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「台湾有事」で想定された核戦争と沖縄の危機 米極秘報告書が鳴らす警鐘

2021-06-30 | いろいろ


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■ 「台湾有事」で想定された核戦争と沖縄の危機 米極秘報告書が鳴らす警鐘  

 

布施祐仁 (ジャーナリスト)


 近頃、「台湾有事」という言葉をよく目にする。

 4月16日の日米首脳会談では、52年ぶりに「台湾海峡の平和」が共同声明に明記され、日米の連携を確認した。これを受けて、6月1日には自民党の外交部会が、台湾有事が発生した場合の対処について、アメリカとの連携も含めた「有事対応の早急な検討」を政府に求める提言書を取りまとめた。

 万が一にも、台湾をめぐってアメリカと中国が戦争をするようなことになれば、日本にとっても「対岸の火事」では済まない。在日米軍基地のみならず、日本中の民間飛行場や港湾が米軍の作戦のために使われる可能性がある。それは、中国の攻撃目標としてねらわれることも意味する。まして、米中共に核保有国である。最悪の場合、核戦争に巻き込まれる危険性すらある。 

 核戦争まで持ち出すと、「極論」に聞こえるかもしれない。しかし、1958年に発生した「台湾有事」では、実際にそうなる可能性があったのだ。


秘密報告書の全容が明らかに  

 米紙ニューヨーク・タイムズは5月22日、1958年の台湾海峡危機の際、米軍が中国本土に対する核攻撃の必要性を強く主張していた事実を大きく報じた。

 記事のソースとなっているのは、1966年に作成された台湾海峡危機に関する秘密報告書である。元国防総省職員で、ベトナム戦争に関する秘密報告書「ペンタゴン・ペーパーズ」を暴露したことでも知られるダニエル・エルズバーグ氏が所持していた。

 この報告書は、すでに1970年代に開示されていたが、核兵器に関する記述の大部分は機密解除されず、「白塗り」されていた。エルズバーグ氏が「白塗り」のない原文を公開したことで、現在も機密扱いとなっている部分も含めて、初めてその全容が明らかになった。

 エルズバーグ氏は、同報告書を2017年に自身のウェブサイトにひっそりとアップしていた。しかし、反応はほとんどなかったという。今回、ニューヨーク・タイムズが大きく報じたことで、世界中のメディアが後を追い、注目されることになった。

 筆者にとっても、ニューヨーク・タイムズの報道はタイムリーだった。なぜなら、ちょうど「白塗り」された同報告書を読んでいたところだったからである。ニューヨーク・タイムズは丁寧に、国防総省が開示した文書では「白塗り」されているページのみを抽出したPDFも作成し、資料として記事に添付してくれていた。ハラハラしながら、一気に読んだ。

 本稿では、同報告書やすでに公になっているその他の一次史料をソースに、1958年の台湾海峡危機の際の「核戦争の危機」について、報道ではまだ紹介されていない内容も含めて記してみたい。(以下、引用部分は筆者訳)

 

敵の数的優位に核兵器で対抗  

 1958年の台湾海峡危機の主な舞台となったのは、台湾の金門島である。

 金門島は、中国南東部の福建省アモイの沖合に浮かぶ東西約20キロ、南北は最大で約16キロの島である。台湾本島からは台湾海峡を隔てて約270キロ離れているが、中国本土との距離は最短で約2キロしかない。

 1958年8月23日夕刻、中国軍はこの島に猛烈な砲撃を浴びせた。撃ち込まれた砲弾は、この日の数時間だけで6万発近くに達した。

 緊張はすでに高まっていた。中国は7月頃から「台湾開放」の政治宣伝を強め、非常警戒態勢を敷いて台湾海峡沿岸の軍備を急激に増強していた。7月末には、台湾海峡上空で台湾軍の戦闘機2機が中国軍の戦闘機に撃墜され、以後、連日にわたり両軍の小競り合いが続いていた。

 8月15日には、ペンタゴン(米国防総省)で、台湾海峡で戦争が発生した場合の対応について検討する会議が開かれた。ここで米軍トップのネイサン・トワイニング統合参謀本部議長が、中国沿岸部のいくつかの航空基地を10~15キロトンの戦術小型核兵器で攻撃し、それでも中国が台湾への攻撃を止めない場合、「北は上海に至るまで深く核攻撃を行う以外に選択肢はない」と発言。同議長は、そうなれば台湾本島や沖縄が核による報復攻撃を受ける可能性があるとしたうえで、「台湾の沿岸諸島の防衛をアメリカの国家政策とするならば、その結果は受け入れなければならない」と強調した。

 米軍にとって、台湾有事における核兵器使用は既定路線だった。米太平洋軍司令部(ハワイ)が準備していた台湾有事を想定した作戦計画も、核兵器の使用を前提に策定されていた。

「OPS PLAN (Operations Plan) 25-58」と名付けられたその作戦計画では、緊張の高まり(フェーズ1)を経て、中国軍による攻撃が開始された場合(フェーズ2)、中国沿岸部の航空基地を戦術核兵器で攻撃する計画であった。

 同計画は1958年5月に改訂され、「フェーズ2」で中国の攻撃が止まらなかった場合、中国の戦争遂行能力を無力化するために戦略核兵器で大都市などを攻撃する計画が「フェーズ3」として追加された。

 とりわけ米空軍は、核兵器を使用しなければ中国の台湾侵攻を阻止することはできないと考えていた。ローレンス・クテル太平洋空軍司令官は8月26日、「(台湾海峡有事での)航空作戦は、最初から核兵器を使用しなければ成功する可能性はない」と空軍本部に伝え、核兵器使用に関する大統領の承認を得るよう求めた。

 1962年に米空軍が作成した「1958年台湾危機の航空作戦」と題する報告書は、空軍が核兵器の使用が必要だと考えたのは、「敵の数的優位に対抗するために最も効果的な方法は核兵器を使用すること」であったからだと記している。

 当時のアメリカの推計によれば、中国軍が保有する航空機が約4350機だったのに対し、台湾軍は826機程度で、米軍が運用できる航空機と合わせても中国が優位に立っていた。核兵器を使用しない通常の航空作戦では勝ち目はないと、米空軍は考えていた。

 

核使用を認めなかった大統領  

 しかし、ドワイト・アイゼンハワー大統領は、最初から核兵器を使用することを認めなかった。

 8月29日午前、ホワイトハウスで会議が開かれ、前出の作戦計画(OPS PLAN 25-58)の「フェーズ2」では通常兵器で中国沿岸部の航空基地を攻撃すること、「フェーズ3」に至った場合でも大統領の承認がない限り核兵器を使用できないことが決定された。

 それでも、米軍の幹部たちは核兵器の使用をあきらめなかった。

 9月2日に行われた米国務省と統合参謀本部の協議で、トワイニング統合参謀本部議長は「中国の飛行場と砲台を小型核兵器で攻撃する必要がある。国防総省のすべての研究は、これが唯一の方法であることを示している」と発言し、7~10キロトンの核兵器を上空で爆発させれば放射性降下物による汚染も生じずに地上の航空機を破壊できると主張している。

 さらに、朝鮮戦争でアメリカが核兵器を使用していれば、戦闘はもっと早く終わり双方の死傷者も少なくて済んだとし、「通常兵器の使用は、朝鮮戦争のような長い戦争にアメリカが引き込まれることを意味する」と強調した。

 統合参謀本部は、中国軍が大規模な着上陸攻撃を仕掛けてきた場合のような緊急時に軍に付与される特別な権限の中に、核兵器使用を入れ込もうとした。

 9月6日にホワイトハウスで行われた会議で、トワイニング統合参謀本部議長は緊急時に軍に付与される特別な権限について提案した。しかし、アイゼンハワー大統領はここでも、核兵器使用は認めなかった。緊急時に金門島に侵攻する中国軍を通常兵器で攻撃する権限は認めたが、中国本土への空爆や核兵器の使用は大統領が承認した場合に限るよう修正を指示した。

 その結果、米軍は、少なくとも戦争の最初の段階では通常弾しか使えなくなった。

 

日本の反核世論を懸念  

 アイゼンハワー大統領がなぜ、軍部が強く求めた核兵器の使用を認めなかったのかは定かではない。

 ただ、米政府の中には、核兵器を使用した場合の国際世論の反発を懸念する声があったことは、いくつかの史料から読み取ることができる。とりわけ、日本の反応を気にしていた。

 駐日日本大使だったダグラス・マッカーサー2世は、アメリカが核兵器を使用した場合、日本は在日米軍の完全撤退を要求してくるかもしれず、そこまで至らなくても、台湾海峡での作戦のための在日米軍基地の使用が補給も含めてできなくなる可能性があるという懸念を国務省に伝えていた。

 日本では、1954年の「ビキニ事件」(アメリカが太平洋・ビキニ環礁付近で行った水爆実験で、日本のマグロ漁船の乗組員などが死の灰を浴びて被ばくした事件)を機に、反核世論が高揚していた。1957年に首相となった岸信介も、米軍の日本への核兵器の持ち込みに対しては、国民感情をふまえて要請があっても拒否すると明言していた。

 米軍も、日本の反核世論の強さは理解していた。核兵器の使用を含む前出の作戦計画「OPS PLAN 25-58」も、在日米軍基地は使用できないという前提で策定されていた。

 日本をはじめ世界中から強い反発を招くかもしれないが、それでも核兵器の使用を躊躇すべきではないというのが、統合参謀本部の多数意見だった。しかし、アイゼンハワー大統領が中国本土に対する核攻撃の必要性を認めることはなかった。

 結局、中国が行ったのは砲撃だけだった。砲撃によって金門島への補給線を遮断し、封鎖を試みたのである。これに対し、米軍は9月上旬から、台湾本島から金門島への補給を行う台湾軍の輸送船の護衛を開始した。護衛中の米軍艦艇に対する中国軍による攻撃が心配されたが、中国軍艦艇が米軍艦艇に攻撃を仕掛けることはなかった。金門島に対する砲撃は10月初旬まで続いたが、侵攻することは最後までなかった。中国側は、アメリカとの戦争は望んでいなかったのである。

 アイゼンハワー大統領が、この中国の意図を読み違えなかったことが、核戦争に至らなかった最大の要因であったと思われる。逆に、読み違えていたら、核戦争になっていたかもしれない。

 

最初の核攻撃計画は沖縄から  

 今回のニューヨーク・タイムズの報道を受けて、日本では、アメリカの中国本土への核攻撃の結果、沖縄が核で報復されるリスクを米軍が容認していたという事実が共通して報じられた。この点はもちろん重要ではあるが、もう一つ、どこのメディアも取り上げていない重大な事実がある。

 それは、沖縄が核で報復攻撃を受ける前に、沖縄から核攻撃が行われる計画があったことである。

 前出の米空軍報告書(「1958年台湾危機の航空作戦」)によると、米太平洋空軍の当初の作戦計画では、中国沿岸部の航空基地への最初の核攻撃は沖縄の嘉手納基地とフィリピンのクラーク基地から発進する計画であった。

 前述の通り、米軍は核攻撃作戦に在日米軍基地は使用できない前提で計画を策定していたが、当時の沖縄は日本本土と切り離されて米軍の占領下に置かれており、中国本土に対する核攻撃の発進基地として利用しようとしていた。

 だからこそ、共産主義陣営との全面戦争に発展した場合、沖縄に対する核による報復攻撃は避けられないと見ていたのだろう。

 

「第三の被爆」は甘受できない  

 1958年の台湾有事では、米軍は通常兵器で数的優位に立つ中国に勝利するためには核兵器を使用する以外の選択肢はないと考えていた。

 戦力の面で、また基地や兵站などの作戦インフラの面で、中国側に数的優位があるという状況は現在も変わらない(これは、地理的な理由からどうしようもない)。今後、台湾有事が発生し、米軍が通常兵器による戦争で劣勢になった場合、核兵器使用の誘惑にかられることは十分あり得ることである。

 日本は「非核三原則」(核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず)を国是としているが、核兵器を搭載した米軍の艦船や航空機が日本に一時的に立ち寄ることは、1960年に結んだいわゆる「核密約」で認めており、核攻撃の発進基地として在日米軍基地が利用される可能性は否定できない。そうなれば、当然、核による報復を受けることになるだろう。

 米軍は1958年の時と同じように、「台湾を防衛するために、その結果は受け入れなければならない」と主張するかもしれない。しかし、日本にとっては、広島と長崎に続く「第三の被爆」は甘受できるものではない。

 中国は今後も、台湾の独立派に対する軍事的牽制を続けると思われるが、1958年の時と同じく、アメリカとの戦争は回避しようとするだろう。しかし、双方の軍事的牽制の応酬で緊張が高まれば、偶発的な衝突が起きたり、相手側の意図の読み違えによって全面的な戦争へとエスカレートすることもあり得る。

 日本も戦火に巻き込まれる可能性が高く、「日本からの核攻撃」や「日本への核攻撃」という最悪の結果を招きかねない台湾有事は、絶対に起こしてはならない。「米中対立」が激化する今こそ、1958年の台湾海峡危機が鳴らす警鐘に耳を傾ける時である。
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平尾剛氏「“当事者”であるアスリートは怒りを表現すべき」

2021-06-30 | いろいろ


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平尾剛氏「“当事者”であるアスリートは怒りを表現すべき」  
私が東京五輪に断固反対する理由


平尾剛(ラグビー元日本代表/神戸親和女子大学教授)  

「東京五輪は中止すべし」という声は、かつての日の丸戦士からも上がっている。ラグビー日本代表BKとして1999年W杯ウェールズ大会に出場し、現在は神戸親和女子大学発達教育学部の平尾剛教授だ。平尾教授はかねて五輪開催そのものに反対の立場を表明してきた。

 ◇  ◇  ◇

社会的弱者が犠牲を強いられている  

 ――東京大会が決定する前から五輪開催そのものに異を唱えてきました。  

「私が五輪開催に反対する理由はまず、社会的に弱い立場の人が多大な犠牲を強いられていることです。競技場など五輪関連施設を建設するにあたり、住居の立ち退きを強いられたり、街からは路上生活者が一掃されるケースもありました。多額の血税も投入され、国民全体に多くの負担が生じています」


 ――招致段階よりも開催費用は膨大に膨れ上がりました。  

「当初、猪瀬元都知事は『コンパクト五輪』を掲げ、国民の負担を最小限度に抑える大会だったはずです。それがいざ、開催が決まると、エンブレムの盗作問題、招致段階でのJOC(日本オリンピック委員会)の竹田恒和前会長(73)による贈賄容疑など、裏金にまつわる話も出てきました、安倍晋三前首相にしても『復興五輪』を宣言しながら、実際は東京五輪関連施設の建設、整備で作業員や予算が取られ、被災地の復旧に大幅な遅れが生じたのは事実です、まさに『復興妨害五輪』と言えるでしょう」 

 


スポーツでコロナは根絶できない  


 ――今回のIOC幹部による対応にも批判が集まっています。  

「IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長は『東京大会を実現するために、我々はいくつかの犠牲を払わなければならない』と発言しました。さらにIOCの最古参幹部のパウンド委員は『アルマゲドン(最終戦争)に見舞われない限り、東京五輪は計画通り進むだろう』との談話が伝えられています。世界的なパンデミックが収まっていないこの期に及んで。日本の大会組織委も含めて、とにかく開催ありきで、人命を軽視しているとしか思えません」


 ――IOCは開催を強行しようとしていますね。  

「今回に限ったことではありませんが、IOCはオリンピック憲章で高邁な理想を掲げながら、現実は商業主義の団体と化しています。莫大な放映権料、世界的な企業からのスポンサー料を得ています。今や五輪は肥大化した商業イベントに過ぎません。IOCは利権を死守するため、巨額な利益を見込む2022年北京冬季五輪につなげるためにも、今回の東京五輪を強行しようとしているのでしょう」


 ――アスリートの立場、視点からも東京五輪は中止すべきですか?  

「コロナ禍により、多くの国民が自粛を余儀なくされ、飲食店のように営業を制限されている業種すらあります。これだけ医療体制が逼迫し、満足に治療も受けられないまま、命を落とす人が少なくありません。ワクチンも行き届いていない状況です。平時であればともかく、緊急事態宣言下で多額の税金を投入してまで開催して国民の共感を得られるとは考えにくい。スポーツにはさまざまな価値があるとはいえ、スポーツの力でコロナを根絶できるわけではありません。東京五輪を目指して努力を積み重ねてきたアスリートには申し訳ないですが、今の状況下では、やはり開催すべきでないでしょう」

 


指導者やアスリートには当事者としての責任が  

 ――スポーツ界から開催に関して賛否の声がほとんど聞こえてきませんね。  

「現役の指導者、アスリートは立場上、発言しにくいことは理解できます。選手は自分のパフォーマンスを向上することに精いっぱいで、それどころではないのかもしれません。しかし、当事者である以上は当然、責任は生じているはずです。この状況下で五輪を開催するのは果たして適切なことなのかどうか、意見を発信してもいいのではないでしょうか」


 ――アスリートは単なる競技者という存在ではないということですか?  

「IOCや組織委員会の運営の仕方にも意見すべきだし、許容できないことがあれば、もっと怒りを見せてもいいと思います。スポーツ界は長らく団体に不都合なことには目をつぶってきましたが、このままIOCの横暴を黙認するようならアスリートの価値の下落は免れません」


 ――開幕に向けた事前合宿が中止になるなど、公平性に疑問が残ります。  

「スポーツの大前提であるフェアネスを担保できない。国や競技によっては代表選考会すら開催できず、世界ランキングで出場選手を決めるケースまである。東京五輪はスポーツ大会の体をなしているとは言い難い。コロナ禍で強行された東京大会は『史上最低の大会』のひとつとして後世に語り継がれるでしょう」

 

▽平尾剛(ひらお・つよし)
  1975年5月3日生まれ。46歳。大阪府出身。同志社大学、神戸製鋼とラグビーの強豪チームでプレーし、99年W杯ウェールズ大会に出場した。代表キャップ11。引退後は神戸親和女子大学大学院で教育学の修士課程を修了。現在は同大学発達教育学部ジュニアスポーツ教育学科教授。 
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陰謀渦巻く横浜市長選挙に「第三の男」

2021-06-29 | いろいろ


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陰謀渦巻く横浜市長選挙に「第三の男」
  元東京地検特捜部検事・郷原信郎氏が出馬へ  


 現職閣僚である小此木八郎国家公安委員長(56)が立候補を表明し、注目されている8月に行われる横浜市長選挙。

 立憲民主党の候補として擁立が検討されている横浜市立大教授の山中竹春氏(48)、他にも「横浜DeNAベイスターズ」元社長、池田純氏(45)も名乗りをあげている。そこに「第三の候補」が現れた。

【写真】】陰謀渦巻く横浜市長選挙に名乗りを上げた「第三の男」


 元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏(66)である。郷原氏は元法相の河井克行、案里夫妻の公職選挙法違反事件で4月、再選挙となった参院広島選挙区でも候補者として名前が挙がったが、出馬はしなかった。広島県は郷原氏の故郷ゆえだが、なぜ横浜市長選挙なのか。郷原氏の支援者がこう話す。

 「郷原氏は数年前から横浜市のコンプライアンス顧問を引き受けている。その前はコンプライアンス外部委員だったこともあり、横浜市との関係が深い。そこで、地元の有志から出馬を求められていた」

 横浜市長選の最大の争点は、カジノを含むIR(統合型リゾート)の誘致だ。現職閣僚の小此木氏はIR誘致に反対の意向をすでに示している。

 IR誘致を推進する現職の林文子市長は、4期目についてまだ態度を明確にしていない。

 「林市長が出馬した場合、勝てない、との公算が強まり、小此木氏にお鉢がまわってきました。しかし、小此木氏はもともとカジノ賛成派でした。しかし、世論調査の結果、カジノ推進を旗印にしたら選挙を戦えない、という判断になり、『市民の意志に反した状態でのカジノ誘致はしない』という理屈で出馬を決めた。菅首相にしてもお膝元の横浜市長を落としたら面目が丸潰れですから、ともかく勝利を優先しようとなりました。首相と小此木氏と出馬表明前に何度も面会し、すり合わせ、『やむを得ない』となったようです」(政府関係者)

 しかし、IR誘致は待ったなしで進んでいる。横浜市が5月末、IR施設の参入を希望する事業者の公募を行った結果、海外のカジノ事業者を中心とする2つのグループが資格審査を通過した。

 シンガポールに拠点を置く「ゲンティン・シンガポール」とパチンコの大手メーカー「セガサミーホールディングス」と「鹿島建設」の連合と、中国のマカオを中心に事業を展開している「メルコリゾーツ&エンターテインメント」と「大成建設」の連合だ。今夏には事業者が選定され、秋にはIR誘致の具体的な候補地も決めるスケジュールとなっている。

 「カジノ誘致については当選後、世論の推移を見極めながら考えていこうと。市民が誘致に反対している山下埠頭ではなく、瑞穂埠頭でカジノをやると言えば、誘致できるのではないか、という理屈も考えているようです。横浜の有力者も『どうしてもカジノをやりたいんであれば、 瑞穂埠頭にある米軍施設、ノースドックの敷地内にすればいい』 と話しているそうです。菅首相としては、よくわからない人が市長になるよりも、気脈の通じた小此木氏の方が、その後のIRの扱いも含め、調整しやすいと考えたのだと思います」(同前)


 対する郷原氏は争点のIR誘致問題についてどう公約を打ち出すのか。

 「大金を投じて、IRを誘致。日本人がとばくで負けたカネで税収をアップさせる、地域活性化なんて、そんな時代ではないし、手法も反対だ。横浜市民がカジノで負けて失うカネも膨大になると思われます。断念となったが、米軍跡地へのテーマパーク誘致構想でもわかるように箱ものありきの政策では未来がない。コンパクトな横浜市を目指す考えだ。しかし、IR誘致は林市長の方針に横浜市議会も賛成して進んでいる。市議会にもキチンと責任があることを明確にするため、IRをやるやらないに、民意を反映させるために住民投票条例を制定し、市民の意見を聞いて判断することを公約にする。民意の確認には直接民主主義の住民投票条例が最適だと考えている」(郷原氏の支援者)

 郷原氏が横浜市長選に意欲を示すのはもう一つ理由があるという。菅首相は横浜市議を経て国政に進出し、衆院神奈川2区が地盤だ。

 「コンプライアンス顧問を通じて、横浜市の関係者からいろいろな話を伺うチャンスが数多くあった。その中には『今の横浜市長はお飾りで、菅首相支配だ』『林市長は菅支配を跳ね返そうという思い、気力などまったくない。ただの言いなり』という声を聞いた。人事にまで菅首相の意向を忖度するような話があるそうだ。菅首相の側近である小此木氏が市長になれば、IR誘致の反対もどうなるかわからない。菅首相がそんなに影響力を及ぼしたければ、国が直接やればいいわけで、横浜市はいらない。それではダメだ。菅首相にNOを突き付けるためにもと、出馬を決意している」(同前)


 郷原氏が出馬となれば、IR誘致の反対派ばかりの選挙戦となりかねない。そうなると進退を表明していない現職の林市長があえてIR誘致賛成を公約に出馬に踏み切るというシナリオも考えられる。郷原氏は無所属で出馬するという。すでに選挙に備えた「親衛隊」を結成し、7月6日に横浜市のコンプライアンス顧問を辞任を申し入れ。近いうちに出馬表明する方向でスケジュール調整している。選挙事務所探し、ポスター制作なども進んでいるそうだ。郷原氏を直撃した。

 「コンプライアンス顧問を務めているので、横浜市長選の行方はとても気になります。私に横浜市長選に出馬という話があるのは事実です。IR誘致の是非は、住民投票で民意を問い、その結果を市長や市議会が答えていくというのは、以前から私が考えていたこと。だが、立場上、今は話せません。いずれ、会見で明らかにしたい」

 横浜市を二分するIR誘致の行方はいかに。


(AERAdot.編集部 今西憲之) 
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 金の関係でスカ首相は横浜にカジノ(バクチ場)を作りたい、シンガポール拠点の「ゲンティン・シンガポール」とパチンコの大手メーカー「セガサミーホールディングス」と「鹿島建設」の連合、かたや中国のマカオを中心に事業を展開している「メルコリゾーツ&エンターテインメント」と「大成建設」、ゲンティンには五輪招致の裏金で世話になった「セガサミーホールディングス」がついているし「メルコリゾーツ&エンターテインメント」と組む「大成建設」はスカ首相の息子が勤めている。
 そのためにはどうしても横浜市長選で勝ってカジノ(トバク場)を作りたい、小此木大臣が手をあげたんじゃなく、スカ首相が小此木大臣に横浜市長選に出るように頼んだのではないか。
 郷原氏は市長選には出ないのではないか、古賀氏や前川氏は言う事は言うが行動はしない、郷原氏も同じじゃないかと思う(広島の件もあるし)。


登山家・野口健氏が警鐘「今の五輪強行ムードは登山なら完全に遭難するパターン」

2021-06-29 | いろいろ


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登山家・野口健氏が警鐘「今の五輪強行ムードは登山なら完全に遭難するパターン」  
 私が東京五輪に断固反対する理由


野口健(登山家/環境活動家)  

 この状況でなぜ五輪を開催するのか、それが全く伝わってこない。どうしても五輪をやりたいなら、国民には想定されるリスクを正直に伝えるべき。リスクと開催意義を天秤にかけたうえで、「これくらいのリスクを背負ってでもやる意義がある」ということを明確にすればいい。僕が政治家なら、まず開催のメリットとデメリットを洗い出してそれをはっきり伝えます。

 1964年の東京五輪は戦後復興のシンボルという意味が強かった。新幹線ができたり、いろいろな施設ができたり、突貫工事で事故や過労死で亡くなった方もたくさんいた。それでも当時は、ある程度の犠牲なら五輪をやるんだと、ブレがなかった。今回の東京五輪も、コロナによってかなり忘れられているけど、元を辿れば震災復興がテーマだった。今やすっかりそのイメージは吹き飛び、政府は「人類がコロナに打ち勝った証として(五輪を)実現する」と繰り返すようになりました。

 何度も「コロナに打ち勝った証」と言うが、打ち勝てなければ五輪を中止するという意味なのか。政治家の発言には意図がなければいけない。あれだけ連呼して強調するからには、コロナが収束せず、打ち勝てなかった場合は中止や延期を決断するんだと思っていました。ところが、そこには何も意図がなかった、何も考えていなかった。それなのに(ある自民党議員が)「五輪が始まれば日本国民は盛り上がる」とか、それは確かにそうかもしれないけど、あなた達が言っちゃダメだよと。国民はそこまでバカじゃない。

 日本は他国に比べ、のまれやすい国。それを逆手にとって「リスクを負ってでもやる意義が五輪にはこれだけある」と演説して盛り上げれば、流れは変わったかもしれません。

 それをせず、何度も壊れたテープレコーダーのように「安全安心」と聞かされていると、僕の頭が悪くなってきたのかなと悩む。すごくバカにされている気がするし、不誠実。単に五輪に反対というより、五輪を押し進めようとする人への不信感なんですよね。

 今のムードとして、「なんかヤバイ事になりそう、でも引くに引けない。もうやるしかないのか、じゃあやるか!」という状態。これは登山なら遭難する典型的なパターンです。冒険するとき、僕ら〝山屋〟は最悪の事態を想定する。万全の備えをするのと同時に、根拠がなくても「流れが悪いぞ」「ピンとこない」という時は一回引くんです。登山家はそれができるかできないか。自分の感覚で引けない人は大体、亡くなられています。


引いたら負けという日本人の考え方  

 僕が20代前半の頃、登山家の大先輩が集会でこっそり指を差して「野口、アイツが次に遭難するぞ。その次はアイツ」と言うんです。それがほとんど当たる。要は遭難しやすいタイプとしにくいタイプがいるということ。難しい山を登る人は勇敢で恐怖に強いイメージを抱いていたけど、そういう人は命を落としやすい傾向にあります。

(登山家の)植村直己さんは「私は人一倍臆病者です」と公言してきた。しかし、スポンサーが降りたり支援が減って追い詰められている背景がある中、マッキンリーという山に悪天候にも関わらず突っ込んで亡くなられました。遭難前日、彼が日記に書いた最後の一文が「何が何でもマッキンレー、登るぞ」。

 だから、五輪に「何が何でも」突っ込んでいくのが本当にいいのか。なぜ突き進むのか考えたとき、日本人は引くのが苦手なのかと思いました。来年の冬季五輪は北京。日本がやめて中国が成功したら「日本は負け。中国は勝ち」、そう考えているのかと。しかし、引いたら負けという考え方自体がまずい。無謀に突っ込む方が負けですよ。

 政治家も追い詰められているのかなと思うときがあります。例えば、分科会の尾身(茂)会長の「パンデミック禍での開催は普通ではない」という提言に対して、「自主的な研究の成果の発表」と言った田村(憲久)厚生労働大臣。僕は戦没者の遺骨収集をやっていて、管轄が厚労省なので、大臣が変わるたびに挨拶に行っていた。田村さんは過去に会ってきた厚労大臣の中で一番時間を割いてくれたし、熱心に話を聞いてくれた方だったので、誠実な方だと思っていた。その田村さんがああいう言い方をしていたのを見て、相当余裕がないのかなとさえ感じましたね。


取ってつけた「復興」だったのか  

 僕自身、オリンピックそのものには反対ではありません。以前、石原慎太郎さんが都知事の時代に招致運動に参加して、「東京オリンピック招致大使」も務めた。参加した理由は、慎太郎さんの目的が「東京を自然豊かな街にしたい」というものだったから。街路樹を100万本に増やす、都内の公立学校の校庭を全部芝生にする、夢の島に明治神宮のような森を作るなど、コンクリートジャングルのイメージが強い東京を、環境に配慮した街にするというのがテーマだった。それは面白いなと思ったんです。

 しかし、今回のテーマは震災からの復興と言いながら、開催の中心は東北ではなく東京。スタートラインから何のための五輪なのか、正直ピンときていなかった。「復興」というワードを持ってくることで、選考が通りやすいと考えたのかなと思いました。海外に認めてもらうための、取ってつけた「復興」だったのかなと。その後、コロナ禍になって明確に疑問を感じるようになりました。

 僕は親父からの洗脳教育で「世の中にはA面とB面がある。見るべきは(努力しなければ見えてこない)B面」と言われてきましたが、今回、多くの人が五輪のB面を見た。IOCがいかに高飛車で、「菅首相が中止を求めても個人的な意見に過ぎない。大会は開催される」と言う姿勢です。

 今後、今回の東京五輪以上に問題が大きいのは、来年開催予定の冬季北京五輪。あれこそ無条件で開催しちゃまずいと思っています。2008年の夏季五輪は、チベット問題で暴動も起きたのに、IOCから何も制約も与えられずに開催された。あれはある意味、IOCが「お墨付き」を与えてしまった大会です。その後のウイグル自治区や香港の人権問題に繋がってくるわけで、もはや五輪は「アスリートファースト」ではない、「IOCファースト」。IOCのビジネスとして五輪が行われているのが現状です。今回、コロナを通して五輪やIOCの体質が見えたことで、日本国民はもちろん、世界の国々で五輪に対する気持ちがすごく冷めたと思う。その反面、このB面はこれから手を挙げる国々にとっては良い発見だったと思います。


▽のぐち・けん  
  1973年8月21日生まれ。米ボストン出身。日本人の父とエジプト人の母を持つ。英で高校を停学処分となり日本へ帰国。登山を始める。亜細亜大時代、25歳でエベレスト登頂に成功。2000年に富士山の清掃活動を始め、環境保護活動に従事。戦没者の遺骨収集にも携わる。
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イスラム版『セックス・アンド・ザ・シティ』の新鮮さと衝撃度

2021-06-28 | いろいろ


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イスラム版『セックス・アンド・ザ・シティ』の新鮮さと衝撃度  

A New Look at Muslim Women


ロクサーナ・ハダディ

 

<異色のバンドを描く英国発ドラマは、ムスリム女性の生きる喜びと信仰を両立させる画期的な作品>

 こんなドラマを想像してほしい。人種も民族も社会的地位も性的指向も違う5人の女性が、固い友情で結ばれる。互いの恋の相手も恥ずかしい過去も知る5人は一緒に料理し、ショッピングに行き、けんかをしては仲直り──。

 思い浮かぶのは『セックス・アンド・ザ・シティ(SATC)』か『Lの世界』、あるいは『私の「初めて」日記』だろうか。新番組『ウィ・アー・レディー・パーツ』の罰当たりなのに敬虔で、騒々しくも賢いムスリム女性5人組を連想する人はまだ少ないだろう。

 5人のルーツは東南アジア、中東にアフリカとばらばらで、ある人は全身にタトゥーを入れ、ある人はヒジャブで髪を覆っている。だが世間が押し付けるステレオタイプや思い込みを嫌というほど意識しているのは、皆同じだ。

 音楽コメディー『ウィ・アー・レディー・パーツ』はイギリス発でロンドンが舞台。パキスタン系のニダ・マンズールが脚本を書いて監督し、チャンネル4で放映された。

 中心となるパンクバンド「レディー・パーツ(女性器の意)」のメンバー4人とマネジャーは政治談議に花を咲かせ、ダブルデートに出掛ける。1台の車にぎゅう詰めになってザ・プロクレイマーズの「アイム・ゴナ・ビー(500マイルズ)」を合唱するシーンは、『ウェインズ・ワールド』を彷彿させる。

 そんな5人を見ていると、こちらまで楽しくなる。バンドの練習を中断して礼拝を行うときも、ムスリム男性のヒゲの是非を論じるときも、一緒にいるときの彼女たちは実に生き生きとしているのだ。

 


信仰は自己実現を後押しする  

 バンドを成功させようとする5人の奮闘を描きつつ、ドラマは信仰が自己実現を阻むのではなく、むしろ後押しする点を強調する。

 伝統と進歩を融合する意図は、最初から明確。それを端的に表すのが、マネジャーのモムタズ(ルーシー・ショートハウス)の初登場シーンだ。

 彼女はおしゃれなブルカに身を包んで練習室に現れたかと思うと、マリフアナたばこを手にメンバーのいさかいを一言で収める。「大事なのはフェミニズムだよね」

 ボーカルのサイラ(サラ・カミラ・インピー)とベースのビスマ(フェイス・オモーレ)、ドラムのアイーシャ(ジュリエット・モタメド)は、ギタリストを募集している。外の世界では女性とムスリムに対する無自覚な差別にうんざりする毎日だ。

 バンドの前に現れたアミナ(アンジャナ・バサン)は微生物学の博士号取得を目指す学生で、とても有望なギタリスト候補には思えない。極度の上がり症だし、ムスリム向けのデートアプリを使って熱烈婚活中なのだ。


 アミナのほうも、「闇の魔法使いヴォルデモートはあたしのヒジャブの下で生きている!」などとがなり立てる過激なバンドは勘弁願いたい。それでも一緒に演奏してみれば、相性は最高。アミナは研究と音楽活動の二重生活を送るうちに仲間の自信と冒険魂に刺激され、「よきムスリム女性」の在り方を問い直す。

 転機となるのが、田園地帯への日帰り旅行だ。不法侵入になるのではとびくびくするアミナに、ビスマが言い返す。

 「私たちがこの大地に座ってこのマリフアナを吸えるようにと、ご先祖様は白人の戦争に行って死んだんだよ」

 ビスマの言葉に背中を押され、アミナは自分を縛っていたお堅い価値観を捨てる。こうしてバンドは結束するのだが、その団結力はさまざまな試練に揺さぶられる。

 ライブでは白人男どもに「引っ込め!」とやじられ、同じムスリム女性のインフルエンサーに利用されそうになり、ツイッターではアンチ派に「偽ムスリム」とバッシングされる。

 ムスリム女性の内面や彼女たちが体験する差別の複雑さをこれほど鋭く、細やかに捉えた作品は、アメリカには存在しない。

 


「多様なキャラクター」にも入れない  

 女性や有色人種のキャラクターと、そうしたバックグラウンドを持つ俳優の活躍の場を増やすことを求める声は、ハリウッドでも大きくなっている。だがMENA(中東および北アフリカ)の女性は、議論から除外されてきた。

 カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究者がまとめた2020年版『ハリウッドの多様性に関する報告書』によれば、台本のあるテレビ番組に登場するMENAのキャラクターは白人、黒人、ラティーノ(中南米系)、アジア人、複数の人種の血を引くマルチレーシャルよりも少ない。

 ハリウッド映画の状況も似たようなものだ。20年に映画に登場したキャラクターのうち、MENAが占めた割合は1.3%。さらにMENAの女性となると「あまりにも登場が少ない」。また監督のうちMENAが占めた割合は1.6%で、MENAの女性監督はたった1人だった。

 テレビで活躍するMENAの俳優はもともと少ないが、女優となるとなおさらだ。彼女たちが演じるムスリム女性のキャラクターにしても、イスラム教の信仰から逸脱することで存在意義を認められているきらいがある。

 例えばドラマ『HOMELAND』のファラは、アメリカへの忠誠心を示すためにテロリストの摘発に協力する。『エリート』のナディアは、ムスリムでない男の気を引くために頭のスカーフを外す。『ユナイテッド・ステイツ・オブ・アル』のハッシーナは、アフガニスタンの家父長制的な文化を笑うジョークのネタ振り担当だ。

 MENAの人々はあくまでも「自分たちではない誰か」として描かれる。それがいまだにハリウッドの定番なのは、映画『ワンダーウーマン 1984』を見れば明らかだ。

 だからこそ、本作で主人公たちが自分自身を見いだしていく展開は気持ちがいい。彼女たちは外の世界への譲歩を迫られるが、性格の角が取れるとか、ありがちな展開をたどることで社会になじんでいく流れはここでは見られない。

 アミナがパペットと一緒に演奏する自分や、アーサン(ザキ・イスマイル)とワルツを踊る自分を夢想する場面は『Glee グリー』の率直さや『30 ROCK/サーティー・ロック』のばかばかしさを思わせる。

 結婚を焦るアミナに両親が困惑したり、アミナの母がアーサンに手を出そうする展開は、年かさのムスリムは保守的な考えの持ち主のはずという視聴者の思い込みを見事に裏切る。

 批判が待ち受けていることへの自覚が、このドラマの破壊力をさらに強めている。ムスリム社会の中でも保守的な人々は、主人公たちは信仰心に欠けると言うかもしれない。タトゥーや婚前交渉のほか、自分なりの信仰と伝統との間で折り合いをつけるのに苦労する描写があるからだ。

 


多様で多層な「私」の姿  

 一方でイスラム教を嫌悪する人々からは、主人公たちは信心深過ぎるという非難の声が上がるかもしれない。みんなメッカに向かって礼拝しているし、サイラはイスラム教の決まりにのっとって精肉を処理する仕事をしている。

 穏健志向の視聴者も渋い顔をするかもしれない。システム・オブ・ア・ダウンの曲「トクシシティ」に合わせてバンドが叫ぶ場面やサイラが家族と仲たがいする場面、月経血から与えられた超人的な力を描いたビスマの漫画に眉をひそめる人もいるだろう。

 シリーズ後半でバンドは激しい批判に見舞われるのだが、たたかれ方はもちろん、メンバーたちが警戒心や自己不信にとらわれる描写もとてもリアルだ。それは18年に本作のパイロット版がイギリスで放送された際に、マンズール自身が体験したことでもある。

 ドラマの中では、ある雑誌が信仰に関するバンドメンバーたちのコメントを歪曲して掲載、それがネットで反響を呼ぶ。だが主人公たちは、ムスリム、クィア、異性愛者、妻、母、恋人、科学者、詩人、音楽家といった自分たちの多様なアイデンティティーが、同じように多面的なファンたちとバンドをつないでいることに思い至る。

 作中で引用された詩や楽曲からも、ムスリム女性のアイデンティティーの奥行きの深さや、悪意ある攻撃と戦うのに必要な連帯について、このドラマが何を言わんとしているかが伝わってくる。

 例えばサイラは、パキスタンの詩人、ファイズ・アハマド・ファイズの「語れ」を暗唱する。「語れ、あなたの2つの唇は自由なのだから/語れ、あなたの舌は今もあなたのものなのだから」

 バンドが勝ち誇った様子で演奏するのはクイーンの「ウィ・アー・ザ・チャンピオン」だ。顔に砂を蹴りかけられても乗り越えてきたことや、戦い続ける決意が歌われる。

 勝ち誇ることができるのは、ほかのみんなに否定されようとも自分自身であり続けることにこだわりぬいたからでもある。本作はそうした確固たる「人とは違う自分」というものを通して、ムスリム女性が信仰を持ちながらも同時に喜びに満ちた生を生きるのは可能だということを、共感を込めて生き生きと描いている。
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山本敦久氏「五輪の弊害、IOCの醜態が露呈した今こそがターニングポイント」

2021-06-28 | いろいろ


より

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山本敦久氏「五輪の弊害、IOCの醜態が露呈した今こそがターニングポイント」  
 私が東京五輪に断固反対する理由 


山本敦久(成城大学社会イノベーション学部教授)  

 成城大学では築80年を超える老朽化した体育館をいまだに使用しています。

 東京五輪招致が決まる1年前の2012年、新体育館の建設が決まりました。けれども14年7月、体育館にある荷物の引っ越し予定日の数日前になって突如、計画が中止されたのです。理由は五輪開催に伴う資材や労働力不足、工費の高騰でした。

 区や市が一般に開放している施設も、改築や増設が必要に迫りながら、五輪開催のために後回しにされています。一方、政府や都は、きらびやかな五輪関連施設を次々と造っている。東京五輪のせいで一般人の生活インフラが悪化していることは言うまでもありません。

 では、「復興五輪」開催の名目にされた東日本大震災の被災地はどうでしょう。生の声を聞くべく、18年と19年の計2回、復興住宅で暮らす人々に取材した時のこと。そこで私は取り残されている福島の現状を目の当たりにすることになりました。

 人手や物資は東京五輪に流れ、本来なら優先的に進められるべき復興作業は停滞。一家の大黒柱が五輪施設の建設作業へ出稼ぎに行き、引き裂かれる家族もたくさん見てきました。現地の方々は憤りつつも、華やかな発展を続ける東京に対し、えも言われぬ感情を抱いていました。

 そんな福島から今年3月、聖火リレーが始まった。少しコースを外れると放射性物質が詰め込まれた袋が山積みにされている。しかし、テレビの画面にはそれらがまったく映らなかった。このまま東京五輪が行われたら、現地の惨状や被災した方の気持ちがすべて無視されたまま、復興が終わったことと、片付けられてしまう。

 東京五輪は利権や政府の思惑などさまざまな問題を抱えています。しかし、五輪を過剰に神聖視する日本人のこと。東京五輪だけが酷いありさまに感じるかもしれませんが、それは今大会に限ったことじゃない。各都市で生じた五輪による弊害は枚挙にいとまがありません。

 中でも最悪と言えるのは1968年メキシコ五輪です。開催直前、政府が五輪反対デモを起こした学生らを大量虐殺する大事件が起きました。しかし、“平和の祭典”を滞りなく実施するために、これらはひた隠しにされていたのです。


4年に1度というオリンピックの時計を止める時

 五輪が開催地に社会的災害を招いてきたことは前述の通りですが、そもそもIOCの体質だって問題だらけ。東京大会では「コロナ禍」というレンズを通したことで、本来の醜い姿が浮き彫りになったに過ぎません。

 皆の目が開いている今こそがターニングポイントです。我々が、4年に1度というオリンピックの時計を止めましょう。しっかり立ち止まり、五輪の意義を問い直すこの上ない機会です。


山本敦久(やまもと・あつひさ)
  1973年、長野市生まれ。成城大学社会イノベーション学部教授。著書に「反東京オリンピック宣言」「やっぱりいらない東京オリンピック」「ポスト・スポーツの時代」など。
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軍隊に監視される社会でいいのか?

2021-06-27 | いろいろ


より

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三上智恵の沖縄撮影日記 第103回:軍隊に監視される社会でいいのか?~重要土地規制法成立と宮城秋乃さんの家宅捜索~  


    

 私たちは急速に監視社会に向かっている。①国が国民を監視する、だけでなく②軍隊が国民を監視する、③国民が国民を監視する、この②と③が当たり前になる社会、戦前のような恐ろしい国に私たちをいざなう法律が、ついに参議院本会議で可決、成立してしまった。「重要土地等調査規制法」。大事な国防施設を守るため、という名目で無制限に市民の監視を可能にする、こんな稀代の悪法を止められない私たちの市民力のなさに改めて暗たんたる気持ちになる。

 「中国に基地周辺の土地を買われたら怖いですよ。原発や弾薬などがある場所の近くに過激派が出入りしたらどうします? 取り締まらなきゃ! ですよね。そんな動きを未然に察知し、民衆の不安にお応えする法律を作ります。どうぞみなさん安心なさってください」

 今回の土地規制法はそんな優しい仮面をかぶって登場した。内容の恐ろしさにピンと来て連日報道しているのは、沖縄のメディアくらいだった。いまだに多くの人がこの法の黒い素顔に気づいていない。国会議員でさえ、ボーっとしているようにしか思えない。

 これは、外国人や危ない人たちが国防上大事な土地を取得しないためにあるというが、この法律自体、彼らの土地売買を直接規制する力もない。できるのは、重要施設の「機能を阻害」する人物が、施設の周りの土地にいないか? を調べること。所有者だけでなく、出入りしてないか? そんな目的に使ってないか? または使おうとしてないか? を市町村や地元警察や地域住民から強制的に情報を提供させながら調べ上げることを合法にする。虚偽の申告をしたら罰せられるのだから、隣人の家族構成を聞かれたって嘘はつけない。これはかつてない密告社会を招聘する法律でもある。

 「機能を阻害する」目的に使ってないか? というところの、「機能を阻害する行為」とは何か。その具体的な範囲も法成立後に決めるという、いくらでも恣意的に運用されかねない点も恐怖だ。自民党の杉田水脈議員が「辺野古の基地反対運動の人たちの弁当のごみが米軍基地に入ったらどうするか」という事例を出したように、こんなレベルの屁理屈でも調査監視の対象になってしまうというお粗末さを露呈しているというのに、この法に対する野党の危機意識も驚くほどに低かった。

 さらに第9条に「機能を阻害する行為の用に供し、又は供する明らかなおそれがあると認めるときは」とあるように、機能を阻害する行為が行われていなくても、その恐れがあると判断されれば勧告⇒命令⇒罰則と進むことができるため、例えば、米軍機の落下事故や騒音に悩むごく普通の沖縄県民が定期的にベランダから基地を観察してSNSで情報を共有した――そんなことも「軍の機密を公にし機能を阻害した」と懲罰対象になりかねないのだ。これでは「基地の周りでめったなことはできない」と市民のチェック機能もぐっと萎縮させられてしまう。

 そもそも、沖縄県民が誘致したわけでもない米軍基地や自衛隊基地。仕方なく基地周辺に住むことを余儀なくされ、騒音、汚染、事故、事件の恐怖にずっと耐えてきたというのに、彼らが救済の対象になることこそあれ、潜在的に「機能を阻害する恐れがあるかもしれない」と疑いの目でみられるとは何事か。これまでは簡単に調べることができなかった個人情報を含む、思想信条まで詮索される調査対象にされるなんて、全く納得がいかない。これは、沖縄戦の時、住民にさんざん軍の労務作業に協力をさせながら、米軍上陸が迫ると「軍機を漏らしかねない」として敵に情報を与えるスパイ予備軍とみて監視し、スパイリストに挙げて見せしめの虐殺まで進んでしまった悲劇と、全く同じ構図の再来だと私は危惧している。軍隊が民間人を見張るというのはそういうことだ。スパイだと疑われた人間が、そうではないと証明するのは非常に難しいことは、歴史が証明する恐怖である。

 そして、日本軍が集落の人を使って地域の情報を集めた闇の情報収集組織を持っていたことについては『証言 沖縄スパイ戦史』(集英社新書)に詳しく書いているが、今回の法律でも、実際に情報を集める中心的な役割は自衛隊の情報保全隊が担うとみられている。情報保全隊と言えば、2004年には自衛隊ヘリの騒音に電話で抗議しただけの人の勤務先まで調べ上げていたことが印象に残る。自衛隊のイラク派兵に反対する個人や団体を大量にリストアップしていた中にメディアや記者も入っていたことに驚愕したこともある。要は、自衛隊の機能を阻害する可能性のある存在に目を光らせ、こっそり監視するのが保全隊の仕事なのだが、この法が成立すれば、ある部分は大手を振って調査することが可能になり、そのぶん萎縮効果も増大するだろう。

 基地の周りに住んで身辺調査の対象になるよりは、と移住する力のある人は出て行くだろう。でもそれができない市民は肩をすぼめながら目を付けられないように暮らすしかない。そんな時にピンポーン、と玄関に情報保全隊が立ち、こう言うかもしれない。

 「この家からと思われる角度で基地内を撮影した映像がネットに頻繁に上がっている。お前の息子だろう? 罰則を知らないのか? 身分証明書を出せ」
 「ご、誤解です。うちの息子はそんなことしません! それをやってるとしたら……」
 「やってるとしたら? 虚偽申告は100万以下の罰金だと知ってるな?」
 「……。はい、確か隣の息子さんがよくカメラを回しています……」

 こういう相互監視・密告社会が現実になる危険性を土地規制法は大いに孕んでいる。そんな指摘をすると、ネット上では「活動家は逮捕されてください」とか「やましいことのない人にとっては良い法律ですが」などのバッシングが来る。でも普通に考えてみて欲しい。生活圏にある基地に、いったい何が飛んでくるのか? どう使われるのか? ある程度把握しないと不安ではないか。協定に反して夜中に飛ぶ軍用機には、証拠の映像を撮って訴え、我が子が静かに眠る夜を確保しようとするのは当然ではないのか? 先祖の土地が汚染され、子どもが飲む水がおかしくなっているのではないかと監視する市民がいなかったら、いくらでもやりたい放題をする米軍を私たちは見てきたのだ。「軍事に口を出すな」と言われて、「はい、そうですか」とは言えない。そんないのちと暮らしを守るための活動すべてが「機能を阻害する」というワードで絡めとられる恐れがあるこの法律に、戦慄しないはずがない。

 「だけどそれって沖縄とか横田基地とか、その周辺の人たちの話でしょ? 私には関係ない」と無関心でいる多くの国民に知ってほしいのは、これは軍事施設や原発だけを対象にしていないこと。政府が「重要な生活関連施設」と認定したら、その周辺も含まれてしまう。政令で指定されたら、あなたの近所の浄水場とか港湾がその対象になり、あなたの家族が監視対象にされる危険性はゼロではない。どうにでも運用できる形でこの法を通してしまえば、最初は国境地帯で軍事基地が多い沖縄県あたりがその影響下に置かれるかもしれないが、またそこでも「沖縄は大変ね」とタカをくくっていると、世論は騒がないとみて全国各地に拡大していくだろう。

 軍が民を監視するという、戦後の日本ではありえないと思えた構図は、もちろん占領下の沖縄では日常茶飯事だったのだが、復帰してからも無くなったのかと言えば、そうでもない。今月初め、東村高江のヘリパッド問題など基地に関連し、自然保護の観点から多くの発言をしてきたチョウ類の研究者・宮城秋乃さんが、いきなり家宅捜索を受けた。彼女はその前にもずっと防衛局や米軍から監視されていたのだ。これこそ、軍事基地の周りでチョロチョロ余計なことをするな、という土地規制法案と同じベクトルの恫喝だと私は直感し、状況を聞きに行ったのが今回の動画だ。

 6月4日の朝、いきなり名護署と県警の警備課がドヤドヤと玄関に押し寄せ、仕事に欠かせない携帯とパソコンやカメラ、莫大なデータを含む機材などをごっそり押収していった。宮城さんは森の生き物の研究をする傍ら、森の奥深くに遺棄されたままの米軍の廃棄物・弾薬・有害物質などの状況を調べ、回収し、原状回復を訴える活動を続けてきた。その功績で去年「第32回多田謡子反権力人権賞」を受賞している。社会的にも信頼のある研究者の仕事場にいきなり踏み込むほどの容疑とは、一体何だというのか。

 彼女は米軍の訓練場の返還地に夥しい米軍のゴミ、時には弾薬などの危険物や、PCBやコバルトなど放射性物質も含む有害物質が山中に放置されていることに胸を痛め、自主的に回収していた。北部訓練場は2016年末におよそ半分が返還されたが、米軍に原状回復義務はなく、防衛省が実に3億円もかけて「支障除去」、つまり有害物質や廃棄物の後始末をしたはずだった。しかし現状はこのありさまである。希少生物に影響を与えているので、米軍のゴミを集めて袋に入れた。当初は沖縄県警が持って行ってくれたものの、誰も回収してくれなくなった。

 返還された北部訓練場を含むやんばるの森は今年、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島(奄美・沖縄)」の一部として世界遺産登録の合格判定がIUCN(国際自然保護連合)によって出された。登録は既定路線になった。

 宮城さんには、この森が世界遺産になるのは嬉しいが、登録される前のこの機会に国の責任でちゃんと廃棄物を取り除いて、訪れた観光客がどこを歩いても怪我をしたり被ばくしたりすることなく、地元の子どもたちが安心して走り回れる本当の自然遺産にして欲しいという思いがあった。だからこそ、危険なごみの存在を隠蔽せずに知ってもらい、防衛省のみならず、ごみを捨てた米軍にもきちんと対応してほしいとアピールする目的で、4月7日、廃棄物を米軍基地のゲート前に並べて抗議した。その時に通行妨害をしたということが、今回の威力業務妨害容疑での家宅捜索の理由だと説明を受けたという。

 「動物たちが実際に被害を受けているのに、誰も気にも留めてくれないということが悲しくなります。誰も見てくれない。森の奥だから。私は森ならどこまででも入って行けるから、私がそれを知らせないと」

 宮城さんはそんな思いで活動を続けてきたのだが、ある時自分の動向が他人に記録されていることに気づいたという。2019年の10月、高江のヘリパッドに近いN4ゲートに立っている警備員が、自分が通るたびに車のナンバーを見て連絡を取る様子を見て「監視されている」と恐ろしくなった。防衛省が雇った民間の警備員が報告する先は防衛省だろうし、動向の報告を指示したのも防衛省だろう。ドライブレコーダーやビデオカメラでその様子を記録して訴えたところ、沖縄県選出の赤嶺政賢議員が人権侵害だと防衛省を追及、防衛省側も「通行人を報告・記録することはある」と事実を認めた。

 ところがこの防衛省が警備会社に民間人の監視を依頼するという異常事態を、赤旗、琉球新報、沖縄タイムスの3紙しか扱わなかった。普段、宮城さんから写真の提供などを受けてお付き合いのある本土紙の記者たちも、ペンをとってはくれなかったという。もしここで、「基地の問題に声を上げた人のプライバシーまで防衛省が監視していいのか?」と世論が問題視していれば、今回の家宅捜索も世論が怖くてできなかっただろうし、土地規制法も簡単に成立させないブレーキが生まれていたはずだ。彼女のSOSをスルーした結果、基地の周りで異議を唱えるような人は国防の敵だという乱暴な考え方が力を伸ばし、人権侵害を止める社会の力は弱まったのだ。そして土地規制法という名の市民監視のシステムも、どうやら今の世なら難なく通せそうだぞ、と権力側に隙を見せた格好になってしまった。

 防衛省に続いて宮城さんは、米軍にも監視されるようになったという。ある日、生物調査で山に入って戻ると、自分の車が沖縄県警と海兵隊のパトカーに囲まれ、事件現場のようになっていた。駐車違反してないですよね? と聞くと、ずっと止まっている車があるから遭難したのではと駆け付けたと、言い逃れのような理由を言った。要は、返還地ではなく、立ち入り禁止の米軍基地の方に入っているのではないか、さらにまた不都合な廃棄物を引っ張り出してくるのではないか、と厄介な行動をする宮城さんを監視し、萎縮させたかったのだろう。

 ところが宮城秋乃さんは変わった趣味を持っているために、この種の脅しが全く効かない人であることが、今回本拠地をお訪ねしてよく分かった。宮城さんは幼いころから「働く乗り物」が大好きで、特にパトカーが好きすぎて、それを運転することに憧れた結果、警察官の制服や持ち物、ポスターなど警察関連のグッズを集めるまでになってしまったという。私は、昭和の警察帽や沖縄県警グッズが所狭しと並ぶ彼女の部屋を見て絶句してしまった。

 実は私、かなり虫が苦手なので、宮城さんの部屋に虫の標本がたくさんあったり、ホルマリンの匂いがしたりすることを少し恐れて伺ったのだが、それはない代わりにウルトラマンや警察グッズが、それはきれいに展示されていた。もちろん、軍隊の暴力も警察権力も嫌いですよ、と彼女は念を押す。ただ、それとこれとは別で、パトカーは細部にわたって大好きだそうで、彼女にとっては日米のパトカーに囲まれたことは恐怖でも何でもなく喜びですらあったという事実に、私は吹き出してしまった。軍事ヘリも軍用車両も働く車、であり彼女の興味の対象らしく、えらく詳しい。私が感じる米軍や警察の威圧感を、彼女は興味が上回って感じないというのだから、彼らはほかの人を萎縮させることができても、宮城秋乃さんには通用しないというのが、なんだか痛快だった。

 とはいえ、廃棄物を並べて何とかしてくれとアピールしただけで家宅捜索はどう考えても行き過ぎである。当分戻らない携帯やパソコン、カメラを買い揃えねば仕事にならない彼女に対して、今カンパも呼びかけられ、ようやく全国から支援の声が強くなってきている。そして、軍事施設周辺で余計なことをするとこういう目にあうぞ、という重要土地規制法を先取りしたような事例として、宮城秋乃さんのケースが注目されるのは、遅まきながら、大切な変化である。

 軍事組織が、又は軍事優先の論理が市民を監視し人権を制限する。そんな行為が大手を振ってできるような悪法を成立させてしまった日本。国防上の危機がいいように煽られ、国境の島々や基地周辺に住む一部の人たちの人権は後回しでいいから国防優先でお願いします、という意見が多数を占めるなら、この国はすでに戦前だ。法は成立しても、せめて悪用された時に瞬時に声を上げて世論で監視し、実行させない市民力を、私たちは今からでも磨いておかねばならない。

 

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【宮城秋乃さんへのカンパ】

振込先:ゆうちょ銀行 口座名義:ミヤギ アキノ
〈同行から送金される場合〉 記号:17030 番号:18520051 
〈他金融機関から送金される場合〉店名:七〇八(ナナゼロハチ) 普通預金 口座番号:1852005

 


   


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安倍前総理に屈服した菅総理の特攻自爆ギャンブル精神  (抄)

2021-06-27 | いろいろ


ジャーナリスト田中良紹氏のヤフーニュースのコラムより

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安倍前総理に屈服した菅総理の特攻自爆ギャンブル精神


 6月18日、公職選挙法違反の罪に問われた河井克之元法務大臣に対し、東京地裁の高橋泰明裁判長は「選挙の公正を著しく害する極めて悪質な犯行」として懲役3年、追徴金130万円の実刑判決を言い渡した。

 実刑判決が下されたことで河井元法務大臣の保釈は取り消され、弁護側が再保釈を請求したが東京地裁はこれを即日棄却、裁判が終わると河井元法務大臣の身柄は東京拘置所に移送された。

 公職選挙法違反事件で有罪判決を受けても政治家には執行猶予が付くのが普通だ。実刑判決は極めて異例である。また日本の司法を司る法務大臣の職にあった者が実刑判決を受けた例もフーテンは知らない。

 そして何よりもこの事件には解明されていない謎がある。買収の原資と見られる自民党本部からの1億5千万円の資金提供を巡り、二階幹事長は当初「自分は関与していない」と言い、次に「総裁と幹事長に責任がある」と言い換え、安倍前総理の責任論に言及した。

 菅総理は17日の記者会見で「当時の総裁と幹事長で行われたことは事実ではないか」と述べて安倍前総理と二階幹事長を名指しした。ところがこの資金の解明を検察は行っていない。

 その理由として検察は、裁判で無罪を主張していた河井元法務大臣が一転して罪を認めたため、原資の解明を行う必要がなくなったとしている。検察が解明しないため判決はその問題に触れていない。

 しかし犯行動機を解明するには原資の解明が不可欠であり、犯罪の悪質性を言うならば、原資に関わる証拠を開示するよう裁判所は検察に求め、事件の真相を解明すべきだと、春日勉・神戸学院大教授は東京新聞の取材に答えている。

 このニュースは本来であれば、この日のトップニュースになるはずだ。我が国の民主主義の根幹にかかわる事件だからである。そして前例のない厳しい判決が下された一方、真相はいまだに「藪の中」にあるからだ。

 しかしこのニュースはトップニュースにならなかった。トップは新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長ら専門家有志が、「東京五輪は無観客が望ましい」というリスク提言を政府と東京五輪組織委に提出し、夕方記者会見を開いたからである。

 尾身茂氏ら専門家有志がそれを自覚していたかどうかは知らないが、権力の側には河井判決のニュースを国民に大きく見せなくする意図があったとフーテンは見る。その意図に乗せられて提言はこの日に出された。それは通常国会を16日で閉幕し延長を認めなかったこととも連動している。

 国会を開いていればこの問題が野党から激しく追及されることは必定だった。また来週には「森友問題」の公文書改ざんで自殺した故赤木俊夫氏の作成したファイルが裁判で明らかにされる。いずれも安倍前総理に関わる問題だ。それが国民の関心を呼ばないように、権力の側には東京五輪開催に関心を集める必要があった。

 フーテンは菅政権誕生後の政治構図を、安倍―麻生連合vs菅―二階連合の戦いと見てきた。安倍―麻生連合は二階幹事長が主導した菅政権誕生を了承したが、それは政権運営が行き詰まった安倍前総理の一時的な回避戦術にすぎない。

 従って今年9月までの安倍前総理の任期を菅総理に譲り、その後は岸田文雄氏を念頭に傀儡政権を作るつもりだった。しかし菅―二階連合はその意思に反して長期政権を狙う構えを見せた。

 「グリーン」と「デジタル」という長期政権を意識した政策課題を掲げ、二階幹事長は解散総選挙に並々ならぬ意欲を示した。選挙はやればやるほど菅―二階連合の勢力を増やし、それに比べて安倍―麻生連合の数は減る。

 安倍―麻生連合はそうはさせじと、菅総理が選挙に踏み切れなくする策をめぐらした。日本学術会議の任命拒否問題も、菅総理就任直後に行われた故中曽根康弘元総理の合同葬も安倍前政権の「置き土産」で、政権誕生直後の解散総選挙を難しくした。

 そして菅総理の「急所」を突くスキャンダルが炸裂する。菅総理の親衛隊とも言うべき総務官僚と長男を巻き込んだ「接待疑惑」である。これで「デジタル政策」の中核を担うはずの総務官僚は一掃され、安倍前総理の親衛隊である経産官僚が巻き返しを狙う。

 もう一つの「グリーン」でも、安倍前総理を操縦した元首席秘書官の今井尚哉氏が前面に出てきた。彼は原発政策の中枢にいた元官僚だから、米国のバイデン政権と連動し小型原発の導入に乗り出そうとしている。そのため自民党内に「最新型原発リプレース議員連盟」が発足し、安倍前総理が最高顧問に就任した。

 これで菅総理の「グリーン」も「デジタル」も、安倍前総理の側に「乗っ取られた」形になる。一方で、安倍前総理が傀儡政権を作るためのカードにした岸田文雄氏がぱっとしない。安倍前総理は自身が再々登板を狙う姿勢を強めた。これに菅総理が反発したのか、「桜を見る会前夜祭」に検察の捜査が入り、政策第一秘書が略式起訴された。

 しかし検察の捜査はおざなりでまったく本気度は見えない。ただ安倍前総理には「桜を見る会」以外にも、参議院広島選挙区に河井案里氏を担ぎ出し、1億5千万円の資金が投入された公職選挙法違反事件や、「森友問題」を巡って自殺した故赤木俊夫氏の公文書改ざんとの関りなど、数々の疑惑がある。

 さらに東京五輪が新型コロナウイルスの蔓延で中止されれば、東京五輪組織委の「2年延期」方針を覆し、「1年延期」を決断した責任が問われかねない。従って東京五輪開催の是非と、河井夫妻の公職選挙法違反事件、そして「森友問題」を巡る公文書改ざんは、いずれも安倍―麻生連合vs菅―二階連合の争点になりうる重大事だった。

 しかしフーテンがその政治構図に変化の兆しが見えたと思ったのは、3月29日の菅総理と安倍前総理との会談である。菅総理は日米首脳会談を前に教えを請いに行き45分間会談した。フーテンには菅総理が二階幹事長との連携より、安倍―麻生連合と接近する道を選んだように見えた。

 ・・・・・。

 


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後期高齢者の医療費負担を増やす改正法が成立。だが"抜け穴"がふたつある!

2021-06-26 | いろいろ


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後期高齢者の医療費負担を増やす改正法が成立。だが"抜け穴"がふたつある!  


 『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が、後期高齢者の医療費負担を増やす改正法は現役世代に配慮した法改正に見えるが、まだまだ改善の余地はあると指摘する。

 (この記事は、6月21日発売の『週刊プレイボーイ27号』に掲載されたものです)  

 * * *

 6月4日、原則1割となっている75歳以上の医療費の窓口負担を、単身世帯で年収200万円以上を対象に2割に引き上げる改正法が成立した。

 後期高齢者の医療費は財源の約4割が現役世代の加入する国民健康保険や被用者保険からの支援金で賄われている。この改正で年830億円の支援金が浮くというから、バカ高い保険料に悩まされている現役世代にはグッドニュースと呼べるかもしれない。

 とはいえ、まだまだ改善の余地はある。一見、現役世代に配慮した法改正に見えるが、高齢者、特に富裕層に有利な抜け穴が巧妙に温存されているのだ。

 抜け穴のひとつは負担の割合が「収入」を基準に決められ、資産状況が反映されていないことだ。例えば、数億円の貯金を保有し働かなくても楽隠居できるリッチ層は、勤労して得た収入がないので医療費は1割負担で済む。ところが、無貯金や低年金などで働かないと生活できない高齢者は、収入が200万円を超えるとたちまち2割負担を求められることになる。

 もうひとつの抜け穴は、金融所得の扱いだ。株式配当などを確定申告せず、20%の源泉徴収だけで課税を済ませた場合、その所得は保険料の算定対象に含まれないというルール(申告不要制度)になっている。つまり、ある後期高齢者に多額の金融所得があったとしても勤労所得が200万円以下なら、その高齢者は窓口負担1割でよいことになるのだ。

 株式投資でマイナスが出たときの優遇策もある。老後の株式投資のA口座で1000万円の儲けが出て、B口座で500万円損した場合、全体では500万円の利益なのに、申告不要制度を使っていると、A株の利益に対する20%、200万円の税金が取られる。

 そこで投資家は、あえて確定申告をすることで損益通算して株の利益の税金の一部を取り戻すことができる。しかしその場合、保険料のほうが大幅にアップするケースがままある。金融所得により全体の収入がアップし、税率も上がるからだ。

 だが、そこにも抜け道がある。「所得税では金融所得を申告して合算してもらうが、住民税では申告不要制度を利用することが可能」とされているのだ。

 どういうことか? 保険料は、所得税ではなく、住民税の課税対象となる収入額を基準に決められる。そして、所得税では確定申告しても、住民税のほうでは金融所得の申告をしなくていいのなら、その分収入を低く抑えられ、保険料の窓口負担も1割に抑えられるというわけだ。不公平温存の法改正と言わざるをえない。

 政府・与党はこうした富裕層優遇策を全廃するため、マイナンバー制度を全面的に活用すべきだ。マイナンバーで納税者の収入や資産を全把握し、そのデータを基に適正な保険料や納税額をはじき出す。そうすれば、裕福な高齢者から適正な医療費を徴収でき、貧困に苦しむお年寄りが多額の保険料に泣いたり、現役世代が重い保険料の負担に苦しんだりする矛盾もなくなる。

 この仕組みを実現するためには、マイナンバー活用が不可欠だが、国民には政府への不信感が強く、実施には反対の声も出るだろう。だが、医療費負担の不公平是正、さらには富裕層への課税強化のために使うと言えば国民は賛成するはずだ。DX推進にもなる一石二鳥のこの政策を一刻も早く実施すべきだ。

 

古賀茂明(こが・しげあき) 
  1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。霞が関の改革派のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。『日本中枢の狂謀』(講談社)など著書多数。古賀茂明の最新刊『日本を壊した霞が関の弱い人たち 新・官僚の責任』(集英社)が発売中。
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菅首相に迫った映画「パンケーキを毒見する」 試写会翌日アカウント凍結

2021-06-26 | いろいろ


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菅首相に迫った映画「パンケーキを毒見する」 試写会翌日アカウント凍結  


 菅義偉首相(72)の素顔に迫ったドキュメンタリー映画「パンケーキを毒見する」(内山雄人監督、7月30日公開)の製作会社スターサンズは24日、公式サイトで「本日未明、ツイッター公式アカウントが凍結されてしまいました」と、同作の公式ツイッターアカウントがツイッター社により凍結されたと明らかにした。前日23日に都内で特別内覧試写会が2回、開催されており、同社は「皆様にはご迷惑をおかけしますが、手を尽くし復旧を急いでおりますので、引き続き応援よろしくお願いします」(コメントは原文のまま)と現状を報告した。

 「パンケーキを毒見する」は、菅氏が地元の秋田から上京して法大に進学し、就職課の紹介で衆院議員小此木彦三郎氏の秘書になったことや横浜市議会議員、衆院議員とステップアップした歴史を紹介。その上で官房長官、首相としての答弁の問題点、G7の中で日本が最低に落ち込んでいる項目が多いというデータや、企画から関わった元経済産業省官僚の古賀茂明氏(65)が、テレビ朝日系「報道ステーション」を降板に追い込まれた内幕も“暴露”。アニメなども絡め、現役政権トップを題材にした初の映画でありながら、エンターテインメントとしても楽しめる“政治バラエティー映画”となっている。

 映画は、冒頭から製作陣が菅氏に近い自民党議員たちが結成した「ガネーシャの会」所属の若手議員や、同氏がかつて“影の市長”の異名を取った横浜市議会や神奈川県議会の議員らに取材を試みたが、全て拒否されたことを明らかにした。同氏が使用するホテルや番記者を連れていったことで話題となったパンケーキ店からも取材NGが相次ぐ中、徹底した取材を敢行したことにも触れた。

 映画には現役の国会議員も出演している。自民党の村上誠一郎衆院議員は「今までの総理大臣には、上に立つものとしての見識があったが、菅さんにはない」とバッサリ切り捨てた。特に日本学術会議の任官拒否問題については、菅氏が弟子を自認する故梶山静六氏を引き合いに「梶山さんがご存命だったら、あり得ない。梶山さんは学問をリスペクトし(学者の)論文を読んでいた。(菅氏は)読んでいないんじゃないか?」と疑問を呈した。

 故橋本龍太郎首相の秘書官で、96年の衆院選で初当選した菅氏をサポートした立憲民主党の江田憲司衆院議員は、同氏に説得されて出馬した00年の総選挙の際、1年生議員だった菅氏が金を用意すると言い「数千万円を用意してきた」と激白。菅氏を「都会派の一方、カネ集めの上手い自民党の利権政治家の2つの顔を持つ」と分析した。

 20年9月の自民党総裁選で菅氏に敗れた自民党の石破茂元幹事長は、同氏について「こびないし、人の機嫌を取ろうというかけらもない。威圧感がある」と評した。一方で、答弁で意図的な論点をすり替え「ご飯論法」ともされる菅氏の答弁をはじめとした現在の国会での論戦については「この世界に35年いて、初めての言論空間。Aと言えばBと答える。かみ合っていない」と評した。

 「パンケーキを毒見する」は、19年の映画「新聞記者」でも現在の日本の政権、政治と社会に疑問を投げかけた、河村光庸エグゼクティブプロデューサーが陣頭指揮を執り、製作。公開日を東京オリンピック期間中の7月30日をあえて選んだ。同氏は、映画「宮本から君へ」(真利子哲也監督)が助成金交付内定後に下された不交付決定の行政処分の取り消しを求めて、文化庁所管の独立行政法人「日本芸術文化振興会」(芸文振)を訴えた裁判で、21日に不幸不処分の取り消しを命じる判決を勝ち取り、勝訴したばかり。

 23日の特別内覧試写会では、「菅内閣が発足して、すぐに、いても立ってもいられず、この映画を作ろうと思った。タイトルは最初に決めた。監督を何人か当たりましたが、5人くらい断られた。映画の表現は自由であってしかるべき。どこかの政治勢力には一貫してくみしない。民主主義国家の中で当たり前のことをやる、こういう映画が当たり前のように作っていかれないといけない」と製作経緯を説明。その上で「9月に多分、総選挙があるであろうと思う。ジャーナリズム、メディアの方が、ぜひとも、この映画に影響されて、選挙に対して、きっちり、どの政党、政治家を選ぶということじゃなくて、間違っているじゃないかと、態度をきっちり表明していただきたい」と訴えていた。


公式ホームページ https://www.pancake-movie.com/
上映館一覧    https://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=pancake
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赤川次郎が五輪中止を訴え続ける真意「戦争の時とちっとも変わっていない」

2021-06-25 | いろいろ


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赤川次郎が五輪中止を訴え続ける真意「戦争の時とちっとも変わっていない」  


「セーラー服と機関銃」や「三毛猫ホームズ」シリーズなど数々の名作を世に送り出してきた作家の赤川次郎さん(73)が、朝日新聞の読者投稿欄「声」に、「五輪中止」を訴える意見を投稿。6月6日に掲載された。五輪開催に舵を切る日本を危惧する赤川さんに、その真意を聞いた。

 *   *  *

――朝日新聞の「声」欄に掲載されたのは、2012年4月12日以来、今回で4回目でした。

 実は、最初に投稿した時は載りませんでした。掲載前に身元確認の電話があるのですが、ちょうど旅行に出ていて連絡が付かなったのです。もう何を書いたかよく覚えていません。

 

――どうして「声」欄に投稿しようと思ったのでしょうか。

 週刊誌「女性自身」に月1回、コラムを書いているのですが、原稿用紙3枚なので、そんなに書きたいことは書けないんです。そのコラムよりも、むしろ声に載った方が反響がありますね。でも、「声」は500字だから短くするのが大変でした。今回の投稿も、何回も何回も書き直して、削って、削って、やっぱり500字にしないとね。一読者として投稿するんだから。自分の小説ではそこまでしません(笑)。

 

――今回、「五輪中止を決断するしか道はない」と題し、強いメッセージを綴られていました。

 なし崩しに五輪を開催しようとしているので、このまま見過ごすことができませんでした。僕が書いたって、それで中止になるとは思わないけど、自分の考えを文字に残しておきたくて。後になって、あの時に反対しなかったじゃないかと言われるのが嫌だからです。戦争の時と一緒ですよね。戦後、子どもから「なんでお父さんは戦争に反対しなかったの」って言われたら、やっぱりつらかったでしょうからね。作家として、立場や考えを文字に残しておけば、逃げられませんからね。

 中学時代の同級生に、クルーズ船の時からコロナ患者を受けている総合病院の院長がいます。今はコロナで病院が大変なので話す機会はないのですが、久しぶりにメールが届きました。「書いてくれてありがとう」と。院内クラスターが起きたら大変ですから、職員が必死になって感染を防いでいる、とも書いてありました。彼も70歳を過ぎてから、医者人生でまさかこんな事態に出会うとは思わなかったでしょう。

 報道では、看護師は防護服を着て何時間も働くので、トイレに行くこともままならずオムツをつけて働いている人がいると報じられていました。そういう人のことを考えたら、「オリンピックをやろう」という発想はできないはずです。

 

――「声」には、「賠償金を払わねばならないのなら払えばいい。経済は取り戻せても、人の命は取り戻せないのだ」と書かれていました。

 余計なことにずいぶんとお金をつぎ込んでいますよね。布マスクを配布するだけで約260億円を使ったのだから、賠償金を払えばよい。いくら日本のコロナ死者数は少ないと言われていても、すでに1万4千人以上が死んでいる。オリンピックを開催したために例え1人でも死んだら、その人の命は戻ってこない。そういう命の重さがすごく軽く見られているように思うのです。

 

――菅首相はG7サミットで「安全安心な大会を実現する」と訴え、五輪は開催される方向に向かっています。

「安全安心」の医学的根拠がどこにあるのでしょうか。開催してしまえばどうにかなるという発想と、中止したら自分がどれだけ損をするかを考えているのでしょう。「日本は大丈夫」みたいな精神論を言われても、ウイルスはそんなこと、聞いてくれません。
 
 戦争の時とちっとも変わっていない。ここまで来たらやめられないから体当たり。科学的な判断ではなく、神頼みに近いです。神風が吹くとでも思っているかのように見えます。悲惨な結果になったら、日本では個人の責任ではなく、みんなが悪いという話になる。でも、今回のコロナ禍での五輪開催に関しては、反対が多いことがはっきりしています。

 

――大手メディアが東京五輪のスポンサーになっていることをどう思いますか。

 客観的に判断しなければいけない立場であるマスメディアがスポンサーになるのは間違っていると思います。しかも主要な大新聞がみんななっている。

 「声」掲載の翌日、夕刊の「素粒子」で、僕の投稿に対して「胸のすく思い」と書いて頂きました。仲の良い編集者がそれを読み、「それで終わっちゃだめでしょ」と言っていました(笑)。「胸がすく」のなら、次は自分が何かしてください。大新聞はそういうところがありますよね。人に言わせて、この人の意見は載せましたからという姿勢。朝日新聞は社説で中止を訴えましたが、それ以後、他紙も含めて新聞としての主張があまりないですよね。文句がある時は誰かに言わせる。この人に頼んだら多分こういうことを書いてくれるだろうと。もうちょっとやれることがあるような気がします。

 今月になって、世論調査では五輪「中止」よりも「開催」が増えていき、観客数の話になってきました。突然どうしたのでしょうか。結局、反対できないような空気にしていきたいのでしょうね。すごく嫌だなぁ。

 ジャーナリズムや医学界が反対や中止の声をもっとあげれば、少しは変わってくると思うのですが、個人的な考えはあっても、それがまとまった一つの力にならない。これが、フランスあたりの話だったら、人々がデモを起こして政権が倒れていたと思います。

 

――1964年の東京五輪の時、赤川さんは高校生。当時を振り返って思うところはありますか。

 学校の生徒が動員され、僕も見に行かされましたよ。観客が入らないスポーツがほとんどで、客席はガラガラでした。記憶では、サッカーを観戦しました。しかも席が遠くてね、アリのような人がちょこちょこ動いているだけで、何を見ているのかわからなかったな。実際に行ってもよく見えないですよ。

 

――東京都の緊急事態宣言が解除され、海外の選手団が国内入りしてきました。「第5波」の到来を懸念する声もあります。

 いま、やっと感染者数を抑えて、低い値で食い止めているのだから、五輪開催は自分で堤防を崩しているようなものですよね。

 イギリスはワクチン接種が進んで平常に戻ろうとしていたところだったのに、今度はインドで見つかった変異株が広まっている。日本はワクチン接種だってまだ進んでいないのだから、これから感染状況が急激に悪化して中止せざるを得なくなるシナリオがありうるのかどうか。

 緊急事態宣言を解除して、2、3週間後に感染者が増えたとしても、それでも開催するつもりでしょう。

 そこで、ジャーナリズムが中止を言わざるを得ないような状況になるのか。ただ、そうなるまでには、大勢の人が犠牲にならないといけないわけです。犠牲になった人の命は取り返しがつかないのです。


(聞き手/AERA dot.編集部・岩下明日香) 

  

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「発動させないことが大事」

2021-06-25 | いろいろ


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「発動させないことが大事」 土地規制法について馬奈木弁護士に聞く  


 安全保障上の重要な土地利用を規制するとした「重要土地等調査・規制法案」(土地規制法案)が16日未明の参院本会議で可決、成立した。新法では、内閣総理大臣が安全保障を理由に、自衛隊や米軍などの防衛関連施設や海上保安庁の施設、原発などの周囲(約1キロ)や国境離島を「注視区域」に指定できるほか、特に重要な地域は「特別注視区域」とし、一定面積以上の土地や建物を売買する際は事前に氏名や利用目的の届け出などを義務付けている。ただ、条文の中身は曖昧で、政府に広範な裁量権を与えるとして「私権制限につながる」との指摘は少なくない。土地規制法の何が問題なのか。参院内閣委の参考人質疑で法案廃止を訴えた東京合同法律事務所の馬奈木厳太郎弁護士に聞いた。

 ◇  ◇  ◇

 ――参考人質疑で「内閣総理大臣の内閣総理大臣による内閣総理大臣のための法案」と指摘していましたが、あらためて法律の問題点を教えてください。  

 新法は内閣総理大臣に広範な権限を委ねることを認める内容です。重要とされる施設の周囲1キロを調査するだけ――と捉えている人がいるかもしれませんが、そうではありません。区域は概ね1キロとしていますが、調査対象者に1キロの縛りはなく、関係者だと見られれば調査範囲は際限なく広がる。調査内容についても、(政府が)必要があると認める時は「あれ出せ、これ出せ」と求めることが出来る内容のため、事実上、限定されていません。


 ――政府、与党は「他国でも同様の法律がある」と説明しています。  

 確かに諸外国で似たような法律を持っている国では、例えば土地売買の時に許可制のような形でチェックをかけています。しかし、日本の今回の法律は(売買時のように)権利変動があった時という限定はなく、恒常的に網羅的に調査できるようになっています。


 ――なぜ、そういう内容になっているのですか。  

 施設などの機能を阻害すること(機能阻害行為)がないようにする、としているからです。これは土地売買の時だけチェックしていても分からないし、名前や住所、国籍を確認しても不審者かどうかは確認できません。そうなると、プラスアルファの情報、つまり、調べる側が「機能を阻害しない」と判断するために必要な情報を集めることになる。ほぼ無制限ということになりますから、当然、個々のプライバシーや思想信条も調査対象になるでしょう。調査手法についても縛りがないため、尾行を含めた行動監視はもちろん、職歴などの個人情報も情報収集される可能性があります。第三者からの情報提供も検討する、としていますから、密告的な手法もあり得るでしょう。

 

法案成立でも法の発動を許さないようにすることは可能  


 ――政府側に「怪しい」と疑われたら、個人情報を含む様々な情報が筒抜けになるわけですね。  

 私は決して陰謀論を主張しているのではありません。条文上は少なくとも、何ら制限がない内容になっていると指摘しているのです。政府側は否定していますが、政府側が否定するのであれば、もっと(調査対象や範囲などを)絞り込んだ条文にするべきで、政府が理解、認識していないはずはない。つまり、「そんなことは考えていません」と言っているだけです。基本的な人権を制約するような法律にもかかわらず、基準は曖昧で、施設の機能を阻害すると判断すれば中止の勧告や命令のほか、応じない場合は(懲役2年以下または罰金200万円以下の)刑罰を科す。全く論外です。


 ――この法律の成立によって最も影響を受けるとみられるのが沖縄県です。政府は米軍基地に反対する市民運動に弾圧を加えたり、萎縮効果を狙ったりしているのではないかとも指摘されています。  

 政府は(弾圧や委縮効果は)念頭にないと言っていますが、一番影響受けるのは沖縄県であることは間違いなく、防衛施設関係の運用に支障をきたすことがないよう反基地運動の人たちに歯止めをかけたいと考えていても不思議ではありません。政府側は否定するでしょうが、そういうことを意図してあえて法律の中身を曖昧にしたのではないかと断ぜざるを得ません。


 ――新法に対して、「外国人や外国資本から日本の国土を守ることになる」といった好意的な見方もあります。  

 外国人や外国資本からの土地購入の歯止めになるのかといえば、なりません。この法律は土地の取引自体を制限するのではなく、土地の利用の仕方を規制するのが目的だからです。従って(外国資本などが)土地を購入すること自体は禁止されていません。また、土地購入が直ちに安全保障上のリスクになるわけでもありません。


 ――法案は可決、成立しましたが、これから国民が出来ることはありますか。  

 たくさんあります。今後、新法をめぐって閣議決定したり、政令を作ったり、という手続きがあると思いますが、その都度、チェックして声を上げる。法律の可視化、透明化を図るほど、問題点が明らかになり、住民の批判は必ず高まるでしょう。さらに、この法律は関係行政機関や地方公共団体の協力を前提にしているため、地方自治体の首長や地方議会がどういう対応をとるのかも重要です。法の発動を許さない、法律を動かさないようにすることは可能だと思います。


(聞き手=遠山嘉之/日刊ゲンダイ)

 

▽馬奈木厳太郎(まなぎ・いずたろう)
  1975年、福岡県生まれ。大学専任講師(憲法学)を経て現職。福島原発事故の被害救済訴訟などに携わる。 
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菅首相の側近・小此木八郎氏が「横浜市長選」出馬の裏事情

2021-06-24 | いろいろ


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菅首相の側近・小此木八郎氏が「横浜市長選」出馬の裏事情
  あえて「カジノ反対」を打ち出した真意とは  


 22日、国家公安委員長を務める小此木八郎衆院議員(55)が8月に行われる横浜市長選に立候補することを表明した。小此木氏は神奈川3区(横浜市鶴見区、神奈川区)を地盤とする当選8期のベテランで、父は元通産相の小此木彦三郎氏。彦三郎氏は、かつて菅義偉首相が秘書として仕えた政治家であり、小此木氏とも家族ぐるみで関係が深い。

 現役の閣僚が、地方自治体の首長選挙に立候補を表明するという異例の事態となったが、それには自民党の候補者選びが二転三転したという事情があった。

 「自民党の横浜市議団からは、元TBSのアナウンサーで現在はフリーの渡辺真理さん(53)を熱望する声もありました。渡辺さんは横浜市生まれで、市内の中高を卒業。市のイベントでも司会を務めており、候補者として最もふさわしいとみられていました。あとは本人が首を縦に振るかどうかだったのですが、結局、うんとは言わなかった」(横浜市の政界関係者)

 現職の林文子市長(75)は2009年からすでに3期務めているが、無所属ながら選挙では自公の推薦を受けている。林氏は4選出馬にも意欲をみせているとも伝えられるが、自民党内部からは「多選批判」が起きており、候補者の選定が始まっていた。

 「菅首相に近い三原じゅん子参院議員(56)や、パンケーキブームの火付け役となった元参院議員の松田公太氏(52)の名前も取り沙汰されたが、内部で行った世論調査の数字が芳しくなく、林市長が無所属で出馬した場合は”勝てない”という見通しが強まった」(官庁関係者)

 候補者が定まらない中、神奈川県知事の黒岩祐治氏(66)にも出馬を打診したようだが、固辞されたという。そこで白羽の矢が立ったのが、小此木氏だった。

 だが出馬に関しては、菅首相との間でひと悶着あったようだ。

 「小此木さんも誰か候補者がいないか口説きに行ったそうですが、うまくいきませんでした。すると、菅首相は『(候補者が)いなかったら林さんでいこう』と発言をしたところ、小此木さんはかなり反発したと聞いています。(林さんが4選するくらいなら)小此木さんは『自分が横浜を変えたい』という思いが強くなり、立候補を決意して、菅首相も了承したようです。ただ、小此木さんはもともと、カジノ推進派です。しかし、野党も候補者を出してくるなかで、カジノ推進を旗印にしたら選挙を戦えないと判断し、『カジノ反対』の立場で出馬を固めたとのことです」(官庁関係者)

 横浜市はカジノを含むIR(統合型リゾート)の誘致を進めており、市長選の大きな争点でもある。だが、小此木氏は「反対」に回ることで、あえてIRを争点化させない戦略に出た、ということのようだ。

 「本音ではカジノを推進したい菅首相も『やむを得ない』となったようです。菅首相にとっては、もしお膝元の横浜で市長選を落としたら面目が丸つぶれです。選挙では何よりも”勝ち”を優先し、カジノについては、小此木さんが当選した後に諸情勢や世論の推移を見極めながら改めて考えればいい、ということのようです。菅首相としては、気脈の通じた小此木さんが市長になれば、その後のIRの扱いも含め、くみしやすいと考えたのだと思います」(前出・官庁関係者)

 とはいえ、IRに関しては地元議員の思惑もさまざまで「一枚岩」とはなりそうにない。自民党の中にはIR誘致を進めてきた横浜市議も多くいて、「市議の半分くらいは小此木氏についているが、一本化できるかどうかは、まだこれから」(前出・横浜政界関係者)と波乱含みの様相だ。

 いくら地元の横浜に熱い思入れがあるとはいえ、現役の閣僚という立場をなげうって、地方自治体の首長へとくら替えするのは、小此木氏にとっても相当の覚悟が必要だったはずだ。政治家の「待遇」としてもプラスになるのかは不透明だ。

 横浜市総務局によると、横浜市から林市長に支払われた給与は昨年1月から12月の1年間で2772万円だったという。元国会議員秘書は待遇についてこう話す。

 「国会議員の平均所得が約2400万円なので、横浜市長の給与はこれより少し多いくらい。だけど、小此木さんはお金に困っているわけではありません。横浜市は人口377万人の政令指定都市であり、市長というのはその大都市における大統領のようなものです。横浜市中区で生まれ育ち、横浜市に思い入れもある小此木さんは、市長の座に政治家としての夢を託したんでしょう。それに秋には総選挙があるため、閣僚でいられる期間は残り3~4カ月くらいだろうし、(閣僚の座は)そんなに惜しくないという判断もあったと思います」

 閣僚という“名”よりも横浜市長という“実”を取りにいった、というところか。いずれにせよ、小此木氏の「カジノ反対」の姿勢が本物か否かは注視が必要であろう。


(取材・文=AERA dot.編集部・上田耕司) 
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植山直人氏「政府は命をなんだと思っているのでしょうか」

2021-06-24 | いろいろ


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植山直人氏「政府は命をなんだと思っているのでしょうか」
 私が東京五輪に断固反対する理由 


   植山直人(全国医師ユニオン代表)  

 私が代表を務める全国医師ユニオンは5月13日、政府に対し「東京大会中止」を求める要請書を提出しました。医療現場にいる我々は非常に大きな危機感を抱いているからです。

 そもそも、関係者のワクチン接種が東京五輪開催の大きな鍵になっているようですが、ワクチンは万能ではありません。モノによっては90%ほどの有効性があるにせよ、選手だけでも1万人超。関係者を含めて5万人ほどの全員が接種したと仮定しても、10%にあたる5000人は感染リスクが付いてまわるのです。

 変異株だって続々と登場している。

 これまでコロナ対策で世界的な評価を得てきた台湾やベトナムの牙城は、イギリス株によって崩壊しました。英国にしても、5月24日の段階で2200万人(成人の約43%)が2回のワクチン接種を終わらせており、ロックダウンは解除されようかという状況でした。それでも、インド株による感染拡大が進んでいる。

 変異株は感染力が強化したことはもちろん、ワクチンが効きにくい可能性すら示しています。


夏はただでさえ医療現場が逼迫する

 私が懸念するのは感染拡大だけじゃない。一年のうち、病院がもっとも忙しいのは冬と7月、8月です。例年、夏は熱中症患者の対応に追われ、どこの病院もてんてこ舞いになる。そこにコロナ対策が加わるのです。熱中症の症状は発熱やだるさなどで、コロナと似ています。そのため、救急隊が熱中症疑いの人に駆け付ける際はコロナも疑い、完全防備で駆け付けなくてはなりません。現場がますます逼迫するのは明白です。

 病床使用率に対しても大きな勘違いがある。これは「十分な人材がいた場合」という条件付きのものなのです。たとえば、医者や看護師が足りなければ「病床使用率70%」といっても、もう新規感染者を受け入れられないなんてこともある。医療現場はただでさえ人材不足で、1年半に及ぶコロナ禍で現場は疲弊しきっています。退職を余儀なくされる医療従事者は、これから増加するでしょう。

 他にも選手の隔離期間0日問題や、毎日受けるというPCR検査の不確実性……。不安要素を挙げるとキリがない。

 これまで、政府は何をしていたのか。PCR検査数、ワクチン接種率は先進国の中で最低レベル。ひとりの医師として恥ずかしい思いです。それでも、国民の犠牲を顧みずに五輪開催へ突き進み、いまだに観客の有無を議論している惨状――。

 いったいどこが「安心安全な大会」なのか。政府は命をなんだと思っているのでしょう。


植山直人(うえやま・なおと)
  1958年、福岡県生まれ。90年に鹿児島大学医学部を卒業。その後、救急医療、在宅医療、老人保健施設などに携わる。2009年、全国医師ユニオン創設時から代表に就任、現在に至る。ほかにドクターズ・デモンストレーション代表世話人、医師労働研究センター理事長など。
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「韓国は嫌い」と言っている余裕は日本にはない

2021-06-23 | いろいろ


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「韓国は嫌い」と言っている余裕は日本にはない  古賀茂明  


 G7サミットを機会に実現するのではないかと期待されていた日韓首脳会談は結局幻で終わった。しかも、韓国メディアが、日韓の間でいったん合意していたのに日本側が一方的にキャンセルしたと報じると、加藤官房長官がこれを全面否定して、韓国側に抗議するという最悪の終わり方だった。


 私は、事の真相にはあまり関心はないが、結果として首脳会談ができなかったのは、日本にとっては非常に残念なことだったと思う。その理由は、3つだ。

 第1に、中国の脅威が高まる東アジア地域の安全保障において、日米韓の協力関係は一層重要になっている。それにもかかわらず、日韓首脳が会うことすらままならないという現状は、一日も早く改善すべきだというのは自明のことだろう。

 第2に、米中対立が激化する中、両国は米国との同盟関係を基礎にしつつも、経済的には中国との良好な関係を維持しなければ生きて行けないという共通の立場に立つ。日本は米国一辺倒の姿勢で臨んでいるが、今後米中間で難しい判断を迫られることも増えるだろう。その時、日韓が共同歩調で米中と向き合えば、交渉力は飛躍的に高まるはずだ。

 第3は、韓国の経済的優位性が高まっていることだ。経済の絶対的規模で見れば、日本はまだ韓国よりずっと上だ。しかし、各国の物価水準の差を修正して実質的な比較を行うための購買力平価でみた一人当たりGDPという指標では、2020年には韓国が世界27位で、30位の日本を上回っている。また、ポストコロナの経済成長のカギを握ると言われる半導体で、韓国サムスンは圧倒的巨人となり、日本勢は足下にも及ばない。電気自動車の心臓とも言うべき電池でも、世界トップに君臨してきたパナソニックが、20年に韓国のLG化学に抜き去られた。

 先日の米韓首脳会談では、ムン・ジェイン(文在寅)大統領がバイデン大統領に対して、サムスンやLGなどが米国に巨額投資をするというお土産を用意して、その見返りに対北朝鮮経済協力の容認や韓国のミサイル開発の制限撤廃などを含む大きな外交成果を勝ち得たほどだ。

 一方、日本には、半導体や電池用の製造装置、部品、材料などで優秀な企業が多い。日韓が組めば、DX(デジタル・トランスフォーメーション)やグリーン革命を進める上で、強力なパートナーになれる。

 もちろん、日韓の間には、竹島、慰安婦、徴用工など問題が山積し、解決は容易でない。しかし、最近の徴用工訴訟では、日本企業に賠償を命じた大法院(最高裁)の判決とは異なる判断を示して原告の訴えが退けられた。これは、韓国側から関係改善を求めるシグナルだと見ることもできる。

 冷え切った両国関係を放置して得をするのは、中国や北朝鮮だけだ。菅義偉総理は、日本が大国だから韓国ごときに譲歩する必要はないと思いたいのだろうが、現実はかなり異なる。日本の産業はデジタル化でもグリーン化でも世界に後れをとり、もはや偉そうなことを言える時代は終わっている。頑なに対話を拒否しても、むしろ余裕がないことの証だと言われるだけだ。菅総理は、日本の未来に責任を負うリーダーとして、大局を見失わず、無条件でムン大統領との対話を早急に実現するべきだ。


※週刊朝日  2021年7月2日号


■古賀茂明(こが・しげあき)
  古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『官邸の暴走』(角川新書)など 
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