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『世界』を読む会

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安倍政権の一五教育法と教育現場(池田賢市・大森直樹・平山瑠子)を読んで

2015-01-03 12:02:37 | 日記

巻さんからの投稿です。

 

安倍政権の一五教育法と教育現場(池田賢市・大森直樹・平山瑠子)を読んで

     『世界』11月号                         巻  和泉

 

 第一次安倍政権が教育基本法を改定して、戦後教育を根底から覆す動きを始めたという認識を当時から僕は持っていた。しかし教員がほとんどその意味が感じられない「研修」に追いまくられている実態があるが、その根拠たる「教育職員免許法及び教育公務員特例法の一部を改正する法律」が、第一次安部内閣によって作られたものだったことは知らなかった。第一次安部内閣が六本の教育関係法を成立させて、第二次安部内閣がすでに九本もの教育関係法を成立させていることは、この論文を読むまで知らなかった。

 冒頭に超格差社会米国で暮らす人々の不満を戦争と愛国心に「解消」する仕組みが紹介されている。幼稚園と小学校では星条旗が掲げられ、子どもたちは(そこに通っていた日本人の子も)出征する米国兵士に手紙を書き、戦地の兵士から返事が届」くのだという。子どものうちに国への忠誠と、戦地で闘う兵士への親愛の情を培うシステムである。

 元新日鉄社長三村明夫(元中央教育審議会会長)の発言(『群雍』2013年11月)が生々しい。「…成長の可能性のあるところは海外しかない。…企業は海外に出て行かざるを得ない。…海外に人材を投入し、海外の企業を買収し、国内のものを海外に移している。そうしたグローバリゼーションが進行している。それは急速で、これに対応できる人材を集めているのですが、基本的な学力に問題があったり、技術系でも物理を学んでいない学生がいたりして、学生が身につける学力・能力がバラバラなんですね。…環境は大きく変化しています。それに対して大学は、きちっとした対応が出来ていない」と不満を述べている。こうした発想の基づいて、小学校から大学までの日本の教育が「改革」されている。しかしこんなおかしなことはない。企業が海外に出て行くのは、何も日本の社会や国民のためを思ってのことではない。もっと安い労働力を求めて、さらには購買力の落ちた日本に見切りをつけて、もっと売れる市場を求めてのことだろう。日本を見捨てて海外に出る見返りとして高い税金を払うというのなら、その言い分の何割かは認めてもいい。しかし彼らはさまざまな抜け道を使って税金を払おうとしないどころか、すでに十分安い法人税をさらに低くせよと要求している。タックスヘイブンを利用して、税逃れをしているその上にである。「盗人猛々しい」とはこのことだ。グローバルな人材が必要なら自分の金で養成するというのが筋だろう。著者がいうように、「現実の小・中・高・大における学生と子どもたちの圧倒的多数は、グローバルな人材となるために日々の生活を生きているのでない」のである。

 どうも我々は数字を交えた「グローバル」な議論にごまかされがちである。しかしグローバルな展開をしているのは、強欲で倫理性のかけらもない多国籍企業であり、ハゲタカにもたとえられる金融ファンドなどである。これらが政治を金で買い、私利私欲をあたかも公正な装いで社会に押しつけている様子は、曇りのない目で見ればどこにでも見てとれる。「私たちはだれのために、何のために生きるのか」ということを、今ほど日々の生活の隅々で考えるべき時代はないのではないか。あらためてこんなことを考えさせられた。

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