君が紡いだ物語
「もしもし、久米くん?」
2月14日、家に帰る準備をする俺にかかってきた電話は……
…君が紡いだ物語…
高校1年生になり、元中の奴とはだいぶ離れた。
男子はそこまでないが、女子はすぐにグループができる。その中でぽつんと、一人イヤホンをつける女。
化粧で目の周りがギタギタになっている女たちの中で、染まらない彼女はとても目立っていた。
無駄に人を寄せ付けない雰囲気。
そこに惹かれたのは、どぅしようもないこの俺。
「一目惚れした。」
彼女に言ったらどんな反応を示すだろう。
6月、だんだんとジメジメした時期になり、ブレザーを脱ぐ人も増えてきた。
放課後、一人教室に残り、ノートの整理をしている彼女にそっと近づき、
「一目惚れしました。付き合ってください。」
「ごめん。」
一言、そっと、彼女から自分だけに向けられた言葉に、胸が震えた。
「もしもし、久米くん?」
綺麗な声。ガヤガヤとうるさい教室に居る自分の耳には、彼女の声しか入らない。
「ぅん、そぅだよ、水谷さん。」
「あの、今、電話大丈夫?」
彼女はどこに居るのだろう。教室を見渡すが、そこに彼女の姿は見つけられない。
「大丈夫。」
「じゃぁ、ちょっと私の話、聴いててね。ある女の子の話なんだけど……
高校に入って、なかなかクラスに馴染めない一人の女の子が居ました。
内気で、友達を作るのが苦手だからです。」
………
「梅雨のある日、その女の子は、クラスの男の子に告白されました。
話したことは、2,3回、あるかないかの程度。女の子は、告白される前から、その男の子のことが気になっていました。
でも女の子は…その性格から、周りに人から噂されるのが嫌で、告白を断ってしまいました。」
「でもその後、女の子はその男のことをどんどん好きになっていました。
8ヶ月経ち、2月になった今、女の子はその時のことを後悔しています。
あの時、自分の気持ちに素直になっていれば。」
「…水谷さん…」
「2月14日、女の子は、勇気を出してその男の子に電話しました。」
「………」
「もしもし久米君、今日…バレンタインデーだね。
私からのチョコ、受け取ってほしいんだけど…。」
「水谷さん、今、何処?」
「…非常階段だよ。」
「すぐ行くから。水谷さんからのチョコレート貰いに。」
君が紡いだ物語は、何処までも優しく、俺の心に響いた。
これが最初に書いた、気に入ってないやつ。
なんか違うんだよ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます