「男と女が互いに求め合うのは、動物が単に発情するのとは違う。
動物は本能から子孫を残すために営みを育むが、人間の場合は、価値観や人生観という意味が含まれると僕は思うよ。
いや、そう信じたいね」
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「現在の性の解放は、情報の氾濫と愛の欠乏からくるものではないかな。
そのため昔あった倫理観や道徳観が崩れ、奥床しさや慎み深さのようなものが嘲笑されるようになった」
「愛の欠乏・・・ですか」
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「つまり愛が欠乏している肉体関係は、深く傷付けあうばかりか、精神の崩壊へと向かうということなのかしら。
良心が少しずつ麻痺してしまい、心のつながりが壊れてゆくような。
大切なものを見失ってしまうのですね」
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「そうだな、例えるなら恋は影で、肉体を求め合う感覚や官能の世界なら、愛は光かな。
つまり精神的世界。
超感覚的なものへと絶えず上昇し続けるもの。
だから恋の命は短く、愛は永遠に続く。
恋は愛の影さ、実在ではない。
所詮僕にもわからないけどね。
今まで誰かを本気で愛したことなどなかったから」
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小説「羊の群」
God Bless You ❣