ほとんど友達と遊ぶ事がなかった小学生時代。
かつて通っていた保育所で、夏の夜夕涼み会が催された。
私は幼い弟の手をひいて、その小さな園庭に所狭しとひらかれた出店に目を輝かせた。
最初にチケットを渡されて、順番に店をまわった。
懐かしい先生の顔があった。
すっかり家庭環境が変わった私。
皆知らないだろうなぁ。
いや、狭い街だから噂になってるかなぁ。
ごった返した保育所の中で、たくさんの大人がいたから、安心していた。
弟に好きな所まわって良いよと一人で行かせた。
時折弟の居場所を目で確認していた。
そこにいるはずの弟が居ない。
心臓が止まりそうだった。
急いで大人たちに伝え、一斉に探してもらった。
保育所の出入口は一応チェックされていたが、誰も一人で出て行く幼い弟の事を見ていなかった。
保育所から家までの1キロの道程を、弟は一人で暗い中歩いて帰っていた。
私はホッとした。
覚えていないが父親からは殴られたのではないか。
やはり私は当たり前に楽しむ事とは縁が無い。
そんな事をふと思い出した。