村上文緒はアマデウス先生の嫁(仮)

いい風が吹いていますよ~ 村上文緒

2月14日(土)のつぶやき

2015-02-15 04:05:43 | 日記

ソナタ ヘ長調 K.(46e) このソナタ自体は、モーツァルトのウィーン滞在中 (12歳) の作品で、楽譜の表紙に父親の手で完成の日付けがつけられている。楽譜は2段に書かれており、上段が高音部記号 (ト音記号)、下段が低音記号 (ヘ音記号)で、上段にはヴァイオリンと書かれ、


下段にはバス(チェロ)と書かれている。だから、この曲をモーツァルトの指定どおりに演奏するとすれば、ヴァイオリンとチェロとの二重奏によるソナタということになる。しかし、ヴァイオリンのパートをピアノの右手に見立て、バスのパートを左手に見立てれば、


1曲のピアノ・ソナタと読めないことはない。事実これをピアノ・ソナタと考え、その形で出版した学者 (ヴァレンティン)もある。それが正しいのか正しくないのは別として、モーツァルト少年の手で二重奏のソナタとして書かれた曲を、ここでピアノ・ソナタとして扱うのは、そのあたりを踏まえてである


ソナタ ハ長調 K.(46d)とK.(46e)では、(ピアノ・ソナタとして見た場合)第1曲ハ長調のほうが、ずっと難しくできている。16音符で細かく動きまわり、ほとんどメロディらしいものを持たない第1楽章の構造は、前古典期の器楽の書法を思わせる。


その意味ではヘ長調のソナタでは主役が8分音符に移るので曲想はゆったりしているが、依然としてそれは前古典的発想である。しかし、ヘ長調のメヌエットのトリオ(トリオⅡ)では、3拍半に及ぶ長く延ばす音が高音部にも低音部にも使われており、


それを見ていると、これがピアノ (当時は主にチェンバロ)用に作られたとするヴァレンティンの説は怪しく思われてくる。なぜならば、チェンバロでは、そのように長く延ばす音を使うことを避けるのが慣行で、モーツァルトの少年時代のチェンバロの曲も、せいぜい2拍程度しか延ばす音はない。


それ以上延ばす時はトリルにするのがふつうであるが、その種の操作も加えられていないのでは、当時のチェンバロのようにソステヌートに弱い楽器では無理であったろう。いずれにしても、これらの2曲は、形も小さく、作りも単純で、のちのソナタ形式の持つ"複主題と展開部"といった要素も見られず、


終始単主題で終わってしまうのは、あくまで前古典的であり、モーツァルト少年が時代を逆行したかのような感じを与える。