高次脳機能障害ピアサポートセンタースペースナナのブログ

スペースナナは、NPO法人脳外傷友の会ナナが運営する高次脳機能障害者とその家族を支援するための施設です。

スペースナナ通信41号

2011年05月23日 13時51分30秒 | スペースナナ通信

【防災の丘公園でお花見&フリスビー&芝桜】3月11日東北大震災後、なんとなく自粛ムードで、毎年恒例のBBQ&お花見の行事もスペースとして自粛してしまいました。それでも桜は今年も綺麗な花を満開に咲かせているので、いつもスポーツリラクゼーションでお世話になっている施設近くの防災の丘公園へお茶とお菓子とフリスビーを持って行くことにしました。 この日はポカポカ陽気で、体を動かすときには半袖1枚で過ごせるほどの天気で、皆さんと爽やかな汗とともに運動をすることができました。
 スペースナナのプログラムとして行っているスポーツリラクゼーションの目的は411、道具を使って運動することで、運動神経を使って随意運動と不随意運動が同時にできるところです。随意運動とは、フリスビーを投げる時やキャッチするときに、投げる構えやフリスビーの方向に合わせて体を移動させるときに、大脳の判断で体を動かしますが、これが意識して体を動かす随意運動になります。そして投げる時の手首の動きや体全体の筋肉を協応させる動き、キャッチするときの体のバランスをとっているのが小脳の判断で無意識で行われていて、これが不随意運動になります。さらに、投げる時の最後の手先の動きや手のひらにフリスビーが触れたときに反射的に指先をキュッと握る動きは、脊髄による反射で行われていて、これも不随意運動になります。このように、道具を使った運動をすることにより、運動神経を使って大脳から小脳、脊髄をほぼ同時に使うことができるので、脳トレおよびリハビリとして真夏・真冬以外の天気が良い日には、積極的に道具を持って出かけて行きます。
 もう一つの目的は、SSTの場面も作り出すことができます。広場に行くと皆さんに「どうぞ」と言ってフリスビーだけを置いていきます。その日のメンバーや女性がいるかいないか、など皆さん周りを見ながら誰をメンバーに入れるか、またはどのメンバーに入るか、周りの人達とのスタンス(距離と構え)を考えながらその日のグループが出来上がっていきます。ある日には、女性が2人いたので、周りの男性たちが3~4人のグループに分かれて一人ずつ女性を入れて教えながら面倒見ながら励ましながら楽しそうにフリスビーを回し合っていました。
 桜が散った後は、近くにあるテレビでもよく取材される伊勢原市の渋田川周辺の芝桜を眺めに行きま412す。これも毎年恒例の行事になっていますが、この行事の目的は、毎日のウォーキングと同じく周りの自然の変化と美しい眺めに対して四季の変化に気づき、そして心が動き感動することができるようになったり、自然に生かされている自分への気づきができるようになることです。物の見方や心のリハビリとして出かけて行きます。川幅の狭い小さな河川ですが、川岸に咲く色とりどりの芝桜には、見る者の心に毎年感動を与えてくれていると感じています。場所によって芝桜の植え方のパターンが違うので、よくはわかっていませんが、川岸の民家の方々がおもいおもいに芝桜の手入れをしてくれているように見えます。
 この日は、天候には恵まれましたが、風が強く、芝桜を散策した後にお茶をするときに紙コップが飛ばされそうになってしまうほどでした。風向きが悪かったようで、近くには牛舎が多く、手作りのアイスクリーム屋さんもあるのですが、牛舎の臭いが立ち込めて、ちょっと困りました。この近くには、あやめの里もあるので、5月下旬頃にまたあやめの綺麗な花畑を皆さんと眺めに行きたいと考えています。

【タックル組み立てと今年の釣果】4月に入り、今年初めての平塚港での釣りに行ってきまし413 た。釣りの目的は、自然への挑戦と位置付けていますが、魚を釣るためには、タックルを自分で組み立てる作業が必要となります。タックルとは、竿にリールを取り付け、竿のガイドに沿って釣り糸を通し、その先に仕掛けを付けた魚を釣るための道具のことをいいます。大物を船に乗ってねらうのがヘビータックルで、陸上や港で回遊魚などを狙う、チョイ投げタックルのことをライトタックルといいます。スペースナナでは、このライトタックルで回遊してくる鯵やマイワシ、サバの子のさっぱ、夏は白ギスなどを対象魚にしています。414
事前にスペースでライトタックルの組み立ての練習をしますが、これが遂行機能のリハビリに なると考えています。接ぎ竿や竿を伸ばしていくテレスコピック竿では組み立ての手順が違ってくるのと、手順よく組み立てるためには見通しと手順が必要になってきます。さらには、釣りの当日、対象魚をどれにするかによって仕掛けも違ってくるので、ここでは戦略が必要となってきます。この日は利用者の方7人とスタッフ4人で平塚港へ行き、釣り場所を決めてさっそくタックルの組み立てを始めました。今回初めて体験利用で参加されていた男415性は、出身が茅ヶ崎とあって子供のころから釣りはしていたとのことで、ご自分 でタックルを組み上げ、最初はサビキ仕掛けで釣りをしていましたが、潮の流れがないのと釣果が悪いので、投げ釣り仕掛けに自分の判断で切り替え、釣り場も足でいろいろなところを狙った結果、良形の白ギスを釣り上げてきました。結局この日は潮が動くことがなく、釣果は3匹ほどとなり次回に期待したいと思っています。

【ノートPCでPCスキル】今年度から隣のスペースでカフェ事業を始めることになり、それまでデスクトップPCとノートPCの一部を置いていたものを1か所に集めて利用者の方が使うPCをすべてノートに変更しました。19名の利用者用に10台のPCを用意しています。ほとんど416 はXPマシンですが、1台ずつVistaマシンと7マシンがあります。XPに慣れている方が多いので、Vistaを使っているのは、初めてのPCをVistaで覚えた方が使っています。
 ほぼ毎日PCスキルのプログラムを入れてあるので、みなさん自分のPCを出してきて電源をつなぎ、中に入っている脳トレのソフトを使って取り組んでいます。脳トレのソフトは、ダイソーで買った常識トレ・計算トレ・記憶トレ・右脳トレの他に橋本先生監修の認知脳バランサーを使っています。皆さんが好んで使っているのが認知脳バランサーの「さめがめ」というソフトで、ゲーム感覚でできるソフトで、ブロックを一度に沢山消すと得点が上がり1500点以上とれると1級になります。時間制限はなく、つながっている同じ色のブロックを一度に沢山消すことができるとボーナス点が付き、合計得点が上がります。
 ダイソーで買った脳トレソフトはインターネットで全国順位も出るので、それを励みに取り組んでいる方もいます。4種類の脳トレで全国順位すべてが10位以内に入っている方もいて、休憩時間があるとPCを取出し、積極的に取り組んでいます。その他、フリーでダウンロードできるブラインドタッチのソフトを使って練習をしている方もいて、最近ではかなり早く指定された文章を、キーボードを見ずに打てるようになってきた方もいます。

【カフェ事業の準備】昨年度損保ジャパンの助成金と県の予算をもとに、改修工事を入れて417 準備してきたカフェ事業の準備状況ですが、保健所の飲食店としての認可を受けるための改修工事はすべて終了しました。後は、カフェとしての照明の改修工事とレジの購入、食器の準備、エアコンの設置、カフェテーブルの購入などが残っています。現在、利用者の方々にカフェ事業への参加希望を取りまとめていますが、ほとんどの方がカフェ事業への参加希望を持っているようで、10名ほどが参加希望の意思を示しています。
利用者の中には片麻痺を持っている方もいるので、カフェ事業での役割分担に工夫が必要になってきます。作業分担は、キッチン作業を担当する方には、コーヒー作りと今のところ考えているサンドイッチ、ピザなどを作る作業とフロア作業を担当する方には、オーダーを聞く作業と品物を提供する作業、レジ作業など片麻痺や耳が不自由な方でもできる作業を細かく分担することで、参加できるようにと考えています。
 スペースナナのコンセプトとしては、通所によって居場所ができ、存在感があり、活動によって自分が役に立っていると思えるような有用感が持てることと考えているので、参加希望を持っている人がそれらを感じられるためには、どのような参加の仕方があるのかを探っているところです。1日の全体的な活動としては、水・木・金曜日は利用者が8名以上と多いので、午前と午後にカフェ事業の担当を分担し、2か所あるスペースを有効に活用して、カフェ事業とスペース418ナナ本来のプログラムを同時に行っていこうと考えています。今年度から週3日勤務の非常勤の職員が1名配置されたのと、以前からボランティアに来ていただいている方が週 に2日来ていただけるようになったので、このような体制がとれるようになりました。当初の予定より遅れていますが、夏までには開店できるよう準備していきます。