シュラ吉旅日記

定期更新型ネットゲーム「DARK KINGDOM3」のキャラクター視点日記。プレイヤーの呟きもたまにあるかモ。

第一砦再び。

2007-09-27 13:35:04 | キャラクター視点
イブラシル歴688年02月



長い休養期間を終え、皆で第一砦へと向う。
今度はどれだけの期間、ここに留まるのかそれは分からない。
もう1人の前衛であるリーゼの調子次第って所だろう。
槍を弓に持ち替えて闘いに挑むも、まだ少し震えが出るようだ。
移動中もなるべく側にいる事にする。何かあった時に支えてやれるように…。


以前程大きなダメージを喰らう訳ではないとは言え、やはり第一砦の兵士達
の攻撃力は大きく、油断は出来ない。
新調した杖のおかげでアルトの魔法の威力が上がっていて、闘いは随分と楽に
はなっていた。お嬢やニコ爺の罠の威力にも助けられているだろう。
皆の攻撃を合わせて、耐久の高い敵を倒して行く。
途中リーゼがデカイダメージを喰らったが、リリ姐さんの癒しで何とか無事に
闘いを乗り切る事が出来た。

闘いの後、リーゼはまた少し蒼い顔をしていたのでそっと肩を抱いてやる。
リーゼは何も言わずオレの身体にもたれ掛かって目を閉じた。
小さな肩が微かに震えていた・・・。



季節は冬。山から吹き下ろす風も身を切るように冷たい。
闘いを終えた後は足早に砦を離れ、風の当たらぬ場所を探す。
砦を少し離れた所に打ち捨てられた建物があった。随分と古い物であちこち
ボロボロだったが、結構頑丈に出来ているようで雨や風を凌ぐには丁度良い
場所だった。今回の野営地をここに定め、各々が設営を始める。

多分、昔は砦として使われていた物なのだろう。いくつかの部屋には朽ちた
武具や防具が転がっている。

オレは外の国から来た人間なので、このイブラシルの事は何も知らないが
一体何時から戦火が続いているのか・・・。
建物内に危険がないか見て回っている間、視界に入る朽ちた武具を見てそんな
事を思っていた。


食事の後、リーゼがやってきてオレの側にちょこんと座った。
オレの顔を見上げて

「ありがとう、シュラさん。」

簡単に礼を言い、自分が今まで恐れを知らずに闘ってきた事が危険な事で
あっただろうと真面目な顔をして言った。
その言葉と真剣な顔に、何かを吹っ切って決意を固めたような意思を感じる。
今回の経験が良い方向に向う事となったのなら、それはそれでリーゼにとって
良かったんじゃないかと思う。

「わたし、きっと…シュラさんがいなければ…生きられない…」

え?
リーゼの言葉にビックリしてしまい、リーゼの顔を凝視してしまった。
その言葉の後、リーゼはハッとした顔になって慌ててこう続ける。

「い…いや、シュラさんがいないとご、ご飯も食べられない駄目な子なんです…!」

リーゼはどもりながらそう言うと、視線をオレから逸らした。
建物の中は灯りがあるとは言え、やはり暗いのでハッキリは見えないが・・・
心無しかリーゼの顔が赤くなっているように見える。

その様子があまりに可愛い。
思わず笑ってしまい、オレはリーゼの頭を軽く撫でる。


まだまだ幼いリーゼ。
オレに今向けている感情は、愛ではなく恋。
移ろい、薄れ何時かはその気持ちは無くなってしまうのかも知れない。

それでも、彼女がオレを必要とする限りオレは側にいようと思っている。







だが… 彼女がもし真実を知ってオレの元を離れ、他の男の物になってしまったら。
その時 オレは平静な気持ちでいられるだろうか?


大切な人

2007-09-18 21:33:15 | キャラクター視点
イブラシル歴688年01月



「誰だって闘う事は怖い。何かを失う事も怖い。
 それで武器を持てなくなる奴だってたくさん居る。」

ベッドの端に腰を下ろし、リーゼの顔を見てオレはそう言った。
1人にしないでと 不安な顔をしているリーゼに、オレだけでなく仲間の
皆がリーゼを必要としていて誰も見捨てるような事はしないと。

「だからそんな情けない顔をするな。いつものように笑ってくれ。」

そして、リーゼの肩にゆっくりと手を伸ばし、その細い肩に触れる。
リーゼは一瞬驚いた顔をしたが、何も言わずに瞳を閉じた。

「何時どんな時でもオレはお前の側にいよう。お前の不安と恐怖をそれで
 祓う事が出来るのなら…お前がそれを望む限り ずっと・・・。」

そのままリーゼの身体を抱きしめる。
華奢で小さな身体。少しでも力を入れれば壊れてしまいそうだ。
こんな華奢な身体で頑張っていたんだな と思った瞬間……

「ぎゅるるるるる!」

リーゼの腹から盛大な音が聞こえた。
熱も下がってきていたせいだろう、食欲が戻ってきたようだ。
大慌てでリーゼはオレから身体を離して俯き、チラと上目遣いでオレを見ると

「うう… シュラさん、やっぱりごはん… 今は手が動かないので、
 あの… 食べさせてくださ、い…」

顔を赤くしてポソリと呟いた。



宿の食堂からスープと果物を部屋へと持ち帰り、リーゼに食わせる事にする。
オレが声をかけるとリーゼは口を開け、その口へとスプーンを運んで一口一口
食べさせる。一生懸命に食べる様がちょっとかわいいなと思いつつ、その様子
を見ていると、昔巣から落ちたスズメの雛を育てた時の事を思い出してしまった。

は イカン!
リーゼとスズメの雛を同列に見る等と…こんなんだから朴念仁と言われてしまう
んだよな。(大きな溜め息を1つついてしまった)


リーゼは食事をしながら、自分の気持ちを少しずつ吐き出す。

「今はもう何が何だかわからないです。女だから弱いなんて事はないけど…
 私はまだまだ子供だった。そして、女としての弱点を持ってしまった。

 でも、それでも…私は前に歩いていきたいんです」


小さなその身体で、リーゼは家族の為に闘いに身を投じた。
「恐怖」も「恐れ」も全て家族の為に押し殺して。
その華奢な手に槍を持ち闘ってきたのだ。
今まで何一つ弱音も吐かずに頑張ってきた。その心をオレは支えてやれるだろうか?
出来る事なら支えてやりたい。心からそう思う。



「シュラさんは私の太陽だった。導かれるように、背中を追うように…
 ずっとずっと私の目標だった。あなたがいたから、ここまでこれた。」


リーゼがオレの方を見て微笑んだ。
今までに見た事のない程綺麗な、暖かな表情をして。

「そしてきっと、これからもそう。ありがとう、私の大切な人…」


リーゼは左手をオレの右手にそっと絡めて、顔を近づけてきた。
小さな吐息が顔にかかり、オレは一瞬混乱してしまって身動き出来なかった。
そのままやわらかく熱いリーゼの唇が頬に触れる。




大切な人


こんなオレにそう言ってくれた。
その一言が どうしようもない程嬉しかった。
今まで得る事の出来なかった言葉。今まで背を向けてきた立場。

決して手に入れる事の出来ない物。
また 儚く失ってしまう事になるだろう物。




それでも オレは・・・。



震える心

2007-09-11 15:13:14 | キャラクター視点
イブラシル歴687年12月



熱の下がらぬリーゼの世話をする為に、空いている時間なるべくリーゼの
側にいる事にした。 さすがに身体を拭いてやったり着替えさせるのは
リリ姐さんの担当だ。オレに出来るのは額のタオルを替えてやったり、
食事の時に介添えをしてやったりぐらいのもので・・・

まだ食事は普通に出来ないので、リーゼが食べるのは果物やスープばかり
だが、少しずつ食べる量は増えている。
後は体力を戻して行くだけのようなので、オレも少しホッとした。

買って来た桃の皮を剥き、皿に乗せてリーゼに手渡す。
その後 皮の始末やらをしていたら

ガシャン。

食器の落ちる音が部屋に響く。床に桃が散らばり、金属で出来た皿は
カラカラと音を立てて床の上を舞っていた。
ベッドに上半身を起こしたままリーゼは青い顔をしている。
慌ててベッドの側へと行き、オレはリーゼの様子を伺った。

「シュラさ…ん…わたし、緊張すると、なんか右手が…おかしいんです…」

リーゼはぷるぷると震えている右手をオレに見せた。
筋が強張り、指が不自然に震えている。

「普通にしていれば、何ともないんです… でも戦いの事を思い出すと、
 大きな武器を振るって…大切なものを奪うあの「重さ」を思い出すと、
 こんなになっちゃう…」

いつの間にか右手だけでなく、リーゼの身体が震えていた。
不安そうな表情で己の右手を見つめて・・・。


「シュラさん…わたし足手まといにならない様に付いていきますから、
 どうか私をおいていかないで、シュラさんにもみんなにも

 見捨てられたくない…」

リーゼは大きな瞳を潤ませてオレをじっと見ている。
そして 震えているその手でオレの服の袖を握って離そうとしない。



脅える子供だ。

大切な物を失う恐怖に、孤独になる事への恐怖に足が竦みどうすればいい
のか分からず脅えている・・・。

リーゼはまだ幼い。
その重みに耐えられる程に心が強くない。



ならば 1人でその重みを受け止める事が出来るようになるまで側にいてやろう。
そんな事しかオレに出来る事はないだろうから。



オレはそっとリーゼの肩に手を伸ばした。


槍は折れてしまうのか?

2007-09-04 16:43:02 | キャラクター視点
イブラシル歴687年11月



第一砦で倒れたリーゼの受けた傷は思いのほか酷かった。
街へ戻る時も自力で歩く事は出来ず、オレが背負って連れて行ったが
街に着いてからも調子が戻らぬまま宿で寝込んでしまったのだ。

傷が塞がるのも遅く、そして傷が原因で発熱していた。
街の医者に診てもらい、医者の指示通りに安静にしている。そのおかげ
で傷の方は随分と良くなった。

だが、熱は一向にひかないままだ。

リリ姐さんが、日に何度もリーゼの部屋へと足を運び癒しの術を使って
いる。それでも熱はひかない。

リーゼの部屋から出て来た姐さんが俺にそっと耳打ちする。

「んー……身体の傷の方は良いんだけど、心の傷がね……。
 こっちは法力で簡単にどうこうってワケにはいかないから。
 まぁ、後はあの娘自身の問題。

 下手したらここで折れるかもね、ヴェーゼンドルファの槍は。」


心の傷。

何がリーゼの心を傷つけているのか。
リリ姐さんのオレを見るジト目や、アルトの溜め息を見ていればいくらオレ
でも分かる(それが無くても大体の見当はついているが)

他の面子と違って、特に街で済ませる用事もなかったので、出来るだけ
リーゼの様子を見るようにした。
そっと部屋に入り、ベッドの横に座って眠っているリーゼの額のタオルを
替えてやる。熱がまだ高いのだろう、リーゼは赤い顔をして何かを呟いて
いる。

「…ごめんなさい、ごめんな…さい。」

タオルを替えたオレの手をリーゼの小さな手が握りしめた。
とてもか細い力で・・・

「これ、以上、シュラさんが…傷、つくのイヤ…だった、前に第二砦で…
 シュラさんが何度も倒れたのは、私をかばってくれた、から…

 だから今度は、わたしが…わたしの大切な人のため、に…」

その言葉を聞いてオレはもう何も言えなくなっていた。
とても真っ直ぐな気持ちが自分に向けられている。その気持ちをどうして
無視する事が出来よう。
…自分にその気持ちを受ける資格等ない わかっている。
それでも・・・オレは

そっとリーゼの顔を覗き込み様子を見ようとした瞬間

「ぎゅるぎゅるぎゅるるるるー!」

盛大にリーゼの腹から大きな音が聞こえ、同時にリーゼが飛び起きた。
リーゼの顔はモロにオレの顔面を直撃して、オレはそのまま後ろにひっくり
返ってしまった。

「いってぇ~っ!いきなり起き上がる奴があるか!」

何やら柔らかい物が唇にブチ当たったような気がしたが、それよりも何よりも
痛い。どんだけ勢いよく起き上がったんだ? そんな元気があるなら大丈夫
じゃねぇのか?
それでもリーゼの顔はまだ赤くて息も早い。身体の調子はまだ良くないようだ。

「ちょ…いま、シュラさん変な所に口をくっつけませんでしたか!?
 っていうか、何で人が寝てる所に…」

視線を逸らしながらリーゼがぶちぶちと文句を言いはじめた。が、またその
途中でリーゼの腹が鳴る。 唖然とした顔をしていたら、リーゼは毛布で顔の
半分を隠しながら上目遣いでオレを見て

「それより…おなか、すきました…」

ポソリと一言そう言った。

その様子があまりに可愛かったので、笑いながら鞄から桃缶を出してリーゼに
食わせる事にした。
(街に入ってすぐに雑貨屋で買っておいて良かった…)

桃を食べた後、リーゼはベッドの横に立てかけてあった槍をオレに手渡そうと
したが、熱のせいで力が入らないのだろう、バランスを崩して倒れそうになり
慌ててオレはリーゼの身体を抱いて支えた。
何故無茶をする。そんな物オレに一言「持って行ってくれ」と言えば済む話じゃ
ないのか? リーゼの身体をベッドの上に寝かせた後、槍を自分の座る椅子の横
に立てかけてリーゼの顔を見る。

「駄目なんです… わたしもうこんな大きな武器持て…ませ…ん…」

言葉を詰まらせて リーゼは小さな声でそう言った。
大きな瞳から涙が溢れていた。

リリ姐さんの言葉が頭をよぎる。
「ここで折れるかもね、ヴェーゼンドルファの槍は。」

そんな事…あってはならない。
リーゼはパーティにとってなくてはならない存在だ。リーゼがいなければオレ達
は皆困り果てる事になるだろう。戦力としてだけではない。その存在がパーティ
に必要なのだから。


どうすればいい。
リーゼは何を望んでいる?
オレが彼女の為に出来る事は何だ?



腹を括らねばならない。
彼女の望みを叶える事。その気持ちを受け止める事。






…真実を知られた時に拒絶され、オレの心が傷ついたとしても。