かわな ますみ / 花冠同人

かわな ますみ の俳句
  ブログ句帳 

俳誌「水煙」九月号(通巻三百号)掲載作品

2008-08-07 15:11:17 | 俳誌「水煙」掲載作品
「星涼し」
星涼し父の土産の匂袋
深々と杜ひらき割る那智の滝
羊歯青し飛沫絶えざる滝の下
紺青の傘をすらりと五月雨に
ランドセル背負う車椅子枇杷は黄に
紫陽花の碧き珠けさ大きなり
噴水の天辺のさき空青き

 沢蟹抄
星涼し父の土産の匂袋
 正子先生「選後に」より
ランドセル背負う車椅子枇杷は黄に
 車椅子に乗った子がランドセルをしょっていることに、心を動かされる。見れば枇杷は黄色に色づき、季節はやさしく子を見守るようだ。
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俳誌「水煙」八月号掲載作品

2008-07-11 19:22:34 | 俳誌「水煙」掲載作品
「酸素の音」
灯されてたんぽぽの影まるまると
蒲公英の絮よ此処から先は空
夏に入る酸素の音の逞しき
青葉雨けさより赤き車椅子
枕辺に摘み来し花の香の涼し
この道をまさらな若葉風と行く
スープにも粥にも紫蘇の香の蒼し
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俳誌「水煙」七月号掲載作品

2008-06-11 20:00:00 | 俳誌「水煙」掲載作品
「初燕」
道ひろく春山絶えず正面に
春の田の傍に積まれしもの多し
段畑の最上段は桃の花
影もたず白蝶光のみを撒く
蒲公英の陽の色を挿す枕許
どの路へ入るも躑躅の朱烈し
雨脚を鋭角に切り初燕
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俳誌「水煙」六月号掲載作品

2008-05-09 19:30:00 | 俳誌「水煙」掲載作品
「初桜」
下萌の川原ひろびろ橋渡す
雲の来て藍を濃くする春の川
芽柳を高く吹き上げ光とす
便りには雲の白さと初桜
卒業に旗の大きく両の門
梅東風を浴びて御礼の絵馬掛けし
敷石の小雨しらしら梅の苑

 正子先生「選後に」より
下萌の川原ひろびろ橋渡す
 ようやく草が萌え出した川原。そこに長い橋がかかっている。
川原がひろびろしていることはもちろん、橋ものびやかである。
下萌の川原であるからこそ、このような広さが見える。

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俳誌「水煙」五月号掲載作品

2008-04-06 22:00:00 | 俳誌「水煙」掲載作品
「春夕陽」
春雪に染まり初めたる真夜の庭
淡雪の燈に近づいて耀やかに
雫みな枝に光れる春みぞれ
運びつつ香をきく母の鉢の梅
扇より柳眉のぞかす古雛
永き日や窓に絶えざる靴の音
竹林をさらさら越ゆる春夕陽
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俳誌「水煙」四月号掲載作品

2008-03-09 18:50:37 | 俳誌「水煙」掲載作品
「はつ雪」
箸置に独楽を選んで祝箸
窓越しに手を振るナースお元日
はつ雪よ真下の屋根を見てごらん
凩に富士きらきらと近づきぬ
番鴨末広がりの水尾を曳き
葡萄枯れ富士の形の棚光る
雨晴るる梅の蕾の触れ合いて

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俳誌「水煙」三月号掲載作品

2008-02-22 18:00:00 | 俳誌「水煙」掲載作品
「冬の鳥」
甲斐駒の空に眩しく冬耕す
冬嶺へ白き撞木のまつすぐに
朱く照る枯山仰ぎ甲斐を発つ
白菜の誰のものともなく生れり
冬の鳥しぐさ可憐にギイと鳴く
窓越しの牡蠣割る音に眠りたり
母の拭く其処より明かる年用意

 冬耕抄
甲斐駒の眩しき空に冬耕す
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俳誌「水煙」二月号掲載作品

2008-01-29 17:26:06 | 俳誌「水煙」掲載作品
「五線紙に」
五線紙に写譜ペン太く寒燈下
手袋に鴉のくれた実の紅さ
水鳥の斜めに森へ入る葉音
空碧く落葉跳ねたる石畳
冬晴の母子像に掛く千羽鶴
文学館どの窓からも冬紅葉
海のぞむ柵の意匠の冷たさに

 富士抄
五線紙に写譜ペン太く寒燈下
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俳誌「水煙」一月号掲載作品

2007-12-27 20:00:00 | 俳誌「水煙」掲載作品
「零余子炒る」
あきかぜに槐からから実を鳴らす
秋雲を流しゆるがぬ水平線
土の香を甦らせて零余子炒る
十三夜湯をはや済まし静かなり
後の月明かに街は子の多し
今宵より隣家独りに胡桃割る
 転居の友へ
渡り鳥背の太陽の変りなき

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俳誌「水煙」十二月号掲載作品

2007-11-15 21:26:25 | 俳誌「水煙」掲載作品
「秋嶺」
秋嶺や影あたらしき甲斐盆地
満月へ両手を広げ照らされむ
幾たびも窓へ野分の枝迫る
コスモスの花びら芯に陽を集む
十五夜に月にも熱のありしこと
稲田風果てに群峰連なれり
秋の雲ほどけしときの山近き

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俳誌「水煙」十一月号掲載作品

2007-10-15 19:00:00 | 俳誌「水煙」掲載作品
「秋日傘」
花火の間長くて次の大きなる
大空に雲ほどけゆく秋の朝
秋日傘ほどよく褪めし花模様
恥らうて蝉見せし児の夕日中
どの窓も声溢れさす揚花火
母の掌の薄きにどさり黒葡萄
かなかなを鳴かせ一樹の雨上がり

[水煙作品欄]
うすうすと空の青抜け花火待つ
からからと碧く鳴る庭夜の秋
水浴びの鳩まだ去らず草の絮
空に触れ槐たちまち降りそそぐ
すこし癒え居間より眺む遠花火

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俳誌「水煙」十月号掲載作品

2007-09-10 20:00:00 | 俳誌「水煙」掲載作品
「きちきち」
きちきちを追うて着きたる祖父の墓
ヴェネツィアングラスの藍に鬼灯を
療苑を貫き越えぬ黒揚羽
門仰ぎ旅の終りの泰山木
その下に海あることを遠花火
公園の門を渡れる七夕竹
紅も黄も見ゆるよ供花の白百合に

 桑実抄
きちきちを追うて着きたる祖父の墓
 正子先生「選後に」より
祖父の墓は、草のある道を辿って着くのだろう。きちきちが、行く手をキチキチと飛んで、案内をするよう。それを少年のように追いかけてゆく面白さがある。きちきちは祖父のお使いかもしれない。
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俳誌「水煙」九月号掲載作品

2007-08-09 22:00:00 | 俳誌「水煙」掲載作品
「桜の実」
光りつつ樹を離れむと桜の実
卯波より揚がる伊佐木の黒光り
雲の峯追うて何かを見逃せり
高梯子担ぐ庭師の日灼顔
枕辺に涼しき色の花籠を
夏至明けの寝静まる窓水色に
山峡の一家の植田陽を返す

 墨東抄
枕辺に涼しき色の花籠を
 正子先生「選後に」より
山峡の一家の植田陽を返す
 山峡なので「一家の植田」に、つつましい田が想像できる。植田に風が渡り、陽をよく返している。陽に恵まれて、これから夏を過ごして、実りの秋へ豊かに稲が育っていくことであろう。単なる写生でなく、植田の一家にも心が及んでいる。
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俳誌「水煙」八月号掲載作品

2007-07-14 15:00:00 | 俳誌「水煙」掲載作品
「飛行船」
つばくろの声に患者ら空仰ぐ
おいしいを幾度も云うて夏に入る
新緑に見え隠れする飛行船
ヴィオロンと青葉と古き公園に
紫陽花のまず葉の色に咲き初めぬ
針涼し濃き花柄の生地を裁つ
通夜の場へ辿り着けずに雷の下

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俳誌「水煙」七月号掲載作品

2007-06-09 21:00:00 | 俳誌「水煙」掲載作品
「黄蝶」
筏ともならず落花の流れけり
風も陽も透ける薄さに初蝶来
高きより降りくる黄蝶ときに浮き
小手毬の蕾あまねく空のぞむ
小手毬に幾通りある風の向き
燕来ぬ白衣寝衣の此処にまた
懐かしき人と飛燕の話から

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