ドッグフード原材料シリーズの中で、いろいろなフードの原材料一覧によく登場するミールについて、久しぶりにおさらいです。
「おさらい?お皿?ごはん?」
ごはんの話だけど、ニコにはつまらないよ。
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ミールは「チキンミール」「ラムミール」「ミートミール」「フィッシュミール」と材料の名前がくっついているのが一般的です。
よく「ミールは粗悪な原材料です」と書いているサイトや商品説明を見かけますが、その言い方はかなり乱暴です。
きちんと知るためにミールがどのようにして加工されているのかをご説明します。
ミール製造の最初の工程は
レンダリングと呼ばれるものです。
ミールの材料になる肉類を巨大な釜に入れて加熱し、油分を溶かして搾る工程です。
ここで採れた油は、飼料の「チキンファット」「アニマルファット」という脂肪原料になります。
油分の抜けた原材料は、高温で乾燥させて細かく挽いて粉末になります。
油分と水分が抜けているので、タンパク質がギュッと凝縮された形になります。
フードの原材料一覧の最初に「鶏肉」次に「チキンミール」と書かれている場合
先に書かれている原材料が重量では多く使われています。
けれども実際には水分を多く含む生の鶏肉よりもチキンミールの方が少量でもタンパク質含有量が高いため
そのフードのタンパク源は鶏肉よりもチキンミールがメインになっている場合が多いです。
効率よくタンパク質を摂取できることと、ミールを使うことで価格が抑えられることはミールの利点と言えます。
さて、原材料一覧で見ると「チキンミール」「ラムミール」と同じように見えても
実はミールの内容は国によって微妙に違います。
まずはアメリカアメリカで製造されるペットフードアメリカ食品医薬品局(FDA)が定めた定義に沿って米国飼料検査官協会(AAFCO)が詳細なガイドラインを発表しています。
そこで定義されているミールの定義は以下のようなものです。
ラム、ビーフなど家畜肉のミール
「レンダリングした後、細かく挽き乾燥させた哺乳類の組織。
血液、毛、ひづめ、角、皮、胃腸とその内容物は含まない。」
チキン、ターキーなど家禽のミール
「レンダリングした後、細かく挽き乾燥させた家禽の肉、皮、骨。
羽、頭、足、内臓は含まない。」
ミールに含まれない内臓肉などはバイプロダクトや副産物という名の原材料になります。
副産物の定義は
「屠サツされた哺乳類由来のレンダリングされていない部位。
肺、脾臓、腎臓、脳、血液、骨、脂肪組織および胃、内容物を含まない腸が含まれる」副産物をレンダリングして乾燥加工したものは副産物ミールと呼ばれます。
ここで
大きなポイントはミールの定義には「屠サツされた哺乳類由来」という言葉がないことです。
この言葉がないことはメーカーが「屠サツで死んだのではない哺乳類」を使うことの抜け穴になっています。
つまり事故や病気で死んだ動物の肉をミールの原料にすることができるということ。
誤解のないようにして欲しいのですが、全てのミールに事故や病気で死んだ動物の肉が使われているわけではありません。
だからこそアメリカ産のフードでミールが使用されているフードはメーカーのチョイスが特に重要です。
※参照
FDA's Regulation of Pet Foodhttps://www.aafco.org/Consumers/What-is-in-Pet-Food次にEU基準
ヨーロッパのEU加盟国のフードはどうでしょうか?
アメリカのAAFCOに相当するEUのFEDIAFによるミールの定義は
「加熱乾燥して水分と油分を取り除いた肉および動物の派生物」としています。
動物の派生物=骨や内臓類ですね。
つまりEU基準でのミールと言えば、AAFCOで言うところの副産物も含まれます。
またメーカーによってはミールと書かずにバイプロダクト(副産物)と書く場合もあります。
ミールよりもさらに粗悪だと言われがちな副産物ですが、内臓肉は各種ビタミンやミネラルの貴重な供給源です。
きちんと管理された副産物は決して粗悪なだけの原材料ではありません。
また「屠サツの時点で人間の消費に適していると獣医師によって査定されていること」がペットフードの原材料としての適格要件に定められています。
また事故や病気で死んだ動物の肉は使うことは禁止と明記されています。
※参照
FEDIAF | HomeFEDIAF | Animal Proteinsそして日本日本でペットフード用のミールに当たるものは肉骨粉と肉粉です。
日本で肉骨粉の原材料として認められているのは豚・家禽・イノシシのみです。
なぜなら牛などの反芻動物では骨がBSEの危険部位であるためです。
肉骨粉は肉と骨だけでなく、臓器、ヒヅメ、羽などほとんど全てが含まれています。
また日本の場合は、原材料は屠畜場から回収したもののみと規定されています。
「いろいろ抜け穴があるんだね〜」
栄養面で知っておきたいこと
ミールはタンパク質が効率よく摂取できると書きましたが、栄養上の欠点もあります。
製法の箇所で書いたように、最初のレンダリングの段階で材料に含まれる油脂が溶け出すくらいの高温での調理がされています。
その後、乾燥させる際にも高温の加熱処理が行われます。
さらにドライフードの場合、最終工程でローストして仕上げます。
缶詰フードの場合は、缶に詰めた後に缶ごと加熱調理がされます。
このように、ミールの入った製品は3回の高温調理が行われているので
原料に含まれるアミノ酸が変質して消化吸収がされにくくなるという欠点があります。
アミノ酸はタンパク質の構成要素ですが、こちらで詳しく書いていますのでご参照ください。
知ってると納得、ペットフードの原材料一覧に載っているアミノ酸 | わんちゃんホンポ
ペットフードの原材料一覧の最後の方にカタカナの名前の一群が記載されていますね。その中にはアミノ酸のいくつかの種類が含まれています。フードに添加されているアミノ酸...
わんちゃんホンポ
アミノ酸に関する欠点はメーカー自身が対策を立てている場合もあります。
原材料にメチオニン、タウリン、リジンなどアミノ酸が添加されている製品はミールでは消化吸収しにくいアミノ酸類を補って不足しないように調整されています。
アミノ酸が添加されていない製品では、肉や卵などを少量トッピングするとアミノ酸が補えます。
「で、結局ミールって良いの?悪いの?」
まとめますと、ミールという食材は動物にとって最高に理想的とは言えません。
けれどもミールがあることで、フードの価格は買い求めやすいものになっています。
また、人間用の食肉を取った後に残った部分を利用することは食資源の有効活用、持続可能性という点でも大切なことです。
「ミールが入っているフードは使わない」「ミール以外の内容も見て総合的に決める」など、飼い主さんによっていろいろな判断があります。
私自身は「ミールが入っているフードはダメなフード」とは断言したくありません。
ミールの欠点を補う方法を考えることで、新しく学ぶこと、気づくこともあるかと思います。
いつも原材料シリーズの中でサラッと説明しているミールについて、詳しくおさらいをしてみました。