■天皇の思いを窺い知ることのできる「富田メモ」の存在を日経新聞がスクープしてから、様々な議論がなされている。それぞれの政治信条によって、このメモについての思いは変わってくるだろうが、それぞれに何らかの影響を与えているのは事実である。
■天皇の意思がいかなるものであれ、本来は無関係ではあるのだけれども、ここまで影響がある(少なくてもネットでは)のを見るとやはり天皇の影響力は現在においても存在する事を再認識した。この影響力が天皇を利用しようとする動機でもある。
■よく、朝日新聞が天皇利用として糾弾されているのを見るが、マスコミの殆んどが天皇を利用している。どの様な政治的立場であれ、自らに不利であれば、都合よくその意見や事実は無視するものであり、その傾向は産経新聞の主張(7月21日付)にもよく現れている。
■記事には ―メモでは、昭和天皇は松岡氏と白鳥敏夫元駐伊大使の2人の名前を挙げ、それ以外のA級戦犯の名前は書かれていない。― ―メモだけでは、昭和天皇が14人全員のA級戦犯合祀に不快感を示していたとまでは読み取れない。― とあるが、メモには「A級が合祀されその上 松岡、白取までもが」とある。
これを読めば、「A級戦犯合祀であっても問題であるのに、松岡洋右元外相や白鳥敏夫元駐伊大使をも合祀している」。と解釈できる。十分に他のA級戦犯についても問題視している心情が読み取れるものであり、書いてないから分からないと言うものではない。
■― それは学問的な評価にとどめるべきであり、A級戦犯分祀の是非論に利用すべきではない。― とも主張しているが、天皇を重要な存在として考えているなら、学問的な評価だけで済む話ではない。これでは御都合主義的に天皇の価値を利用していると言われても仕方がないものだ。
■その他では、― 戦犯は旧厚生省から靖国神社へ送られる祭神名票に加えられ、これに基づき「昭和殉難者」として同神社に合祀された。この事実は重い。― としているが、その行為に天皇の許可がない事が問題になっている。
A級戦犯合祀に天皇の同意という正当性がないのであるから、根底からA級戦犯合祀が否定されてしまう。この事は合祀されている事実よりも重要な問題点ではないだろうか。
靖国神社は天皇の御親拝によって、国家の霊場としての正当性を得る事になる。その肝心な天皇が参拝しないのだから、問題なしではとても済む話ではない。(この価値観に同意するものであれば)
■このような正当性の無い神社に、― 国民を代表して首相が堂々と靖国神社に参拝― してもどれ程の意味があるのだろうか、かえって不義不忠の輩にはならないのだろうか。本来なら産経新聞の社説は、「陛下の意思を無視するような神社などは、国家の霊場として不適格でありそれに参拝することは不敬である」と言うべきではないのだろうか。
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―以下参考記事―
http://www.sankei.co.jp/news/060721/morning/editoria.htm
【主張】富田長官メモ 首相参拝は影響されない
平成18(2006)年7月21日[金]
昭和天皇がいわゆる“A級戦犯”の松岡洋右元外相らが靖国神社に合祀(ごうし)されたことに不快感を示したとされる富田朝彦元宮内庁長官のメモが見つかった。昭和天皇の思いが記された貴重な記録だ。
昭和天皇が松岡元外相を評価していなかったことは、文芸春秋発行の『昭和天皇独白録』にも記されている。富田氏のメモは、それを改めて裏付ける資料だ。メモでは、昭和天皇は松岡氏と白鳥敏夫元駐伊大使の2人の名前を挙げ、それ以外のA級戦犯の名前は書かれていない。
靖国神社には、巣鴨で刑死した東条英機元首相ら7人、未決拘禁中や受刑中に死亡した東郷茂徳元外相ら7人の計14人のA級戦犯がまつられている。メモだけでは、昭和天皇が14人全員のA級戦犯合祀に不快感を示していたとまでは読み取れない。
政界の一部で、9月の自民党総裁選に向け、A級戦犯を分祀(ぶんし)しようという動きがあるが、富田氏のメモはその分祀論の根拠にはなり得ない。 天皇の靖国参拝は、昭和50年11月を最後に途絶えている。その理由について、当時の三木武夫首相が公人でなく私人としての靖国参拝を強調したことから、天皇の靖国参拝も政治問題化したという見方と、その3年後の昭和53年10月にA級戦犯が合祀されたからだとする考え方の2説があった。
富田氏のメモは後者の説を補強する一つの資料といえるが、それは学問的な評価にとどめるべきであり、A級戦犯分祀の是非論に利用すべきではない。まして、首相の靖国参拝をめぐる是非論と安易に結びつけるようなことがあってはなるまい。 昭和28年8月の国会で、「戦争犯罪による受刑者の赦免に関する決議」が全会一致で採択された。これを受け、政府は関係各国の同意を得て、死刑を免れたA級戦犯やアジア各地の裁判で裁かれたBC級戦犯を釈放した。また、刑死・獄死した戦犯の遺族に年金が支給されるようになった。
戦犯は旧厚生省から靖国神社へ送られる祭神名票に加えられ、これに基づき「昭和殉難者」として同神社に合祀された。この事実は重い。 小泉純一郎首相は富田氏のメモに左右されず、国民を代表して堂々と靖国神社に参拝してほしい。
冗談としておっしゃっていると思うのですが。。しかし、朝日新聞その他の報道も(日経はもちろん)「天皇陛下のご意向にあるぞよ!」といい出しかねない状況です。
むしろ、コイズミが、それはそれ、これはこれ、と割り切っており、「いよ!デカしたコイズミ!」といいたくなります。
公人の宗教行為は憲法で禁じられているのに、首相の宗教施設参拝を罰しない裁判所それを追認している社会(国民)なのだから、なにをやってもよい、ということですが。
これは、サンケイ新聞の性格から言って、そういう社説にならないとツジツマが合わないのではないか?という問いかけのつもりで書きました。
>しかし、朝日新聞その他の報道も(日経はもちろん)「天皇陛下のご意向にあるぞよ!」といい出しかねない状況です。
確かに、朝日新聞その他の報道も天皇利用をしていますが、それよりも私は、日頃から伝統・文化や天皇を自らの思想の正当性の拠り所ろとしている人々が「個」の意見と彼らの言う「公」である天皇との意見が違う場合に、「個」の意見を優先するあまりに、「学問的な評価にとどめるべき」。などといって誤魔化す方が問題があると思っています。
>むしろ、コイズミが、それはそれ、これはこれ、と割り切っており、「いよ!デカしたコイズミ!」といいたくなります。
私は靖国神社参拝に反対ですが、「天皇の意向は関係ない」と言う限りではその通りだと思います。
>公人の宗教行為は憲法で禁じられているのに、首相の宗教施設参拝を罰しない裁判所それを追認している社会(国民)なのだから、なにをやってもよい、ということですが。
私もその通りだと思います。公人中の公人である「首相」が個人の自由を持ちだして、自らの行動を正当化している姿は異常だと思いますし、そして、それを肯定している国民が少なからずいる事も異常だと思います。