こじらせ女子ですが、何か?

心臓外科医との婚約を解消して以後、恋愛に臆病になっていた理穂。そんな彼女の前に今度は耳鼻科医の先生が現れて!?

ティグリス・ユーフラテス刑務所-【13】-

2019年05月16日 | ティグリス・ユーフラテス刑務所


 さて、今回はとってもものすごーく言い訳事項があるような気がしますww

 ええとですね、例の(?)アメリカの<スターウォーズ計画>というのは、アメリカの超オタクの男の子が、日本のアニメのガンダムとかマクロスなどのファンで、ああしたロボットを実際に等身大で造って動かせないか……という研究をしていたところ、それがアメリカの軍部の目に留まり、実用化が実現したという代物だったりします

 なので、ロボットの名前に日本のアニメの名残りが見られる――といった設定にでもしようかなって思ってたんですけど、その後、南朱蓮さんのお話が思い浮かんでしまったので、たぶんこの案はボツ☆になるのではないかと思われます(^^;)

 そんでもって、となると↓の話の通りに第四次世界大戦が進むかどうかも、こっちの話を全部書いてみないことにはわからない……ということになるので、このあたりは本篇にあたるようなこちらの物語を書いてからティグリス~のこのあたりも直す必要がある、ということになると思うんですよね(^^;)

 そんなわけで、↓の展開はなんとも微妙なというか、世界の終わりがこんなことでいーのか的展開となっておりますが、実はわたし、「マジンガーZ」って一度も見たことがありませんww

 いえ、このあたりのことを書いたあと、「マジンガーZ」その他、昔のロボットアニメなどを順番に見ていく必要があるな~なんて思いつつ、まるっきりまるで間に合いませんで

 あと、他に出てくるロボットアニメもほとんど全部見たことありませんww

 じゃあ何故こうした書き方なのかというと、まず例によってウィキさんによって設定を調べて、どのロボットアニメの偽者(笑)を使うかを検討しようと思ったところ……まず、「マジンガーZ」の設定に物凄く驚いたんですよ(^^;)

 その、アニメ本篇のほう、わたし一度も見たことありませんので、間違ったこと書いてたら申し訳ないんですけど(汗)、マジンガーZって、ミケーネ文明の遺跡か何かから発見されたんでしたっけ?それで、動力源みたいのが確か<光子力>ということだったんですよね。

 いえ、この時点ですごくよく出来てるなあって思いました。あんなわけのわからんもの(笑)の動力源が電気だったら、一体どのくらい電気代かかるんだ的なww

 わたしの考えつくのはせいぜいが、安全な小型の核融合炉が動力源みたいな、そんな程度の発想力しかないのですが、↓に出てくる戦闘型アンドロイドさんはみんなそうなんですよね。で、他のロボットアニメのロボットたちの動力源についてもそのうち順番に調べていこうと思ってたり(そしてこれ、あとで調べたら、ガンダムは核融合炉が動力源らしいと知りました。あと、ジャイアント・ロボも原子力のようです^^;)

 それはさておき、マジンガーZ、お話の描写の中でパクらせていただいたとおり――ルストハリケーン→強酸を混合させた強風を出し、敵を錆び朽ちさせる、ミサイルパンチ→TNT火薬100トン分の威力、光子力ビーム→TNT火薬10トン分の威力など、設定が具体的ですごいなって思ったんですよ

 そんで、ゾンビ帝国興亡史書いてた時、横山光輝先生の「伊賀の影丸」の1巻だけ読んでたもので、この時ふと「そーいや、横山光輝てんてーのお話で『ジャイアント・ロボ』ってあったっけ」となんとなく思いだしまして……いえ、昔ニュータイプの何月号かに、このジャイアントロボの肩あたりにのってる、銀鈴さんのポスターがあったのをなんとなく覚えてたりして。。。

 でもまあ、実際にはその時もアニメ自体は見ることなく、映画のみならずテレビで放映されていたアニメもマジンガーZ同様、一度も見たことありませんでした

 ただ、こちらもウィキさんで設定等を確認してみたところ、「すごい!面白そう!!」って思ったんですよね。そんで、ジャイアント・ロボって見た目がいかにもエジプトチック(笑)なので、アメリカの他にも中国やヨーロッパの各国でもそうした巨大ロボット兵器は開発してたんじゃないかと思うし、他に、こんなのが自国に攻めてくることも<アナスタシア>は想定して、ロシアでもこうしたロボットは当然開発してるはずで――それとアメリカ・ヨーロッパ側のロボット同士が戦う……といったことになると思うというか(^^;)

 そんなわけでこのあたりは大幅に書き直さねばならんのですが、とりあえず一旦はこんないーかげんな感じで許しておくんなまし☆というのが、このお話を通した最大の言い訳事項だと思います

 というのも、とりあえずこうした形ででも書いたものを順番に消化していかないと、新しいのを書くことが出来ない……といった事情がわたしのほうにあったりして(汗)、とりあえず、ティグリス~を書いたからこそ、世界の終わりの最終戦争について物語の輪郭が出来てきたので、先に一歩進むにはとりあえずこうした(仮)の書き方になってしまったということで、何卒ご容赦くださいませ(^^;)

 ではでは、ティグリス~に関しては、世界最終戦争に参加した人ではなく、その周囲にいた人物が主人公ということで、そのあたりの中核部分が物語に出てこないのですが、このお話は桐島秀一くんとその奥さんを中心にした物語ということで、彼らの人生の終わりまでが描かれて終わるということになります。。。

 それではまた~!!



     ティグリス・ユーフラテス刑務所-【13】-

 その後、誰がこの群れの責任者になるべきか、ミーティングが持たれた結果として、民主的に数人リーダー希望者を立候補させて、選挙をすることにしようということになりました。候補者としては、アダム・オーバル、ビアンカ・バルト、ケヴィン・オクスリー、レイナ・マクブライド、ショーン・キムなど、五名の者がいました。そしてこの時、アダムとビアンカの間でもっとも票が競りあい、結局のところ一票違いでビアンカがリーダーということになったのです。

 涼子はその結果を見てとてもショックでした。何故といって、ビアンカに「あんた、自分がどうすべきか、わかっているでしょうね!?」、「もし別の人間に投票したら、そのこともちゃんとわかるんだから、どうなるか覚えておきなさいよ!」と脅された結果として――涼子も秀一も、彼女に投票していたからです。そうでなければ、ふたりとも今ではすっかり親しい友人となったアダムに票を入れていたことでしょう。そうすれば、ビアンカではなく彼が勝っていたはずなのです。

 その投票結果が発表された日の夜、「わたし、アダムの顔を直視できなかったわ。彼のあんなにがっかりした顔なんて見たの、初めてだもの」と、涼子は会議室から部屋へ戻ってくるなり、夫にこぼしはじめました。というのも、良心が責められて苦しかったからです。

「いや、わからないよ」と、秀一は楽観的な意見を妻に述べました。「というか、ああいうのはビアンカみたいな人に任せておいたらいいんじゃないか?だって、そうだろ?リーさんはいい人だったけど、リーダータイプって感じの人じゃなかったものな。どっちかっていうと、性格が繊細で、物理学者なせいか、物を理詰めで考えるところがあって……それで、あんまり真面目すぎて煮詰まっちゃったんだよ。ちょうど、ドイツに対するロシアの猛攻が激しくて、鬱っぽくなってたっていうのもあるんだろうな。なんでも、リーさんってナノテク兵器の最新モデルの設計とか、そういうのに携わってた人らしいから」

「そうね。確かに、そういう考え方もあるかもしれないわね……」

 この日も涼子は、夫のこの意見に救われる思いでした。

「だって、アダムだってどっちかっていったら性格が真面目で繊細でしょ?リーさんとの違いっていったら、背が高くて体が筋肉質で、腕っぷしが強いってことくらい。その点、舌の言い争いでビアンカに勝てそうな人っていそうにないものね。毎日みんな、よくそんなくだらないことで揉められるわねっていうようなことで、文句ばっかり言ってるんですもの」

「まあ、無理もないよ。上の刑務所に居住してる人たちは、狭いだけじゃなく、布か何かで自分のプライヴァシーを守ってるっていうそれだけだし。単にそれだけでもストレス溜まるだろうに、いつでも廊下やロビーとか、右みても左みても、誰かしら人がいるっていうのは……意味もなく誰かのことをぶん殴りたくなるような環境だよ。ようするに、人口密度の問題さ。そういう実験は昔からある。ある特定の狭い空間に人を閉じ込めると、なんでもないようなちょっとしたことでイライラしたり、気が滅入って自殺願望が強くなったり……で、何か吐け口にできるような人間が出来ると、そいつを徹底的に村八部にしていじめ抜くことで憂さ晴らしをするんだ。俺たちも、東洋人っていうだけですでにマイノリティなんだから、そのあたりについては本当に気をつけないとな」

 人々の間では、文句や不満は日常茶飯事でしたが、それでもまだ、誰か特定の人間を除け者にしていじめたりする――というところまで、人間性が落ちてきているわけではありませんでした。けれど、何かちょっとしたことをきっかけにそうなるのではないかという予兆は常に見え隠れしていましたし、戦況がさらに悪化し、物資も入ってこなくなった……という段階まで事が進めば、何がどうなるかはわかりません。

 ところで、このティグリス・ユーフラテス刑務所へやって来てから三か月ほどした頃、秀一はリーにある申し出をしていました。地下4階の巨大倉庫に、穀物や植物の種などが随分たくさんあるのを見て――まずは、水耕栽培を開始してみることにしたのです。今のところ、物資の供給というのは、途絶えることなく十分な量が定期的に届いていますが、もちろんそれだっていつどうなるかなんてわかりません。

 そこで、秀一が水耕栽培をはじめてレタスやトマトやミズナなどを育てるのに成功すると、みなこのことをとても喜びました。また、一度だけ何故か米が大量に届いたことがあり、ビアンカなどは「こんなものよりこっちは小麦が欲しいのよ」と文句を言っていたのですが、涼子が和風・洋風のおにぎりを作ったり、またこれを他の人にも教えたところ、腹持ちが良かったせいもあって、このオニギリはすっかり食堂の人気メニューとなりました。ですから、涼子が当番で食堂に入る時には、彼女の美味しい料理を楽しみにしている人がとても多かったですし、秀一は秀一で、水耕栽培の収穫のことで、まわりの人々からは一目置かれていたといっていいでしょう。

 けれども、さらに秀一は、物資供給係に<土>や<肥料>や大きなプランターなどを送ってもらい、このプランターの中で他にじゃがいもや人参、かぼちゃといった野菜を育てはじめました。この自家栽培は刑務所の人々の間で非常に人気となり、上の刑務所の住人たちの住居には、必ず鉢がいくつかあって、何かの作物を育てていたものでした。

 こうした影響力によって、秀一と涼子はメソポタミア刑務所の中で独特の地位を占めていましたし、アメリカやヨーロッパ出身の白人ほど自己主張が強くなかったためでしょうか、彼らの部屋へは「赤ちゃんを抱きたい」といった理由によってよく人が訪れては、活発に議論を交わしたり、情報交換をしあう場のようになっていたのです。

 他に、秀一は刑務所内や外の見回りをしている警備兵たちとも親しく、他の人々はみなエリート家庭出身でしたから、ちょっと彼らを「たかが警備員」として下に見ているところがあるのですが、その点、秀一にはそうしたところがなかったためでしょう。彼らとはデザートサファリへ仲良く出かけることがよくありました。

 デザートサファリというのはようするに、近郊の砂漠をランドクルーザーで走りまわるということなのですが、秀一は最初、ラスティやノアといった仲のいい警備員と無目的にあたりを走行しては憂さ晴らししていたのですが……そのうちふと、きちんとこのあたりの正確な地図を描けるようになったほうがいいと思い、マッピングを開始するということにしたのです。

 というのも、秀一はこのティグリス・ユーフラテス刑務所へ来たはじめの頃から――ずっとここにいられるとは思っていませんでしたし、水耕栽培やプランターによる栽培をはじめたのも、どこかここから比較的近い場所に居ついて、自給自足することは出来ないだろうかと考えたからなのです。もちろん、今のところこの自給自足生活は、頭の中の理想といったところで、現実性はまったくありません。けれども、ここの刑務所に現在いる四百名以上もの人々を養っていくためには……何かそうした方向性で努力していく必要性があるだろうと、ずっとそう考えていたのです。

 そして、ティグリス川とユーフラテス川は、イスラエルとイランのナノテク兵器対核兵器の戦争により、一度は干上がっていたのですが――今再び、僅かな細い流れとなっているのを、秀一は発見していたのでした。このあまりにか細い、再び干上がりそうなほどの水量を見た時、秀一はどれほど嬉しかったことでしょう。

(仮に、今すぐではなかったとしても……いずれ、この川は復活するかもしれない。そしたら、少しずつ、除々に緑も増えてきて……そのためには、一体何十年、何百年とかかるだろうか。その頃、俺はもう死んでこの世にいないだろう。それでも、いつかそうなってくれたら……仮に文明は後退しても、地球は甦り、人類は謙虚な心を持ってその片隅にでも生かしてもらえるかもしれない)

 この日、秀一は実に上機嫌でこの話を涼子に持ち帰ったものでした。すると、彼以上に賢い妻は、「確かにそれ、ティグリス川かユーフラテス川かもしれないわね」と言っていました。「ティグリス川もユーフラテス川も、源流がトルコの山岳地帯で、そこからシリア……今は、昔そこにシリアがあった場所ってことだけど、シリアとイラクを通ってペルシャ湾に注いでいたの。だから、きっと一度戦争のせいで途切れたところから、少しずつ流れを復活させて、ついにイラク中部まで到達してきたってことなのかもしれないわね。もし秀一さんの発見したのがティグリスでもユーフラテスでも、きっとティグリスがここまでやって来たなら、いずれユーフラテスだっていつかは復活するんじゃないかしら。まだもっとちゃんと確認しないと、みんなにも伝えられないけど……でも、もしそうなったら本当に素敵だわ。とにかく水さえあったら、そこから何かがなんとかなっていきそうな希望があるもの」

「そうだな。それに、仮に俺たちの代じゃなくても、シュートの代とか、あるいはシュートの子供の代とか……水だけじゃなく、緑や土が少しでもあったとしたら、本当に凄いことだよ。本当に、人間の身勝手でこんなことしてさ、どうやったって償いようなんてないんだけど――なんか、俺今日ものすごく感動した。人間の勝手な都合でこんなひどいことしたのに、それでもまだ地球や大地は俺たちのことを見捨てずに赦してくれるんだ、みたいなさ。もちろんこんなこともまた、人間のただの身勝手な感傷なんだろうけど……」

 この時、涼子は少し意外だったかもしれません。涼子は秀一のことを心から愛していましたが、それでも、芸術や自然といった分野に関してそう深く感じ入るような性向にはないらしい……といったように感じていましたから。けれども、部屋のプランターの世話にいそいそ勤しむ夫の姿を見ているうちに、涼子はそうした自分の考えを変えていたかもしれません。簡単な言い方をするとしたなら、「惚れ直した」という、そうしたことだったのでしょう。

 秀一が涼子の話を警備兵のノアやラスティに伝えると、彼らも妙に興奮していました。そこで、「前に見つけたのがユーフラテス川なのかティグリス川なのかわからないけど、今度はもう一方の側の川を探そうぜ!」ということになり――随分時間はかかりましたが、車のナビに表示されるのは、今も戦争前の地図情報でしたので、見つけるのはそう難しくありませんでした。そして、そのナビの画像によると、最初に見つけたのがティグリス川、そして、さらに上流に上ったシリアに近いほうから流れてくるのがユーフラテス川のようでした。

 この時秀一は、「このあたりにその昔あった世界最古の文明っていわれるメソポタミア文明のメソポタミアって、川の間の土地って意味なんだって。ほら、ちょうどティグリス川とユーフラテス川の間に挟まれた土地で生まれた文明だから……」などと、涼子の受け売りをそのまま物語っていたのですが――ノアもラスティも妙に感心して頷いていたものでした。彼らはふたりとも大卒だったのですが、工業大学や理系大卒だったためでしょうか、そうした文化・社会学系、人類文学系のことには少し疎かったようです。

 その後もこの三人は、かつて遺跡のあった場所から、破壊された遺跡の痕跡を発見しては、いつかこれを発掘して復元できないだろうかと話しあったりして、マッピングの地図を完成させていきました。こうして一度地図を作っておけば――今のところ、そんな事態が起きるとは思われませんでしたが――何かの危急の際に役立つかもしれません。

 秀一と涼子がこうした日々を送る一方、戦争のほうは相変わらず戦況のほうが芳しくありませんでした。ドイツから南下してイタリアへ進軍するかに見えたロシア軍は、イギリスを核で消し飛ばしたことに気をよくし、イギリス・フランスの連合軍で対抗しようとしていたNATO軍の気持ちを挫きました。アメリカはこの時、戦力の多くをカザフスタンに集中させていたため、イギリスとフランスを主力にした連合軍で国境を持ちこさえさせる予定だったのですが……帰るべき祖国を失ったイギリス兵の落胆ぶりは、言葉に言い表せないものがありました。

 ロシアのナノテク兵器はどんどん自己複製増殖する一方であり、それを制御しているのがアンドロイド兵の指令官でした。この自動増殖を抑えるには、制御しているロシア軍側のコントローラーを破壊する必要があるのですが、このカエル型の兵器が爆発して邪魔をするため、なかなか前進が望めません。そこで、NATO軍側は、ロシア軍側と同じく小型戦術核を搭載したアンドロイドによって攻撃していったものの、カエル型兵器は自動的に自己増殖していくため、一匹でも逃すとそれがさらに増えていって埒が明きません。

 どうにかこれを食い止めるために、とうとうイギリス・フランスを主戦力とした連合軍は、同じように自動複製増殖していくカマキリ型ナノテク兵器を投入し、お互いに爆弾合戦をしていくということになりました。この間、ほとんど人間が戦場に投入されたことはなく、こうしたナノテク兵器やアンドロイドを人間は背後でコントロールしているだけでした。感覚としてはテレビゲームをしているのに近いものがあるわけですが、現実的に人間の被害があるというところが当然大きく違います。

 ポーランド・ドイツ・ルーマニア・フランス……と、ヨーロッパの多くの国々で国外避難勧告が出されていましたが、国外に逃げられる人ばかりではなく、またその先どこへ宿泊すればいいのか、そこまで明確な指示がなかったため、逃げずに家にいた人々は次々とロシア軍の兵器の犠牲になっていきました。NATO軍側はこうした人々を出来る限り救出するという任務とともに進軍していかなくてはなりませんから、なかなかに敵への反撃を大きく展開するというのが難しかったといえます。

 また、こうした攻防の一進一退をティグラス・ユーフラテス刑務所の会議室では、連日何百人もの人々が息を詰めて見つめていました。みな、見たくないと思っていながらも、かといって見ずにはいられず、多くの人々が手を握りあわせ、祈るようにして大画面モニターに釘付けになっていました。

 イギリス・フランスを主戦力とした連合軍は、フランス・ドイツの国境で善戦しました。レーザー砲を投入して、カエル型兵器を次から次へと破壊していったのですが、これでロシア側兵器の自己増殖よりも、NATO軍の破壊力のほうが若干上回りました。ですが、命知らずの……というより、もともと命などないのですが、アンドロイドたちが盾となり、こちらを攻撃している間にカエル型兵器が自己増殖し、こうしてだんだんにロシア軍側の兵器がドイツ・フランスの国境を除々に越えてゆきました。もちろん、空軍による絨毯爆撃もなりふり構わず次々と行われましたが、その際に国土が文字通り焦土と化していく姿というのは――その国の出身の者でなくても、目を蔽いたくなるような大惨事だったといえます。

 もちろん、カザフスタン側にいるアメリカ軍も何もしていなかったわけではありません。カザフスタンでは、<ヴィクトリーV>というなんともダサい名前の、日本のコン・バトラーVによく似た機体の巨大兵器が投入されていました。他に、トランスフォーマーによく似た<メタモルフォーザーX>、マジンガーZによく似た<マイスタージンガーZ>、<ジャイアントマシン>、<装甲騎兵ガッディス>など……よくアメリカの議会はこの軍事予算を通したものだと感心してしまう巨大兵器が投入され、一路、モスクワへ向かうかに見せかけ――この間、黒海からルーマニアへとアメリカ軍は上陸していました。

 アメリカ軍の空母から<マイスタージンガーZ>が飛び立つと、ルーマニアでは、セルビア軍との挟み打ちになりました。<マイスタージンガーZ>は、ルストハリケーンという口から強酸を混合させた敵を錆び朽ちさせる強風によって、カエル型ナノテク兵器及びアンドロイドたちを次々駆逐していきました。他に、TNT火薬百トン分の威力といわれるミサイルパンチ、TNT火薬十トン分の威力の光子力ビームなど、ロシア側の兵力を減らすことには成功したのですが、最後には小人たちに倒されたガリバーのようになり……地上に倒されてしまいました。唯一、<マイスタージンガーZ>といった巨大兵器にはコクピットに乗組員がいましたから、彼――デイヴィッド・ヘルムは、コクピットを爆破されたのち、中から引きずり出され……アンドロイドたちに体を八つ裂きにされ殺されました。

 この様子をメソポタミア刑務所の会議室で見ていた人々は……絶望に顔を覆い隠して泣き崩れました。似たことは、ドイツ・フランス戦線でも起きました。そちらの旗色が悪いと聞いたアメリカ軍は、<ジャイアントマシン>を急遽そちらへ向かわせました。

<ジャイアントマシン>は、強力な電磁波を発動させると、指一本触れるでもなく、多くのカエル型兵器とアンドロイドたちを倒してゆきました。その後、彼に続いてフランス・イギリス軍側のアンドロイド兵を投入して破壊……こうした形で、その後ロシアとNATO連合軍の戦いは、こののち一年続くことになり、世界全体は経済恐慌へと陥っていきました。特に、戦争がはじまって八か月後に、アメリカへ投下された核爆弾、同時期、太平洋にも水爆が投下され――他に、大きな地震や災害も平行して起こり、飢饉に苦しむ国も出てきました。こうして世界全体が下降路線を辿ってゆき、ロシアの<アナスタシア>が崩壊してからも……回復するということがなかったのです。

 けれども一度、ここで戦争がはじまって半年後のメソポタミア刑務所のことに話を戻しましょう。こうした世界情勢であったため、ヨーロッパ大陸からティグリス・ユーフラテス刑務所までやって来るのは死にもの狂いだったといえます。しかしながら、メソポタミア刑務所では、入居者を絞りつつありました。何より、すでに入居者が四百人を越していましたし、もちろん入れて入れられないことはないのですが、この時点で諍いが耐えませんでしたので、初めて入居者を断る、ということがあったのです。

 それは、イギリスの高級官僚の二家族が無理心中したあとのことで、みな気分が滅入っていました。そして、そこへあまり身なりのよくないゴツイ男の四人組がやって来たのです。彼らはフランスの傭兵部隊にいた男たちで、あんな戦争にはとても勝てないというのを間近で見、そして噂で聞いたメソポタミア刑務所へ向かうことに決め――ここまで、自力でやって来たということでした。

 警備兵たちに「どうしますか?」と聞かれたビアンカは、「追い返せ」と命じていました。「彼らはローゼンクロイツァーのメンバーというわけでもない、ただのならず者だ。ああした者を中に入れたら、さらに刑務所内の治安が乱れるだけだからな」……警備兵たちは当然、言うとおりにしました。警備兵は全員で二十名いるのですが、内部で暴力沙汰などの問題が起きた時には、当然彼らが狩りだされるのですが――毎日、数回はそうした出動があるもので、警備兵たちもほとほとうんざりしていたのです。

 ところが、「中へ入れてもらえない」ということがわかるなり、四人の屈強な男たちは激昂しました。けれども、彼らは暫くの間モニター越しに言い争ったあと、何がどうでも中へ入ることは敵わないらしいとわかると、刑務所の周囲をぐるりと回り――刑務所の一階部分と二階部分の間からジャキン!と機銃がいくつも現われ、照準を合わされると……そこでようやく幌付きのジープに乗って逃げ帰っていったのでした。

 このことは、誰の間でもすぐに忘れ去られました。ところが、次に物資が届くという日に、いつものようにランドクルーザーがやって来なかったことから、一同の間には動揺が走りました。戦局のほうは五分の戦いを繰り広げており、このことと物資の欠乏とは関係がないはずでした。けれども、実際初めて物資が届かないという事態が起きたわけです。もっとも、今すぐどうということもないくらい、備蓄の数はありましたが、それでも管理者たちの間では不安が広がりました。その時は、「いや、今回はたまたまかもしれない。次には必ず届くさ。だが、もし届かなかったその時には、対策を考えねばならんな」という結論に落ち着きました。けれども、その翌週もさらに物資が届きませんでした。ここで、トルコにいた物資補給係と連絡を取ってみると、間違いなく手配したということだったのです。

 そして、事ここに至って、ビアンカも、他の管理者たちも――「あいつらだ」と、傭兵部隊の四人組に思い至ったわけです。ここで、腕に覚えのある八人の男たちがランドクルーザーの装甲車に乗ってこの四人を探しにいくことになりました。広い砂漠の中で見つけるのは困難かと思われましたが、向こうも最初からそれが目的だったのでしょう、案外あっさりと対面が敵いました。

 シナリオとしては、こちらに犠牲を出しても相手を殺して物資を奪う、彼らと和解して物資と引き換えに刑務所へ入れる……という二択だったわけですが、ビアンカは「それは向こうの態度次第で決めろ」と命じていました。中に入れてもらえなかったことを恨みに思い、話し合いの余地もないようだったら、それはもう戦う以外にありません。けれども、取引の余地があるのであれば、妥協して彼らを刑務所内へ入れてもいいとビアンカは言いました。「なに、中へ一度入れて、邪魔になったら殺せばいいのさ」と。

 フランス傭兵部隊の四人は、ジャン=ピエール、ルイ・アレクサンドル、トマ・ヴィクトール、レオ・エナンと言いました。そして、四人のリーダーらしいジャンが、アダムと話し合い――彼もまた、一時期軍に在籍していたことがありましたから、傭兵部隊の訓練の過酷さについてはよく知っており、最後にはお互いに肩を抱きあいながら和解したというわけです。

 けれども、彼らが以前二組のイギリス人一家の住んでいた部屋を占拠してからは、秀一と涼子はその場所にいるのが嫌になり、自ら進んで上の刑務所の空いている場所へ入居するということにしていました。というのも、秀一と涼子にはそうした自覚はなかったのですが、彼らにとっては「絶えずイチャイチャしている目障りなカップル」といったように映ったらしく、何かと突っかかってくることにほとほとうんざりしていたのです。

 もちろん、四階の狭い房のひとつに移ってからも、似た問題は存在していました。子供が夜鳴きすれば、「うるさい!」と壁を両方から叩かれますし、トイレが六畳ほどの同じ場所にあるのも、バスルームを共同で使わなくてはならないのも……すべてがストレスでした。

 そして、ジュスティーヌとアダムがふたりの部屋を譲ってくれたことから――秀一と涼子の悩みはようやく解決していました。彼らは元秀一たちのいた部屋のほうへ移ることにし、こうして問題は解決したというわけです。

 けれども、このことを通して、秀一と涼子はメソポタミア刑務所を出ていくことを本気で考えましたし、いずれまた、似た問題が起きないとも限りませんでした。<ジャイアントマシン>がフランスのパリで、エッフェル塔の隣で倒れると……事態はより絶望的になってゆきました。ルーマニアは無事奪還しましたが、戦争による国土の荒廃は筆舌に尽くしがたいものがあったと言えます。また、<マイスタージンガーZ>も修復するのに最低三か月は必要とのことで、パーツを切り離し、空母で祖国へ帰ってゆきました。

 一方、モスクワを包囲しつつあった<ヴィクトリーV>と<装甲機兵ガッディス>、<メタモルフォーザーX>らは、自らの命を犠牲にしてでもマザー・コンピュータ<アナスタシア>を破壊するつもりでいました。もちろん、<アナスタシア>は地下34階に格納されていましたから、それはなかなかに困難な使命ではあったでしょう。また、<アナスタシア>は自分が破壊されるかもしれないという恐怖から、国内にある五箇所のミサイル発射基地に、「アメリカ」、「日本」、「中国」、「トルコ」、「アフリカ大陸」へそれぞれ核ミサイルを発射するよう命じました。アメリカと中国と日本はそれぞれ、弾道弾迎撃ミサイルによってこの核弾道ミサイルを迎撃しようとしましたが、かなりのいいところまで追尾したにも関わらず、結局のところうまくいかなかったのです。

 こうして、イギリスに続いて日本が地図上から消え、そしてアメリカと中国とは、何百万人もの犠牲者を出し、特に中国は首都の北京が爆心地になりましたから、二千万人以上もの人々が核の犠牲となり、さらには国としても機能しなくなったのです。トルコとアフリカ大陸も壊滅的でした。また、トルコに核が落ちた時――秀一はティグリス・ユーフラテス刑務所の外を警備兵たちとぶらついていましたので、そちらの上空で何かが光り、何か火柱のようなものと大きな灰色の煙とがもうもうとトルコの方角から迫ってくるのを見ました。

「逃げろ!たぶん、何かヤバイ兵器が使われたんだ!!」

 みな、ランドクルーザーに乗りこむと、すぐに刑務所のほうへ取って返しました。そして、戻るなりすぐ地下一階にある会議室へ向かいました。会議室のほうは四百人以上もの人々で埋められ、椅子には座らず、立っている人が大半でした。

「一体何が起きたんだ?」

 ラスティが近くにいたタイ人に聞くと、彼は悲痛な色を瞳に湛えて言いました。

「<アナスタシア>は死んだよ。<ヴィクトリーV>と<装甲機兵ガッディス>、<メタモルフォーザーX>たちの活躍のお陰でね。<メタモルフォーザーX>が、ドリルで地下三十四階分までぶち抜いて――自爆した<アナスタシア>の犠牲になったみたいだ。けど、わかったのはそこまでさ。あとの映像はすべて砂嵐だ。日本もアメリカも中国もトルコもアフリカも……まだどれほどの被害が出たのかはわかっていない。おそらく、このあたりもトルコに使われた核で、暫くの間は放射能の数値が高いだろう。この先、一体世界はどうなっていくのか……」

 誰もがみな、言葉もなくその場に立ち尽くしていました。「嘘だろォォォッ!?」と叫んだり、「ファッキュー!!」、「ガッデム!!」と神を罵ったりする者も中にはいましたが、秀一は俄かには自分の祖国に核が投下されたとは信じられませんでした。そこで、そこいら中の人に、本当に日本に核が落とされたのかどうかとしつこく聞いてまわったのです。

 そして、誰もがみな「I’m sorry」と言ったあと、「本当だ……」と、絶望したように言いました。けれど、その場にいる三分の一の人間が呆然とし、三分の一の人間が泣き叫び、三分の一の人間がなんらかの形でやり場のない怒りを表わす中で――秀一はただ、その場にへなへなとへたりこんだのでした。

(何故、日本だけは絶対に無事だと信じていたのだろう?父さんも母さんも、兄貴も……一体自分の身に何が起きたのかわからないうちに死んだっていうのか?それとも、長崎や広島に原爆が投下された時のように……もしかしたらまだ生きているかもしれない。死んだほうがマシだという痛みと苦しみの中で、まだ生きているかもしれない。だけど、今のこの状態で日本へ帰れるか?飛行機で?それとも船で……)

 秀一はラスティとノアから支えられるようにして体を起こすと、彼らに礼を言って、涼子と自分の部屋のほうへ戻ろうとしました。足許がふらついて、一度転びましたが、もう一度立ち上がり、秀一は今度は走って自分の部屋のほうまで戻りました。そして、部屋のドアを開けるなり、シュートを寝かしつけていた涼子のことを抱きしめました。

「どうしたの、秀一さん……?」

 ここで秀一は初めて、体を震わせながら涙を流しました。彼は何かを言ったわけではありません。けれどもそれだけで、涼子は大体のところ察したようでした。そして、静かに言いました。

「イギリスで起きたことが、日本でも……?」

 秀一は、ただ頷きました。涼子の自分の背中に回した手がぎゅっと強くなりました。そのあと、一体どのくらいの間、お互いのことを強く抱きあっていたのか、記憶にありません。

 世界はまだ本当の意味では終わっていないかもしれませんでしたが、秀一と涼子にとってそれは同じ意味でした。この時、第四次世界大戦はのちに終わったとされましたが、それと同時に彼らは、(いつか帰れるかもしれない)と望んでいた祖国を、永遠に失ったのです。



 >>続く。





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