消しカスビート_人参方程式-(ん)

農業高校生、のらりくらりと日々過ごしてます。

久々の小説

2013-08-23 18:20:09 | 短編小説

い出の君。

 

 あの日君と見た夕日を 僕は今でも忘れられない。

 

——2010年8月10日——

 体に纏わり付いてくる熱い風に包まれながら、仕事を終え、家に帰る人の車を見下ろす。タオルも持たず、Tシャツに半ズボンの秋人は、額から汗を伝わせていた。秋人の家から自転車で20分程の所のあるこの丘は、都会にしては珍しく、街全体を見渡せる。そこから見える夜景が綺麗だと、デートスポットとして人気があった。

 だがこの時間、まだ人影はない。秋人は、この丘から見える夕日が好きだった。人気のない静かな丘で、時は穏やかに過ぎてゆく。刻一刻と沈みゆく太陽が紅みを増し、灰色の街を鮮やかなオレンジ色に染めてゆく。ビルの窓に反射して、だんだんと広がってゆくオレンジ。やがて紅から紫に、紫から紺色に移りゆく空を見て、秋とは座っていたブランコから腰を上げた。小学生用とも言えるくらい低いブランコに、170㎝を超す秋人が座ると、何とも不格好だ。しかし、10年前からほぼ毎日欠かさずにこの場所に来ている秋人には、このブランコに座ることは最早習慣となっていた。

 20分ほど前から街灯が付き、その周りを昆虫が飛び交う。それを横目に見ながら、秋人は10m程離れた場所に駐めてある自転車に向かった。

 そうだ。君が隣にいたあの日も、こんな、じめっとした暑い夏だった。

                        美佳………。

 

——2006年8月24日——

「ねぇ秋人、この洗濯機なんかどぉ?洗濯機が、自分で自分を洗うんだって!意味わかんないけど、凄くない?」

二日後から同棲を始める二人は、高3の夏からつきあい始めて2年、互いに20歳になったのを節目に、ひとり暮らしから、ふたりで生活することになった。今までふたりとも、家具の備え付けてあるワンルームに住んでいたため、持ち物はほぼない。

 M社の洗濯機コーナーで、これからの暮らしに心躍らせる美佳の目は、キラキラと輝いていた。美しいと思う。 愛しいと思う。 洗濯機を前に、テンション高く話しかけてくる美佳に、秋人はそう思った。しかしだ。

「これは高いって。この、洗濯機が自分で自分をって機能が付いてるやつ、付いてないやつと比べて10万も高いよ。流石に無理だよ…。」

え゛ー。と不満げな声を出す美佳も、元々期待していなかったようで、目はもう他の洗濯機に移っている。その後、適当な値段の洗濯機を購入し、他の家具家電を見て回って、二人は店を出た。

 17歳で免許を取ったバイクに跨り、美佳にメットを手渡す。

「あの夕日の丘、行きたい。夕ご飯の前に行こうよ」

メットを被り、バイクの後ろにまたがった美佳が言う。

「うん」と堪えて、秋とはバイクを走らせた。

夕日の丘にバイクを停め、二人でブランコまで歩く。

「私ね、この時間に、ここから見る夕日が一番好き。二人で住んでからも、ここに来ようね。」

そう隣で話す美佳に、小さく頷き返す。

 

 その日の帰り、美佳は死んだ。

 秋人の乗るバイクに、横から突っ込んできた乗用車。バイクから投げ飛ばされた秋人は、道路の植え込みに落ちたが、美佳はコンクリートに頭をぶつけた。被っていたメットは遠くに飛んでいた。即死だった。秋人は、朦朧とする意識の中、車から降りてくる運転手と、美佳の頭から流れ続ける赤を見た。

 

——2010年8月10日—— 

 あの日以来、秋人はバイクに乗っていない。

 自転車から降りた秋人は二人で選んだ洗濯機に、来ていたTシャツを放った。

 ガラガラと回る全自動洗濯機。

 しかし秋人の心は、あの日、美佳と見た美しい夕日の日のままだった。

 

 

 

 

 

 

突っ走りました。

友達と、3つのお題を入れた、小説を50分間で書こうって話になって、学校で、部活終了後に書きました。

その三つのお題とは、

夕日の見える丘

ブランコ

全自動洗濯機

 

いつもだったら、書いては消してを繰り返すのですが、(パソコンだからコピペが楽!)今回はルーズリーフにひたすら綴ったので、ほとんど書き直しはなし。

読み返すと、誤字脱字が半端なかったです。

 

久々に小説っぽいのを描いて、それも書いてる途中に何度か携帯に電話が入り、途切れ途切れな漢字で書いたので、さんざんな結果に。

最後とか時間なくなって、単語を並べるだけ、みたいになってしまいました。。。

難しいな。。。

 

ひとり暮らしも、バイクに乗ったこともない私が、こう言うのを書くのは無理がある、その通りです。

正直、こんな事があるのかなんて分からないけど、書き上げました。(結局50分をオーバーしましたが。。。)

私が書くのって何でこんなにいつもバッドエンドなんだろう。

ごめんなさい。

 

 

今度は、

アゲハチョウ

馬車

の三つのお題で書きます。笑


夏の終わり。

2012-09-08 00:18:47 | 短編小説

「美沙、もう宿題終わった?」

「ん~、あと本のあらすじだけ。」

夏休みも残りわずか、というこの時期。

今年の9月1,2日は土日にかぶったため始業式は3日。例年より長い夏休みだ。

 私の通う農業高校には、夏休み中、B実習という、半日の実習がある。授業の単位なのでおろそかには出来ない。

 果樹園には、袋掛けされたブドウとナシが日を遮り、地面に陰をつくっている。袋掛けされたブドウの色を確認し、印をつけ、また袋を閉じる、という地味な作業。上を向きながらの作業は首にくる。日が遮られているからと言って決して涼は得られない、纏わり付いてくるような熱風。 

 一度開けた袋をホッチキスで閉じながら、麻菜は美沙に話しかけた。

残った課題はあと本のあらすじだけ、という返答に思わず麻菜は眉を顰める。

「あぁん?私なんか、まだ造園のレポートと、本のあらすじと、果樹のポスター残ってるぞ。」

…つまり全部である。

「うちも全部終わってない。」

笑いをたっぷりと含んだ声で、ホッチキスに芯を補充しながら沙耶が会話に加わる。

残り11日の夏休みのうち、3日は委員会の研修会でつぶれる。その他にも校外で行っているサークル会も入り、忙しい日々になりそうだ。

「早いうちに課題は終わらせた方が後々楽だ、とは分かってるんだよ?ただ、やる気が起きなかった。」

先ほどとは違うブドウの袋に印をつけながら、麻菜は言った。どうせ今日も、家に帰ってから課題に手をつけることはないだろう。妙な確信を抱きながら黙々と作業を行う。

「…あと終わってないところある?」

「ん。この辺まだ残ってる。」

三人でブドウ棚の下を動き回る。やり残しがないことを確かめ、他の生徒を指導していた教師に次の実習内容を訪ねた。

「…とりあえず、10分まで休憩入れていいよ。」

 

 梅の木の木陰に座り、果樹園を見渡す。敷き詰められた干し草に、果樹、向こうには校舎と青い空が見える。美しい。思わず携帯を取り出し写真を撮る。麻菜を真ん中に挟んで、美沙と沙耶が話す。麻菜には分からないジャンルの話。ただ、目の前に広がる景色を眺めながら、二人の声を聞くと、どこか安心感を覚えた。

休憩後、他の生徒と共に、除草と土ならしを行う。地面を掘り返すと出てくる蟻の巣に、多少驚きながらも手は休めない。これが終わったら……。

夏休みの果樹の実習。ナシとブドウの試食が出来るのだ。

美沙にナシの皮むきを任せ、他の男子に加わって、ちゃちゃを入れる。包丁片手に少し怒る美沙を見て笑う。

よく冷えたナシを頬張りながら、午後の予定を考えた。

まずシャワーあびるでしょ。お昼食べて、そのあと本読んで…。

 

課題をやる、と言う予定は入れない。自分が追い詰められないとやらない人間だとは分かっている。

テスト勉強も、毎年の夏休みの宿題も、直前になって焦る。やる気を出す。

どうせ3日に提出じゃないんだから。最初の授業で提出なんだから。

 

結局、夏休みの最終日の時点で終わっている課題は果樹のポスターだけだった。造園のレポートは4日に提出。3日に頑張ればいいや。

 

17歳の夏休みも終わり…小学生の頃から変わらない、ギリギリで頑張る習慣に自分自身あきれながらも、来年もきっとこうなのだろうと。今まで通りなのだろうと。まだ熱をたっぷりと含んだ夏の風を感じながら、麻菜はファっと欠伸をした。

 

                  【完】         

                    2012/9/8.

 

 

 

 

 

 

 

急いで書いたので、誤字、脱字あることでしょう!

どうかお見逃しあれ!


バレンタイン記念小説

2012-02-13 22:57:20 | 短編小説

 君が紡ぐ物語

 

携帯には受信メールが1件。

   『放課後、非常階段で待ってます。 水谷優菜』

 

1ヶ月前、非常階段に呼び出し告白して、断られた相手からのメールだった。

フられた相手から、フられた場所に呼び出され…

正直良い気はしない。

それと同時に期待を拭いきれないのも悔しいところだった。

昼休みに届いたメールを何度も読み返し、5時間目終了とともに返信する。

   『わかった。行くよ。』

どちらも絵文字なし。冷たい文字だけが並んでいて、相手の感情が読み取れない。

期待はしない、自分の胸に何度となえても頭の片隅には「もしかしたら」の文字が消えない。

6時間目が終わるのが待ち遠しい。呪文のように頭の上を通り過ぎてゆく数学の公式に「くあっ」っと欠伸が出た。

 

「きょーつけぇー れーぇ」   授業終了の挨拶でふと意識が戻る。

「お前、途中から寝てたよなw

前の席から振り返って話しかけてくる霧嶋に適当に頷きながら、放課後に呼び出されていたことを思い出す。

「ゃべっ、霧嶋、ちょっと俺、部活遅れるっ」

「ぇ、なんかあんの?」

先輩に伝えるのが面倒だという、不機嫌な顔。

「ちょっと呼び出された」

誰から、とは言わない。先生に呼び出されたとでも思うのが普通だろう。

「…あ、あぁ、なるほど、モテる男はこれだからね~先輩に伝えとくよ」

モテる…?てめぇに言われたかねぇよ。

 

教室に水谷さんの姿はもぅ見えない。

机の上に放り出されていた黒いケータイと、鞄からはみ出る茶色のマフラーを掴み、早足で教室を後にした。

 

「…よす。待った?てかここ寒ぃな。」

首にぐるぐるに巻いたマフラーに顔を埋めるようにして話しかける。

「大丈夫。…久米君、呼び出してごめんね。ちょっと…話聞いてほしくて。」

…はなし…ねぇ…

「ある女の子の話なんだけど…

  …………

 あるところに、高校1年生の女の子が居ました。

 その女の子は高校に入学したときから…ぃや、その前からずっと好きだった 男の子が居ました。塾が同じで、難しい問題を教えてもらったそのときから、その子のことが好きでした。

 高校は同じで、同じクラス。席は離れていましたが、すぐにその男の子だと わかりました。

 女の子は先月、その男の子に告白されました。

凄く、凄く嬉しかったけど、女の子は相手のことが信用できず、フッてしまいました。

 その男の子はほかの女の子からも好かれ、自分が相手をしてもらえるとは到底思えなかったからです。

 でも、その男の子をフッてしまってから1ヶ月、女の子はずっと後悔していました。せっかく、相手も勇気を出して告白してくれたはずなのに、信用できずに……

 2月14日、女の子はお昼休みに男の子にメールしました。

 彼をフッてしまった、非常階段に放課後、来てほしいという内容で。」

「…水谷さん?」

「そして、彼はそこにきてくれました。女の子は、今度は自分から言ってみようかと思います。」

 

「久米くん、好きです、付き合ってください。」

    Happy Valentine's Day

 

頭を下げながら差し出された、綺麗にラッピングされたそれは、

      君が紡いだ物語は、何処までも優しく、俺の心に響いた。

 

 

 


ん。これが書きたかった。

いや、でも俺視点はいやだった。

僕がよくて何度も悩んだ。

結果「俺」。

 

展開が早すぎるって??

いいんだよ、風呂場での思いつきの案なんだから←

 


タイトル変更の可能性有

2012-02-08 23:49:05 | 短編小説

 君が紡いだ物語

 

「もしもし、久米くん?」

2月14日、家に帰る準備をする俺にかかってきた電話は…… 

                 …君が紡いだ物語…

 

高校1年生になり、元中の奴とはだいぶ離れた。

男子はそこまでないが、女子はすぐにグループができる。その中でぽつんと、一人イヤホンをつける女。

化粧で目の周りがギタギタになっている女たちの中で、染まらない彼女はとても目立っていた。

無駄に人を寄せ付けない雰囲気。

そこに惹かれたのは、どぅしようもないこの俺。

               「一目惚れした。」

彼女に言ったらどんな反応を示すだろう。

 

6月、だんだんとジメジメした時期になり、ブレザーを脱ぐ人も増えてきた。

放課後、一人教室に残り、ノートの整理をしている彼女にそっと近づき、

「一目惚れしました。付き合ってください。」

              「ごめん。」

一言、そっと、彼女から自分だけに向けられた言葉に、胸が震えた。

 

「もしもし、久米くん?」

綺麗な声。ガヤガヤとうるさい教室に居る自分の耳には、彼女の声しか入らない。

「ぅん、そぅだよ、水谷さん。」

「あの、今、電話大丈夫?」

彼女はどこに居るのだろう。教室を見渡すが、そこに彼女の姿は見つけられない。

「大丈夫。」

「じゃぁ、ちょっと私の話、聴いててね。ある女の子の話なんだけど……

高校に入って、なかなかクラスに馴染めない一人の女の子が居ました。

内気で、友達を作るのが苦手だからです。」

………

「梅雨のある日、その女の子は、クラスの男の子に告白されました。

話したことは、2,3回、あるかないかの程度。女の子は、告白される前から、その男の子のことが気になっていました。

でも女の子は…その性格から、周りに人から噂されるのが嫌で、告白を断ってしまいました。」

「でもその後、女の子はその男のことをどんどん好きになっていました。

8ヶ月経ち、2月になった今、女の子はその時のことを後悔しています。

あの時、自分の気持ちに素直になっていれば。」

「…水谷さん…」

「2月14日、女の子は、勇気を出してその男の子に電話しました。」

「………」

 

「もしもし久米君、今日…バレンタインデーだね。

      私からのチョコ、受け取ってほしいんだけど…。」

「水谷さん、今、何処?」

「…非常階段だよ。」

「すぐ行くから。水谷さんからのチョコレート貰いに。」

 

 君が紡いだ物語は、何処までも優しく、俺の心に響いた。




これが最初に書いた、気に入ってないやつ。

なんか違うんだよ。


クリスマス小説

2011-12-25 12:20:54 | 短編小説

 

炬燵のネコ 

 

なんだろう、クリスマスイブだって言うのに、11時に起床するこの非充実感。 

外から帰ってきた足が灰色に染まった三毛猫が、炬燵で胡座を掻く自分の膝の上で涎を垂らしながら寝ているこのむなしさ。

こんにゃろう。学校で連んでいる祐樹は今頃どうせ彼女の吉川と遊んでいる。

クリスマスデートだぁ?…上等。

…それにしても…むなし……。

耳が冷えたネコの頭をクシャクシャと撫でる。 …てか……涎を垂らすな。

 

…パソコンの調子がすこぶる悪い。

インターネットには繋がらないし、時々画面がガタガタと揺れる。

うちのパソコンは丁寧に慰めると復活したりもするのだが……

今回はそれも効かない。

バイトもしていない。中学の時から貯めていたお小遣いの金で買うか…。

 

せめてインターネットに繋がればブログでも更新して、暇つぶしになるのだが……

それも叶わぬ願い。

やりきれないこの感情を膝に寝ころぶネコの背中をパタパタと叩くことによって紛らわせる。

パタパタパタパタ……『ヴーヴーヴー』

っっ!

ネコの背中をパタパタ叩いていると唐突に鳴り出した携帯。

ビックリしたぁ…

梨木未来……電話だ。

「もしもし、大谷君?」

クラスにいるときよりも少し高めの、電話越しの声。

「まぁ、俺の携帯だからね。そりゃ。」

ネコの頭をペチペチやりながら、携帯を右手から左手に持ち替える。

少し黙ってしまった梨木に

「んで、なに?」

女子との電話には慣れていない。この無愛想さも見逃して欲しいものだ。

「ぁ、ぅん、きょ、今日さ、会えないかなぁって思って。」

え、何、この感じ。今日はクリスマスイブだ。クリスマスイブって……高校生にもなれば、恋人達が過ごすもんって考えが……。

「や、やっぱだめかなぁ??」

とっさに返事が出来ないでいると、少し淋しそうな声が電話口から響いてくる。

「あ、いや…」

なんだこれ、慣れてない感バリバリやないかっ

「クリスマスイブだもんね…、か、彼女さんと、やっぱデートとかするよね」

一人で納得して、しゃべり出す梨木はなんか、涙声…?

それを聞いて、何故かその誤解を解きたいという気持ちが芽生える。

「あ、違くて…。俺、彼女とかいないし… 家で淋しく猫に膝に乗られてる。」

うわぁもう、最後の方メッチャ格好悪い…

家で淋しくとか…  恥ずっ

「猫ちゃん?あぁ、前に言ってたね、いいなぁ、可愛いでしょ」

さっきよりだいぶ落ち着いた声で、最後の方なんて声が笑っている。

思わずホッと息をついていた。

もっと笑って欲しいと思う。電話越しで、声しか聞こえないけれど。梨木の教室での笑顔が頭に浮かんでくる。

「いや、うちのねこさん、涎垂らしてるし… マジ勘弁…。」

笑い声。

あぁ、本物の梨木の笑顔が見たい。

「……会おっか。」

クリスマスイブ。

ロマンチックに雪が降るでもなく、朝は地面に霜柱が立つ程度。

炬燵の猫を撫でながら、とても充実した気持ちになる。

「…いいの? …ありがとう。」

普段あまり使わずに貯めてあった金で、梨木へのプレゼントでも買ってみようか。

膝に寝ころぶ猫をそっと退かし、冷たい空気に触れあうために、彼女の笑顔を見るために、ダウンジャケットの袖に腕を通した。