のテーマだったと思います。しかし、今回はそれを取り除くどころか、むしろ皇室に相応しくない人だと印象付けてしまったということで、完全に失敗だったと言われています」

 


眞子さまが関わられていたことに“ショック”  

 この文書を受け、秋篠宮家の最側近の加地隆治・皇嗣職大夫は9日の定例記者会見で、眞子さまの「今回発表された文書を読まれて色々な経緯があったことを理解してくださる方がいらっしゃればありがたい」とのコメントを明らかにした。文書を読まれた秋篠宮ご夫妻の様子について「(小室さん側が)問題を解決するために行ってきた色々な対応が見える形になるように努力したものと受け止められたようだ」とも明かしている。

 秋篠宮家の関係者によると、

「確かに問題を解決するための努力のあとはうかがえたとは思いますし、秋篠宮ご夫妻がそのように仰ったかもしれません。しかし、実際に秋篠宮さまが、眞子さまから文書の存在を知らされたのは公開の少し前くらいでじっくり吟味する余裕がなかったということでした。加えて中身についても、秋篠宮さまは好意的ではなかったと聞いています」

 加地皇嗣職大夫の会見内容に話を戻すと、眞子さまが小室さん側の一連の対応について相談に乗られてきたこと、小室文書で示された〈何の話し合いもせずにお金を渡すことはせず、きちんと話し合い理解を得たうえで解決する〉というスタンスは眞子さまの意向が大きく影響したことを明かしている。

「このことで、文書は眞子さまとのいわば合作だということが示されることになりました。先に触れたように、宮内庁内では小室文書のことを最悪だと指摘する声ばかりなのですから、それに眞子さまが関わられているというのは“ショックです”という反応が多かったですね」

 


“どうして録音したのか”にどう答えるか  

 別の担当記者にも聞いてみると、

「何らかの対応を求められてきた小室さんにとって、文書は捲土重来のチャンスだったわけですが、それを無駄にしたという風に宮内庁内では言われています。仮にやり直せるならどのタイミングに戻るべきかについても聞いたところ、文書発表前に戻って練り直すべきと言う人もいました」

 そしてその際には、

「“お金はお借りしていたものだ”と真摯にシンプルに綴るべきだったと。後に解決金支払いを提案するのであれば、最初からそのように綴っておくべきだったと指摘する声は多かったですね。国民の認識とそんなに乖離していないようにも感じました」

 小室さんは7月末にNY州の司法試験を終えた後、一時帰国する可能性が報じられているが、

「これも“最悪のタイミング”と吐き捨てる人は少なくないですね。ある程度の道筋を立てて帰国するならまだしも、むしろ大混乱の中の帰国で、それは悲劇でしかないというわけです」

 もちろん宮内庁では帰国した場合のメディア対応も想定している。

「例えば、“文書をあのタイミングで出したのはなぜか?”とか“どうして録音したのか? 録音すべき重要局面だと思ったのはなぜか?”などといった質問が繰り返されることになるとも言っていました。小室さんの名前で文書を出している以上、回答する義務はあるでしょう。ということで、“できることなら帰国を阻止したい”という人まで現れています」


デイリー新潮取材班
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「憲法のせいで入国待機期間が延長できない」はやはり嘘だった!

2021-05-24 | いろいろ


より

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「憲法のせいで入国待機期間が延長できない」はやはり嘘だった!
   今頃10日間に延長 怠慢を憲法に責任転嫁する菅政権

 

 またも菅政権の後手対応があらわになっている。昨日21日になって、インドなど6カ国からの入国者について、宿泊施設での待機期間を6日間から10日間に延長する方針を政府が固めたと報じられたからだ。

 あまりに遅すぎるとしか言いようがないだろう。4月26日には海外渡航歴のないインド型変異株の感染者が都内で見つかり、5月14日には東京医科歯科大学が「市中感染の拡大が始まっているとみることは可能」と指摘。昨日の国立感染症研究所の発表では、国内感染者は11人にのぼっている。

 インド変異株は感染力がイギリス型変異株よりも1.5倍、従来株の2倍以上とされており、インドの惨状が伝えられるなかで「早くもっと強い対策を打つべき」という指摘がなされてきた。実際、4月30日放送の『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日)に出演した政府分科会メンバーの小林慶一郎氏は「(待機期間を)2週間にすべきではないかと私も政府に申し上げたが、これからどうなるか、検討されるかどうかもわからない」と発言。政府が提言を無視している状態であることを明かしていた。

 いや、それどころか、菅政権は信じられないような強弁で待機期間の延長を拒否してきた。というのも、「待機期間を10日にすべき」という野党からの提案に対し、菅政権は「憲法の制約がある」「私権制限の法律がない」と突っぱねてきたからだ。

それは、10日におこなわれた衆院予算委員会でのことだった。質疑に立った立憲民主党の枝野幸男代表は、インドを変異株の流行地域に指定したのが4月28日と遅きに失しただけではなく、政府は水際対策を強化したと言う ものの、インドなど3カ国からの入国者の宿泊施設での待機が3日から6日に延びただけだと指摘。「すべての入国者に対して10日間は宿泊施設でしっかり隔離し、その間、3回にPCR検査をおこなうぐらいの水際対策をやらないと変異株が入ってくる」とし、菅義偉首相に対して「総理、なぜ水際対策の抜本的強化やらないんですか? オリンピックのためですか?」と追及した。

 ところが、指名された菅首相は答弁席に立たず、代わりに出てきた田村憲久・厚労相は、こんなことを言い出したのだ。

「基本的にですね、憲法の制約上、移動の自由があるということはご承知のとおりだというふうに思います。これ、判例等々も出ております」

 憲法に「移動の自由」があるから隔離期間を10日することはできない……!? 一体何を言っているのだろう。憲法22条には〈何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する〉とあるが、感染拡大国からの入国待機はどう考えても「公共の福祉」の範囲内だ。

 厚労省自身が「新型コロナウイルスの潜伏期間は1〜14日間ほど」としていることから考えると、むしろ、科学的エビデンスを踏まえて十分な隔離期間を設け、インドからの入国者に対する不当な差別を生まないようにすることこそ、公共の福祉に合致すると言っていいだろう。

 それを憲法のせいで10日間にできないって、言っておくが、もし憲法のせいで宿泊施設での隔離期間を10日に延ばすことができないなら、6日だってダメなはず。言っていることがめちゃくちゃなのだ。

 


待機期間10日間を拒否したのは、たんにホテルを確保できていなかったからだった  

 実際、政府はいまごろになって、もちろん改憲もしないまま、待機期間を10日間に延長する方針を固めた。これで「憲法の制約」で6日以上の隔離はできないという主張が大嘘だったことが、あらためてはっきりしたと言っていい。

 それにしても、田村厚労相は一体なんのためにあんなデタラメ答弁をおこなったのか。

 じつは、このときの質疑で田村厚労相は「6日間はですね、ホテルの量があるんです。このホテルを確保するのも、地域住民の方々のご理解をいただかないと」などとも答弁。隔離期間を延ばせないのはたんにホテルを確保できないからだということを自ら明かしていたが、ようするにホテルを確保できないという政府の無能さを覆い隠すために、憲法を持ち出してカモフラージュしていたのである。

 まったく下劣としか言いようがないが、しかし、田村厚労相はその後もこんなことを口にしていた。

「いずれにしましても、これもですね、わが国は私権の制限に対しての法律がございません。先般、特措法もですね、措置入院に対して罰則等々はじめお願いしました。これはそういうわけにはいきませんでした。国会のほうの、いろんな判断のもとで。同じようにホテルには強制的に入っていただけないんです」

 まるで決め台詞のごとく飛び出した「私権制限ができないからできない」。だが、この発言も支離滅裂すぎる。

 まず、宿泊施設での隔離期間を延ばすべきという話をしているのに、「ホテルには強制的に入っていただけない」などと言うのは話のすり替えにほかならないが、さらに特措法改正における政府が当初示した措置入院の罰則規定(入院勧告に従わない患者に対して懲役刑など刑事罰を課す)を持ち出すことが意味不明だ。この政府案は病床が不足して入院すべき患者が入院できないという状況下にあることを一切無視したもので、しかも入院拒否の件数を政府が把握していないという罰則導入の立法の根拠となる前提事実さえおぼつかない代物だった。いや、そもそも入院によって収入がなくなり生活できなくなる、育児や介護ができなくなるといった就労・生活上の事情に対する補償・支援策もなく、一方的に患者に懲役刑を課すことは政府の責任を放棄して患者に責任を転嫁するものであり、差別を助長しかねないものだった。だからこそ、世論調査でも懲役刑を盛り込むことには反対が賛成を上回るなど反対の声が高まり、与党は刑事罰の撤回を余儀なくされたのだ。

 それを、言うに事欠いて“入院拒否の刑事罰も国会で蹴られた”などと言い出すとは。繰り返すが、このとき俎上に載せられていたのは「隔離期間が6日では短い、10日にすべき」という話であって、個人に対して刑事罰を課してどうにかなる問題ではまったくなく、政府がホテルを確保すれば解消される話だったのだ。

 このように、待機期間を6日間から10日間に延長すべきという提案に対し、菅政権は「憲法の制約」や「私権制限の法律がない」などともっともらしく声高に叫んで拒絶していたというのに、この質疑から約2週間も経って、素知らぬ顔で10日間への延長実施に方針転換したというのである。後手後手なのは言うまでもなく、あまりにも面の皮が厚すぎるだろう。

 


吉村や橋下の「感染拡大はロックダウンできないせい」も嘘! 問題は自分たちの医療削減政策なのに…  

 いずれにしても、これで菅政権や大阪府の吉村洋文知事、橋下徹氏らが声高に叫ぶ「私権制限ができないから感染防止ができない」「コロナのような感染症に対応するには憲法改正が必要」という主張がいかにバカげたものであるか、あらためて明確になったと言えるだろう。ようするに、菅政権も吉村知事も、現在の権限のなかでやろうと思えばできることをやらず、責任転嫁のために「私権制限ができないせい」などと改憲に問題をすり替えているだけなのだ。

 これはもちろん水際対策だけの問題だけではない。たとえば、日本で感染拡大を抑え込めないのは「ロックダウンできないせいで人流が止められないから」などという主張があるが、第一波のときの緊急事態宣言時は外出制限が「要請」止まりでも人の移動はかなり抑え込んでいた。その効果が薄れてしまったのは、言うまでもなく補償が不十分であることに加え、「GoTo」などと人の移動を推奨する政策を感染拡大の局面でも推し進めたことや、この期に及んでも東京五輪開催を強行しようという菅政権の姿勢が感染防止策と完全に矛盾を引き起こしているためだ。

 また、「中国や韓国のように感染者の移動追跡など個人情報の活用が日本はできないせいだ」という主張もあるが、接触確認アプリ「COCOA」が業者丸投げでまったく機能しなかった問題を見ればわかるように、そもそもこの国の行政はそれ以前の状態でしかない。

 逆に、この国がコロナ対策に失敗しつづけているのは、初期の段階から検査体制を強化することをおろそかにし、そればかりか政府もお抱え専門家も「闇雲に検査すれば感染者が急増し、医療崩壊につながる」などという本末転倒も甚だしい考えに拘泥。その一方で安倍・菅という対策トップが経済優先しか頭になく、医療提供体制の拡充をはかることもなくきたからだ。

 その上、本サイトでは繰り返し指摘してきたように、菅政権はベッドを減らした病院に補助金を出すべく本年度予算で195億円もの巨額を計上。しかも、その財源はすべて消費税で賄おうという「病床削減推進法案」を、昨日21日の参院本会議で可決・成立させてしまった。

 繰り返すが、この国のコロナ対策が失敗し、感染拡大を抑え込めず、医療崩壊を起こしているのは「現行憲法のせいで私権制限ができないから」では断じてない。国民に負担や痛みを押し付けるだけで、検査や医療の強化・拡充という政府の仕事を放り出してきたせいだ。そして、コロナ感染拡大に乗じて改憲論議に結びつけようとすることがいかにナンセンスかは、今回の隔離期間の延長ではっきりとした。「憲法の制約」「私権制限の法律がない」などと筋違いの主張を繰り広げ、対策が遅きに失した責任は、すべて菅首相にあるのだ。


(水井多賀子)
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ふざけるなバッハ、馬鹿にするなコーツ、と思う東京五輪開会まで2か月  (抄)

2021-05-24 | いろいろ


ジャーナリスト田中良紹氏のヤフーニュースのコラムより

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ふざけるなバッハ、馬鹿にするなコーツ、と思う東京五輪開会まで2か月


 まず下品な言葉を使うことをお許し願いたい。しかしフーテンの感情はその言葉を使わないと表現できないので使わせてもらう。

 「胸糞が悪くなる」ことが最近2度あった。1度目は19日の東京五輪調整委員会でのバッハIOC(国際五輪委員会)会長の冒頭発言を聞いた時、2度目は21日の調整委員会後のコーツ調整委員長の記者会見での発言を聞いた時である。

 バッハ会長は以前から「日本国民は歴史を通じ不屈の精神を見せてきた。この困難な状況にある五輪を唯一可能にするのは、逆境を乗り越えてきた日本国民の能力」と発言してきたが、19日にも「大会が可能になるのは日本国民のユニークな粘り強さという精神、逆境に耐え抜く能力を持っているから。美徳を感謝したい」と述べた。

 日本の歴史の何を指し、どのような事実をもって日本国民をほめそやすのかよく分からないが、まるで通常の国なら開催できないほど困難な状況にある五輪を、日本国民なら「耐えがたきを耐える」犠牲的精神で、必ず開催を実現してくれると言われているようだ。フーテンは「ふざけるな」という気になる。

 一体この男は日本の歴史の何を知っているのか。日本国民の美徳を何だと思っているのか。日本国民は馬鹿にされている。「俺たちの金儲けのために日本国民は得意の犠牲的精神を発揮しろよ」と言われているようでフーテンは「胸糞が悪く」なった。

 これと似た感情を持ったことが2016年にもあった。オバマ米国大統領の広島訪問である。米国が初めて悪魔の兵器を投下したヒロシマは人類の歴史に負の刻印として永遠に刻まれるべき場所である。そこを米国大統領が訪れ慰霊をしたことに一定の意義はある。

 しかしその時のオバマの演説にフーテンは言いようのない違和感を抱いた。「空から死が落ちてきて世界が変わった」とオバマは演説した。何を言っている。原爆は米国が落としたのだ。空から落ちてきたのではない。

 マンハッタン計画で米国が原爆実験を成功させたのが1945年7月16日。米国はその21日後広島に、24日後に長崎にそれぞれ種類の違う原爆を投下した。何のために。戦争を終わらせるためではない。原爆の威力を実戦で試しデータを収集するためである。

 戦争を終わらせるためなら、原爆実験に成功した事実を日本に通告し、その威力を公開すれば事足りる。開発に携わった科学者たちは日本への原爆投下に反対し、太平洋の無人島に投下し、それを見せつければ戦争を終わらせる効果はあると進言したが却下された。

 それに日本は不可侵条約を締結しているソ連を通じて既に和平工作を行っていた。終戦は時間の問題だった。しかし米国は2種類の原爆を投下してそのデータを集めようとした。爆風がどうなるかをみるため、地形や人口などを考慮して投下目標は選ばれた。

 それをオバマは「空から死が落ちてきた」と言い、一方で日本国民は米国大統領が広島まで来て慰霊をしてくれたことに感謝し感動の涙を流した。フーテンの「胸糞の悪さ」はその両方に向けられた。

 しかも米民主党政権に近いケント・カルダー教授の論文には、オバマの真の狙いは核廃絶でも慰霊のためでもなく、別のところにあったと書かれている。安倍政権が北朝鮮の核開発に触発され核武装に踏み出さぬよう、安倍総理に反核の姿勢を明確にさせる目的だったというのだ。

 カルダー教授によれば、英国は米国から核技術を提供されたが、フランスにはそれがなかった。そのフランスがインドシナ戦争で敗北しそうになり、米国に核で介入することを要求すると断られ、仕方なくフランスは原発で蓄積したプルトニウムを利用し、自前で核武装した。

 オバマは安倍総理がフランスの真似をすることを恐れ、そうさせないために広島訪問を考えたとカルダー教授は指摘する。そうだとすればなんと日本国民はナイーブだったことか。オバマの広島訪問を核廃絶とか平和のためだと考え涙を流したのだ。

 日本国民はオバマの広島訪問に感動したが、そのオバマは一方で新たな核開発にゴーサインを出している。米国の冷徹な論理と世界の現実に日本国民は思いが至らない。そして今や原爆を投下した米国に日本は何事も従順になり、国家の安全保障の全てを委ねている。それが未来永劫続いていくかのように。

 日本に反核運動が起きたのは、1954年の「第五福竜丸事件」で「原爆マグロ」が問題にされてからだ。それ以前は被爆した広島市民も日本を占領した米国のマッカーサーを神のように崇め、広島市内の道路に「マッカーサー通り」の名が付けられ、被爆者の様々なデータはすべて米国に送られ、米国の研究に日本は全面協力した。

 一方で米国は「第五福竜丸事件」を水爆実験が原因であるとは認めず、従って謝罪もせず、日本国内に反核運動が起こると、今度は原子力の平和利用を前面に立て、日本に原発を推進させた。それが東日本大震災で深刻な事故を招くのである。

 バッハ会長の言う「逆境に耐え抜く能力」とは、世界で唯一原爆を落とされながら、それを耐えて米国の原子力研究に協力し、米国の指導で原発を推進し、さらには安全保障の全てを米国に委ねて疑問を抱かず、そうやって戦後を生きた日本の姿が言わせているのではないかとフーテンは思った。

 ・・・・・。

 


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耕論 何のための五輪

2021-05-23 | いろいろ


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耕論 何のための五輪 五輪は何処へ

東京五輪の「開幕日」まで62日。新型コロナ収束の兆しはなく、中止を望む声のなか、政府は突き進む以外の選択肢を見せない。異様な状況があぶり出すのは「何のための五輪か」との問いだ。


幻想消えて負担あらわに

 東京五輪中止を求める声が高まっているのは、「五輪への幻想」というベールがはぎ取られたからだと思います。

 コロナ禍で多くの人が普段の生活ができなくなり、命の危険を感じるなか、多額の費用をかけ、社会に負担を強いる五輪の実態に気づいた。そして「五輪って要るの?」との疑間に至ったのでしょう。

 反対論が大きく広がったのは、大会組織委員会が看護師500人の確保を要請したことがきっかけになったと思います。4月下旬、会見した武藤敏郎事務総長は開催ありきでヽ「前々からそういうことになっている」というような口ぶり。後ろめたさがまったく感じられませんでした。

 社会が見えていないのでしょう。「五輪だから最後はなんとかなる」「始まってしまえば盛り上がる」と思考停止してきた。森喜朗前会長が辞任するまでは「森さんが何とかしてくれる」という考えもあったかもしれません。

 五輪がないと強化や普及ができない競技もあり、アスリートが発言しづらい事情はわかります。部活動に由来する上意下達の文化に加え、社会とスポーツが切り離され、子どもの頃から競技だけに専念するあまり、発言する言葉を持たない選手もいます。でも開催を望むなら、無観客や大会の縮小など「こうしたら開催できる」と提案すべきだし、開催が現実的でないと考えるなら、そう言えばいい。

 私はスポーツに育てられた人間ですし、「スポーツの力」は信じています。原始的な社会では、身体能力はそのまま生き延びるための力だった。身体を使うことが少なくなった社会で、アスリートのパフォーマンスは生きる力を見せてくれます。

 でも、それを五輪に矮小化してはいけない。子どもが初めて逆上がりができた時、サッカーで初めてゴールを決めた日。できなかったことができるようになり、本人や周りの人に感動を呼び起こす瞬間こそが「スポーツの力」です。勝利至上主義のもと、一部のエリート養成を促す五輪は、これに逆行しています。

 東京五輪は中止すべきです。このコロナ禍にあって社会的に弱い立場のよへの配慮が決定的に欠けている点は、スポーツを愛する者として看過できない。もし強行すればスポーツに対する世論のまなざしは、より厳しくなるでしょう。中止されたとしても、一度向けられた懐疑の念は簡単にぬぐえないと思います。

 五輪はスポーツの名を借りた商業イベント。そう結論づけた上で、スポーツの価値を本質的に考え、時間をかけて教育現場から見直すべきです。スポーツの信頼が失われるのを静観すれば、50年後、「スポーツなんてやってるの?  珍しいね」とも言われかねない「そんな危機感があります。 

  (聞き手・伊木緑)

 

理念疑われ 弱まる神通力

 近代五輪が肥大化や商業主義の弊害を批判されながら、なぜここまで続いてきたのか。そこには、五輪を他のスポーツ大会とは違う「アスリートの祭典」以上の存在にしてきた「理念」があります。

 クーベルタン男爵が掲げたオリンピズムの理念は現代まで引き継がれてきました。「平和の祭典」や「政治的中立」……。そう.した理念に現実が伴わなくても、世の中を変える力があると人々に信じ込ませることで、社会を動かす。それを、私は「五輪の象徴的権力」と呼んでいます。

 例えば、平昌冬季五輪での北朝鮮と韓国によるアイスホッケーの南北合同チーム。やり方について是非の議論はありましたが、現実政治の世界では解決できないことを、人々の前に見せてくれました。

 ただ、この権力は、信じて価値を見いだす人がいなくなれば力を失います。東京大会は当初、コンパクト五輪や東日本大震災からの復興を理念に掲げましたが、混迷の中であいまいになり、「コロナ克服の証し」に変わりました。コロナを克服できない今は、何のために開催するのかを、政府や大会組織委員会、スポーツ界も説明できません。

 「感染状況がどんなレベルだと無観客に、あるいは中止にするのか」という具体的な説明もないまま、ただ開催に突き進む。その姿を前に、人々は「やはり都市開発が目的なのではないか」「利権や金もうけのためなのではないか」と五輪の理念に疑念を抱き、商業主義への批判が前面に出て、それが五輪反対の世論にもつながっています。

 実際のところ、選手がお金をもらわずにスポーツをするアマチュアリズムは崩壊していて、競技大会を維持するためには、スポーツは商業主義と手を携えざるをえない状況にあります。 一時期は経費削減の方向に向かいましたが、国際オリンピツク委員会が2000年代に「レガシー」(遺産)という概念を生み出しました。この新しい価値のもとで、開催都市は新しい競技会場をつくるなど再び拡大路線を歩んでいます。

 五輪はさらに、国家戦略やナショナリズムとも結びつき、複雑に絡み合っています。政府や開催都市、スポンサーが互いに五輪を利用する共存関係ができあがり、簡単にはやめられない構造をつくっています。

 いま必要なのは、こうした「ネガティブな価値」も含めた五輪の現実に向き合うことです。商業主義を否定できないなかで、大切なのは、行き過ぎたときに抑制するために、理念を持つことです。

 中止論が高まっていますが、中止になれば競技によっては組織や文化も消えてしまいかねない。無観客でも開催の道を模索し、五輪の意味を考える大会にすべきです。

 (聞き手・笠井正基)

 

日本中止でも中国はやる

 五輪の開催への支持率は、世論の気分で動くものです。私が東京都知事の時も、最初のうちは五輪招致への支持率は低かったですが、ロンドン五輪での日本勢の活躍が刺激となり、70%を超えました。今は賛否が割れていますが、五輪が始まると選手のドラマが感動をもたらすでしょう。

 コロナ禍のなかで五輪を開催するのは、なんのためか、ですか? 日本がこの状況下で東京五輪を開催できれば、コロナと戦っている世界中の人々に勇気を与えるでしょう。それに、もし日本が開催できないとなったとしても、中国は来年の北京冬季五輪を必ずやります。そうなったときのことを考えて下さい。日本は国際的な信用を失い、国際イベントを開催できなくなるかもしれません。

 だからこそ、「コロナ禍だからやれない」というのではなくて、コロナ禍でもやれる組織力を示し、そして、開催した証拠を残すことが必要です。ピンチはチャンスです。

 2013年9月、都知事だった私は五輪招致を必死に勝ち取りました。リーマン・ショックで景気が低迷する中で、東日本大震災が起き、閉塞感に包まれていた日本には明るい目標が必要でした。

 その時に掲げたのが、「今、ニッポンにはこの夢の力が必要だ」というスローガンです。「夢の力」という言葉には、少子高齢化の日本で都民や国民がスポーツを楽しむことで健康寿命を延ばし、将来の医療費抑制につなげるという狙いがありました。

 ただ、私が13年12月に都知事を辞職したあとで、大会組織委員会の会長に森喜朗元首相が就くと、新国立競技場やエンブレム問題などガバナンスの問題が次々に起き、こうした理念はほとんど語られなくなりました。コロナ禍の今こそ、人間の限界に挑戦する選手の活躍から勇気をもらうことが「夢の力」につながるでしょう。菅義偉首相らは、なぜ開催するのかを繰り返し訴えていく必要があります。

 五輪が過度な商業主義に走っているとして、「だから、やめられない」などと批判するのは、そもそも間違っています。五輪はビジネスそのもので、スポーツ産業です。お金が動かなければ、選手も生活できない。五輪は、日ごろ脚光を浴びることがないマイナー競技の選手がメダルを取って知名度を上げるための最大の機会です。

 私がコロナ対策の責任者なら、まず東京と大阪の大都市圏にワクチン接種を集中させて、感染が地方に広がらないようにしていたと思います。公平性に欠いた政策だと批判を受けるかもしれませんが、メリハリをつけた戦略的な対策が大事です。感染者数を減らせば医療体制の逼迫も抑えられ、五輪開催に向けて状況は改善すると思います。

 (聞き手・笠井正基)

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 開催されなければ組織も文化も消えてしまう競技もあると言われるが、それは何時か消える競技であってそこにこだわるのはおかしいでしょう。 
 日本中止でも中国はやる、と言われるけど今の日本の状態と来年の中国は同じじゃないでしょう、日本は医療が崩壊状態だし中国は昨年新型コロナウィルス感染を封じ込めすでに経済も戻っています。
 猪瀬氏が招致をしたときはコンパクトな大会、経費も安く、原発事故や津波からの復興五輪をうたいましたが結果は五輪のため復興工事は遅れ工事費や作業者は五輪にとられまだまだ復興は途上です。このコロナ過での開催に何か意義があるのでしょうか、五輪を開催したがためにコロナの感染拡大で死者がでたらどうするんでしょう、東京、大阪に集中してワクチンを、なんてことはもっと早い段階で言うべき事で今更なんだと言われるだけです。

今こそ中止を宣言すれば世界から良く決断した、と称賛される事でしょう。

 


東京五輪児童・生徒81万人観戦計画に変更ナシ

2021-05-23 | いろいろ


より

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東京五輪児童・生徒81万人観戦計画に変更ナシ

     「誰が責任をとるのか」 保護者や教員の不安


 IOCのコーツ調整委員長が21日の会見で、“緊急事態宣言下”でも大会を開催できると明言し、五輪開催がいよいよ濃厚になってきた。現時点で観客は入れる見込みで、学校の引率により、児童・生徒らも観戦予定だ。都教育委員会によると、“コロナ前”に策定された東京都内の公立小・中・高校などの生徒ら約81万人が観戦する計画については、「現時点で撤回する予定はない」といい、先日も教員らによる「集団下見」が実施されたばかり。保護者や教員からは不安の声が上がっている。

  *    *  *

「新年度の保護者会で年間スケジュールが配布されたのですが、観戦行事がしれっと組み込まれていて、この状況なのに行くのかと驚きました。5月末に予定されていた運動会は最近延期が決まったばかり。運動会は延期で五輪は変更がないのはちくはぐだと思う」

 戸惑いを隠せないのは中野区の50代女性だ。年間スケジュールによると、小学5年の息子が8月上旬のパラリンピック競技を観戦する予定になっているという。

「こんな状況なら、やめたほうがいい。テレビでの観戦で十分」

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 各学校で予定されている観戦行事は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が児童・生徒らが大会を観戦するために低価格でチケットを用意する「学校連携観戦プログラム」を活用したもの。都は観戦を希望する学校を募り、組織委が発行する「五輪連携観戦チケット」を必要な枚数分、購入する。都の教育委員会によると、同プログラムを活用した観戦の計画については、コロナ前の18年に都によって策定された。19年8月時点で、都内の公立学校(幼稚園・小学校・中学・高校・特別支援学校)の約81万人の生徒が観戦する予定だった。

 今年度予算として「学校連携観戦」の関連事業費に41億円を計上しており、この予算からチケット代が捻出される予定だ。

 しかし現在は、第4波が到来し、変異株が猛威を振るう状況。団体での観戦となると子どもたちへの感染リスクが心配だ。この「学校行事」は、全校生徒もしくは学年単位での活動が対象で、必然的に大人数での移動となる。保護者らが不安になるのも無理はない。

 小学2年の子どもの保護者の江戸川区の30代男性は、「中止が妥当だと思っていた。こんな状況で生徒を連れていくことが驚き」と話す。学校行事のスケジュールによると、娘が8月のパラリンピック競技を観戦予定だが、できれば参加させたくないという。

「100人単位の子どもを感染リスクから守りつつ連れていくには、無理があると思います。実は娘は喘息持ちで、これまでも電車移動は避け、遠出も控えていました」

 こうした保護者らの不安をよそに、都は計画の遂行に向けて動いている。都は昨年12月、参加を希望していた学校(児童生徒数およそ81万人)に対して、新たな日程を示した通知(「東京2020大会における子どもの競技観戦にかかる配券・割当案について」)を出した。コロナ前と変わりなく、生徒らの移動は、電車などの公共交通機関を使うという。

 さらに、4月から今月にかけて教員らを集め、緊急事態宣言下で「会場の下見」を行っていた。校外学習に出かける場合は「実地踏査」という下見が必要だからだ。都は参加人数を明かさなかったが、教員らに配られた案内資料によれば、5月10~11日に行われた国立競技場の下見だけでも約770人の教員が参加予定となっていた。

 都は感染対策を講じていたと主張する。

「今回は各校1人までとし、任意での参加。それでも数が多いので、午前・午後に分け、さらに小グループに分けて、密にならないよう感染対策をしたうえで行っています。参加しない人には動画で確認・下見できるように用意しています」(都教委・指導企画課の担当者)

 実際に国立競技場での下見に参加した練馬区の小学校に勤める30代の男性教諭に、当日の話を聞いた。この男性教諭が行動を共にした“小グループ”は40人ほど。組織委の担当者を先頭に、並んでトイレや出入り口を確認していったという。

 この日は大人が気を付けていたので密にはならなかったというが、会場の下見をする中で、観戦当日に子どもたちが適切な距離が保てるのかどうか、不安を感じたという。

「慣れない会場に行けば、席が隣り合った子同士でしゃべってしまうと思います。トイレの引率時も心配です。各自で行くと迷子になってしまうので、百人以上の生徒を数十人ごとに分けて引率することになります。トイレは狭い空間ですし、観客もいれば密になります」

 そして、なにより心配なのは、会場までの電車移動だという。

「電車で都心に出るような校外学習は、したことがほとんどありません。たいていは貸し切りバスを使うので、教員も含め、電車での集団移動に慣れていないのです。観客が入るとなれば、駅の混雑が予想されます。『電車に乗り遅れないか』『迷子にならないか』『一般の乗客に迷惑をかけないか』と心配は尽きないのに、さらに感染対策にも気を付けないといけないなんて……」

 組織委に対しては、厳しい意見を寄せる。

「児童・生徒の観戦は中止にしてほしい。この状況で行くことに、まったく理解ができません。生徒にチケットを配布して各家庭で連れていけばいいのに、なぜ学校で行かなければいけないのか。大人数で動けば、当然感染リスクを伴います」

 都によれば、今後も複数回の実地踏査が行われる予定だという。

 現時点では計画は「敢行」されるようだが、今後の感染状況によっては、生徒らの安全確保が必要な事態も想定される。観戦計画を遂行するか否かの最終判断は、いつ、誰がするのだろうか。

「学校連携観戦プログラム」は組織委の企画事業で、都は自治体のひとつとして参加する形をとっているという。都としては、「通常通りの実施を想定して動いています」(都教委)といい、現状では、組織委が大会の開催中止か無観客開催を決めない限りは、観戦計画を実施する見込みという。

「組織委が観客の上限数を6月中に出すそうで、ここで無観客の判断ならば実施できません。観客を入れるのであれば、都としては観戦計画を実施する予定です。観客を入れるということは、ある程度コロナが収まっているということ。もちろん、各学校が区市町村の教育委員会と相談した上で観戦を見送る場合もあります。都はその判断を尊重します」

 なお、児童・生徒らの五輪観戦は、学習指導要領の「特別活動」の「学校行事」のくくりとして扱われる。遠足や修学旅行といった学校行事と同じように、参加がなければ「欠席扱い」になってしまうのか。

「コロナに対する不安から、観戦を控えたい生徒さんもいると思います。彼らが不利益を被らないよう、各校の校長の裁量で何らかの配慮をしてもらうよう、通達しました。例えば、課題学習に取り組むことで出席扱いにするなどです」(都教委の担当者)

 観戦計画に対する思いについて、担当者はこう話す。

「目の前でトップアスリートの活躍が繰り広げられたら、子どもは心の中に人生の糧となるような、かけがえのないレガシーを残せるのではないか。ただ、感染状況によって安心安全の確保ができない場合は、当日キャンセルも可能にするなど準備を進めています。子どもたちの安心安全は十分に配慮したいです」

 せっかくの日本開催。見せてあげたいという気持ちもわからないでもないが、冒頭の保護者は、今は不安の気持ちが勝るという。

「安全な環境のもとでならいいと思いますが、感染が広がった今はそんな状況ではない。真夏ですし、マスクを付けながらでは熱中症も心配。子どもはあまり症状が出ないですし、無症状のまま家庭に持ち帰って感染を広げないかといった不安もあります」

 子どもの気持ちも、すっかり冷めているという。

「もともとスポーツが好きで、コロナ前はパラ競技を体験して楽しむなど盛り上がっていましたが、今は『見に行きたくない』と口にしています。小5なので、ニュースを見て感染状況もわかっていますし、意外と冷静です。本人が行きたくないと言えば、たとえ欠席扱いになってもその気持ちを汲んであげたい」

 子どもを預かる立場の学校の教員らの本音はどうか。先の男性教諭が職員室の温度を明かす。

「乗り気な人など誰もいません。正直言って負担です。授業の学習形態や(検温や消毒など)生活様式も変わったので、指導することも増えていますし、神経も使います。どんなに対策をしても、かかるときはかかる。五輪観戦で感染したとなった時に学校のせいにならないか。一体だれが責任を取るのでしょうか」

 万が一の場合、心のレガシーどころではないはずだ。状況に応じた冷静な判断が求められている。


(取材・文=AERA dot.編集部・飯塚大和)
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