風のいろ・・・

どんな色?

くたびれた神経に触れた・・・

2023年12月20日 | 羊の群

 

「死ぬつもりであそこへ行ったんだ。多分、そうだったと思うよ。

もう昔のことで今ではすっかり笑い話だけどね。

確かにあの頃の僕は、生きていることに息が詰まりそうだった」

胸の内を明かした。

 

 

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「初めて耳にしたはなの歌は、言いようのない優しい旋律で僕のくたびれた神経に触れた。

それは深い慰めに満ちていて、心の深淵にまで達する安らぎだった。

生まれてきた素のままの自分に戻されていくような、肩から余分な力が抜け落ちていくような。

少しも躊躇わずに泣けた。

止めどもなく泪が零れたあとには、死にたいと思う暗い気持ちが薄らいでいた」

 

 

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「確かに彼女の歌にはそんな力がありますわ。

あの若さで、人の心を瞬時に捉えるテクニックは圧巻です。

そんな脅威とも思える彼女の歌声は、まるで魔法のようですわ」

 

 

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「はなは見ての通りアメリカ人との混血だ。

詳しい事情は知らないが、小さい頃から母子家庭で育ったらしい。

十六の時その母親も亡くなり、単身大阪からこっちに来たんだ。

マスターの古くからの知人の娘ということで、いつの日からあの店で歌うようになった」

何か言いたくない只ならぬ事情があるのか、話の終わりに間延びした言い方をした。

 

 

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小説「羊の群」より

 

 

 

 

 

 

 

 

 

God Bless You ❣

 

 

 

 

 



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