■自民党総裁選の有力候補であった福田康夫元官房長官が、総裁選出馬を断念したようだ。もう一方の有力候補である安部晋三官房長官とは外交政策においては対極的な立場にいると思われていただけに、選択肢の幅が狭くなってしまった感はある。
■外交姿勢で福田氏と近い立場の候補者は谷垣氏ではないかと思うが、国民の支持率が低いだけに、有力候補とは言い難い。(同じ意味合いで、麻生氏もその様な立場だ)、現候補者中では安部氏を超える人気を持ち、安部氏とは違う選択肢を提示出来る政治家は見当たらない。
■福田氏が総裁選出馬を断念したことによって、安倍氏が次期総理になる可能性がさらに確定的になってきた。これで、中立的立場の議員や党員も安倍氏支持に回るだろうから、このまま安倍氏は、自民党員や国会議員の圧倒的支持を得て、内閣総理大臣に就任する事になるのではないか。
■記事には ― 「反小泉・非安倍」の受け皿として、与謝野氏への期待が集まりつつある。― とあるが、現実問題としては、与謝野氏自身が ― 「総裁選への出馬という大それたことは考えたことは本当にない」と出馬を否定した。― とあるように、安倍氏に対抗することは無いだろう。
例え与謝野氏が、総裁選に立候補したとしても、国民的人気がなければ、総裁選に勝つ事は出来ない。私は与謝野氏に国民的人気があるとは思わないので、やはり、国民的人気があるとされる安倍氏を脅かす事は無いと思う。
■実力的には、安倍氏よりも与謝野氏の方が、知識や経験は勝っている。能力のみで考えれば、与謝野氏や谷垣氏の方が数倍優れているだろう。しかしながら、能力が優れているからと言って、国民的人気があるとは限らない。
安倍氏が選ばれるのも、いかに選挙において、有利に事を運べるか。端的に言えば、国民に1票入れさせられるかどうかが基準となっているからだ。それのみが理由と言っても過言ではない。候補者の能力などは二の次、三の次でしかない。
現在、組織力の無い自民党においては、国民(無党派)に支持される能力があるものが、総裁に就任できる事になる。安部氏は他の候補者よりもこの能力があるだけの話である。(選挙に足を運ばせるだけの力があるかは疑問だけれども)
■私は、以前にも書いたとおり、自民党の総裁選にはあまり意味があるとは思っていない。一つの政党が長期にわたり政権を担っている事そのものが、問題であると思っているので、その一つの政党内で、いかなる権力闘争があろうとも、殆ど意味がないと思っている。
■それにしても現在の自民党のあり方は、いままであった組織依存型とは大きく変わってきている。確実であった組織票よりも、無党派層に呼びかけるような総裁候補を選ぼうとしていること自体がその証拠ではないだろうか。
■無党派層を基盤にするような政党は、非常に脆弱な権力基盤である。これからますます、世論を意識した政治が行われていく事になるだろう。しかし、いかに世論を意識した政治が行われていたとしても、すでにそれが成功するとは限らない。
一見、強固であるようだが、綱渡りのような政権運営を安部氏はしていく事になるのではないか。
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― 以下引用記事 ―
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/seitou/news/20060722k0000m010077000c.html
福田氏出馬見送り:非安倍勢力の戦略練り直し迫られる
福田康夫元官房長官の9月総裁選への出馬が見送られる見通しとなり、アジア外交や小泉純一郎首相の靖国神社参拝問題を争点に「反小泉、非安倍」勢力の結集をもくろんでいた勢力は一からの戦略練り直しを迫られることになった。
福田氏に代わる候補として与謝野馨経済財政担当相の出馬を求める声も上がっているが、与謝野氏本人は反小泉勢力の受け皿となることには消極的だ。安倍晋三官房長官の独走状態が強まる中で、手詰まり感がベテランの間に強まっている。【中川佳昭、谷川貴史】
20日夜、東京都内で加藤紘一元幹事長、山崎拓前副総裁、津島雄二元厚相、高村正彦元外相らベテラン議員が会談した。出席者の大半が小泉首相のアジア外交を批判してきた福田氏への共感を隠さない顔ぶれ。席上、「安倍氏圧勝の構図が確定し、消化試合になるのは好ましくない」「非安倍の立場で対立軸を出すべきだ」などとの意見が続出したものの、福田氏が出馬しない際の対応を決めるには至らなかった。
本来、靖国問題に関する昭和天皇メモの公表は、総裁選の「安倍独走」にストップをかけかねない出来事だった。安倍氏は新著「美しい国へ」の中でもA級戦犯合祀(ごうし)には異論を示していない。今回、昭和天皇の意思がクローズアップされたことによって、合祀をめぐる議論が過熱し、分祀の機運が世論の中で高まれば、安倍氏のマイナスとなる可能性もないわけではない。
しかし、福田氏は「国論が二分され、それが固定化する危険がある。それはアジア外交にマイナス」と周辺に語り、自らが総裁選に出馬した場合、靖国問題が総裁選の争点となることを懸念しているという。
「福田氏不出馬」の流れが強まるにつれ、「反小泉・非安倍」の受け皿として、与謝野氏への期待が集まりつつある。生粋の財政再建論者として、中川秀直政調会長らと、経済成長率をめぐる論争を展開したことで一躍脚光を浴びた。 しかし、安倍氏を推す中川政調会長と協調関係を築いた与謝野氏には、歳出削減を中川氏が主導するよう仕向けると同時に、同氏との協調関係を築いた。
与謝野氏には安倍氏サイドから秋波を送られているとの観測もあり、同氏は今月14日、日本記者クラブの会見で「総裁選への出馬という大それたことは考えたことは本当にない」と出馬を否定した。 このように総裁レースは「安倍氏優位」が固まりつつあり、福田氏や与謝野氏に期待感を示してきた加藤、山崎両氏らは脱力感を強めている。毎日新聞 2006年7月21日 20時17分 (最終更新時間 7月21日 22時13分)