かわな ますみ / 花冠同人

かわな ますみ の俳句
  ブログ句帳 

俳誌『花冠』八月号(第364号)掲載作品

2015-07-30 10:00:00 | 俳誌「花冠」掲載作品
「少女のマフラー」
掛け出して少女のマフラー夕空へ
寒晴の雲を讃えつ通院路
青天に銀杏裸木枝払われ
夕映えを梅の蕾も受けとめる
残雪の凹凸に影松林
桜の芽越してまっすぐ陽の来たる
信号の向こう大きく辛夷咲く
花李オフィスの朝に影ひろく
木の芽雨土の匂いの来ておりぬ
風光る部屋のみどりの色新た

 正子先生「選後に」より
筋肉のひかり夏服から伸びる
夏服の袖から出た腕が目に眩しく映る。それが「筋肉のひかり」だ。「夏服から伸びる」の表現から、むしろ女性のしなやかな腕を想像する。
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俳誌『花冠』四月号掲載作品

2015-04-16 21:12:43 | 俳誌「花冠」掲載作品
「鰯雲」
高架路を幾たびまたぐ鰯雲
月食を同窓会に秋の暮
店先の白木槿散り弁当屋
新しき街の秋気に仮装して
高熱と医師の静けさ窓の秋
厨房に無言のひらめ暮の秋
鮃そぎ明日立冬の静かさに

 菜花抄
寒晴の雲を讃えつ通院路

 正子先生「選後に」より
寒晴の雲を讃えつ通院路
 寒晴の青空に浮かぶ雲の美しさは、通院とは言え、久しぶりの外出の身に、「讃える」ほどの美しさだった。そんな雲を見た嬉しさ、心のはずみが伝わってくる。

 花冠月間最優秀作品
 十二月賞
★手袋の手で鹿を描く幼子ら
 動物園で鹿の絵を描いているのだろう。手が冷たいので、手袋をはめたまま絵を描く光景はほほえましい。幼い絵にも愛らしさが加わったことであろう。
(高橋正子先生選評)

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俳誌『花冠』一月号掲載作品

2014-12-12 20:00:00 | 俳誌「花冠」掲載作品
「桔梗一輪」
赤味さす眉月七月の街に
到来の菜を香らせ夏座敷
花槐咲きしばかりの碧き白
高架路をカーブしかなかなの森へ
隙間なく里芋積まれ届きたり
曼珠沙華遺しお壕の草苅らる
父のブランデーグラスに桔梗一輪

 正子先生「選後に」より
 新しき街の秋気に仮装して
 「新しき街」は実際に新しく開発された街としたい。「仮装」して歩く人たちは、日本にも広まってきたハロウィンを楽しむ人たちなのだろう。日常から離れ秋気に「仮装」して歩くのも現実世界の中の新しい世界だ。
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俳誌『花冠』十月号掲載作品

2014-09-14 20:00:00 | 俳誌「花冠」掲載作品
「花辛夷」
花ふぶき車に触るる音うれし
花の塵はなれし枝の影を載す
横浜の小径まがれば花辛夷
菜の花の向こうの富士を見降せり
てのひらを新樹の幹に女学生
あす立夏山椒の苗を植えつけぬ
汁椀にますます蒼し山椒の芽
山法師樹下にランチを広げたり
迷い来て寺に泰山木の花
桐の花母と校歌を歌い継ぐ

 蜻蛉抄
てのひらを新樹の幹に女学生

 正子先生「選後に」より
てのひらを新樹の幹に女学生
 女学生と新樹がまぶしい。女学生の柔らかなてのひらが、傷つくのもいとわないのだろうか、新樹の幹に触れている。

 一句鑑賞
中庭に木槿の白を散らしたり
 花木を植えて四季を感じられる閑静な中庭に真っ白な木槿が散っている。散っている木槿に静かによせて来る初秋の風情と涼しさを感じます。(康水さま)
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俳誌『花冠』四月号掲載作品

2014-03-17 20:00:00 | 俳誌「花冠」掲載作品
「雪一枚」
外套を叩き芝居の雪一枚
お元日寝衣寝具をまっさらに
凧揚の空に続く多摩川の空
ドアマンの手は冬晴を指しており
路地曲がり銀杏落葉の一色に
鰯雲ほどけ大きな青空へ
俎板に骨断つ音の冷やかに
裏返す鮃の白さ冬近し
風一陣過ぎ富士山に秋のいろ
野分中ときに閑かな音の来ぬ

 早梅抄
外套を叩き芝居の雪一枚

 正子先生「選後に」より
外套を叩き芝居の雪一枚
 外套を叩き軽く外出の埃を払うと、芝居のときに振りまかれた雪の一片がはらりと舞い落ちた。芝居の雪が作者のコートに降ったわけだ。 観客も芝居の中に取り込まれた格好で、さぞやよい舞台であったろう。

 高橋正子俳句鑑賞
立春のピアノの弦のすべてが鳴る  正子
 ピアノの鍵盤がすべて押されるのは、調律時くらいでしょうか。でも、その弦がいちどきに「すべて鳴る」瞬間があります。ピアニストも、倍音を聴き、弾かない弦を共鳴させるべく心を砕きますから、そのように響いたら嬉しいことでしょう。澄んだ陽と程よく乾いた空気の内に、弦の全てを鳴らすピアノ。こよなく明るい立春です。(ますみ)

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俳誌『花冠』一月号掲載作品

2013-12-19 21:10:11 | 俳誌「花冠」掲載作品
「梨の荷」
秋風に洗濯物のやさしい色
秋澄みぬ橋の向こうの船までも
まるまると両の掌に茄子包まるる
梨の荷を積みトラックの走りゆく
吹き抜けをつらぬくほどに七夕竹
夕暮れの空澄みゆきて遠花火
白木槿その門口を掃きいたり

 帰燕抄
梨の荷を積みトラックの走りゆく
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俳誌『花冠』九月号(創刊三十周年記念号)

2013-09-10 20:00:00 | 俳誌「花冠」掲載作品
「スープ炊く」
花槐メトロ出口に降りそそぐ
堂々と咲きのぼるいろ立葵
新じゃがとバター香らせスープ炊く
獣医へと曲がりし角に額の花
額の花朝日に影を濃く映す
青梅雨を語るひと日よ伯父の来て
青あらし世界の回る音がする

花冠合同句集より
 自選十句「一葉忌」
雪礫空に返したくて放る
残る鴨みずから生みし輪の芯に
ものすべて光らせ来たる木の芽風
ラムネ飲むきれいに響くところまで
プールから花のタオルの中に入る
とんぼとんぼ向う山まで透き通る
刷かれきてここより鰯雲となる
水のいろ火のいろ街に秋燈
脱稿をこの日と決めし一葉忌
音立てて甲斐全山の芽吹きけり

 俳句と私
音大在学中に病を得ました。演奏はもとより多くの表現が困難となり、最短の詩とよばれる俳句へ心惹かれました。外出、会話、筆記のままならない私にとって、よすがはインターネット。検索で最初に辿り着いたこの句座が、行く手と重なったこと、奇跡のようです。おかげ様で私は俳句を、音楽に於いて目指した一直線のまま、変わらず進む世界と捉えております。花冠に出会い皆さまと勉強させて頂き、幸せに存じます。
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俳誌『花冠』八月号掲載作品

2013-07-12 20:33:32 | 俳誌「花冠」掲載作品
「夏蜜柑」
はつ夏や少年ピアノを弾き止まず
白ワインそそぎ煮詰める夏蜜柑
けさ晴れて沿道万緑となりぬ
緑蔭の先は明るき聖橋
葉桜の影を踏みおり仰ぎおり
梅雨に入る今年は忌日より早く
きらめきは白露草の蕊の碧

 夏潮抄
はつ夏や少年ピアノを弾き止まず

 正子先生「選後に」より
はつ夏や少年ピアノを弾き止まず
 ピアノの音とはつ夏が「少年」の初々しさを美しく仕上げている。少年の意志によってひき続けられるピアノ。「弾き止まず」に、ピアノ線のような強さがある。
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俳誌『花冠』七月号掲載作品

2013-06-12 10:00:00 | 俳誌「花冠」掲載作品
「菖蒲抱く」
桜蘂降るを載せきしボンネット
高速路次々走り風光る
八重桜どっと大きな風に散る
春風や髪に挿さりし花の蘂
春日傘ひかりを飛ばしくるくるり
葉桜の影蒼々と帰宅の途
エレベーターホールに菖蒲抱く人ら

 正子先生「選後に」より
春日傘ひかりを飛ばしくるくるり
 「ひかりを飛ばし」は、春日傘らしい。柔らかいようだが、日傘のいる日には光は強い。それが「飛ばし」となって、くるくる回して楽しむ余裕もある。
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俳誌『花冠』六月号掲載作品

2013-05-10 20:38:52 | 俳誌「花冠」掲載作品
「春宵の窓」
初ざくら写してポケットにしまう
きらきらと春風を蹴るスニーカー
紫木蓮咲きて患者も医師も樹下
両輪に花屑つけし車椅子
春宵の窓より未だ子らの声
空へ触る工場の跡の花こぶし
木の家の建つ音高く春天へ

 正子先生「選後に」より
初ざくら写してポケットにしまう
 「しまう」がいい。写し撮った初ざくらをうれしく、また大切に思う気持ちが一読伝わってくる。瀟洒な句だ。
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俳誌『花冠』五月号掲載作品

2013-04-13 10:00:00 | 俳誌「花冠」掲載作品
「莢隠元」
水仙の低きに咲くを見つけたり
多摩川の流れて岸に梅真白
今朝立春ゆきし役者の大きさに
浅春の客人を待ち煮染め炊く
おにしめに莢隠元の香のみどり
朝食の卓にひかりと梅の香と
しだれ梅なれど空指す一輪に

 薄氷抄
水仙の低きに咲くを見つけたり

 正子先生「選後に」より
水仙の低きに咲くを見つけたり
 この句の生命は「低きに咲く」にある。低いところは、木の下か、道の下か、幾分の湿りもあるだろう。そういったところに咲く水仙には、日向の水仙よりも陰影を帯びた魅力がある。
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俳誌『花冠』四月号掲載作品

2013-03-17 20:00:00 | 俳誌「花冠」掲載作品
「窓辺のパセリ」
俎板に林檎さりさり切られけり
次々と花芽は雪を弾きけり
車椅子掻かれし雪の間を往きぬ
冬鳥の腹の丸さを耀かす
山茶花の散つて明るき家路なり
朝やさし枝垂るる先に梅一輪
春隣窓辺のパセリ少し摘む

 寒禽抄
俎板に林檎さりさり切られけり

 正子先生「選後に」より
俎板に林檎さりさり切られけり
 「さりさり」が林檎の本質をよく表している。俎板に薄く切られた林檎は、色も香も爽やかである。
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俳誌『花冠』三月号掲載作品

2013-02-15 17:55:46 | 俳誌「花冠」掲載作品
「一戸一戸へ」
紅葉散る空に一片雲来たる
裸木ののびやかに指す空深し
冬の日の強き斜めが窓に入る
人参の朱を透かせし泥払う
除夜の鐘一戸一戸へ響きゆく
富士山に月を掲げて初日の出
乗初の窓すこし開け清らかさ

 正子先生「選後に」より
冬の日の強き斜めが窓に入る
 冬の日が低くから斜めに窓に入ってくる。意外にも冬の日差しは強い。その実感をすっきりとよくまとめている。
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俳誌『花冠』二月号掲載作品

2013-01-04 08:00:00 | 俳誌「花冠」掲載作品
「裸木」
まつさきに咲く交番の冬椿
空青く冬紅葉みな眩しさに
冬天へ動物園の柵と枝
裸木と檻の向こうに雲なき空
冬晴に獣の母子の繋がりぬ
 ・浜松国際ピアノコンクールライブ配信を聴く
椅子きいと引く短日のコンクール
冴ゆる夜に跳ぶピアノありコンクール

 冬耕抄
冬夕焼一直線に街を射す

 正子先生「選後に」より
冬夕焼一直線に街を射す
 寒々とした冬の街を夕焼けが染める。街をすべて染める「一直線」の夕焼けが力強い。

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俳誌『花冠』一月号掲載作品

2012-12-16 17:16:22 | 俳誌「花冠」掲載作品
「野菊」
包まれて玄関にある野菊かな
木犀の香りし道を地図に指す
陽の色に近づき銀杏うす黄葉
金木犀雨を香らせ雨に落つ
秋深し平目くろぐろ横たわる
あたらしき花舗のひらける今朝の冬
冬夕焼一直線に街を射す

正子先生「選後に」より
包まれて玄関にある野菊かな
 摘まれたばかりの野菊であろう。そっと包んで玄関に置いてある。包まれた野菊にいまだある野の風情が生き生きとしている。
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