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美術館・ギャラリー・撮った写真や好きな絵、そしてひとりごと

オラファー・エリアソン ときに川は橋となる

2020-09-13 | 【アート】美術館・ギャラリー・レビュー
東京都現代美術館へ、「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」を見に行ってきました。



前に見たのは、原美術館にて2006年2月!
まだ大学生のときだよー 若かったよー
音楽を聴くような、体感する作品だった記憶がありますが、今回は「環境」「地球」「気候」といった作者からのメッセージを強く感じる企画展でした。




「あなたの移ろう氷河の形態学(過去)」2019年
「メタンの問題」2019年
「あなたの移ろう氷河の形態学(未来)」2019年

入場してすぐ目にするのは、淡く優しい絵画が3枚。
グリーンランドの氷河と絵具が紙の上で溶けていくことでできた作品で、このあとの展示室で気候変動により氷河が20年の間にすっかり減っている現実をみると、この滲みをただぼんやりと見てはいられなくなります。




「溶ける氷河のシリーズ 1999/2019」2019年

先の作品のもっと近くに展示すればよかったのに、後半の方に写真シリーズで展示されてました。
20年の間に確実に氷河の位置が後退している…



「太陽の中心への探査」2017年

たぶん、この企画展の中で一番のフォトスポット。みんな写真撮ってた。
多面体に反射した光がいろんな色になって壁にも投影されててキラキラきれい。
光は太陽光発電でまかなっているそうな。




「ときに川は橋となる」2020年

暗い部屋の大きなカーテンをまくって中に入ると、中央に水たまり、見上げるとスクリーンに水の波紋が12個映し出されていました。

水たまりが揺れるのは断続的で、前の揺らめきがあるうちに次に揺れたり、しばらくしーんとしてたり。
暗い空間なので、ぼんやりと水面と頭上を見比べたりしながら、なんで12個なんだろう?
時計的な?
星座とか?
1年を月で表して12ヶ月とか?
違うと思うけど、干支も12だわ…
などとぼーっと考えてました。


見て、中に入って、考えておもしろい企画展でした。

オラファー・エリアソン
ときに川は橋となる@東京都現代美術館
2020/6/9〜9/27

ピーター・ドイグ展

2020-09-05 | 【アート】美術館・ギャラリー・レビュー
かなり久しぶりに、美術館へ行ってきました。
六本木の塩田千春展以来なので1年振り!
こんなに美術館行かなかったことって今までない気がする…
そしてやっぱり美術館ていいなぁ
絵っていいなぁと改めて思ったのでした。




行ったのは、「ピーター・ドイグ展」@東京国立近代美術館
ピータードイグは知らなかったけど、パンフレット見て一目惚れ。

1959年生まれのイギリスの現代アーティスト
展示室に入ってまず、大好きなムンクの匂いを感じて「こりゃわたし好み」と確信。
期待感が溢れてしまったので、急いで入り口に引き返して、音声ガイドをゲット。
ナレーターはのんさんでした。
あまちゃん懐かしい…




左 「エコー湖」1998 個人蔵
右 「カヌー=湖」1997-98 ヤゲオ財団コレクション

湖の向こうからこちらに向かって叫んでる人がいる。
森や湖の色はそんなに暗くはないし、
水面に鏡のように映る様子とかきれい、なはずなんだけど、なんだろうこのザワザワする雰囲気…

近づいてみると、手を口元にあてて叫んでいると思ってた人物は、どうやら頭を抱えてるようだと気付く。
何があったんだ。
これは、、、湖にスマホ落とした、とかそんな話ではなさそうよ。

それと対のように展示されているのは、湖に静かに浮かぶボート。
無人…と思ったら、人がいる。
腕をダランとして。。事件の香り

ムンクの絵ほど、絶望的じゃないし、ぱっと見美しい景色を見ている気がするのだけど、見れば見るほど、これは心象風景なんだと気付く。
これはピータードイグ自身の経験や思考の表現なのか、
それとも鑑賞者それぞれに心当たりを探させるアイテムとしての絵画なのか。。




「馬と騎手」2014 個人蔵

この被り物はなんなんだろ…
こんな格好で馬乗る人、いないよね…
占いページの挿絵とか、タロットカードの図柄にありそうな不思議な絵。
けっこう大きい絵で、思わず足を止めてしまった。
馬の黒と、背景の青がきれい。
ストライプみたいに背景の青が3分割されていたり、下の方の長方形の組み合わせがおしゃれで、なんか凝っている。




「赤い船(想像の少年たち)」2004 個人蔵

映画や、紙面でみかけた写真等、触れたものの中からイメージを切り貼りして作品にしているらしい作者。
これは、カリブ海の島国トリニダードトバゴの風景が現れたもの。
タイトルに丁寧に「想像」と書いてあるので、6人の少年は作者によって生み出された登場人物なんですね…

島国の暮らしの風景と思ってみれば、自然と人の穏やかな一瞬ですが、
想像上の風景と宣言されると、最初のほうにみた緑のボートと腕の記憶が蘇ってきて、なんだか穏やかじゃない予感もしてきます。



「スピアフィッシング」2013 作家蔵

またボート!
しかもこれは完全に自信をもって、不吉な感じがするよ!
ボートの緑、ウェットスーツのオレンジ、頭からかぶった黄色の何か、空の青と黒い水面、さりげなく下弦の三日月
色のお手本みたいにきれいでマティスかな?!と思うけど、画面全体から漂うこの陰鬱な感じ…
これは作者のみたものをもとに描いた作品のようですが、この瞬間を残しているのがすごく現代アートという感じに思えて。
スピアフィッシング=素潜りの漁なら、水中の様子や、まさに獲物を捕らえたところとか、他に描く瞬間いっぱいありそうなのに。
ウェットスーツの人は直立不動で銛を構えているし、同乗者はミイラみたいに姿勢良く座っている。
漁という生のイメージがまったく伝わってこなくて、黒い水面と三日月ばかりが記憶に残るちょっと怖い絵だと思いました。


今回の日本初の企画展にあたり、作品の展示順や並べ方を、作者本人は展示室の色合い等を気にしていたそう。
年代順でも、描かれたモチーフ毎でもなく、作品同士の色やそれによって生まれる雰囲気を大事にしているのかな。
そう思うと、このアーティストが「見たことのない世界を見せる」と評される理由もわかる気がしました。

新型コロナの影響により、会期延長中
2020/10/11まで開催中です。
行ってよかった。おすすめです。